ここはナザリック地下大墳墓の支配者にして魔導国の王となった「アインズ・ウール・ゴウン」の支配する町エ・ランテルの宿屋。
その一室には幾重にも結界が張られており、生半可な手段では誰も部屋の中の様子をうかがうことは出来ない。
部屋の中、漆黒の二つ名を持つアダマンタイト級冒険者「モモン」を名乗っているアインズは、モモンとしての全身鎧姿で簡素な木製の椅子に腰かけていた。
そしてそんなモモンの足元に美しい黒髪の女性が、土下座するかのようにその身を這いつくばらせていた。
ナザリック地下大墳墓の
「んんっっ……ちゅ……ちゅ……」
普段の無表情が崩れ、頬を紅潮させ、息を荒げながらも彼女は鎧に包まれたアインズの足のを懸命に、愛おしそうに舐めている。
「どうでしょうかアインズ様……。上手くできているでしょうか……?至らないことがあればどうぞ仰ってください」
「ああ……。中々いいぞナーベラル」
「ありがとうございます……アインズ様……」
ナーベラルは嬉しそうに返事をすると、再び懸命にアインズの足を舐め始める。
そんな中、どうしてこうなった!とアインズはこれまでの出来事を思い返す。
彼はモモンとしての姿でナーベラルと二人で歩きならがら、頭を悩ませていた。
アインズがうっかり発動してしまった禁断のマジックアイテム「完全なる狂騒(欲)」により、アンデットとなってずっと忘れていたはずの性欲が復活していた。
そのアイテムの効果は絶大で、精神の完全耐性能力すらほぼ無効化し、本来性欲を持たないはずのアンデッドに性欲を取り戻させるという恐ろしいアイテムだ。
「ユグドラシル」は本来全年齢対象のゲームだが、NPCとハーレムを築くことを夢見た運営が密かに付けた裏設定のあるアイテムだった。
ゲームとしては何の効果もないゴミアイテムのはずだった。
しかし何の因果か、そのアイテムは異世界で本来の効果を発揮してしまった。
一応精神の鎮静が完全に無効化されてはいないようだが、性欲が消えるのではなく無理やり抑え込み、溜め込まれているかのような感覚だ。
しかしアインズは日に日に精神の鎮静効果が追いつかなくなっているのを自覚していた。
だがナザリックの最高支配者であるアインズが当然こんなことを誰かに相談できるはずもない。
ナザリック守護者統括であるサキュバスの「アルベド」にでも相談すれば喜んでその身を差し出してくれるだろうが、
骨だけの姿であるアンデットのアインズには当然男性器は存在しない。
男性器がなければ当然自慰行為もセックスも行うことができない。
解消することができず溜まっていくだけの欲望など正直凄まじい地獄だ。
そんなとき、抑えきれない性欲に頭を悩ませているアインズを心配したナーベラルが声をかけてきたのだ。
「どうかしましたか。アインズ様」と。
突然の言葉にアインズは驚き、無いはずの心臓が飛び出るかと思った。
この町はまだアンデットである魔導王アインズに支配されたばかり。
今はだいぶ落ち着いてきたとはいえ、住民はまだどこか不安を抱えている。
そんな彼らが今もどうにか平気でいられるのは、漆黒の英雄「モモン」が守ってくれるという安心感があるからだ。
そんなモモンがアインズと同一人物だと、万が一にもばれたら町の住民たちが恐慌に震え大混乱に陥るし、今までモモンとして築き上げてきた苦労や信頼が全てパアだ。
慌てて周囲を見渡したが、幸い今の発言を聞いた者はいないようだ。
安堵の溜息をつくアインズだが、ナーベラルは状況を理解していないのか小首を傾げている。
その可愛らしい仕草に、溜まりに溜まったストレスや欲望が、アインズの中でプチっと音を立てて切れた気がした。
気づけばアインズはナーベラルを抱えて宿屋に飛び込み、床に這いつくばらさせていた。
「ア、アインズ様?」
困惑しているナーベラルを無視しスクロールを使い部屋に結界を張ると、木製の椅子にドカリと乱暴に腰を掛け、鎧に包まれた右足をナーベラルに向けて差し出す。
「しゃぶれ」
上から目線の高圧的で傲慢な絶対者からの言葉。
ナーベラルはその言葉に一瞬キョトンとするも、すぐにハッとなってその意味を察するとゴクリと喉を鳴らし、頬が真っ赤に染まり瞳が濡れた。
「はいアインズ様!」
ナーベラルは足元に跪き、恭しく首を垂れた。
ファーストキスをアインズの足に捧げられる喜びに打ち震える。
「んちゅ……ぴちゅ……ちゅ……」
ナーベラルの顔には嫌悪の色など微塵もなく、懸命に鎧に包まれたアインズの足を舐め続ける。
