今回は新たな試みとして、
「真咲ちゃん(ヒロイン)の視点によるお話」
を書いてみました。
正直とても難しかったです.....
まぁ、そんな執筆者のことなど気にされず、
読んで、楽しんでいただければ幸いです。
「「おはなみ??」」
「そう、お花見」
ワタシの家――牙と爪の獣亭――でお昼ご飯を皆と食べていた頃。
テーブルには皆のお昼ご飯が並んでいて、楽しく話をしながら食べていた時、センセが急にワタシとシャーリィの知らない言葉を投げてきた。
親父殿も奥で仕込みをしているのに動きを止めてこっちの話に聞き耳を立ててるよ。
ワタシも思わず耳を傾けて、手を止める。
親父殿が折角作ったご飯を食べるのも忘れちゃった。
何だろうね、初めて聴くけどなんだか興味を惹かれる言葉だね。
「そう、お花見」
「それって何をするんですか?」
「桜と言うピンク色の花が木に咲いていて、それを見ながら皆でご飯を食べるのです」
「それって楽しいの...?」
「そうですね...言うなれば1つのピクニックでしょうか。日本では丁度この時期から『満開になる、春を象徴する花を見ながら仲の良い人たちとご飯を食べる』という風習がありますの」
「そうなんだ。それで、皆にも日本がどういったものかを知ってもらうため、お花見という文化を体験してもらおうかとね」
「え、何それ!楽しそう!!」
ほほぅ...センセの住んだ国の文化かぁ。
普段中庭でお昼ご飯食べてるやつの豪華版って感じかな?
いやー、これは楽しみで今日は一段とご飯が進むね!!
手をライゼルグ丼と口を交互に動かす。
親父殿の作る料理は全部絶品なんだけど、やっぱりライゼルグ丼に敵うものはない。
皆は不思議そうな顔するんだけどね、美味しいのになぁ。
「それじゃぁ~、今度のお休みの時??」
「晴れると良いのです」
「ところで先生、真咲さんを少々お借りしても宜しいでしょうか?」
「それは大丈夫だけど...?」
「良かったですわ。ささ真咲さん、少々こちらに...」
「わ、わふっ。どうしたのさ、ユネー」
「何々、どうしたのー?」
ユネに手を引かれてワタシの部屋に移動する。
ワタシの部屋には皆で囲める様なテーブルは無い。
あるのは、ベッドと机に、学園の教科書とかを入れるかご類。あと強いて言うならば壁掛けの物置に鉢起きの植物を置いているくらい。
なので、絨毯の上にユネと何故か着いて来た皆と円を囲む様にして座る。
「ど、どうしたのさ。ユネ」
「真咲さん、お弁当を作りましょう」
「どういうこと?」
「さっきも仰ったのですが、花見とは参加者でご飯を食べる風習となっています」
「あぁ、そういう事ね」
「シャーリィだけズルい!どういうこと!?」
「つまり、夕音は真咲に『皆が食べるご飯を作ってみよう』と提案しているのではないか。と木乃香は言ってみる」
「その通りです!」
えぇー...やる必要あるのそれ?
だって親父殿の料理でよくないの?
わざわざワタシが作る必要もないんじゃ...
つい面倒臭くて耳は垂れ、さっき大きく揺れていた尻尾が力なく垂れ下がる。
そんな心情を汲み取られたのか、ユネから更に提案された。
「木乃香さんの仰る通りです。しかし、作る必要がないと言うのも確かな事実です...しかし、真咲さん」
「うん???」
「真咲さんの手料理、先生に『美味しい』と言ってもらいたくありませんか?」
ピクッ。
耳がユネの言葉を捉え、不意にユネの方向へ傾く。
「真咲さんの手料理で、先生に喜んで頂きたくありませんか?」
ピクッピクッ。
わふっ...なんですと...?
私の、この耳は聴き逃さなかったよ!
確かに、言われてみれば料理作る人は親父殿じゃなくても良い理由わけだ...
しかしワタシの料理を皆に披露するっていうのもそれはそれで自信がないなぁ。
さっきまで垂れていた
「ユネ、練習...付き合ってくれる?」
「勿論です!是非先生に喜んでもらえる料理を作りましょう!!」
「わーい!ユネ好きっ!ありがとう!!!」
「真咲ちゃん、頑張ってなのですっ」
「アイリもありがとうっ!シャーリィも味見とか付き合ってもらうかんね」
「えー何で私がー」
「どうせこれも漫画のネタにするんでしょー、なら巻き込んでやるのみさっ!」
「真咲ちゃん、なんだか悪い顔してるのです...」
アイリ、それは気のせいだよ。
何てったってワタシは漫画のネタを提供するわけだからねっ。
これはそう...つまりはげんこーりょーってやつだよ!
