時系列は文化祭後のどこかだと思っていただければ。今回はこれといったネタバレはありません。
年上の
突然だが、俺は現在修羅場状態だ。
「千歳ぇ……何でキミはされるがままなのかな?」
「…………その、ですね。離れてもらおうと思ったんですけど」
「ふーん、言い訳するんだ?」
紫さんの視線が痛い。俺に許された選択は平謝りしかない。
「はい、申し訳ございませんでした」
そこで、紫さんの視線が俺の隣に移る。正確には、俺の左隣にいる人物に。
「で? 渉、アンタは何をしてんの……!?」
「ふふふー♪」
何故か俺の腕に絡みつく渉さんは、意味ありげな笑みを崩さない。
どうしてこうなったんだ?
昼間、電話で呼び出しを受けた俺は、日の暮れた頃に紫さんの家に向かった。
そこで俺を待ち受けていたのは、途轍もなく不気味な色と香りのする鍋だった。有無を言わさず食わされた後、何を詰め込めばあんな禍々しいものが出来上がるのかを質問したところ、精力を高めるものを兎に角詰め込んだという。
これは長い夜になりそうだと腹を括ったとき、訪問者を告げるチャイムが鳴った。
玄関まで出てみると、来ていたのは渉さんだった。俺が呼んだわけではないので紫さんが呼んだのだと予想したが、そうでもないらしい。来た理由を尋ねると、
「ヒメちゃんから、紫ちゃんにお届け物だって」
とのことだった。ならば用事が終われば帰るのかと思ったのだが、用事が終わっても渉さんが帰る素振りは無かった。それどころか、彼女まで家に上がり込んできたのだ。
困った俺達が何を言っても、
「いいから、いいから」
とかわされてしまうので、今日は夜のあれこれはお預けだと思い込んでいた。
事態が変わったのは、食事の片付けが終わった後だった。紫さんが席を外した一瞬の隙に、渉さんが俺に抱き着いてきたのである。振りほどこうとしたのだが、それより早くその光景を紫さんに発見され、今に至る。
あれ?
どれだけ思い返してみても、渉さんが俺に密着する理由が全く分からない。何の前触れもなく、唐突だった。彼女は俺と紫さんの仲を知らないわけじゃないので、余計におかしな話だ。
「ていうか、何でこんな真似をする訳?」
こんな質問をする辺り、紫さんも同じことを思っているらしい。対する渉さんは、不満そうに頬を膨らませていた。
「だって、ハル君と紫ちゃんが付き合い始めてから、山も谷もなくてずっと平坦なんだもん。だから、わたしが盛り上がりを作っちゃおうと思って」
「……え? そんな理由?」
思わず声が出た。そういえば、前にそんなことを言っていたような気もするが、あまりにも突飛すぎるというか……何でそうなる?
実際の俺達の関係は、平野どころの話ではない。底なし沼にお互いを引きずり込むかのような、ドロドロと肉欲にまみれた『性活』と呼べるものだ。だが確かに、傍目に見れば山も谷もない。なるほど他の人から見るとつまらない関係かもしれない――
いや待て。思わず納得しかけたが、その理屈はおかしい。
「あのねえ、アンタを楽しませるつもりはないの」
「そんなの分かってるけど……でも、マンネリ化を防ぐためにも、重要な事だと思うの。それに……」
そう言って、渉さんの視線が下へと向けられる。正確には、俺の下腹部の辺りに。
「紫ちゃんをオトしちゃった
そこにあるのは、明らかに不自然な膨らみ。有り体に言えば、俺のモノが勃起してできたテントだ。それを見た紫さんの目が、スッと細められる。
「へぇ………………」
仕方ないのだ。腕に当たる柔らかい感触、耳にかかる吐息、腿を撫でまわす細い手。しかも仕掛けてくるのが、紫さんに負けず劣らず美人な渉さんだ。同性愛者でもない限り、これをやられたら反応するのが自然なのだ。
……なんてことを言うと更に機嫌を悪くしてしまうだろうから、絶対に言えないが。
などと考えていると、紫さんの足が俺のモノへと伸びて、グリグリと踏みつけてきた。
「痛たたたたた、痛い、痛いですって!」
「アタシの心の方がもっと痛いの。浮気をされたアタシの心は引き裂かれるほどに辛いの」
「浮気ってわけじゃないですよ」
「アタシ以外の女に興奮しておいてよく言う」
にべもない。確かに振りほどこうとしない俺も俺なのだが……どう言えば矛を収めてもらえるのか全く分からない。
途方に暮れていると、下半身を撫でていた渉さんの手が、上半身へと移動する。胸板のあ辺りで留まると、円を描くように指先で撫でまわしてきた。更には、
「ふー……」
「いっ!?」
耳に直接息を吹きかけられた。絶妙な加減で耳を刺激される。程よいくすぐったさが快感へと変換され、体中を駆け巡った。
「……………………」
紫さんがどんどん不機嫌になっていく。モノを踏む強さが、更に増した。快感が痛みに打ち消されそうになるが、
「ハル君、大丈夫?」
そっと囁かれて、再び背中を快感が走る。しまいには、踏みつけられる痛みすらも快感に変わっていく。
……俺、どんどん開発されてないか?
