分割したくない方はこちらからお読みください。
プルルルルルル…プルルルルルル……
プルルルルルル…プルルルルルル……
ん……うるさいなぁ…
元日くらいゆっくり寝かせてくれよ。
ただでさえ昨日廉太郎と騒いでたんだ…
日は既に高く昇っており、そろそろ頂点へ達しようとしている。
その頃まで寝ていた将臣が悪いのだが、けたたましく鳴り響く携帯電話が許さない。
一向に鳴り止む気配の無いそれは、持ち主に早く出ろと言わんばかりに電子音を奏でる。
んん……あぁ、もう!!
出ればいいんだろ出れば!!
……あれ? 芦花姉じゃん。どうしたんだろ。今頃店だよな?
「はい、もしもし?」
『やっと出たー! まー坊、今日時間ある!?』
「うん? あるけ」
『良かったぁ!!! 今日皆用事あるって断られてて!! じゃあ急いでお店に来て!!』
「え? あ、ちょ、芦花姉!!」
一体なんだったんだ…にしても凄い剣幕だったな。普段なら人の言葉を遮る様なことはしないのに。
あれ? 今度は爺ちゃんからだ。
既に通話が途切れた携帯を眺めているとそこにまた、新着の電話を知らせる音が鳴った。
「もしもし?」
『将臣か。直ぐに出るとは感心感心。正月だから稽古を休みにしていたが、どうやら杞憂だったようじゃな』
「ははは……そ、それで要件はどうしたの? 正月の昼間からさ」
『おぉ、そうじゃった。実はな将臣、今日お主暇か?』
「暇…って言いたいのは山々なんだけどね。つい今芦花姉に電話で呼び出されたところでね」
『む、芦花君の所もか。なに、そしたらこちらは気にするでない。芦花君の所へ行っておやり。』
「いいの? 爺ちゃん」
『よかろう。こちらに来てもあまりやることは変わぬ。ならば馬庭さんのお店を手伝っておやり。こちらは幸い、人は居るからの』
「う、うん??」
『しっかり働くのじゃぞ。「働かざる者食うべからず」じゃ』
う…うん……? だから俺何も知らされてないんだけどね…?
働くのか…そうか、働くのか…正月から働く俺……
まぁ約束したしなぁ。
行かないわけにはいかないよなぁ。
またもや通話の切れた携帯を眺めながら寂寥感に駆られる。
しかしいつまでも放けていてはいけない。
待ってる芦花姉の期待を裏切る訳にもいかず、出かける準備をして田心屋に向かう。
へぇ…穂織の正月、どこも賑やかだなぁ。
あそこの土産屋は混んでるし、こっちの飯屋は行列……流石観光地ってことなのか?
ここで年越すの始めてだけどこんなに栄えてるなんて凄いな。
これを見るとここに残ったのも正解かもしれないな。
建実神社も志那都荘もお客さん多いんだろうな…
あ、だから手伝わせる為に祖父ちゃんから電話来たのか!?
田心屋、甘味処だけど…どうなんだろ?俺に応援を頼むくらいだからやっぱ繁盛してるんだろうなぁ。
んん…? ちょっと待て、凄い列できてないか!?
なんて思いながら街を進む。
街中に人だかりができていて進み辛い。
外国客も大勢居て英語の看板を掲げている所もあるくらいだ。
雑踏を掻き分けながら進み、目に見えている芦花姉の待つ店へと足を進める。
近付くにつれ、店の違和感が確信へと変わる。
今まで行列ができていたことはあっても数人だったのが、今日は大行列の数十人が並んでいる。
「知ってるか? この店、店員が凄い綺麗らしいぞ」
「いーや、俺は断然あの小さい子だね。あの可愛さがいい」
「連絡先とかゲットできねーかなー」
「あの新しいデザート、美味しそうだよねー!」
「うんうん、正月限定に梨と桃と苺のやつ! 絶対美味しいって!!」
「見てよ! この『呟いったー』美味しそう! 早く食べたいー!」
「絶対インフォト映えするよー!」
なんて行列の声を耳にしながら「店の者です」と言いながら進み、目的地に着く。
3人目、諦めろ。芦花姉の連絡先は絶対にやらん。もし訊いてきたとしてもブロックしてやるよ。
しかし梨と桃に苺かぁ...
