4年前て……。
アウギュステの潮風は今日も熱を孕んで吹いていた。
しかしそれは、夏の陽射しがもたらす熱気ではない。人の熱気だ。
「──良いのが来たっ……!」
海と遊ぶ人々の情熱がもたらすものだ。
今まさに小さな喝采を漏らした少女の──カイラナのような。
大波の起こりとして盛り上がる海面へ、カイラナが海面を滑るように泳ぎ向かう。
長年の経験はどんな機であれ速やかに掴み取る。うねりが立ち上がり、巨大な壁のさながらにその姿を顕した。
カイラナがその際へ到達して濤の路を駆け始めたと同時、壁は姿を崩して膨大な質量の暴力を其処彼処に振るいだす。
完璧な入りかどうかは、浜辺の誰かが挙げた歓声が答えていた。
少女は煌く潮の飛沫に追われながらもなお瞳を楽天の色に染め、精妙な体捌きで波を駆ける。
波がその後を追い、最後の最後に少女へと追いついて──。
「──カイラナッ!!」
数秒後に打ち据えられるであろう水音を聴いた青年──ジョエルは、その時既にカイラナへ向かい駆け出していた。
彼は平時のカイラナのサポーターでもあった。
大会であればともかく、それ以外のもしもの時に備え、迅速に少女を救助するのが仕事である。尤も、これは正式に契約を交わした訳ではなく、お互いの口約束によるものであるのだが……それでも彼は焦った表情で職務を遂行する。
ジョエルが水面を蹴り始めた辺りで、波の壁がいよいよ崩れ去る。真白の飛沫に揉まれて、その中を抜ける影が見えた。
彼は背後からの喝采を聴いた。間一髪の所で無事に大波を抜けた少女はというと。
「おーい、ジョエルー?」
と、助けに来た青年の焦りに気付かない様子ですっきりとした表情で彼の元へ来る。
「キミなあ……! あんな大波に揉まれてこっちは気が気じゃなかったんだぞ!?」
「そりゃあ私もちょっとは焦ったけどさ、でもそれじゃあグランドフォールを乗り熟すなんて夢のまた夢でしょ? ふふっ」
小気味よい笑いを乗せて、カイラナはゆるやかに己が身を委ねるボードの半分を青年へと貸した。距離が縮む。互いの熱がより身近に感じられる。
「……だからといって充分に事故に備えられない時に無茶しないでくれ!」
「うん、ありがとっ!」
礼を返された青年は、ばつが悪そうにそっぽを向いて答えた。
「……礼より、俺の言ったことを守ってくれると助かる」
「できるだけね。それより……さ」
気の抜けた返事をする少女の頬が赤らんでいる事に、青年は気付いていた。これから言われるであろう言葉も。
少女の身体は普段よりもずっと熱を持っている。海中にあってなお感じられるほどに。
「……いつものか?」
「うん、今日の波はさ……? 凄くよかったから……じゃ、いつもの宿でね」
「……ああ」
青年が借りていたボードの一部分を返し、浜辺へ戻っていく幼馴染みの姿を眺めながら独りごちる。
「俺は……、何で……!」
──エルーンは、個々人による差はあれど皆発情期を持つ。概ねは親筋からその時期や激しさの傾向が把握されているが、彼女の発情期はかなり特殊であった。
それは時期を問わず緊迫感を引き金とするもの。生命の危機、例えば大波に揉まれる寸前と言った状況を回避した際に顕れる。
ある意味では生命として正しくはあるが、彼女がサーフィンへ人生を懸けている事もあって発情の頻度はかなり多い。
当然彼女の両親としては行きずりの男に身を任せる可能性があるというのは看過できなかったのだ。
だからでこそ、ジョエルが選ばれた。体の良い重石として、気心が知れ、気質も似ており、何より子を孕ませる心配のない彼がその処理係とされた。彼自身の想いを無視して。
任された初めの頃は、気にしないようにしていた。だが年月を経るうちに、よくないものが澱の様に心へ沈んでいく。それはいつしか、ジョエル自身への憤りと変成していた。
カイラナを鎮めてやる度に、何故種族が違うのか、という憤りが身を灼いていく。