こう言うのは確か『持ちつ持たれつ』って言うんだっけ...?
「さぁ、ということで、いよいよ実践練習に移りたいと思います」
「おー!!」
「と言っても...真咲さんは基礎ができていますからねぇ。如何致しましょうか...」
ふふん!
これでも伊達に料理屋の看板娘は背負ってないのさ!
単純な料理ならワタシも作れるからね!
目の前には卵や鶏肉や見たことがある食材が並んでる――けれど、その片方で初めて見る食材も並んでいる。
なんだかフワフワしている茶色状の袋...湿ってるの何で?
両端は白いのに、中央が茶色くなっているフニャフニャしている円柱...ドーナツみたいに穴が空いてる。
長さは違うけれど、長い緑色の食材。片方は鋭いツブツブが沢山着いていて、握るとチクチクする。
あ、でも知ってる食材もあるよ!
あれはタマゴとパン粉!!うちでも扱ってるもんね~♪
緑色のは...野菜かな??
あれは...きっとお肉?
細長い物がいくつも重なってブロック状になってる。
色はピンクだし親父殿がいつもお肉料理を使う時に使う食材と同じ色をしているし。
「まずは前回の反省からいきましょう。前は何がダメだったか覚えてますか?」
「そうだねぇ。ドーナツ入れたのがダメだったかなぁ...美味しいのに」
「油がベトベトになっちゃうし、他もお肉とかが中心で脂が多かったもん」
「そうですねぇ...ではこうしましょうか」
そう言ってユネから2つ提案された。
1つ目は、今回はドーナツは別にすること。
今回は学園に持ち込むわけじゃないから、別に持って行くことになった。
これでお弁当が油だらけになるのを防ぐんだって。
2つめは彩りを加えること。
前回茶色しかなかったのに、今度はお弁当に色を与えるんだって。
卵焼きとサラダ、竹輪のきゅうり入れとやらを作るみたい。
最後のは一体何...
後はなんてったってお肉だよね!
ハンバーグっていうのがお弁当の定番料理みたい。
本当は、ギュウニク?を使うらしいんだけど、ライゼルグじゃ手に入りにくいからポロポロのお肉を浸かって作るみたい。
聴いたことない料理に心が踊る。
作るのはワタシ自身なんだけれど、今から涎が溢れ出ちゃう。
......おっと危ない。こんな姿見られたらはしたないもんね。
我慢我慢...
「でもワタシ、ライゼルグの料理ならまだしも、日本料理は作ったことないよ?」
「あら、そうなのですか?では、次は料理の基礎をお教えしなきゃですかね...」
えぇー、ここで勉強するのー?
私は机に手を投げ出して突っ伏せる。
「真咲さん、そんなに落ち込まないでください。調理しながら教えますので」
「実戦形式...夕音は案外スパルタ」
「ほーら頑張んなさい、先生に美味しいって言ってもらいたいんでしょう」
そうだね...
美味しいご飯を作るためだもんね...がんばるよ!!
勢いよく席を立って手を握り締める。
折角ユネから教えてもらえるんだもん。
日本料理を知るチャンスだよね!わふっ!!
「まず、卵焼きですが、これは溶いた卵は全部入れません」
「わふっ、そうなの??」
「......仕方ありません。それはスクランブルエッグにでもしましょう」
「溶き卵に、砂糖を入れたら甘く、醤油を入れたら少し風味が出て美味しくなるのです」
試しにその後、ユネから教えて貰ったように作ってみた。
中々難しいね...特にひっくり返す所とかさ...
固まってないとぐちゃぐちゃになるし、固まりすぎたらふわふわじゃないし。
ワタシは砂糖の方が好きだったよ...じゅる。
「これは失敗しにくいはずです。一口サイズに切ったキュウリを、同じく一口サイズにした竹輪に入れます」
「これだけ??」
「はい、こちらのみです。簡単に作れる上に色が映えるのでオススメです」
「なお、キュウリや竹輪を焼いて、塩故障で味付けするのもオススメなのです」
爪楊枝を刺すことで、キュウリがチクワから出ないようにするのもポイントらしい。
フニャっとした食感と、コリコリした食感が交互に来るの美味しいね!