知らないうちに新商品を出してたことに少しショックと寂しさを受けながら店内に入る。
「失礼しまー」
「やっと来た! 遅ーいっ!」
「ごめんごめん、思った以上に人が多くて……って芦花姉その格好は!?」
「うん? これ? お正月は普段と違ってこの服なんだよ。じゃなくて! 今年はいつもよりお客様が多いの!! だから今すぐ手伝って!!」
「へ? あ、はい」
「じゃあ、はいこれ。まー坊のね!お父さんのお下がりだから大きいかもだけど早く着替えて来てね!」
「え、あ、はい」
手に渡されたのはいつもの制服と違っていて、少し豪華に彩られ和服。
白や銀でシンプルに彩られた着物に、黒の細いストライプが入った袴。
そこに大きく咲く一輪の菊の花が腰帯に咲く。
汚してしまってはクリーニング代が高そうだと思いながら更衣室へ持っていった。
しかし...芦花姉のあの服は反則だろ。
いつも履いている海老色の赤みが深い袴はまだいい。見慣れてるしな。
しかし問題なのは少し赤みがかった――銀朱色の着物の方だ。
白や黄色、オレンジにピンクといった色で梅や椿菊、桜に牡丹などが多く彩られている。
葉の青々しさがまた生地の銀朱を引き立てており、菱形模様や矢絣模様の柄...それらがまた、着物の豪華さを表しており、芦花姉の綺麗さがより映えている。
頭には一輪の大きな花の髪飾りと黒いリボン。
それらが一層芦花の大人っぽさを主張し、服の華やかさに拍車を掛けている。
……しかし何故長羽織を羽織って普通外で着る物だよな?
「今から入ります!」
「遅いよ、お兄ちゃん!」
「ごめん小春。なれない服に手間取ってさ」
「もう、しょうがないなぁ。んー...似合ってるから許してあげる」
「そこ、喋ってないで働いて!!」
「「は、はいっ!」」
「ふふっ、ごめんね、将臣君。あの子ったら、将臣君を働かせる申し訳なさと、一緒に働ける嬉しさが混ざってるだけだから」
「お母さんも余計な事言わなくていいから!!」
「あはは…」
それでも頼られたってことは期待されてるってことかな。
それにやっぱり最初に声を掛けてくれたってことは嬉しいし、ここでやらなきゃ男が廃るってもんだろ。
よーっし! やるか!! 頑張って芦花姉の力になるぞ!!
「お待たせしました。こちらの席へどうぞー」
「合計1,300円になります」
「和紅茶とプリンですね、少々お待ちください」
「ありがとうございました。また起こしくださいー!」
「お客様、うちの美人社長を勧誘したいお気持ちは分かりますがご遠慮ください」
「お待たせ致しました。こちら抹茶パフェになります」
「コーヒー入れました! 3番様にお願いします!」
……疲れた。非常に疲れた。
1日目から超ハードじゃん。
何、芦花姉たち毎年こんなことやってんの?
小春なんて机に突っ伏して寝てたよ??
そのままおじさんに背負われて帰ってたけど…大丈夫か?
にしてもあの野郎…本当に芦花姉の連絡先訊いてくるとは……
営業時間も過ぎ去り、暖簾を仕舞った田心屋。
全員が調理に接客に勘定と忙しなく働いていた日中も過ぎ、月が山頂近くから里を照らしている。
正月だからか、里は静まる様子もなく、建実神社にも人が賑わっている様子が見える。
休み時間も殆どなく働きいて体力が底をつく従業員たち。
小春は営業時間が終わる少し前に休憩室で横になり、両親が迎えに来た。
千代も疲れが表情に隠しきれず惣菜を買って帰るらしい。
芦花の両親は店が繁盛しているのが理由に笑顔で帰宅しており、将臣は借りた制服を返却し私服へと姿を変えている。
「今日もお疲れ様でした」
「芦花姉もお疲れ様。なんでそんな元気そうなの……」
「なんでだろうねー。従業員くんが私を守ってくれたからかな?」
「守った???」
「いいの、いいの。さて、帰ろうか。今日のお給料は奮発しちゃうよ」
「あ、帰る前になんだけどさ、少しいいかな?」
「うん?どうしたの?」
「ちょっと俺の部屋来ない?」
「………い、今ッ!!?」
「まぁできれば…渡したい物あるし」
「ふーん。じゃあ行こっかなぁ」
「お邪魔しまーす」
「どうぞどうぞ。と言っても自分の家じゃないけどね」
「ふふっ、知ってる」
「じゃあちょっと座って待ってて。すぐ持ってくるからさ」
「はーい」
弾むような軽い足取りで帰宅路を歩き、終始微笑みだった彼女。
先程までの疲れは微塵も捉えることができない表情。
これから起こる事に対する期待と、将臣が自分の為に準備したという嬉しさ。
彼女自身嬉々爛漫としているのが、彼女を知らない人でも伺える。
お馴染みの志那都荘。
その離れの一室が将臣の部屋となっている。
部屋の中央に置かれたテーブル。横に3人並んで座っても余裕がある。
その片側に置かれた真紅の丸いクッション。
何度目かに来た時に用意され、芦花はいつの間にか定位置となったそこに座る。
「お待たせー」
「はいはーい!」
「はいこれ。食べてみてくれる?」
「なに…これ。グラニ…テ……?」
「そうそう。芦花姉『サングリア』って分かる?」
「名前は聴いたことあるかなぁ…」
「果物をワインに浸けたお酒なんだけどね。芦花姉でもこれなら大丈夫かなって」
「むむっ。どういう意味よーそれー!!」
将臣が持ってきたのはサングリアで作られたグラニテ。
淵の深いデザートを盛り付ける皿に、赤紫色のシャーベットが盛られている。シャーベットの周りには、凍らされる前にワインに浸けられていたであろうオレンジ、イチゴ、桃などの果物が一口サイズにカットされて氷菓をデコレーションしている。
それを芦花の前に差し出しながら将臣は――こちらも定位置となっている――隣に置いている緑の座布団の上に腰をかける。
お酒弱い芦花姉でもこれなら大丈夫だろ。
ワインのアルコール高いけど果物の果汁が和らげてくれるし、シャーベットだから更に低くなってるからな。
果物…はワインが染み込んでるからちょっと怪しいけど、まぁ元は果実。うん、大丈夫なはずだ。
シゲさんにも協力してもらったから味の保証もできるはずだ。
シゲさんありがとう!
