「よろしくお願いしますね、早乙女さん」
「…………」
いつものように、俺は放課後に家畜を貸し切った賭博場へ呼び出した。
今回呼び出したのは夢子と芽亜里の二人。
二人の表情は対照的と言ってもいい程に違う。
夢子はギャンブルを早く始めたくて仕方がないようで、満面の笑みを浮かべている。
対する芽亜里の表情は暗く、沈んでいた。
今回行うギャンブルは、シンプルなインディアンポーカーだ。
一枚ずつ配られるトランプを自分には見えないように掲げる。
相手のカードだけを確認し、ベット額を決める。
掛け金を決め、両者が降りなければカードを公開し、勝負。
数字の強さは、A>K>Q>J>十>九>八>七>六>五>四>三>二。
ただし二とAの勝負は例外として二の側が勝利。
数字が同じ場合は、スペード>ハート>ダイヤ>クラブの順で強さが決まる。
ただし、今回はベットするものが特殊である。
俺は二人が向かい合うテーブルの上に、大きめのグラスと三つの液体が入ったビンを二セット置いた。
金を賭ける代わりに、二人は好きな液体をグラスに注ぐ。
内容は水と、媚薬と、利尿剤である。
負けた方は二人が注いだ液体を飲む。
降りた場合は、自分が注いだ液体を飲む。
絶頂するか漏らした側の敗北。
敗北した方には、無論罰ゲーム。
以上のルールを説明すると、夢子は微笑み、芽亜里はうんざりした様子で頷いた。
ディーラー役は俺だ。
トランプをシャッフルし、一枚ずつを両者に配る。
二人が額に掲げ、掛け金を決める。
夢子のカードはハートの七。
芽亜里のカードはクローバーの十だ。
夢子と芽亜里は、それぞれビンから任意の液体を手元のグラスへと注いだ。
芽亜里は二センチほど、夢子は五センチほどだろうか。
どの液体を注いだのかは、相手には分からない。
「……降り」
芽亜里が降り、自分で注いだ液体を飲み干す。
地味な絵面で始まってしまったと、俺は軽くため息を吐いた。
続く二戦目と三戦目も、あっさりと終了した。
二戦目は再び芽亜里が降り、三戦目は夢子が降りた。
動きがあったのは、続く四戦目だ。
「ぐっ……」
公開されたカードは、スペードの五とハートの三。
勝負に出た芽亜里が負けた結果だ。
夢子の分のグラスを持つ芽亜里の手が震えている。
恐らく、芽亜里は今まで己のグラスには水しか注いでいなかったのだろう。
数秒の後、芽亜里は一息に五センチほど注がれた液体を飲み干した。
媚薬も利尿剤も、飲んですぐに効果が出るような物ではない。
自分がなにを飲んだのか分からない不安の中、次のゲームが開始する。
その後も小競り合いのような戦いが続いた。
相手の手が強いとすぐに降りる流れが続き、中々勝負が成立しない。
十ゲームを超えて俺がそろそろ退屈を感じ出したころ、両者の表情に変化が訪れた。
二人の顔が、僅かだが赤く染まりだしている。
排尿を我慢しているのか、それとも媚薬の効果が出てきたのか。
「そろそろ、大勝負としましょうか」
それを合図にしたかのように、夢子は掛け金を吊り上げる。
夢子の提示した掛け金である液体は、グラス一杯に並々と注がれていた。
「……降りっ」
勝負などできるものかと、芽亜里は即座に降りる。
おそらくは水だろう液体を飲み、勝負は次へ。
「……降り」
「くっ……降り」
「降りッ!」
夢子はそれから三ゲーム、毎回グラス一杯の液体をベットした。
勝負の勇気を出せない芽亜里は、全ての勝負に降りる。
三度目は勝負すれば勝っていたのだが、それは結果論と言える。
通常のポーカーでも、大きく賭けて相手を降ろす戦術は一般的だ。
夢子の作戦勝ちといった所か。
「……んっ」
そして次ゲーム。
カードを配られた芽亜里の様子がおかしい。
彼女は顔を赤く染めながら、太股を擦り合わせていた。
ずっと降りて水のみで回避していたとはいえ、かなりの量を摂取している。
利尿剤を抜きにしても、芽亜里の膀胱は限界に近づいていた。
「くうっ……勝負!」
そして提示される、夢子の一杯に注がれた液体。
逃げていても始まらないと悟ったのか、芽亜里は降りずに勝負を受けた。
夢子のカードはダイヤの四。
芽亜里のカードは、クローバーの四。
「あっ……」
数字は同じだが、スートの違いで芽亜里の負けだ。
目の前に置かれた夢子のグラスを前に、芽亜里は完全に固まってしまう。
夢子の性格上、この中身がただの水である確率は限りなく低い。
十中八九、中身は媚薬か利尿剤だ。
コップを持つ芽亜里の手が震え、机の上に液体が零れる。
俺が急かす様に芽亜里の両肩に手を置くと、彼女の体はビクリと跳ねた。
「う、うぅ……」
芽亜里はグラスをゆっくりと口元に運び、中身を嚥下する。
そして全てを飲み干した瞬間、彼女の精神は限界を迎えた。
「あっ、あぁっ……!」
チョロチョロという音が、芽亜里の元から流れる。
彼女は太股を閉じ、俯きながらスカートの裾を押さえていた。
その表情は絶望に染まり、瞳の端には涙が潤んでいる。
「あの……」
勝者である夢子は恥ずかしそうに俺へと声をかけてきた。
「勝負も終わりましたし、お手洗いに行ってきても……?」
俺がそのまま帰ってもいいと退室を許可すると、夢子はゆっくりと立ち上がり一礼して部屋を後にした。
夢子を負かせなかったのは悔しいが、それは後回しだ。
震える芽亜里の体で、ストレスは発散させてもらう。