彼女の事を想うからこその、歪みである。
「何で俺は、アイツと同じじゃないんだ……」
それは、苦悩が凝った言葉だった。
細波だけは、その言葉を聴いていた。
水面だけが、その表情を観ていた。
○○
海を持つ島アウギュステ──その酒蔵が多く立ち並ぶ一画、酒屋街を抜けていくと、今度は酒場がちらほらと見られる宿通りへと辿り着く。
二人はその宿通りの一軒で部屋をとっていた。赤い夕陽も陰る場所、裏路地にひっそりと入り口のある、こじんまりとしながらも頑強な作りの宿。
立地からしてただの宿ではなかった。そこは、情け宿の一つであった。
「済まない、待たせた」
ジョエルが部屋へ着き扉を開ければ、先に入っていたカイラナが火照った顔で、瞳を期待に染めてベッドへ座っている。
バスローブを着ている事からシャワーは先ほど浴びたらしい、薄暗い程度に部屋を照らす灯りが生み出した影が、肌と衣の間に艶かしさの匂う空間を生み出していた。
「ううん、ちょうど良かった」
悪戯っぽい微笑みでカイラナは答えた。湿り気を残す髪からの、仄かに清涼な香りが彼の鼻をくすぐった。
「俺もシャワーを浴びてくるよ」
浴室へ向かおうとしたジョエルの腕を、カイラナが掴んで止めた。
「ん、要らない」
「今日は陽射しも強かったから、汗臭いと思うぞ……?」
「今日はそういう気分なの。ね……?」
「いや流石に…………一緒に入る、ならどうだ」
これまでの経験則から青年は、こういう時の少女のあしらい方を学んでいた。離れたがらず、身を寄せたがる。
「ん、んー……仕方ないなぁ……」
少し不満げに少女が応じる。腕を掴んだまま彼女はひょこひょこと着いてきて、脱衣場に着くなり青年の服を脱がしにかかった。
「一人で脱げるってば……」
「ジョエルの臭い嗅ぐの好きなんだぁ……」
脱がせたシャツに顔を埋め、耳を忙しなく動かしてすんすんとやるカイラナの姿は、普段なら決して見られないものだ。発情による甘えは普段の理性を容易くとろかしていく。
彼女は脱がせて、とばかりに身を乗り出してすぴすぴと鼻唄までやりだす始末で、青年は自分さえ気付かずに薄い笑みを浮かべて彼女の衣を剥く。すると、薄衣の中で醸成された彼女の匂いが、広いとは言えない脱衣場にむっと拡がった。
──その下には、何も身につけられてはいなかった。
薄らと日に焼けた肌のコントラストは、普段如何に彼女が肌を曝さないかを見る者に否応なく理解させる。
形の良い乳房は荒くなりつつある呼吸に揺れ、その先端は桜色に色付いて、程なく訪れる期待に硬さを増し始めていた。
日々鍛えられたしなやかな肉体は、薄らと脂肪を載せてその成果をなお知らしめて、肉付きのよい臀部が汗ばんでいる様がはっきりと見てとれる。
その奥の秘所は、匂いが全てを物語っていた。
「抱っこしてくれない?」
「……こっちに任せきりだと危ないから、ちゃんと掴まってくれ」
「やった♪」
ジョエルはこうなったカイラナの甘えにも、すっかり慣れていた。せがまれるままに抱き抱えてやり、足元に注意しながら浴室へ入る。中はタイル製、そこそこ広く、壁に体をぶつける心配は無さそうだった。
少女がゆるりと掴まっていた手を離す。
かさ
「ん……もういいのか?」
「うん」
彼女は青年の言葉に頷きながら、シャワーノズルから湯を出して温度を確かめていた。
「さ、洗ったげるよー♪」
と口にして、青年へ座って座ってと急かした。
彼も求められるままに椅子へ座り、掛けられる程よい熱さの湯に心地よさを感じて目を瞑る。頭部へ彼女の指の感触。
「痒いところとかあったら言ってねー」
「ああ」
他人に身体を洗われるというのはどうにもこそばゆく、心地よい。それに何度も経験しているとはいえ、好いた女性の指の腹の感触というのはそれに細やかな幸福を加えてくる。
洗い終わった青年の頭をシャワーで流しながら、少女はそっと口にする。
「何時も見てくれて、ありがと」
