体育終わりの放課後には
「うぅ~…何で私がこんなことを…」
仏頂面で不満を漏らすウサギに俺は苦笑した。
ウサギの手にはタイマーやリレーのバトンなどが収められたかごが握られている。
かくいう俺は金属バットが収められているかごを持っていた。
現在は放課後、俺達は今さっきの授業の体育の後片付けをしている。
「文句言わずにさ。ほら、終わったらジュースおごってやるから」
「むっ…ジュースごときでウサギちゃんをつろうなんて甘いね。ケーキもつけてくれなきゃ」
結局つられちゃうのかよ…
「でも見学の私まで片付けするなんて…面倒だなぁ…」
そう、ウサギは体育の授業の見学だった。
何もやってないので片付けだけはしておけと言われていた。
そういえば最近ウサギが体育を見学していることが多い。
少し前は嬉しそうに受けていたのにどうしてだろうか?
「なぁウサギ…」
「あ、着いたよ。ほら、早く片付けてケーキ!」
俺を無視して体育倉庫に入っていくウサギ。
まぁ訊くのはあとでも大丈夫か。
俺もウサギに続いて体育倉庫に入る。
中にはいると汗やカビの匂いが混ざった独特の臭気が出迎える。
この学校の体育倉庫はここ数年前に一度改装したらしい。
広くなりよりたくさんの器材をおけると聞いていたが…
「これは広すぎだろ…」
ヘタすれば俺たちの寮の一室より広いぞ、これは…
俺は辺りを見て感嘆を洩らす。
どうやらウサギも同じようでうらやましそうにため息を漏らす。
とりあえず俺はかごを言われた通りの場所へと片付ける。
そしてそそくさと出ていこうとするとウサギにそでを掴まれた。
「キョウヤ、探検しよ!」
ウサギはそういうと有無を言わさずに俺を体育倉庫の奥まで連れていった。
「こっちのところ、気にならない?」
そう言ってウサギが指差したのは鉄製の扉だった。
確かこれは…俺は入学時に受けた施設の説明を思い出す。
この学校の体育倉庫は扉を隔てて二つに分かれているそうだ。
今俺たちがいる側がよく使うモノやあまりかさばらないモノ(たとえばマットであったりボールであったりだ)がおかれているところだ。
そして扉の先は全く使わないモノ(行事の時に使うモノや季節限定のモノ)がおかれているらしい。
さらにはこちら側より扉の先の方が広いという噂だ。
「あ、開いたよ。ほら、はいろ!」
ここで断ってもどうせ有無を言わさずに入れられるし…。
俺は半ばあきれながらもワクワクしながらそこに入った。
後ろ手にガラガラと重たい扉を閉める。
「うわぁ…すごいねぇ…」
そこには体育祭などではおなじみのアイテムからこんなものどうやって使うんだというものまで、さまざまなアイテムがおいてあった。
「これ懐かしいなぁ…あ、こっちも懐かしい!」
ウサギは目をキラキラと輝かせながらせわしなく動き回る。
かくいう俺も記憶がないにしてもここにあるモノには多少心躍るモノがあった。
俺達は無邪気にもそこで大量の時間を食いつぶした。
しかしそれが後に痛い目にあうとは俺もウサギも予想で気はしなかった。
「そろそろ出よっか。じめじめが鬱陶しくなってきたし…」
「そうだな」
俺はさっき締めた重たい扉を開く。
そして体育倉庫の入り口の扉まで歩く。
が、そこで違和感。
入ってくるときは開いていた扉が閉まっていた。
まさかと思い俺は急ぎ足でそこに駆け寄りガチャガチャと扉をいじる。
「う、ウサギ…」
「え?何…?」
俺の焦りがウサギにも伝わったのだろう、ウサギは不安の声を混じらせていた。
「俺たち…閉じ込められたみたいだ…」
その瞬間俺たち二人に絶望が走った。
「あ、でもケイタイがあれば…」
不意にウサギが声を上げる。
ケイタイか…ウサギにしてはナイスアイデアだ。
俺は着ているジャージのポケットをいじくるがそこにケイタイの姿はなかった。
体育の時は危ないからと持ってきていなかったことを思い出す。
この調子だとウサギも持ってきていないだろうな。
ウサギもジャージのポケットをいじるもやはりなかったようだ。
二人して無言になる。
「…あ、明日になれば誰か来てくれるよね!今日はここにお泊りってことで!」
不意にウサギが明るい声を出す。
泊まり、か…
そうだな、どうせ出られないんだったら楽しまなきゃな…
「そうだな!よし、まずは使えるものを探そう!」
俺達は捜索を開始した。
数分後…
「案外使えるものって多いんだな…」
まずはベッド代わりのマット。
これはマット運動をするときに使うあれではなく高跳びなどで使うふかふかのやつだ。
「うわぁ…!これ、すっごいふかふか!もしかしてキョウヤのベッドよりふかふかなんじゃない?」
痛いところをついてくるな…
確かに俺もそう思ったけど。
次にかけ布団代わりの大きめの旗。
どうやらこれは体育祭で応援用に使われていたらしい。
人が包まるには十分に大きいサイズ、それに意外と厚手で温かそうだったので拝借してきた。
ただ一つ難点なのは柄がダサいことだ。
どれも熱血や必勝などと暑苦しい言葉がずらりと並べられていた。
さらにはなぜか枕もあった。
ウサギ曰く昔の体育祭でまくら投げ合戦なるモノがあったらしい。
(超気になるんだけど…動画とか残ってないのかな…)
少々異臭がするが贅沢は言ってられないな。
これで一通りの寝具はそろった。
睡眠を制するものはお泊りを制す、みたいな?
「ねぇねぇキョウヤ…これさっき見つけたんだけど何に使うか知ってる?」
ウサギはポケットをごそごそとまさぐるとそこから薄いピンク色のモノを取り出した。
ラムネの包み紙のようなものに俺は見覚えがあった。
「あぁ、それはコンドームだな…ってこ、コンドーム!?」
何故に避妊具がこんなところに…!?
まさかここでヤったやつが…
「こんどーむ…?それって何?なんか近くに風船みたいなのがカピカピになって落ちてたけどそれもこんどーむなの?」
どうやら本当にここでヤったやつがいるらしい。
使用済みが落ちているとなるともうこれは確信犯だ。
「ねぇねぇキョウヤ、こんどーむってどうやって使うの?教えてほしいな?」
無邪気な顔でそう尋ねてくるウサギ。
相変わらずの破壊力がそこにはあった。
(こ、これは性教育というやつで…大丈夫だよな?)
俺は自分に適当にそう言い訳をしてウサギをマットに横たわらせた。