水都(みなと)と申します。
「前回の更新から凄い年月が経ってる」……?
キコエマセン。
冬コミで頒布したりしていたのでノーカンです。
小説5話書いたのでいいでしょう!!!
さて、今回は
冬コミ関連にて色々と手伝ってくれた方への謝礼として小説を書きました。
RIDDLE JOKERから
『三司あやせ』ちゃんの小説となります。
楽しんで頂ければ幸いです。
橘花学院……を襲った騒動から幾つかの月日が過ぎた頃。しっかりと寒くなった。日が落ちるのも早くなり、凍える風が肌を突き刺す季節となった。期末考査と終業式も、世間ではクリスマスも終えて、後は正月を迎えるのを待つだけだった。
俺が所属している秘密組織、情報局特別班、略してトッパン。任務の方はと言えば、俺は未だに琴里さん――本名は伊勢琴里。俺と付き合っている三司あやせの義理の姉だ。少し前までアストラル能力の暴走を抑えるために休眠していた女性でもある――のアストラル能力がいつ暴走しても、すぐに駆けつけられる様に監視をしている。
学業と任務の日々から開放され、彼女のあやせと悠々自適な生活を送っていた時だった。急に、俺の上司でもある親父から電話が掛かってきたのは。
家に帰省した学生も多く、寮に残っている学生は少ない。それでも任務用の携帯に掛かってきた訳だから、急いで自分の部屋に戻って電話を繋げた。
「はい、こちらレヴィ6」
「遅かったじゃないか、何かやっていたのか?」
「いえ、朝のトレーニングを終えて自室に戻ってきました。ただ人目を考えて出るのが遅くなっただけです」
「そうか、それはすまなかったな」
「いえ、それよりも用件は?」
「おぉ、そうだったな。実は……暁、お前少しだけこっち戻ってこれるか?」
「え…………?」
「……と、言うことで、すまない。急遽一旦帰省することとなってしまった」
あやせ、七海、琴里さん、茉優先輩、恭平で朝食を囲った所に切り出した。こういう切り出しにくい話題は早目に出すに限るからな。
二条院さんと壬生さんは冬休みということで実家に帰省している。七海が少し寂しそうにしているのが気の毒だ。
二条院さんは急に寮を出ることになった時として手引きを用意してくれていた。そのお陰でスムーズに出発する準備をすることができたので有難い。遠くで『何、気にすることは無い』との声が聴こえる。
「急な呼び出しだなんて……穏やかじゃないなぁ。どうしたのさ」
「成績のことでな……一応進級できる範囲だったんだが、あまりにもギリギリだったから顔を合わせたいと」
「それは災難だね。七海くんも帰るのかい?」
「い、いえっ!私は帰らなくていいらしいので、学院に残ろうかなって思います……」
俺が学院から居なくなるとしても、琴里さんの監視は引き続きしなければならない。人見知りの七海には頑張ってもらうしかない。俺に電話が来た直後、親父から七海に電話が行っているはずだ。
ふと隣を見ると、朝食のスクランブルエッグをフォークに乗せたまま固まっているあやせの姿があった。笑ったまま固まっており、右手のフォークが空中に浮かんでいる。
俺がその姿に硬直すると周りの皆もあやせの姿に目が釘付けになっていた。
「あーやちゃーーん。おーーーい」
「み、三司先輩……?」
「ねぇ、暁。三司さん固まってるけど……」
「あやせー」
「っは。すみません。少しボーっとしちゃってました」
「取材の疲れ溜まってるんじゃない?年末年始も取材に収録に多いんでしょう?」
「いえ、そんなことはありませんよ。私の活動でアストラル能力を知ってもらういい機会にもなりますし、大晦日と元日はお休みを頂きましたので」
そう言いながら、机の下、皆からは見えない位置で俺の脚を指で三回突いてくる。これは皆には秘密のサインで三回は『後で私の部屋に来て欲しい』となっており、同じ回数を相手に返すことで了承することとなっている。
後で一段落したら行くか……
ちなみに、琴里さんからあやせは『あやちゃん』と呼ばれている。あやせの方も完璧な態度を見せるよりも少し砕けた態度で接している。
「んーじゃあ、折角だし大晦日に御節料理でも作ろうよー。あやちゃんと茉優と料理するの!」
「でもアタシちゃんと作れるのコーヒーだけだよ?」
「えー!じゃああーちゃんは!?」
「私も大体は作れるけど、そこまで凝ってるのはかなぁ……」
「すみません、僕は食べる専門なので……」
「美味しそうに食べるもんな、恭平は…………七海だったら適任じゃないか?」
「えええぇぇぇぇ!!?私!!?」
急に話を振られた七海が驚愕の声を挙げる。
七海……!ここで頷いてくれたら話がスムーズに繋がるんだ!頑張れ!