「まぁ、食べてみてよ。付き合って初めての正月で記念ってことで作ったんだからさ」
「むぅ…そんなこと言っちゃってさ。生意気……あ、美味しーこれ」
「でしょう! 結構試行錯誤したんだ」
「ワインの甘酸っぱさに、果物の風味が加わってて美味しいー。ワイン特有の、喉通った時の焼けるような感じがないのもいいね、食べやすーい。例えばどんな挑戦したの?」
「まず、氷の作り方でしょ。果物と一緒に凍らせたら果物硬すぎて磨ることできなかったし、かと言ってワインから取り出したら凍るまでに果物の保存方法、そもそも何時間漬けたら果汁が染み出るのかとかさ」
「へー、ふーん、ほーん。そんなに頑張ってくれたんだー」
「そりゃぁ芦花姉に喜んでもらいたかったからね。芦花姉の気持ちも分かった気がするよ……」
コーヒーの時とか、豆の拘りや他の料理との組み合わせ。
煎餅の時は戦略販売…どうやって販売していくか。
どれもこれも考えて考えて考え抜いて販売されていった商品。
商品にするのがどれだけ大変か、この一件で芦花姉の凄さが少し分かった気がする……
って、芦花姉凄い勢いで食べてるな。もう半分無くなってるよ。
結構気に入ってくれたのか?
ニコニコともニヤニヤとも取れる笑みでグラニテを口に運んでいる。
ひと匙ひと匙丁寧に味を噛み締め、休めることなく手を動かしている。
器に盛られている山は、未だ氷の冷たさを十分に保ったまま高さを半分にしており、カラフルな丘陵は既に平地とと化している。
「芦花姉、そんなに食べて大丈夫?」
「んー? らいじょーぶ、らいじょーぶ」
「って、酔ってるじゃん!!!」
「よってなんかないもん!!」
「はぁ……これでもダメかぁ。うーん、アルコールは低いと思うんだけどなぁ…」
「ちょっと!! 聞いてるの、まー坊!!」
「聞いてる、聞いてる…」
「えへへーー」
「はぁ……」
芦花は将臣へ身体ごともたれかかっていくと、彼女を受け止め、頭を撫でる。
すると満足そうに幸せの笑みを浮かべ、同時に彼は深い溜息をつく。
彼女の着ている和服が少し崩れるも気にしない様子で、腕を絡め取り、頭をぐりぐりと左右に振りながら押し付け、撫でられるのを催促している。
「折角これでまた芦花姉の気持ち解った気がするのになぁ…」
「えーなになにーー、どういうことー?」
何気ない呟きの一言に勢いよく身体を起こし、キラキラと輝いた翡翠色の瞳は少し色褪せた琥珀色を掴む。
白い頬は紅く染まり将臣の視界を奪い、先ほどより力強い両の手で腕を抱き、将臣を逃がさない様に捕まえている。
近い近い……いや、近いのは嬉しいんだけれどね。芦花姉の綺麗な顔が見れるんだし。
しかし、その…また当たってますよ? 左腕に貴女の大きな物が2つあたってますよ……?
やっぱりわざと当ててるんじゃないの???
しかも良い匂いが香ってくるんだよなぁ…ちょっと限界なんですけどお姉さん????
「前にも言ったけどさ、コーヒーでしょ。色んな豆使ったりしながら味わいやコクを比べてたよね。田心屋に一番合う豆はどれかってさ。今では看板商品のひとつと言っても良いくらいの人気商品でしょ?」
「えへへー、頑張ったんだよー。」
「その姿を見てたからさ『材料に拘る』って言うのは非常に解ったよ。このグラニテだって同じオレンジや桃でも品種や組み合わせを変えれば味が大きく変わったし…」
「えー、らぁ、それだけで結構お金かかったんじゃない?」
「そこはアルバイトとかさせてもらってますから」
「偉ーい。お姉さんが褒めてあげるー」
「ちょ、まっ……本当に待った!! ……ったぁ!!?」
芦花姉は俺を撫でようとして右手を伸ばし、頭へ一直線に目指す。
左腕で腕を一気に引き寄せられた俺は体制を崩してしまい――なんとか身体を回して自分自身をクッションにできたが――芦花姉共々に倒れてしまった。驚きはしたが、芦花姉が無事でなによりだ。
俺の胸で顔を隠している頭にポンポンと数回、手を当てて安心を促すと満足そうな顔が現れた。
「えへへー。まー坊ー」
「はいはい、何でしょう」
「もっとぉ~。撫でられるの好きぃー」
「はいはい...」
これも惚れた弱みだろうか?芦花姉に甘えられるとすぐに応えてしまう。
いや、酔ってる人を介抱しているからに過ぎない!きっとそうだ!!