「気にするな、それが俺の仕事なんだ」
「それでも言うよ、私は」
「俺も好きでやってる事だ。嫌ならとっくに逃げてる……だから、キミは気にするな」
青年は、彼女を責めるような言葉ばかりが口から吐き出される事に苦さを感じていた。
「──それでも、気にする」
背に柔らかな感触があった。ぬるりとした、熱く柔らかな感触、彼女の血肉の感触を青年は受け取っていた。
「……偶にさ、思うんだ」
何を、とは答えられなかった。泡を湛えた彼女の掌が、青年の身体を滑っていく。
「私が、こうじゃなかったら良かったのにって思う」
「…………」
首、背、腕、……石鹸を塗り込んでいく少女の身体が、艶めいて青年の身体を滑っていく。
「私が、ジョエルを縛ってるんだよ?」
「……」
滑る肉体がやがて前面へ移動して、残る部分へ掌が向かう。胸から下へ、陰部へと。そして、そこで停まる。
「なのに、何でそんなに尽くしてくれるの……?」
「……違う」
少女の声は震えていた。青年には遠い過去に聴いた泣き声に似て聴こえた。
彼女は縋るようにして青年に身を預け、鼻を啜る音が聴こえてくる……。
彼はじっと静かに、言葉を紡いだ。
「違わないよ……!」
「それは俺の意思だ。俺がやりたいからそうしたんだ……! 俺だって! 何度も同じ事を思ってた!」
僅かばかりの逡巡を足蹴に、次第に青年の言葉は激昂と共に吐き出されていた。
「嘘だよ……!」
「嘘なもんか! ずっとずっと前から何度も思ってたんだ……! どうして俺はお前と同じじゃないんだ! どうしてエルーンじゃなかった!? そうだったならこんなに悩まなくて済むのに!」
「本当……?」
「当たり前だ馬鹿! ああクソッ……。俺は。お前が。好きなんだ! だからここまで一緒に居るんだよ……何でこんな時に伝える羽目になるんだ……!?」
怒りの感情が載った声が、浴室へ反響する。
「──良かったぁ……」
ひとしきり吐き出された青年の言葉に、少女はすっかり安心した表情で縋る身をより寄せる。
「……待て、何でそんなにくっつく?」
「私も、ジョエルが好きだから……両想いなら、今まで怖くてできなかった事も、できるんだよ?」
少女の喜色を滲ませた言葉と共に、その掌がジョエルの陰部へと辿り着いていた。彼には、鼓動が大きく打たれているのが判った。
それが自分のものか、彼女のものであるのかは判別がつかなかったが。
「だからさ……恋人同士でやる事、しよっか♡」
その言葉に青年は、頷くほかなかった。
想い女の声が、あんまりに嬉しそうだったので。
○○
「ん……むぅ……」
湯がジョエルの肌の上を流れていく。しかしその様子を見る事は叶わない。ただ、カイラナの唇の、肌の、乳房の、柔らかな感触が感覚を支配している。
首に片腕を回されて、彼女の舌が青年の歯を舐る、舌へ縋る、頰肉を味わう。開いた片腕が股間を弄る。
今までにない興奮が、彼の雄へ血を巡らせる。ゆるやかに少女の指が、浮かんだ血管をなぞり、雁首を捏ね、鈴口を啄んだ。抗えない快さが、青年の下腹部を、背骨から尾骶骨を突き貫けていく。
「ぷ、ぁ……♡苦手だよね、先っぽ弄られるの♡」
「普段刺激されない場所だからな……くっ」
唇を離した少女に揶揄われながら、青年が苦鳴を洩らす。その様子を見た少女は、にんまりと笑って頭をびくびくと震える雄肉へ降ろしていく。首にかけられた腕も共に降りて、腰へ回される。
熱い吐息を産む唇が、張り詰めた肉を優しく食んだ。
「んぅ……ひふもひょり、ひょうふんひへる(いつもより、興奮してる)……?」
「違、う……。嬉しい、ん、だ……」
「ふん(うん)?」
弱い部分を好き勝手に捏ねくり回す舌の感触に耐えながら、青年は息も絶え絶えに応えた。
「想いが、通じてたのが、嬉しい、ん、だ……!」
青年の目からは、静かに涙が溢れていた。湯に濡れた身体であっても、それははっきりと判った。カイラナはその様子に、眼を瞑って叢へと鼻先を押し込んだ。