祈る様な必死な思いで七海を見る。彼女も思う所はあるようで頷きたいけれど、といった様子だ。後一押ししたら承諾してくれるかもしれない。七海は切欠さえあれば後は誰でも仲良くなれる性格だ。ただ、自分からはその出会いが作りにくいだけなんだ。
「昔とか毎日の様に在原家の食事を作ってくれたじゃないか」
「それはそうだけどぉ……御節料理なんて作ったことないし、美味しく作れるか心配で……」
「そこは大丈夫だろ。厨房の叔母ちゃんたちが居るんだから、レシピくらいは教えてくれるんじゃないか?」
「でもでも、お手数お掛けするのも悪いし……」
「おーまーたーせー」
ん?今の七海の会話していたら琴里さんが離れていたらしい。どうしたんだ?
「寮母さんに訊いてきたらレシピも材料もオッケーだって!『自分たちで作った御節を食べてみたい』って訊いたら『嬉しいねぇ。最近の若い子達は面倒臭がる子が多いから』ってことで二つ返事だったよー。明日までに準備しておいてくれるってー」
マジか……この行動力の高さには俺もビックリだ。しかし心の中では琴里さんに親指を立てる。グッドジョブだ!これで準備は万端だ!!
続けて七海の背中を後押しをする。任務の部分は流石に小声でしか言えないが……
「琴里さんもこう言ってくれてることだしいいんじゃないか?……それに、一緒に料理した方が近くで監視もしやすいだろ」
「うぅーー……わ、分かったよ」
「よろしくねー!七海先生ー!」
「七海さん、気乗りしないのにごめんなさい。よろしくお願いしますね」
「い、いえいえっ!先輩たちは何も悪くありませんので!当日は美味しく作れるように、せ、精一杯頑張らせていただきます……!」
「ごめんな、七海。帰ってきたら楽しみにしてるからさ」
皆が食べ終わり、話が一件落着した所で一旦解散となった。自室に一度戻った俺も、男子フロアから女子フロアへと移動できる時間帯であることを確認する。そして移動できる時間になるまでに行っていた、帰る準備を確認し、あやせの部屋へと向かった。
コンコン。
あやせの自室の前に着き軽くノックをする。中で『今出ますー』という声がして、数秒後にその声の持ち主が扉から姿を現した。そして中に招かれる案内と共に彼女の部屋へと入る。そして彼女が部屋の内側から鍵を掛けて密室空間にすると、猫を被っていない、年相応の彼女の姿が現れた。
俺の胸へと飛び込んできて、顔を見上げる。向き合って顔を下に下げると見える彼女のその表情は、如何にも不服そうな顔だ。
早速裏あやせの登場だ。扉一枚隔てて、すぐそこは廊下だというのに良いのだろうか……やはり俺が実家に帰る件だよなぁ。年末はあやせと約束もしていたし。
「帰省しなきゃいけないだなんて、聴いてないんですーけーどー!!」
「そう睨むなって。俺だって寝耳に水なんだ。今朝言われたばかりだしな」
「……初詣、一緒に行くって約束してた」
「悪い。急に任務に就くことになってしまった」
「…………ずっと楽しみにしてた」
「すまない」
膨れっ面から急にいじけた表情になる。この状況下に置いても、そんな変化すら可愛いと思ってしまうのは惚れてしまった弱みなのだろう。あやせの方も任務という言葉を聴いて、一応飲み込んでくれた表情になった。後は自分の中で消化してくれるのを待つしかない。
しかし、とは言っても俺が悪いと思っているのは事実だ。任務優先にしているとこういう時辛いな。ただただ謝ることしかできない。