しかし、こんなに密着されていて何もできないというのがなぁ…
うぅ…膝に当たるデカくて柔らかい感蝕が……
伸び伸びと手を伸ばしながら背伸びしているし……猫かな??
腕にしがみついていた身体を徐々に下げ、将臣の膝の上へと移動をしている。
自らの胸を横切らせる形で乗せながら、俯せ状態となり寛いでいた。
すると急に俯せから身体を180度反転させ、仰向け状態になる。
そして、両の手を指先までまっすぐ伸ばし将臣へと手を差し出す。
「まー坊、んっ」
「『んっ』って?」
「だーかーらー、んっ」
「あー……ちゅっ。」
「えへへー、もっとぉー」
「んっ、ちゅっ、ちゅっ、んむっ、ちゅぅぅ…ぷはぁ」
「えへへ、ありがとっ」
「ふぅ……んんッ!!!?」
身体を起こし、前屈姿勢になり、――今更ということもないが――目を瞑って最愛の人にキスをする。
触れるだけのバードキスだけじゃ物足りないのか、フレンチキスを求めてきてそれに応える。
腕で頭を抱える様に抱きしめられ、満足するまで離されることは許されなかった。
漸く離されたのも束の間、目を開けるとそこには服のはだけた芦花姉の姿があった。
「ちょ、芦花姉…それ……」
「んー? あー、この服? この服がどうしたのー??」
「いや、どうしたのじゃなくて……え??」
ちょっと待ってくれ、あまりに急なことに頭が追いついていない。
キスをしたな、それは良い。
次。頭をホールドされて、ディープキスになったな? まぁ...それもいいか。結果としてなったもののそれ自体は嬉しかったしな。
うん、問題なのが次だな。
服が崩れてて長羽織が脱げてて……え? あの格好は? いつから……??
まさか店で働いていた時からってことはないよな??
「あの、芦花姉…??」
「だから、なぁにってば」
「その中に着てる服は一体いつからその状態だったのでしょうか……?」
「んー? これ? ちょっとセクシーすぎるよねぇ。お母さんが無理矢理これに決めてさ…もう、やんなっちゃう」
「いや、だから…その。ちなみに、いつからでしょう……?」
「おみせー。この姿じゃ流石に恥ずかしいもん。まー坊もしかして照れてるの?可愛いー」
いやいやいやいや、そうじゃないだろ!?
上から着ていたとはいえ、その下にこんな服が隠されていたとは…
布面積は襟と衽部分のみ。肩から胸、そしてお腹にかけて結ばれている。そのため芦花姉の大きい胸がはみ出しているのが見えるし、肩が露出されていて、前身頃は……無い様に見える。袖丈はどうやって……あぁ、ひょっとしたら胴裏で襟や衽と繋がっているのか?
「あのね、芦花姉。上から羽織る物があるかないかじゃないんだよ」
「あはは………やっぱり…?」
「うん。彼女がそんな無防備だらけの格好をしてお店に出てる? ふざけんなって思うよ。実際、芦花姉目当ての客だって今日はいたんだし明日からも来る。少し気崩れただけでそんなエロい格好が出てくるんだから、彼氏としても辞めろって思うよ」
「これ着てたらまー坊が私にときめいてくれるかなって思ったんだけどね。ごめんなさい」
「芦花姉のその姿を見て俺が心動かされない訳が無いでしょ。ただ、相談するか時と場合を選んで欲しかったってこと」
「まー坊……好きッ!!えいッ!!!」
「うわっ、え、ちょ、おい!!」
一旦将臣の膝を離れ、その場に座り直した芦花。
彼氏彼女の話になり、男女の話になってから気が落ち込みはしたものの、将臣の台詞で復活を遂げる。
起き上がると、若干氷が残っていたグラニテを手に取り、器ごと口の中に一気に注ぐ。
器を空にすると再び勢いよく将臣の胸へと勢いよく飛び込む。
「まー坊、すきぃ……」
「またお酒飲んで…仕方ないなぁ…」
「私の虜になっちゃぇ~」
もう魅了されまくってるんだけどなぁ。
俺の目にはもう芦花姉しか映らないんだよ。
そんな気も知らないで……いや、普段はそんなこと考える余裕もないんだろうな。
普段から田心屋の社長してるし、町内会議にも呼ばれて町のことも考えないといけないし…
いつ息抜きしてるんだろう……俺と一緒の時くらいゆっくりしてもらおう。
しかし…膝の上で動かれると…こう……ね? お姉さん???
自重する気無いんですか…?
