ルーマシー群島にほど近い、小さな集落が点在する小島。
日の沈みかけた頃、そこに一隻の艇が停泊した。
渡された桟から何人もの船員たちがぞろぞろと出てきている。食事か、あるいは宿を借りる者も居るだろう。停泊した場所で可能なら多少の金銭を落としていくというのは騎空士に連綿と伝えられた暗黙の了解である。
とはいえ、みだりに人前に出ることを嫌う者、逆にあまりに人が多いと怖がる者たちも居るので、そういった団員には誰か手すきの者が食事を用意してやったり、一緒に過ごしたりというのがこの艇では慣例となりつつある。
彼女もそのうちの一人であった。
尤も、あちらから来るのだけれど。
「おぉ……」
青年は、自室のベッドに座って近頃同道する事となった自然の守護者──マキュラ・マリウスに頬を触られていた。
なぜだか、彼女はこうする事を好むようだった。今だって、青年の頬をむにむにとしながら少しひんやりとした吐息を吹きかける……のは、いいのだが。
彼女、とするようにマキュラは女性の形をとっている。上も下も出るところの出た、なのに真ん中はきゅっと美しい窄まりを見せている絶世の美女である。
いくら青年が優しく、とあってもそんな女に、しかもどこか幼子を思わせるくらいに無防備に迫られる青年の心象たるや。想像するに容易く、辛いだろう。なんといってもまだ異性へ興味津々のお年頃であるので。
「うむ……うむ……隣人の血肉は柔らかくて面白い……。ところで隣人、そなたはいつも妾が近づくと熱を増すが、何か理由があるのか……?」
しかし彼女はそんな事など露ほども知らず、ぐいぐいと距離を詰めてくるのだ。
今だって頬をむにぃ……と押さえつけるようにして、豊かな胸がふにゃりと形を変えた。
青年の眼に映る唇を覆う青の口紅は艶めかしい色に煌めいて、なのに彼女の顔がいやに幼く見えて、その落差が昏い情欲を煽り立てて仕方ない。
じわりじわりと青年の雄には血が巡りつつあった。
「………………隣人?」
そう口にしたマキュラの目線は、妙に下を向いていた。つられるようにして青年の視線もその先を追う。
視線の先は自らの股間であった。
「うむ……うん……」
じっくりと彼女は冷や汗垂らす青年の様を見ながら、ふと思いついたように言った。
「そなたは……妾を融かしたいと見えるな」
びくりと青年が硬直した。流れる冷や汗はいや増して、逃げ場があると良いなと視線が真横を向く。マキュラはそんな愛し子の様子を眺めて、幽かに鈴が鳴るような笑い声を上げている。ひょう、と心地よい冷気が青年の肌をなぶった。
「焦らずともよいのだ……そなたが妾にそういった情を抱いているのは妾にとっても嬉しいのだぞ? それは後に繋ぐ行為だからな」
彼女の吐息がそっと青年の耳の裏をくすぐる。囁きかける声は妖しく、心を惹いて何処かへ連れ去っていくような感覚さえ覚える。冷たい指先は顎の輪郭をゆっくりとなぞって、首筋の方へ降りていく。
「それに……」
指先から与えられた冷感がやがて衣服の中に入り込む。どこかこそばゆかったが、程なく交ざり温くなる瞬間に安心感を覚えた。
ふっと青年の気が緩んだ時、不意に視界が暗くなり、柔らかなものに包まれ、囁きの続きが耳朶に浸み込んだ。
「妾とて……そなたを愛おしいと思っているのだよ」
マキュラは青年を豊かな乳房に埋めさせていた。彼女は彼の吐息の熱に艶がかった溜め息を漏らしてから、のんびりと頭を下ろしていく。やがて青年の頭と同じ高さにまで降りると、その唇に舌を割り入れた。
どちらの口腔の中であれ、導くようにして舌がその身をくねらせる。何も知らなかった青年の舌が、請われるままに絡めとられ、マキュラが長い時を経て学んだけだものの術を教え込まれていた。
ぬち、ぬちゃりと興奮を煽る、粘膜が睦み合う音が血肉を通して聞こえた。ひやりと冷感を感じさせる彼女の口紅の香りが、微かに青年の鼻腔をくすぐって、肌と
耳元にまで近いように思える舌の交わる音が脳をゆっくりと掻き回すように蕩かしていく。誘われるままに導かれた掌がおんなの尻肉へとっぷりと沈み込み、彼女は喜びに甘い吐息で応えた。