「大晦日の夕方から出かけることは出来なくなってしまった。それで年越しの初詣が一緒に行けなくなったのは本当に悪い。しかし、夜には帰って来れると思う……いや、帰ってこれるように頑張るから、それからは会えないか?」
「…………ふふっ、嘘、嘘。私も意地悪しちゃってごめんってば。でも任務ってどうしたの?姉さんの監視してるんじゃなかったの?」
「一言で言うと人材不足だ。日本の主要人物が組織に護衛を依頼してきてな」
「あの襲撃事件と薬の開発後、私も忙しくなったものね……」
アストラル能力を持ちながら、アイドルとしても活動をする彼女。暴走を抑える薬が開発・公表されてからは彼女自身にも注目が集まり、メディアが引く手数多となっている。
年末年始もラジオやテレビの特番と生放送の出演・雑誌の取材などが予定されており、朝から晩まで学院から離れることもあるらしい。
「それで?大晦日の夜には帰って来れるの?」
「あ、あぁ。だが確約はできない。任務が終わったらすぐ帰ってくるつもりではいるけれど……」
「ふーん……じゃあ数日間暁と会えないわけだ。」
そうなんだよなぁ。俺もあやせと会えないのは寂しい。襲撃事件の入院後、初めてあやせと長期間会わないことになる。これが長期出張をする人の気持ちか……
なんて考えていたら、腕の中で包まれていたあやせが眉を顰めて俺を見上げていた。両手で彼女を抱きしめていた俺の腕をギュッと掴んでいる。
……そうか、これは彼女なりのメッセージか。あやせも不安なんだな。しかもあやせにとっては任務で俺と離れるのは2回目だ。しかも前回は俺は入院もしていたのもあり、任務で俺が彼女から離れるのは動揺を隠し切れないのだろう。
抱きしめていた彼女を少し強い力で包み、より2人の距離を縮める。すると彼女から『キャッ』と驚いた声が聴こえて、再び目を合わせる。この続きを俺が言う為に。
「暁……?」
「あやせ、俺はあやせと何日も会えないなんて耐えれられない。毎日電話するだろうけど、それでもだ」
「う、うん」
「だから、離れている間の分、あやせを補充させてくれないか?」
「…………帰る準備は、しなくてもいいの?」
「もう済ませてきた。確認も終わった。後は荷物を持って出るだけだ」
「い……いいよ。私も暁を補充したい、な」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「うん、待ってる」
暁が帰省して数日が経った。毎日電話はしてるけれどやっぱり不安は尽きない。本音を言えるなら私だって着いて行きたかった。けれどそれは許されていない。
何故なら、私は暁の所属している組織も、仕事も知らない体になっているから。暁の好意で秘密に教えてもらったけれど、何も知らない人間が暁の家にお邪魔することはできない――それに、私は私でアストラル能力者を世間に広める。皆に悪いものじゃない、と知ってもらう。そんな使命もある。
「はぁ、早く帰ってこないかなぁ……」
昨夜彼と電話した、私のピンク色のスマートホン。今は朝なので鳴るはずもなく、机に突っ伏して真っ黒い画面をツンツンと弄る。すると、部屋の外からお姉ちゃんの声が聴こえた。
「あーやちゃーん、大丈夫ー?」
「えっ?お、お姉ちゃん?」
「『何で』って、今日は皆で料理しようって日だよー?」
「えっ、あ!ごめんなさい!!今から行くからちょっと待ってて!!」
やっば!!完全に忘れてた!!!お姉ちゃんと七海ちゃんと御節料理を作るって約束した日だ!!