「まーぼーのお膝あったかいなぁ」
「あの、芦花姉…?」
「なぁにぃー」
「その、そこで動かれるとちょっと不味いんだけど...」
「んー? あ、もう我慢できなくなっちゃった?? まー坊も男の子だなぁ」
悪戯さを含んだ笑みを浮かべ将臣の股間へと手を伸ばす。
カチャカチャと音を鳴らしながらベルトを外し、ズボンのファスナーを下ろし、パンツを掻き分け深部へ探り、膨れ上がった股間から元気よく息子が顔を現した。
「おっ、立ってるねぇ…」
「芦花姉!? 何を!?」
「前はね、全然駄目だったけど、今日こそ、お姉さんがリードしてあげる」
「いいの? 苦手なんじゃないの?」
「いーいーのー。そのためにさっきグラニテ食べたんだから…………って、言わせないのーッ! そんな事を言わせるのはこの子かっ!!この子なのかっ!!!」
「うっ…あっ……」
細く長く准えられた指がギュッと陰茎を手で優しく包み込まれる。
強すぎず、弱すぎず、まるで卵を手に持つ様な絶妙な力加減が急に襲われ思わず喘ぎ声が漏れてしまった。
毎日飲食店で働いているのに手がきちんと手入れされていて手が柔らかい。
「かーわいー。こうがいいんだー? ぎゅ、ぎゅ」
「気持ちいいよ」
「んー、れも、イマイチっぽそう……こうはどうだー」
顔から読まれてしまったか。
確かに、手でされているとは言えお口やおまんこの方が気持ちいいので認めざるを得ない。
それに納得をできないのか、指と手の平全体に均等に入れていた力を、人差し指と中指の亀頭に近い部分のみや薬指と小指で根元に近い部分のみと力の入れ方を変えて握られる。
力の入り方が全宝部分部分に変わったことによって圧力の緩急が先程とは異なり快楽が少し増大する。
うーん…確かに気持ちいいことは気持ちいいが、それでも快楽としては弱い。
折角芦花姉が自分からしてくれているのに勿体ないよな。
「芦花姉、ちょっとそのまま上下に手動かしてくれない?」
「こう…??」
「あっ、そうっそれ」
「ふふっ……我慢汁出てきたね。我慢汁出てきたってことは気持ちいいのかなー??」
「うん、すっごい気持ちいいっ」
ペニスを圧迫している手を上下に動かして刺激を貰う。
さっきのただ単調な圧力をかけられるより刺激が多くて気持ちいい。
それに、芦花姉の手を俺の先走り汁が汚していると思うと少し興奮する。
興奮も刺激の1つとなって混ざり合い、どんどん体液が溢れ出る。
「まー坊の我慢汁どんどん出てきちゃう。ヌチャヌチャ言ってるし。ほら、見てみて」
「見せなくてもっいいから」
「すごーい。親指から小指まで全部ヌチョヌチョだ……ペロッ。あはは、しょっぱーい」
「そういうのもしなくていいから」
「むー…じゃあまた、おちんぽ扱いてあげるんだから」
この酔っ払いは本当に…
付き合いで飲む時もこうやって飲んでるんだろうか?
今度祖父ちゃんに訊いておこう。
しかし……芦花姉の手、凄く気持ちいい。
文句を言いつつ、どこか嬉しそうな芦花姉。
手を動かされることでビクンと反応している俺の動きが楽しいのか、面白がるように粘り気のある大きな音を奏でている。
華奢な手と綺麗な指、ペニスの隙間から漏れる水音。
芦花姉の手は俺の体液でトロトロになっている。
そして水音が大きくなっていくことで更に快感が俺を襲い、快楽も加速度を増していく。
「こうかな?」
「んっ、あっ、いいっ……んっ!」
「んん?? なんかここ、今反応凄かったよね。ははぁ…さてはここ弱点だなー??」
「うっ…あ、ッハァ!」
「まー坊可愛いー。じゃあこんなのはどうだー」
「あッ、っく…気持ち、いいっ」
しまった。
弱い所に芦花姉の人差指が当たってしまい仰け反りと大きい声が出てしまった。
それで弱点なのがばれてしまい、亀頭部を中心に攻め始めた。
親指と人差指で輪を作って輪にカリを出し入れしたり、指を尿道に当て捏ねくり回したり。
ヤバい。込み上げる物が近くてすぐに限界を迎えそうだ。
「ほーら、どんどん我慢汁溢れてくるー。指で栓をしても駄目だねー。」
「それっは、ろかねぇが、擦り着けて来るからだろっ…逝きそうッ」
「えー、もうー? まだ我慢できない?」
「そんな、こと、言われても…」
「もう、しょうがないなぁ。まだダーメ……ギュ」
「いったぁ!!!?」
更に強い圧力が分身を襲った。
思わず下半身を見てみるとイチモツが芦花姉の手に収まっており、力強く握られた様だ。