それどころか普段の鉄面皮や優雅さをかなぐり捨てているほど興奮している。
普段から人間をゴミムシと蔑むナーベラルだが、今は彼女が矮小な虫のようにその身を這いつくばさせている。
「ちゅ……くちゅ……ぴちゅ……ぴちゅっっ!」
始めは丁寧に舌で撫でるかのように舐めていたが、次第に激しく貪るように夢中になって舌を這わせている。
メスの甘い吐息を鼻から吹き出し、口からは卑猥な唾液の音をたて、舌は冷たい鎧を撫でる。
「ふむ。しかしせっかく舐めてもらうのにこの鎧はやはり邪魔だな」
アインズが腕を振るうと、全身を覆う鎧は黒い霧となって消え失せ、いつもの黒いローブを羽織った骸骨の姿になる。
冒険者「モモン」としての姿から、ナザリックの最高支配者「アインズ・ウール・ゴウン」の姿に切り替わる。
「ああ……アインズ様……」
顔を上げると目に映る至高のお方の姿に、ナーベラルは満面の笑顔を浮かべた。
頭蓋の奥から覗き込んで切る真っ赤な瞳にゾクゾクと鳥肌が立ち、思わず恍惚の吐息が漏れる。
「あむ……ちゅう。じゅぅぅ。れろぉ」
じゅぷじゅぷとした水音が響く。
「……ぢゅるっ……じゅるぅ……くちゅっ……」
鎧が消え去り骨だけの姿となったアインズの足の指をナーベラルは一本一本丁寧に舐めていく。
鼻息も荒く舌を這わせ、唾液を塗り込ませるかのように唇を啄ませる。
骨の足指を苦もなく口内に収めたナーベラルは、楽しげに目元を緩めながらしゃぶり続ける。
別にナーベラルに被虐趣味があるわけではない。仲間にはとても優しいナーベラルだが、人間を下等生物として扱い虫けらとしか認識していない。
ドSというより人間やナザリック以外の存在に興味を感じていないのだ。
しかし相手が至高の主である「アインズ・ウール・ゴウン」であるなら全く別の話。
ナーベラル達創造された存在は全て、アインズを絶対なる存在として崇拝し、自らの創造主の頂点に仕えることにこそ喜びを感じている。
その身の全てはアインズ様の為にあり、皆が皆死ねと言われれば迷いなく死ねるほどの忠誠心を有している。
そんなお方に跪き、足を舐めさせて貰えるという崇高な行為に興奮さえしている。
「んっ!んっ!んぷっ!」
唾液を丹念に塗りたくるナーベラルの頬から唾液が零れ落ちる。
「じゅるるるるるる……」
まるでフェラチオをするかのようにアインズの足指を吸い上げる。
ナーベラルはうっとりと頬を染めてアインズの指を堪能する。
そこには冒険者達の憧れの的である美姫「ナーベ」としての姿も、ナザリック戦闘メイドプレアデスの「ナーベラル」としての姿もどこにもない。
ただアインズの前に跪く淫欲に塗れた一匹の獣の姿だった。
もしナーベを知る冒険者が見ればショックで気絶していただろうし、もしナザリックの者が見れば嫉妬に狂い叫び、羨ましさに咽び泣くことだろう。
一通り右足を舐め終わると、ナーベラルの口内からり足を強引に引き抜く。
ナーベラルの口とアインズの骨の足指の間にべっとりと唾液の糸が口内と足を繋げている。
アインズは引き抜いた足を無遠慮にナーベラルの頭に乗せると、まるで雑巾でも扱うかのように乱暴にナーベラルの美しい黒髪で足を拭いていく。
頭を踏み潰されたナーベラルは、無様に顔を床に押し付けられる。
「っっ~~~~~~~~~~~♡」
くぐもった声が微かに漏れるが、乱暴な扱いを受けてもナーベラルは一切抵抗せず、むしろ歓喜でもって受け止める。
「どうだ?少しは反省したかナーベラル」
アインズの頭蓋骨の奥の真っ赤な双眸が冷ややかに見下ろしている。
「今は結界を張っているからいいが、外にいる間は私のことはモモンと呼べと言っているのに。お前は油断すると未だに私をアインズと呼ぶな。
もし万が一にもモモンとアインズが同一人物だとばれたら、これまでの苦労が全て無駄に終わるところだったぞ」
その苛立ちに満ちた言葉にナーベラルの顔から欲望の色が引いていき、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「ナーベラルよ。お前の問題行動は今回だけではない。冒険者の腕を折っただの、貴族に暴言を吐いただの一体何度繰り返すつもりだ?」
アインズはぐりぐりと足の裏をナーベラルの頭に擦り付ける。
「が……っ!ぐぅっ………」
口を床に押し付けられているナーベラルには謝罪も弁明も行うことができない。
「お前のその性格は創造者である『弐式炎雷』さんが設定したものだ。