パジャマだったのを急いで着替えて支度をする。そして皆の待つ、第三食堂へと急いで脚を向けた――。
「遅れてごめんなさい!!」
「い、いえっ。ま、まだ始まってませんので……!!」
「三司さんが遅れるだなんて珍しいね……やはり何処か悪いんじゃないのかい?」
「い、いえ。別のことを考えてしまってまして……」
「あやちゃんはねー、最近、在原くんのことを考えてて、頭が在原くんで埋まってるんだよー」
お、お姉ちゃん!?その通りだから何も言えないけれど、何てことを言ってくれるの!?それじゃ私が暁を好きみたいなじゃ……いや、好きな気持ちに変わりはないし、変わる予定もないけど……でも、だからって、私の息が整わないうちに言わなくたっていいじゃない。
「あー、そういや暁帰ってくるの今日でしたっけ」
「そうそう。それであーちゃん思い上がっちゃって……」
「お、おおおおおおお、お姉ちゃん!?何言ってるの!?」
「だってそうでしょー?在原くんが学院を出てからずっと変だよー。ボーっとしてたり、上の空だし」
「うちのお兄ちゃんがすみません……」
「い、いえっ!私が悪いので、七海ちゃんは気にしないでください」
肩下まで伸ばしている髪を横目で弄っていると、周防くんが追撃してきた。私を弄って楽しい!?ねぇ楽しいの!?偽乳野郎はどう足掻いても弄られキャラになるってか!あぁ!?…………なんてことは言えない。皆にはこの裏の性格も、実は盛ってることもバレてないはずなんだから。
そんなこんなで、七海ちゃんが先生の下、私たちの料理教室が開催された。お姉ちゃんのフットワークの軽さで入手したレシピ、そして寮母の方々が準備してくれた食材。
見た所下ごしらえもされているようね。長時間煮込んだりする作業はもう終わらせてくれたみたい。後は短時間で終わる調理法で料理やソースを作って、私たちが自分好みの味付けをして、盛り付けて完成……なのかな。
お昼ごはんは、味見を兼ねて試食会。数の子や黒豆、伊達巻玉子に鰤の照り焼きなど、結構沢山の種類を作った。味見役の周防くんは『どれも美味しい!』としか言ってなくて……あまりアテにならない。はぁ……せめて『もう少し柔らかい味付けがいいかも』とか言ってくれると参考に出来るのに。
「んー、鰤は煮込む時間を少なくしても良いかも」
「んっ、この伊達巻玉子美味しいよ。玉子が出汁をしっかりと吸ってて美味しい」
「紅白なますは……もうすこし酢を少なくしたほうが良いかもしれないね。食べられない程じゃないけれど、それでもやや酸味が勝ってるや」
式部先輩がアドバイスをくれて本当に助かる。七海ちゃんと私は午後のために、その助言をメモをする。美味しい料理を頑張って作るんだから――。
「こ、これで、いよいよなんですよね?」
「……はいっ」
日も落ち始めて、空が綺麗なオレンジ色に染まる頃。ついにその瞬間がやってきて、ドキドキする。最後の一品、煮蛤を私が用意していた重箱の中に詰める。そして箱の中に祝いを込められた様々な料理が彩られている。
「かん、せい……です!」
「おぉ……!」
「やったー!」
「お疲れ様だね」
「七海ちゃん、ありがとうございます。七海ちゃんが居なかったらこんなに美味しいおせち料理は作れなかったと思います」
「いえ、私だけじゃないです。皆さんのご協力のお陰です」
そして手を取り合い、喜び合う私たち。使った調理具やお皿等、洗い物だったりやるべきことはまだまだ残っている。けれど、今は喜びを分かち合いたくて、皆笑顔が溢れている。
今夜暁が帰ってくるので、今日は食べずに保管して、明日、改めて皆で食べることとなった。七海ちゃん曰く『一日置くことで更に味が染み込んで美味しくなる』んだって。改めて卓上を見ると、私たちで作った御節と、少しだけ余った食材が目に着いた。
「この余った食材、どうします?」
「捨てるにも勿体無いですもんね……かと言って皆味見で沢山食べましたし」
「あ、じゃあ僕貰ってもいいかな!?こんなに美味しいんだったら幾らでも食べれちゃうよ!」
「私はそれでいいよー」
「お姉さんもそれでいいかな。後は明日の楽しみに取っておこう」
「じゃあ周防先輩、お願いしてもいいですか?」
「勿論さ!」
満面の笑みで頷く周防くん。皆の中でも一番多く食べていたのにまだ入るのね……って関心してる場合じゃない!