痛みから快感は沈み切ってしまったが、息子は元気そうだ。良かった。
思いきり握られるとは……
「わわっ、ご、ごめん。でも……出すならこっちに出して欲しいんだもん」
ポンポンともう片方の手で自分の腹部を軽く叩く。
恥ずかしがっているのか、酒のせいか、はたまたその両方か。芦花の顔は真っ赤に染まっている――。
「まー坊ばっかズルいよ。私だって気持ち良くなりたいんだもん……って、女の子になんてこと言わせるのっ、バカッ……」
「芦花姉……ごめんッ!!」
「きゃ……!?」
その言葉が最後の理性を吹き飛ばした。
大好きな人に手で弄られて、あんなこと言ってもらって、何もできなかったら男の不名誉だろ。
芦花姉の顔を腰部分から俺の顔と同じ位置まで引き上げる。
驚いていたけどそんなこと知るもんか。挑発してきたのは芦花姉の方だ。
そのまま一気に服を……あれ、くっそ、脱がせ方分からないぞ。いいや。
解けかかっていた帯を完全に解き、強引に服を剥ぎ、生まれたての状態へとする。
テーブルが離れた所にあって良かった。一応、布団の上に移動するか。
俺も服を脱ぎ一糸纏わぬ姿となり、驚きと混乱で飽和状態の芦花を両腕に抱え上げて場所を移した。
「わわわっ、えへへー。お姫様抱っこだ!」
「よっと。はい、目的地に到着です」
「えー、もっとー」
「今度存分にしてあげるから。けど、芦花姉っておっぱい大きいのに軽いよね。いい香りもする」
「やー、嬉しい! まー坊やっぱり大好き!! ちゅ」
「………………芦花姉が悪いんだからな」
小さくぼそっと呟いて芦花姉を布団の上へ降ろす。
仰向けの状態に寝かせ、その上から覆い被さり、両手の間に小さい顔を挟みながら床を叩く。所謂床ドンってやつだ。
ちょっと怯えた表情をされたけど、芦花姉が悪いんだから気にしない。
そして次に今度ははっきりとした声で伝える。
「芦花姉が悪いんだからな」
「何が……?」
「俺を弄ったり、からかったりさ。俺はろ...芦花の彼氏だ。そんなことされて我慢のできる人じゃないんだよ」
「……いいよ」
「え?」
「まー坊、ううん。将臣になら何されたっていい」
「芦花姉……」
「それに、私も『芦花』って呼ばれたいな。いつまでも、姉と弟っていう関係も嫌だもん」
「ろ……芦花…………」
「さっきのは勢いだけ?ほら、分かるでしょ?私だってドキドキしてるんだよ」
急に言われて心臓が跳ね上がる。
こんな時に突然名前呼びされるなんて…
確かに、今まで姉と弟って呼び方だった。
それが名前呼びになることで、言う方も言われる方もドキッとしてしまう。
俺は、芦花姉…いや、芦花に手を取られて、自らの大きく柔らかい胸に当てられる。
自分の体重を支える物が2本から1本になることでバランスを崩しかけたが、倒れない様に手の位置を調整した。
心臓が脈を激しく、力強く打っているのがしっかりと手で感じ取れる。
芦花だって緊張してたんだな。なんて思うと同時に、気付くと無意識に手を動かしていた。
凄い。芦花のおっぱい、いつ触っても最高だな。
柔らかくて指が沈んで行く。いつまでも揉んでいたくなる感触だ。
指に吸い付いてきて、少し動かしただけで確かな凹みを作り、確かな弾力を返してくる。
手に余る大きさで、凹んだ姿は俺の手の中でムニュムニュと自由自在に形を変えていく。
「はっ、んッ、んん……はぁ、はァ」
「マシュマロみたいだ。柔らかい」
「あっ、ああッ、ンンッ、はァッ」
「フニフニしてる。しかも手のひらに吸い付いてくるし、とても気持ちいい」
「アッ、んっ、ンンっ...んんはぁ」
「乳首も可愛くなってるよ。ピンと立っててエッチだ」
「んっ、んんっ!! だって、そんな、されたらっ。あっ、やっ、はああァァ! んんっ!!」
楕円形の頂点。鋭く硬くなった蕾を俺は指で摘まみ上げ、引っ張ったりしていじめ上げる。
指で刺激をもたらす度に、艷やかな声を滾らせている。
同時に、肩を竦めたり、身体を仰け反らせ、面白いほど芦花の身体がビクッと震える。
それがまるで芦花を征服している様で背筋がゾクゾクする。
「アッ、あっあっ、ハァ…あっ……あんっ、はぁあんっ」
「どんどん硬くなっていくね。コリコリしてるよ」
「ああっ、あっんんっあぅん。気持ち、いいの。将臣の、指でっ、コリコリされると、電気が走るのっ」
「こんな風に?」