それ故に人間を軽視する考え自体には文句を言うつもりはない。
だが、余りに学習せず問題行動を繰り返すようならお前をモモンの従者から解任しなくてはならない」
その言葉にナーベラルの心は絶望に染まっていく。
しかしナーベラルは意義を唱える資格がないことを自覚していた。
至高の御身に同行するという、守護者の方々ですら滅多に行えない栄誉ある職務を預かりながらこのていたらく。
役立たずどころか足手まといにまで落ちるなど、至高のお方に仕えるものとして決して許されることではない。
ナーベラルは自分の卑小さと愚かさに身を竦ませる。
ナザリックの仲間たちもこんな自分を許さないだろうし、誰よりもナーベラル自信が許すことができない。
アインズは、涙を流し、うつむき怯えるように震えるナーベラルの頭をそっと撫でる。
「ナーベラルよ。間違いは誰にでもあることだ。だがいくら言っても直らずに同じ失敗を繰り返すお前には厳しい罰を与えなければならない。
罰を受け、反省するのならば今までのことを許してやろう」
ナーベラルはその慈悲深きお言葉に歓喜に震える。
罰を与えられるということは自分はまだ期待されているということだ。
ナーベラルが最も恐れているのは自分が至高のお方に役立たずとして見限られること。
アインズに命を差し出すことすら厭わない彼女にとってそれは何よりも恐ろしいことだ。
ナーベラルはアインズの慈悲に心から感謝しながら、答えるようにもう片方の足にキスをした。
(よし!上手くいったぞ!)
後で冷静になると最低なことをしてしまったアインズだが、『完全なる狂騒(欲)』によって暴走した性欲をぶつける大義名分が手に入ったことを喜んでいた。
アンデッドであるアインズには男性器が存在しない。
故に普通の方法では溢れだす性欲を解消することができない。
しかし何らかの行動で性欲を解消できることを本能的に掴んでいた。
それをナーベラルの処罰という形で行えば、罪悪感をごまかしながら解消することができるのだった。
「そこまででいいぞ。ナーベラル立て」
「はい……アインズ様……」
両足を舐め終えたナーベラルは名残惜しそうにしながらもアインズの足元から立ち上がった。
「よく頑張ったなナーベラル」
「はっ!勿体無いお言葉です……っ!」
ナーベラルの頭を撫でながら褒めてやると、嬉しそうに微笑んでいる。
「組織として失態に罰を与えることは必要なことだ。しかしあまり罰になっていないようだな……。屈辱を与えるのでは罰にならないのか……?」
ナーベラルに足を舐めさせたのは暴走したアインズの性欲が原因だが、ナーベラルへの罰であったのも確かなのだ。
アインズは以前シャルティアへの罰として四つん這いに跪かせ椅子として使ったのだが、どうも罰になっていないようだった。
「罰を与えるとは難しいものだな。ナーベラルよ。お前自身はどう思う?今の罰で罪に相応しい贖罪が出来たと思うか?」
罰を受ける本人に聞くのもおかしな話だが、これは罰を受ける本人が罪悪感を抱かぬようにするナーベラルへの配慮の意味もある。
実際シャルティアは罰を受けられない我が身を恥じ、罪悪感に苦しんでいた。
「恐れながらアインズ様……。私はまだ相応しい罰を与えられておらず、罪を贖い切れていないと思います」
そしてやはりナーベラルも嘘を口にして罰を逃れようなどとは微塵も考えていなかった。
「ふむ。ではナーベラルよ。お前はどのような罰が相応しいと思う?」
その言葉にナーベラルは考え込む。どのような罰が自分に相応しいか。
その時ナーベラルの脳裏によぎるのは、アインズと二人で冒険者として活動していた時のこと。
偉大なるお方の邪魔をしてきたゴミムシ「クレマンティーヌ」。
その女は恐れ多くも偉大なるアインズに抱きしめられて死ぬという虫けらには過ぎた死に様をしたという。
それを聞いたナーベラルが最初に抱いた感情は「羨ましい」だった。
それは本来ゴミムシ風情に与えられるものではなく、自分たちへの罰としてこそ相応しいのではないだろうか。
ナーベラルは自分の思いついた相応しい罰をアインズに伝えた。
「………えっ?」
それを聞いたアインズは唖然としてしまう。
「ほ、本当にそれでいいのか!?」
「はいアインズ様。どうか私を罰してくださいませ」
「そ、そうか……。むぅ……まあお前がそれで満足するならいいだろう」
少し考え込むアインズだったがナーベラルのその提案を受け入れた。