「ぷぅ、ぁ……わかるだろう? こうして肌を重ねるだけで、そなたと妾の熱が混ざり合っていく……これをくれたのは、教えてくれたのはそなたなのだ。この恩に報いる気持ちも無いわけではないが、何よりもそなたを知りたいのだ……」
マキュラは青年へ、蒸した夜には堪らない女体を堪能させた。目を凝らせば薄青い血管が透ける柔肌はひんやりしっとりとして、青年の掌に、筋肉に、溜まった熱をゆるゆると吸いとっていく。見るからに殺人的な量感の双丘は彼女の昂りに桜色の先端を固く尖らせて、瑞々しい肉に波紋を打つさまがこの上なく情感を煽った。
ぷるりとした唇は先の触れあいによってか、青の奥に潜んでいた紅の肉を晒しつつある。ぬるい熱を湛えた尻肉は、まだ拙い手つきにも奥底に眠る火を確かに大きくしていた。
未知を探る青年の手をとって、マキュラは未だ触れられない場所へのんびりと導いていく。呼吸に緩やかに上下する滑らかな腹を渡り、しっかりとした下腹部に薄っすらと彩られた氷色の
マキュラは上気した顔で微笑んで、とっていた青年の手を離し、細い指先に自らの露をひとすくい、下衣の中ではちきれんばかりに膨張し、僅かに頭をのぞかせていた青年の雄へ、縄張りとするように塗り込めた。
「まだ、まだ。そなたの熱を受け容れるには、妾とて今少し時間が要る……何? 大丈夫そうに見える? いや、いや。妾が欲しいのはそなたの熱の塊なのだ……まだ少し熟れさせねば……な?」
そう淫靡に囁いて、マキュラはするすると頭を下ろしていく。
辿り着いた先、下衣のファスナーを、ちい、ぃ、と口だけで開き、ぼろんと音を立てるように思えるほどの勢いで飛び出した、むっとするような熱の籠る下履きへ鼻先を埋める。
すん、と鼻をひくつかせてほぅ、と吐き出される吐息の冷たさが、熱い肉には心地よく、青年の快感を映し出す様にひくん、と鎌首をもたげる雄肉、その禍々しい影へ、愛おしそうに頬ずりする。
ぎしぎしと張り詰めた下履きのボタンを外せば、湯気立ちまろび出るのは青年の雄。色づいているように濃い彼のにおいがマキュラの髄をくらくらと揺さぶる。
は、と艶声あげて舌をそっと這わせた様の、なんと淫らな様だろう。
触れれば生ぬるく、離れるにぞっと熱を奪うマキュラの舌も今ばかりは情欲滾る雄の血に灼かれ、舌に載る熱を全身へ伝播させた。
柔らかな頬、豊かな乳、艶やかな腹、疼く子袋、震える腿、期待に濡れそぼる女陰に至るまで。
「ん♡ちゅ、む♡」
青年の雄肉の至る所へ口付けが浴びせられた。マーキングさながらの痕が愛おしく、執拗に刻まれていく。
「ふっ♡ふぅ……♡ん、むぅ……♡」
青年の雄が女に包まれる。
いっそ残酷とも思える様相でマキュラの舌が、その表面の細やかな襞が、敏感な亀頭を、竿に浮いた血管を梳って暴発しかねない快感を齎した。
肉厚な舌が竿の隆起をなぞれば、そっと滾る熱が奪われて、瞬く間に補われる。青年の身には、マキュラが自らを舐るほんの僅かな時間がずっと長く引き延ばされているように感じられた。
熱が補われる瞬間がえもいわれぬ快さを残すのだ。その度に甘やかな快楽がびくびくと肉を震わせて、とぷり、一際大きく先走りを漏らし、雄肉を頬張るおんなを悦ばせる。
「ぅむ♡……ちゅぅ♡♡此方も、だな……♡♡」
マキュラは裏筋に唇を這わせながら、張り詰めた玉袋に鼻梁を埋め、淫猥に眇めた。悦びに濡れる瞳が睦事の快楽に火を焼べる。
そのまま胤袋を頬張って、ぞろぞろと舐り、甘く食み、口を離したのはたっぷり一分ほど経ってからのこと。
それから、
「そなたの生命の芳香は……甘美だな……♡腑の底まで沁みる香りだ……♡♡」
と、口にしたのち、今度は雄肉を貪り始めた。今までのような愛撫ではなく、青年を、もしかすれば彼女自身の裡に眠る火を盛らせるように。
雁首をぽってりとした唇が咥え込めば、舌の僅かな凹凸が粘っこく表面を刮いだ。薄皮の、張りつめる奥に潜む肉までもが快感に弄ばれる。
湧いた体液の尽くが彼女に吸い取られ、舐め取られ、その腑を汚し、代わりに付けられた青い口紅の疵が着々と拡がった。
吐息が徐々に徐々に熱を持ち、口腔は今や充分な火照りを保っている。
しかし種がこみ上げる度に彼女はその舌を、手を止めて、あるいは竿の根元を握って放出を預かる。
もどかしく脈打ち先走りを漏らす様を見て、彼女は舌先でその滴を掬い取りながら微笑む。