「んなッ、そ、そう!!それぇっ…ンッ…アッ!」
「さっき虐めてくれたお礼にもっと気持ちよくしてあげないとね」
「んんっぅ!! ッひゃ!はぁっ……んッ!!! ましゃおみぃ…ッ。ね、キスしよっ」
蕩けきった表情で俺を見つめてくる。
焦点が合ってなく、頬も赤い。
開けられた口から出された艶やかな舌に思わずむしゃぶりついた――。
「ん、ちゅ…れるっ、んはぁ、ぷちゅ…」
「ちゅ…ンッ…じゅる……ちゅ、れろっ。美味しいっ」
「んっ、んんっ、ちゅ、ちゅる。そう?芦花は…なんだか大人な味だ」
「はむっ、チュ、っじゅる。そっ、んんっ、そうかな……」
俺は芦花の舌を捕まえるとその味を堪能する。
口にくわえ、包み込み、俺の中へ吸い込む。
まだ酔いが残っているのか。ぎこちなさは残るものの、芦花は俺の舌を受け入れ、自らの舌を伸ばし絡ませてきた。
自分の舌で堪能した後、今度は逆に芦花の口の中へ舌を進入させる。
ワインの残り香が口の中に一気に広がり、甘酸っぱい味や、果実の風味が俺の口に伝わって――ほんのりと甘い。
「ンゥッ、ふぅ……んじゅる…んぐ、ン、ン、んじゅるる...よだれっ、でちゃうっ」
「んむっ、じゅっる、くちゅぶっ。美味しいよ、芦花の涎」
「ちゅぱ、れろ……ほんとっ…?ハウッ、んん、嬉しっ…」
「んじゅるっ、ンッ、ちゅ、ちゅ…本当。でもっ」
「んじゅっ、ちゅっーーーーッ………んっ、れもっ?」
「はむ、んん、じゅる……芦花、俺は芦花が欲しい…んくっ」
「はちゅぷ、んはァ……わらっ…ひも、まさおみがっ、ほしい…ちゅぅゥ」
興奮に身体を任せ、芦花の舌のみでなく口の中全体へ舌を入れて動きを強める。
触れ合う舌で俺達の唾液が混ざり合う。
大きく、早く動かすたび、芦花の口に溢れるヨダレの量は増え、ついに口角からも零れ落ちていく。
その姿はまるで、愛撫に濡れているように思えた。
あぁ――……最高だ。
最愛の人との深いキスは気持ちだけじゃなく、性的な意味で気持ちいい。
ずっとキスしていたいが、俺の息子がもうガチガチに主張しまくっている。
早く溜まった物を出したいと言っている様だ。
ふと首を下に傾けると、芦花の足に透明な露が滴っているのが見えた。
液体の出所はどうやら足の付け根。
両足も小刻みに震え、太腿の内側をもぞもぞと擦り付け合う。
今まで必死に刺激に耐えていて、もう限界なんだな。
待ってて。今、その苦しみから解放してあげるから――
そんなことを思いつつ、俺はドロドロになっている蜜壺奥深くへと肉棒を一気に突き刺した。
愛液でぬるぬるになった膣内へとめり込んで行き、膣壁を押し分け、陰茎にじんわりとした快感が走る。
膣内の収縮に、俺の先端からも快楽の液が漏れる。
「ひゃああぁぁぁっ!!!」
「芦花ッ!! 声大きいっ!!!」
「らって、らってぇ! 勝手に、声れちゃうのっ!!」
大きい声に一旦腰を止める。
俺の部屋は本館から離れているとはいえ、誰も来れないわけではない。
耳を澄ましてもこちらへ誰かが来る気配も足音もなさそうだ。
ふぅ、ヒヤッとしたけど大丈夫そうだな。
「それならちょっと抑えてっ。誰か来ちゃう」
「んんっ……ッは、これで、いいかな…ッ」
「その大きさなら大丈夫だと思う。じゃあ、動くよ」
「……ん」
芦花の首がコクッと縦に頷いたのを見て、俺は前後運動を開始させる。
膣奥までぴったりと埋め込まれたペニスをゆっくりと引き抜いていく。
愛液でビショビショになった肉棒が姿を現すと、芦花の花弁も広がり、芦花の内側を晒す。
「ああァッ、んんっ…ッ。まー坊の、かたいっ……」
「芦花のここは逆に柔らかい。…って、また『まー坊』呼びになってる」
「分かんない、ッはぁ。気持ち良くて、んッ、何も、考えれないの」
「芦花っ……」
「うん、なに……なにっ………?」
芦花の顔を引き寄せ、その唇を再び奪う。
考えれないと言っていたのは本当だったのだろう。
俺の求めに応じ、俺の唇に吸い付いてくる。
「あぷっ…んふっ、あんっ……ンッ、んくぅん。……ちゅ、んくっ、ちゅぱッ…んっ、じゅるるっ」
一生懸命に舌を絡め、より強い快楽を求めている姿が愛らしい。
こんなあられもない姿を見ると、やはり女社長である前に1人の女の子なんだな。
「もっとっ…んうぅッ、んちゅ、アんっ、んん……っ」
「ひんッ、んんっ、アァッ、あむ、ちゅ。くちゅ」
「じゅるっ、ヤッ…あくぅっ、あっ…んふぅッ、ちゅるるるッ」