「ん゛ぅっ♡♡♡」
喉奥の締まりが亀頭から雁首を心地よく締め付ける。熱く火照った舌が張り詰めた幹の其処彼処を舐っていく。歯が肉槍の根元を甘く圧迫し、射精を促す。
反応は劇的で、少女は僅かな時を置いて喉奥の圧迫感に身を震わせる。
よく熟れた果実に歯を立てたような弛緩の心地を経て、彼女の喉を精が打ちつけた。
「ふん゛、み゛ゅ……ぷ♡」
粘膜を侵略する精は、重さが判るほどに濃厚で、嚥下しようとする喉の動きにも抗って中々腑に降りていかない。だが、その凝った塊の熱さえ愛おしく感じるのは彼のものだからか? それとも発情によるものか? 少女にはどうにも判別がつかない。ただ、ささやかな幸福感が余韻として残る。
「ん゛っ、ぐ……♡♡♡」
喉が蠕動し、艶に染まった呻きが浴室へ響いた。頭を戻そうとする刺激に合わせ、まだ尿道に残る精が搾り出されて口腔へ白い轍を作り出す。彼女が口を離し、青年へ向けて口腔を見せつける。
「あー♡ん、く、こほっ……♡」
「その……無理はしないでくれ……射精してしまったのに言うのも変だが」
「私がやりたくてやってるんだから良いんだよっ♡掃除するね♪」
「待て、まだ敏感な、ぐぅっ……!」
少女はそう言うなり、再び少し柔らかくなった雄肉を口へ含んだ。青年の喘ぎに少し気を良くしながら。
唇でやわやわと亀頭を食み、鈴口を舌先でくりゅりと刮ぎ、尿道の奥にまだ残っている精をちゅるちゅると音を立てて啜る。
「ん……今日はまた濃いの出したねえ♡♡♡いつもより興奮してる?」
こくん、とわざとらしく喉を鳴らして、彼女は残り汁を呑み干す。
ぞろり、舌腹をべったりと押しつけて幹を舐り、かさり、鼻を埋める叢の匂いにほう、と悦びの吐息を漏らし、そのままゆるやかに陰嚢に舌先を伸ばした。
「おい、そこは……」
「今日は聞いたげないよ♪ 私ずぅっと我慢してたんだから……熱ぅ♡♡♡」
少女が舌をぺたりと這わせれば、感じる熱気から想像するよりもずっと熱い体温が舌先に感じられた。一段と濃い雄の匂いが、鼻腔を通じて思考を冒してくる感覚さえも心地よく感じられる。びく、びくと興奮にか、それとも別の何かにか、カイラナという女の顔を弱く打つ、雄肉の脈動が愛おしくてたまらない。海綿体の裡を巡る血の流れが舌を通して感じられる。己の理性の一欠片が今この瞬間にぼろぼろと崩れていくのが判る。
洗った後に僅かに残る、蒸れた汗と思しい味わいに、胎の奥がずくりと甘やかに疼くことの快さは情念を昂らせてなお余る……。
這わせ、這わせ……、舐り、舐り……。
雄肉がたっぷりと女に食まれて幾ばくか。塗された女の唾液と鈴口から洩れる先走りにつんと獣臭を放つ頃には、幹はすっかり禍々しく張りつめて、亀頭もみっちりと膨らんで、きゅっと窄まる陰嚢も、どれもがとろとろと洩らす滴にぬらりと光る。
無論、女の身体とて無事では済まない。ぴんと勃った乳房の先に、赤らんだ頬の色、唇の端には存分に愉しんだ叢の名残がちょんとはみ出て、とろんと蕩けた海色の瞳。女陰はしとどに熟れ濡れて、濃密な媚香を振り撒きながら我慢の限界であるのが見てとれるほどに蠢いている。
「ね……♡」
カイラナが微笑む、淫媚な顔で。おんなの貌で。
己の陰へ指先を差し込みながら、告げられる。
「連れてって、くれる?」
青年が、妖しく光る唇を奪う事を返事とすると。
嬉しそうに舌先が繋がった。
○○
「──はぁっ……♡ん、む……♡っ……♡♡」
くちづけの音がする。舌の絡む音は、部屋の壁に浸み込むような重さを持っていた。
夕日の灯りが、閉じた窓の隙間から僅かに差し込みつつあった。
「んっ……♡そこ、まだ……だめっ……♡♡」
ベッドの上で、一組の男女が粘ついた音を立てて絡み合っていた。浴室から戻って五分と経っていない。しかし双方汗水漬くの様相で、ベッドシーツは二人の体液にべったりと濡れる有様。