周防くんが箸を取る直前。私は周防くんに待ったの声を掛けた。
「す、周防くんっ!」
「どうしたの、三司さん」
「私も少し貰ってもいいですか?少しずつで良いので、余った料理を部屋で食べたいので……」
「いいよ、いいよ!問題ないさ!」
快諾してくれて、料理を一皿に取り寄せてくれる。部屋で食べるのは本当だけど――嘘は着いてないしいいかな?周防くんに嘘を着いている様でなんだか心苦しいけれど、彼の表情を見ると全て察していそうな気もする。
――流石、彼の親友なだけはあるのかな。
「これでいいかな?」
「え、えぇ。ありがとうございます」
「それじゃあ改めて頂きます。――――んんっ、美味しい!」
周防くんが食べ終わり、後片付けをすると本当に解散となった。私はおせち料理が配膳されたお皿(勿論、乾燥しないようにラップもされている)を持ったまま、私の部屋へと帰った。
しまった。予想以上に遅れてしまった。
任務が終わって帰ってきた橘花学院。まだ短針は時計9の数字を指してはいないが、辺りは真っ暗だ。戻ってくる前にあやせに連絡はしたものの、まだ待っていてくれているだろうか?
やや緊張しながら、自室に荷物を置き、壁伝いであやせの部屋へと向かう。明かりが着いているのを確認して、ホっと胸を撫で下ろした。そして、窓を数回ノックすると、数日振りに最愛の彼女が笑いながら姿を現した。
「ふふっ、なんでそこからやって来てるの」
「え?もう女子フロアへの移動は禁止されてる時間じゃないのか?」
「今日は大晦日だし、誰もそんなこと気にしてる人はいないわよ。それに、年末年始は規制が緩くなってるみたいで、まだ大丈夫だし、両隣も居ないし……てっきりドアから来ると思った」
「残念ながら、その情報は知らなくてな。それはそうと、入れてくれないか?」
「え、あ、あぁ。ごめん。さぁ、入って」
「――お邪魔します」
暖かい彼女と部屋に出迎えられて室内に入る。今まで外に居たので冷え切っている身体にはありがたい。俺を室内に入れると、あやせは窓とカーテンを閉めて室内の様子が分からないようにした。
「おかえりなさい」
「ただいま」
寄り添ってくる彼女を正面から迎え、両肩を掴む。数日振りに見た彼女は一層可愛く見えて、自然とお互いは唇を重ねた。
「ふふっ、冷たい」
「今の今まで外にいたからな」
「ちょっと座って待ってて。今お茶を入れて来るから」
「分かった」
元々は俺の部屋にあった緑茶。あやせも気に入ってくれていたので学院が離れる前に渡しておいたのが功を奏した。茶葉も嬉しいだろう。
そんなことを思いながら待っていると、さわやかな香りが香ってきた。
「お待たせ……っと」
「これは?」
「お茶請けにどうかなって……要らない?そう、要らないのね。こんなパッドだらけで盛ってる私と同じ様に、私たちが作った御節料理なんて要らないってかゴル゛ァ!!」
「誰もそんなこと言ってねぇよ!!!」
全く、油断をするとすぐ自虐しようとする。胸が小さいから付き合ってる・付き合ってないとかそう言うので付き合ったわけじゃないと何回言えば分かるんだ。
ミニテーブルの上に並んだ、2つの湯呑みと、お箸が2膳に、料理が並んだお皿。乗っているのは……黒豆・伊達巻玉子・栗金団・鰤の照り焼き・煮蛤・昆布巻き・筑前煮か?美味しい。
隣を見ると、料理に手を伸ばすどころか、恥ずかしそうにしている彼女が居た。
「どうした?全部美味いぞ?あやせは食べないのか?」