身体をゆすり、快楽に目を細める芦花。
それでも口は離さないので、キスをしながら芦花の奥へ欲望を抉り込む。
互いの粘液が混ざり合う音と、身体がぶつかり合う音、そして2人の淫らな声が部屋中に響く。
「誰かにっ、気付かれちゃう。見られちゃうぅ…」
「どんな芦花を見られると思う?」
「はぁっ、将臣が私に入ってて、こんなえっちな声、出してるとこっ…えっちな女の子だと思われちゃう……!」
「もう気付かれてるかもしれないよ…襖って凄い薄いから、外で聞き耳立ててるかも」
「ふえッ!? やっ、やだっ…そんなの、ダメっ。こんなッ、私、見ていいのっ…将臣ッ、だけなのっ…」
自分で発した言葉に芦花がギュッと中を締め付ける。
危機感が快楽を増幅させているのだろう。
ぎゅっと膣内で絞られ、次第に熱いものがペニスの中を上がってきた。
「ふあぁんっ、将臣ッ…アンッ、んふっ、私ッ……はぁうっ、ンクッ、気持ち良くて、おかしくなっちゃいそうっ……!」
芦花は息を切らせながら快楽に喘ぐ。
快楽の声が、聴いていてとても心地良い。
一番大好きな人と繋がっているのが、心で、身体で、感じる。
「気持ちいい?」
「きもひいっ…将臣の硬いのが、わらひに入ってて、腰を打ちつけられてて……ッ」
「止まらないッ、止まらないのっ。気持ちよくなるのが、止まらないのっ。」
「ふぅ、んんッ。 んっ……ふぅ、ッはぁ。 んっ、ンッ、んんんっ」
息の切れ方が早くなってきた。
もうそろそろ彼女も限界が近付いてきたのだろう。
それを証拠に、亀頭が最奥へ到達する度に、芦花の秘部がぎゅうっと強く締め付けてくる。
俺も込み上げる物を抑えるのが限界だ――。
「すごいっ……気持ちよすぎて、頭が真っ白になっちゃ…ッ」
「俺も…っ」
「あん、うぅっ……ま、将臣も一緒に、一緒にっ…!」
「あぁっ。芦花……ッ! イくよっ…!!」
「ああぁっ、はぁっ、来て、来て! んんんっ!!」
「ふぁっ、らめっ、ひっちゃ、イっちゃ! イっちゃう!!」
「あ、あぁ...っ! ああッッ!!! あぁーーッッ!!」
芦花の中で、今まで溜まりに溜まったものが激しく爆ぜた。
肉棒が激しく脈を打ち、精液を膣内へと流し込む。
「んああっ、ふぁっ、アッ、んうぅっ、ハァ………」
「あんっ、んっ…すごい。お腹の中が…じわって温かいのが広がってる…将臣の、ま、まだ熱いね……」
小刻みに体を震わせつつ、俺の放った白濁を受け止める芦花。
昼間の労働に、今夜の激しい動き。
体力が無くなったのか、彼女の四肢は力なく伸びきっている。
かく言う俺も、もう体力は限界を超えた。
全てを出し切ると秘唇から脱出し、芦花の隣に仰向けに倒れ込む。
――もちろん、顔だけは彼女に向け最愛の人を見つめる。
一秒一瞬だって視界から外すのが惜しい。
「はぁっ、んぁ……あッ…気持ちよかったぁ……」
「俺も」
「ふふっ、良かった。こういうの何て言うんだっけ?『姫始め』って言うの?」
「よく知ってるね」
「そ、そりゃぁ? ……ま、将臣に飽きられ無い様、日々勉強してますからっ」
店のことだけでなく、俺の事も毎日考えてくれてるのか。
1人暮らしで家のことだってあるのに、その気持ちが嬉しく思う。
ただ……体力がなく、2回戦に行けないのが非常に残念だ。
「今年も…よろしくお願いしてもらえる……?」
「もちろん。今年だけじゃなく、来年もその先もずっと宜しくお願いします」
「ふふっ、ありがとっ。嬉しい」
「ただ…明日からあの衣装だけは勘弁だけど」
「あはは……そうだよね………」
高価な気がするし、汚さない様にしたけど…大丈夫だよな?
少し離れた場所に置いている芦花の着物をチラ見する。
ま、汚れたなら汚れたで、明日はあの着物は着て行けないだろうしそれはそれで良いのだが。
そんなことを思っていたら唐突に芦花に腕を取られた。
――お?
俺はすぐ芦花の方を向き直すと、片腕で俺に指を指して、ほんのりと赤い表情をしている。
「まぁ、なんとかするよ。今年は……商売も恋も、真っ直ぐ一直線なんだからねッ!!!」
これは――最高の一年になりそうだ。
どんな一年になるのか、今から楽しみで不意に笑顔が零れる。
明日の事は明日の俺に任せよう。
取り敢えず今日は疲れた。
大好きな人を胸に招き入れ、眠りに着いた――
明日はどんな芦花が待っているのだろうか?
今からもう楽しみだ。