カイラナの膣肉は、ジョエルのゆったりとした抽送に悦び震えながら奉仕する。
肉体の主人が息を吸う毎に。
舌を吸う毎に。
耳を軟く噛まれる毎に。
快感に打たれる毎に。
陰と汗が浮かぶ腹筋のうねりが、そのままに膣肉の奉仕の質へと転化されていく。日々の活動に鍛え上げられた互いの肉体が、雄を悦ばせる為に、雌を悦ばせる為に、それぞれを嬲って快さを与えていく。
肉襞がぎゅうっと雄肉を締め付けて、みっちりと張った幹の隆起を這い回ってジョエルを呻かせた。亀頭が抽送に、ぞりぞりと膣肉を刮いでカイラナを啼かせた。
いつしか抽送は停まり、二人揃って無意識に、触れ合う場所が増えていった。
互いの指が絡み合う。
互いの肩で首を支え合う。
互いの肩にくちづける。
互いの歯を立て、紅く滲んだ痕を残す。
甘酸っぱい、熟した果実にも似る匂いが、二人を包んでいた。これもまた、発情によるもの──カイラナの、フェロモンの匂いだ。本来ならヒューマンに効くものではないが、ジョエルには……カイラナの相棒にとっては違う。
嗅ぎ慣れた少女の匂い、聴き慣れた少女の呼吸、触れ慣れた少女の体温。刷り込みにも似た、幼馴染との交わりの経験が、全身に至るまで血を巡らせた。
「あ……♡元気、出てきたねー……? ぁんっ♡」
カイラナの揶揄うような、喜色に満ちた言葉には答えず、ジョエルはゆっくりと彼女の耳を食んだ。少女の嬌声が上がる。
痛みを覚えるほどに張り詰めた肉槍が、びくびくと脈打って少女の胎の奥をゆるくノックする。
「いっ♡ぁぅっ♡これ♡これもっとっ♡♡」
愛しい雄に貪られる音を血肉と骨を伝って感じ、女がつがいに一層強く抱き付きながら強請る。形のよい乳房が押しつけられて歪み、つがいの背に爪立て、脚を絡めて子種を逃さないようにと縛り付ける。
「ふっ♡ふぅーっ♡♡ほら……♡まだいっぱいあるよ……♡♡」
空いたつがいの手に指を絡めて導いて、胸元へ。そのまま揉み潰させながら女の甘い声が部屋へ響く。手をつけて良い場所を、じっくりとつがいへ教え込んで、食べさせる。これまで何度も何度も繰り返した、儀式にも似た睦み合い。
鎖骨に溜まった滴を啜り、啜られて、指先を舐って、舐られて、尾骶骨を擽られて、脇を舐られ、乳首を舐り、尻肉を揉み解され、陰嚢を玩ぶ。
お互いに絶頂する手前で鬩ぎ、遊び、じくじくと焦がされた肉欲を醸成して快楽を高め合う。
捏ねられ、舐られ、差し込む明かりに艶づく乳房は、青年の掌に収まる丁度良い大きさだ。彼はまだ幼い頃の女の言葉を思い出し、油断したのか考えが漏れた。
「結局、そう大きくはならなかったな……」
「何ぃ〜?」
不満そうな少女の声。だがからかい交じりの声色。
青年は慌てて謝る。
「いや、すまない声に出てたか。昔の事を思い出して、つい……」
「私がおっぱい大きくするの諦めたの、ジョエルが原因なんだけど」
「……!?」
カイラナは気付いてなかったの? と微笑い、ジョエルの鼻先を指差して続けた。
「だって街中でおっぱい大きい人見かけるとさ、大抵の男って一瞬くらいはそっちに視線向くんだよ? でもジョエルはそれが全然無くて、そういうのに興味ないのかな〜とか真面目だからわざと外すようにしてるのかな〜とか思ってたらさ……ちゃんと向く時があるんだよ。どういう時かわかる?」
「いや……」
青年は素直に答える。失礼と考え意図して視線を外していたのは正解だが、不躾に視線を投げた覚えがなかった。無意識でも無い限りは。
「私と同じくらいのおっぱいの人だとちょっと見ちゃうんだよね……気付いてなかったでしょ♡」
「それは……全く……申し訳ない……!」
「私の事好き過ぎるでしょ。とっくに惚れてる私が言うのもなんだけどさ……という訳でほら、ジョエルの理想のおっぱいはもうジョエルの好きにして良いんだよ〜♡♡」
ぐいぐいと押し付けるようにして、カイラナがジョエルの手首を掴み弄んだ。