「あ、ありがとう。私はお昼や夕方に沢山食べたから……」
「そう、か?」
じゃあ何故お箸を自分の分まで用意したんだろうか。まぁ、どれも美味しいし、昼間は俺が食べられなかったから役得だからいいけど。一通り摘み終え、暖かいお茶を一口飲むと漸くあやせが重い口を開いた。
「ねぇ、今一通り食べたと思うんだけど、一番美味しかったのは?」
「ん?うーん……栗金団かなぁ。懐かしい味がして美味かった」
「そ、そう。流石七海ちゃんよね。在原家の食事を作っていたんだし、彼女が胃袋を掴んでいるわよね」
俺は自分自身の言葉で失態に気付いた。あやせを見ると言葉とは裏腹に少し落ち込んでいる彼女の様子が伺える。
――しまった!これ、全部違う人が作ったのか!!確か作るのは、あやせと、七海と、伊勢先輩だったよな!後は6種類……どの料理をあやせは作ったんだ?
「筑前煮も美味かったぞ!野菜の美味さが逃げることなく凝縮されてて!!」
「…………それ、お姉ちゃんが作ったやつ」
――しまった!咄嗟に出た物でフォローを入れるも、続けて失敗してしまった。一度目ならまだしも、二度目だ。更に落ち込んでいるのが目に取れて分かる。
これは――取り返しがつかないことをしてしまった。俺は顔は引きつってしまい、背中は滝のように冷や汗が出ている。しかし、俺はどうすることもできず、俯いているあやせの言葉を待つことしかできない。
「いいわよ、いいわよ!どうせ私は彼氏の好きな味も知らないダメな彼女ですよ!!そうよ!何!?悪いわけ!?付き合ってる人の妹さんから料理を教わって、作ったら駄目なわけ!?」
「お、落ち着け!すまなかった!悪いって!!」
「慰めなくたって良いわよ!ふーんだ!夜はこれからだもん!私の味を覚えてもらうんだからぁ!!」
そう言うや否や、すぐに目の前においてあった箸を手に取り、蛤煮を取って俺の前に差し出してきた。なるほど、あやせが作ったのは蛤煮だったのか……自分のために作ってくれた物じゃないにしろ、事故にしろ、アーンをしてくれるのは純粋に嬉しい。
彼女を見ると涙目になって、口を曲げて料理を持ち、前のめりの姿になっている。勢いが良すぎてもう少しで俺を多い被さりそうな姿勢だ。
「ほーら、食べなさい!食べてってばぁ!!こんな味でも頑張って、一生懸命に作ったんだから!!」
そうだな、夜はまだまだ長いんだ。『食べて』といわれている以上、あやせの料理も、あやせも美味しく頂かなければならないだろう。
あやせにとっては言葉の綾かもしれないが、何を食べてとは言われなかったし、大丈夫だろ。俺も久し振りにあやせを味わいたいんだ。大晦日に、彼女の作った料理と彼女。任務の後だと、最高の贅沢だ。しっかりと堪能することにしよう。
気が付くと日付が変わっていたが、俺も隣で寝ているあやせのすこやかな表情を見て、眠りに着いた。
――今年は色んなことがあった一年だった。来年もあやせと一緒に、良い年になるように頑張ろう。
他にも、
いづれ暁とあやせが結婚したら、七海(暁の妹)はあやせの義妹になるので、
にあやせに対し「お姉ちゃん呼び」とかもさせたかったりしましたね……
いづれ機会があったらそんな話も書いてみたいなと思ったり思わなかったり……
一先ず次は、春コミですね
2020年のGWに向け、これからプロットとかも練って行きたいと思います。
それではまた、どこかでお会いできましたら幸いです。