焼くと、香ばしさが口の中に広がる!これも美味しい!!
ミニトマトで赤色も追加したよっ!
「最後はハンバーグですね」
「お肉っ!!」
「はい、お肉料理です。この挽肉に材料を全て入れて混ぜます。その後、左右の手で打ち付け合います」
「こうだねっ!!」
右手に拳位の大きさに掴んだお肉を勢いよく左手へ移す。
スパーンっといい音がしてお肉が辺りに飛び散り、左手には小さい塊だけが残った。
......あれっ?
「真咲ぃ!!調理場使っていいとは言ったが汚していいとは言ってねぇぞぉ!!」
「親父殿ー!ごめーん!!」
「真咲さん、強く打ち付けすぎです」
「お肉の中の空気を抜く行為なので、もっと軽くで大丈夫なのです」
客席に居た親父殿から怒られちゃったよー。
掃除をしてリベンジ...!
今度はちゃんと軽く投げ合ったよ。
楕円形にして、真ん中に窪みを作るのもコツだって。
「では、いよいよ焼いていきましょう」
「真ん中に凹みを作るのも理由があるの?」
「焼いていると、中央が自然に膨れ上がっていくのです。破裂を防ぐために予め凹ませておくのです」
「焼き色が見えてきたら、ひっくり返して、蓋をします」
「んんっ...ほっ。よしっ」
「蒸し焼きにすることで、中までしっかりと火を通すのです」
愛莉がさっきからワンポイントを教えてくれる...
見た目はステーキに見えるのに、蒸し焼きにするのは意外。
日本には不思議な料理もあるんだねぇ...
おっ、お肉の焼ける良い匂いがフライパンから香ってくるよ。
「そろそろ頃合でしょうか...焼けたら串を指して、透明な肉汁が出てきたら完成です」
「愛莉愛莉っ、串を指すのはなんでー?」
「そ、それはですね、肉汁が出てきたら中がちゃんと焼けた証拠だからなのですっ」
「へー......わ、わふっ!ひっくり返さなきゃ!!」
わふぅ...焦げてるぅ...
焦げがハンバーグに着いていて大きく目立っている。
半分以上焦げてるや...これはダメかなぁ。
おや?ユネが包丁を持って焦げを削り落とし始めた。
「今回食べる分はこの様にお焦げだけ取り除けば問題はありません」
「そーよ真咲。作るの初めてだったんでしょ?次成功すればいいじゃない」
「私たちも着いてるのです」
「真咲なら問題ない。木乃香はそう思う」
「ユネ...シャーリィ...アイリ...コノカァ...うわーん!皆好きぃ!」
皆の温かい声に胸の奥がじんわりとなる。
まだ本番まで何日間かあるもんね...練習するよっ!!
遠くで親父殿の「仕方ねぇなぁ」って声も聴こえた。
その言葉忘れないからねっ!!
「ぶふっ!!ま、真咲...この卵焼き、塩入れたでしょ...」
あ、あれ......??
おかしいな...?
きっと見間違えちゃったんだねっ!
ここから、ここからだよっ!
「なんか、最近皆疲れてない?」
「そ、そんなことないですよ!」
「そう?授業中もなんだか集中しきれてないに思えるけど...」
「今日のお花見が楽しみだったのです!それでなのです!」
「じゃあ今日までは大目に見るよ。その代わり、次の授業ではしっかりと聴くんだよ?」
「ん、分かった」
「じゃあ僕は先に行ってるよ。場所取りとかもしなくちゃだからね」
「センセ、また後でね!!」
ふー、危ない。
センセが出て行った後で、大きく安堵のため息が出た。
緊張が溶けて肩から力が抜けていくのが分かるよ。
センセには事前にもうお弁当はワタシたちが作っていくことを伝えてある。
だから敷物だけ持って行ってもらった。
今日、ここからが本番だもんね!!
昨日までユネやシャーリィたちに付き合ってもらったんだ。
練習の成果を発揮する時が来たよ!
頑張っちゃうもんね!!
ガッツポーズを決めて今一度奮い立たす。
食材が用意されている調理場へとユネと向かう。
ユネも今日はなんだか一層真剣な目をしてこちらを見てる。
これはユネのためにも失敗は許されないよ。
ところで...親父殿がいないけれど、どこいったんだろうね。
ユネに教えてもらうことなく1人でなんとか無事に作り上げた。
いやー、味も合格をもらえたし、隣で誰かに見てもらうって安心感が凄いね。
とは言っても、ユネもユネで芋を潰して何か作ってたけどね。
キュウリやニンジンも使って...半球の塊のサラダで、ポテトサラダって言うのか...