学ばされている、と彼は考える。彼女の乳房に点在する性感の座標を、その肌と熱の感触で刻まれているようだ。一層吐息が艶めいて聴こえて、双丘の柔肌は熱を募らせているのが判る。大きく跳ねるような鼓動がずっと続いているのを感じ、それは何故だか、自身の鼓動と同じ拍子で脈打っている気がして。
青年は無意識に口角を歪める。
「……私の鼓動感じて笑ってるのジョエルらしい。いつもそうでしょ?」
「それは……無茶して心配させるキミが悪い」
「
「あっ! よせその動きはダメだ……!」
意地悪な表情をしながらカイラナは腰をくねらせる。雄槍を包む肉襞はざわめくように蠢いて、つがいに快楽を送り込む。熱った感覚がより鋭敏にカイラナを感じさせ、それは彼女もまた同様の。
じっくりと青年が腰を押し付けると、少女の膣肉は雄を奥まで迎え入れ、その最奥を見せつけるように覗かせ、鈴口に柔こい感触で口付けた。
「ふ……ぁ……♡ ね……ジョエル……」
「ぐ……どうした?」
「いつもみたいに、キスしてくれる?」
「……ああ」
青年はカイラナの絶頂が近い事を悟った。これまでも絶頂の際に口付けをせがんだのは、彼女なりのいじらしい内心の表れだったのかもしれない。
言われるままに口付け、舌を絡ませながら、カイラナという個を味わい、理解する。
今までよりずっと深く。
これからも覚えていられるように。
そうして本能に突き動かされるようにして、雄と雌の双方が種を吐き出し、求めて抽送が行われた。
始めは共同作業とするにはぎこちなく、歪なリズムであったが、数を重ねるうちに徐々に徐々に合わさり……やがてぴったりとリズムが同調し、それは放精の合図となった。
「んっ……く♡♡♡」
「ぐぅっ……!」
どくどくと子を成せるのかもわからぬ胤が女の胎を満たし、受け容れられる。
時間が細分化され、肉体を駆け巡る血の流れさえ感じる。
つがいの肉の動きがゆっくりと判る。
これからどうしたいのかが見えた。
雄と雌はどちらともなく唇を放し、共に息を吸い込んで今夜1番深い接吻を交わし、お互いを抱き締めた。
「──はぁっ♡ はーっ♡♡ ね、もう一回シャワー浴びよ?」
「……カイラナ、またやる気だろ……」
吐精の倦怠感からか、少々気怠げに青年はつがいへ答えた。
「えへっ……バレちゃった……?」
「いいよ……カイラナが満足するまで付き合ってやる」
「そうこなくっちゃ♪」
お互い示し合わせたように起き上がり、体液も拭わずに連れ立って浴室へと向かう。入ったのがそういう宿で良かったな、と他人事でジョエルは考えた。
「ねえジョエル?」
「ん?」
「愛してる♡」
「……俺もだよ」
「♪」
機嫌の良さそうなカイラナの鼻唄と共に、2人は浴室へ入っていく。
やがてしばらくすると、浴室から愛情たっぷりの嬌声が漏れた。
○
明朝、雄と雌の体液でめちゃくちゃになったベッドでジョエルは目を覚ました。
カイラナは既に目を覚まし、つがいの胸板をそれとなしに弄って楽しそうにしている。
「ん……ジョエル……起きた?」
「……む、どうした?」
「以前私も色々調べてたんだけどさ。……その……他種族でも赤ちゃん作れるようになる宿があるんだって♡♡♡」
「お前……まさか……勿論責任は、取るが……」
「ま、確率は同種族に比べるとずっと低いみたいだけども……絶対、逃さないからね〜♪」
「いや、それは良いんだが……大会に支障が出たらどうするんだ……?」
「産むよ? 産んで、それから活動を再開するの」
「……そうなったら頼むから、無茶はやめてくれよ」
「大丈夫だって! ジョエルが居るんだし!」
「任されなくとも全霊で、キミを救うよ」
「うん、信じてるよっ!」
二人が笑う。恋人達が笑う。
窓から漏れる日出の陽光が、静かにその様子を眺めていた。
一度隔たれ再び交わった道は、幸福の色に彩られていた。
ウチの空じゃ異種交配は可能なんだよ……!(最新イベストの描写を投げ捨てながら)