青年の目には、慈しむような表情の裏に、けだもののかぎろいが渦巻いているのが見て取れた。
マキュラが腰を降ろしていき、叢の奥、期待に震える恥肉がゆっくりと、青年の雄へと近づけられる。それにつれて空気は冷えていったが、それを物ともせずに発散される熱はずっと強くなっていく。
「肉が灼ける程に熱いな? そなたがそうしていると妾も嬉しいぞ……♡」
ぴとり、粘膜が擦り合わされ、鼓動にびくびくと震える竿先が、ひくひくと蠢く女陰が、粘ついた音を立ててまだかまだかと潤滑液を互いに塗りたくる。そのうちに……。
「ん……ぅ……♡♡♡」
どちらかが辛抱堪らなくなったのかは分からずとも、徐々に徐々に、ゆっくりと二人の距離が縮まっていた。その最中にはどちらともなく、お互いの身体の届くところへと口づけで傷痕を残していく。
「温い、な……♡♡」
いつの間にか、むせ返るような汗のにおいが団長の部屋に籠っていた。ともに粘りつくような音もじっとりと響いている。
生命のにおい。
雄と雌の、交合のにおい。
青年とマキュラは、再びその舌を絡め合っていた。
互いに服は辛うじて体に引っかかる有様、濃く鬱血した唇の跡が、あるいは青い口紅の跡が首元にはっきりと残る。
互いの脈動が快さで胸をいっぱいにする。舌による交合のみであっても想像もしなかった快楽が思考を灼いていく。
汗ばんだ互いの身体をぴっとりと寄せて、青年の指が豊かな乳房に沈み、女の指は優しく青年の首元を、赤子の首を支えるような手つきで触れている。
「ぷぅ……ぁ……♡そなたに……妾も溶かされてしまいそうだ♡」
たっぷりと情が籠もった声で女は囁いた。青年がそれに応えるように片方の手で彼女の舌を弄ぶと、今夜だけでも幾度となく聞いた悶えが響く。火照った指先を彼女のひんやりとした舌が快さを伴って這う。その度に熱を奪う瞬間が薄荷飴を舐めた心地にも似て、青年の舌に甘さが想い起こされる。
「そなたのしたいようにしても良いのだぞ? 妾もそれを望んでいるのだから……♡」
熱い肉が雄を求めて、甘く細かな舌を震わせていた。誘いに乗るようにして、恐る恐るといった様子で抽送が始められる。
普段触られることのない場所をねぶるのは、飴を転がすのに似ている。じゅくじゅくと熟れ、熱を湛えた内部に反して外はひんやりとしているのがまた心地よく、しかしたっぷりと雄を誘うように出来上がった肉は男の情欲をこれ以上なく誘ってまだ余りある。腰を打ち付ける度に舌の震える様が、波打つ様がその度に血を滾らせて、睾丸が痛いほどに窄まった。
抽送に嬌声をあげる女はいっそう楽しそうに舌を伸ばし、融けた青い口紅が舌の赤と合わさり、男に妖しい色に惑わせる。
悦ぶ彼女に合わせてか、より牝肉は雄を丹念に貪り始めた。襞肉が幹をぞろりと爪立て、鈴口にたっぷりと愛情のこもった口付けを施す。飛び散る汗と、淫汁と、諸々の混ざり合った液体はとうに揮発して、くらくらと意識を揺さぶる媚香に成り果てている。
どちらともつかぬけだものの声が響きつつあった。そのうちに、幹を登る精を感じて女の肉は、その主人とともに身悶えして来たる灼熱に期待し、悦びの中にそれらを迎えていった。
互いの舌を貪りながら行われる交合の快さというのは、青年にも想像がつかぬ程に心地よい。生命を分け合っているような錯覚にも囚われそうになりながら、彼は女の最奥へ向けて思い切り腰を打ちつける。数瞬の間に絶頂する女肉の蠢動を強かに受けて、途轍もない開放感が
「お゛っ♡お゛ぉ……♡♡♡」
声ならぬ声をあげて、マキュラは絶頂と共に身を裡から灼かれる感覚に悶えた。どぷどぷと放たれる精の感覚が心地よく、緩やかに潮が青年の腹を濡らす。
一度精を放ってもなお、衰えるどころか恥肉を押し上げる雄を感じて彼女は妖しく微笑った。
「ふ……♡ふふ……♡」
彼女はそのまま青年の返事を聞くまでもないと、ぎゅうっと抱きしめながら口づけを交わす。返答は胎に呑んだ異物が、何よりも雄弁に語っていた。
「夜はまだまだ永いからな……♡幾らでもそなたを受け止めてやろう……♡♡♡」
程なくして、船室に再び粘着質な音が響き始めていた……。
まきゅらまりうすさんすき……。