うちのお店でもツマミとして出したら人気出そうだなぁ...
涎が出そうな口を何とか閉じて、お弁当の箱に盛る。
全てを盛り付け終わった後、余熱を冷まして完成だ!!
「何とかできたわね」
「うおおぉぉ...できたよ...!!」
「真咲ちゃんおめでとうなのです!」
「後は先生の元へ届けるだけ」
「さぁ、行きましょう。真咲さん」
「うんっ!!」
余熱も冷め、お弁当を持ってセンセの待つ広場へ行く。
そこには、ピンク色の花を着けている何本の木!
......サクラって言うんだっけ??
そして、多くの人がその花を見ながら歩いたり、写真を撮ったり、お酒やご飯を食べている。
ワタシも知らなかったけれど、沢山咲いてて綺麗!
確かにこんな綺麗な花が舞う場所でご飯を食べるならそれはもう格別だね!
その分、人は多くて中々進みづらいけど...たはは...
あれ?あそこに屋台出してるのって...親父殿ぉ!!?
「お、親父殿ぉ!!?何をしているのさ!?」
「お前ぇらが面白そうなもんやるって聴いてよ。俺っちもちぃとばっかし便乗させてもらおうってわけだ。それよか...お前ぇがここに居るってことは無事弁当は作れたのか?」
「え、うん。まぁ何とかだけど...」
「ほぉ。そりゃぁ良かったじゃねぇか。ほら、あそこに先生居るから早く行ってやれよ」
「ホント!?ありがとー!」
ポロポロの串焼きとエールの屋台を出してる...流石親父殿...商売魂逞しいねぇ...
しかし、その甲斐もあって繁盛してるみたい。
行列もできてたし、これ以上邪魔するのはダメだよね。
本当ならワタシも働かなきゃだけど、ワタシが今日の為にやってたこと知ってるから花見を楽しんでこいだって。やったね!
「セーンセ!」
「お、来たね。どうぞどうぞ」
「お邪魔しまーす」
然りげ無くセンセの隣をゲットー。
6人全員が敷物の上に円を囲む様にして座り、ワタシは持ってきたお弁当を中心に広げる。
センセもここに来るまでに買ったのか、食べ物の袋を前に出す...なんと、ドーナツもあるよっ!
「これ皆が作ったの?」
「いえ、殆どは真咲ちゃんが作ったのです」
「このポテトサラダくらいですかね...これは私が作りましたが」
「へー、日本料理なんて作るの苦労したんじゃない?」
「それは食べてみたら分かる。と木乃香はそう思う」
「それもそうだね。ごめん、野暮だったかな。じゃあ、いただきます」
うぅー...緊張するよぉ。
前に食べてもらった時は平気だったのになーんでー。
心臓がバクバク言ってる...!
今すぐに逃げ出したいけれどそれは...!
あまりの緊張に思わず目を瞑っちゃう。
美味しいの!?美味しいよね!?美味しいって言ってー!!?
お願いだよぉー!センセー!!
「美味しいよ、真咲!」
「本当!?」
「嘘を言ってどうするのさ。ハンバーグも卵焼きもふっくらと仕上がってるし、この竹輪のやつも懐かしいよ。ライゼルグに来て食べてなかったからなぁ...この食感が美味しいんだよね」
わふー!良かったぁ!!
その言葉を聴いてやっとホッとして、ピンと張っていた尻尾も緩くなった。
「良かったですね、真咲さん!」
「おめでとうなのです!真咲ちゃん!」
「良かった」
「良かったじゃない!あ、これ漫画のネタにしていい?」
「ありがとー皆ー!シャーリィ、最後のは駄目」
いやー、これでやっと美味しいご飯が食べれるってものだよー!
あ、でも最初はやっぱりドーナツだよね!
センセの買って来てくれた物の中に...あったー。
これが日本文化なんだねぇ。
確かに、こうやってサクラの下で、皆とご飯食べるのも中々に乙っていうものだね。
暖かくて気持ちもいいよぉー。
尻尾が左右に大きく揺れているけど、気付かないフリをして、ドーナツを頬張る。
うーん、センセが奢ってくれたドーナツはまた格別の美味しさだ!!