衝撃の事実に軽く眩暈を覚える俺をよそに、二人の応酬は続く。
「そういえば、千歳は女に踏まれて悦ぶ変態だったね」
「あらハル君、気持ちいいんだ……へえー♪」
グリグリ。ひそひそ。絶え間なく与えられる快感に対して、歯を食いしばって耐えるのが精一杯だった。
「くう……っ、はっ……」
それでも堪え切れずに、荒い息が漏れる。気を抜いてしまえば、すぐにでも達してしまいそうだ。
そんな俺の姿に嗜虐心をそそられたらしい。紫さんから、舌なめずりと共に命令があった。
「ああ、もう我慢できない。千歳、脱いで」
「えっ」
「返事は?」
「……はい」
「『かしこまりました、ご主人様』、でしょ?」
「…………かしこまりました、ご主人様」
「よろしい」
言われたとおりに、裸になる。すると俺のご主人様が、パンツ共々穿いていたものを脱ぎ捨てていく。それが終わると、俺を床へと押し倒した。腕が離れる際に何やら物惜しそうな声があったが、それどころじゃない。触れ合いそうな位置まで、紫さんの上半身が近付いてくる。
「キミが誰のものなのか……そのカラダにきちんと教えてあげるよ」
そう言って秘所に俺のモノをあてがうと、一気に咥えこんだ。ロクな前戯もなしでこの滑り……紫さんも期待していたのだろうか?
そのまま上下動を……と思いきや、前後に僅かしか動かさない。そのくせ俺の腰を両手で抑え込むものだから、俺からも大きくは動かせない。
「もっと激しく、動いて欲しい?」
意地悪な質問。だが、今の俺に否定を返す余裕などありはしない。
「そりゃ、もちろん……っ」
「あんっ…………なら、おねだりしてみなさい」
「うっ、くっ……お願いします、ご主人様っ!」
情けなく懇願してしまう。こんな屈辱的な状況にさえ、興奮を覚えてしまう自分がいた。
「よくできました……っ!」
言葉と共に、紫さんは激しく腰を動かす。急激に強まる刺激に、俺は声を堪えることすら出来なくなった。
「うああっ! ちょ、待ってっ、あっ!」
「ダメ、待たないっ。んっ、お望み通り、思いっきりイかせてあげる……っ!」
言葉通り、抽送のペースは落ちることは無い。それに加えて、きゅうきゅうと蜜壺全体で肉棒を締め付けてくる。許容量を超えた快感に、視界がチカチカしてきた。
しかし紫さんは意にも介さず、一心不乱に腰を振り続ける。水気交じりの肉を打つ音と、俺達の嬌声が部屋に響き渡っていた。
「っ……くぅっ……! これ、ヤバいですって、くあっ!」
「はあっ、あんっ……ふふ、千歳、キミはやっぱりイイ表情してくれるね……っ! もっと、もっとその情けない顔を、アタシに見せなさいっ」
そう言って、更に動きが激しくなる。上下だけではなく、前後、左右まで。円を描くような立体的な動きを加えてくる。
更には、紫さんの両手の指が俺の乳首をカリカリと引っ掻いてくる。上半身と下半身の両方から生まれる快感が、全身から力を奪っていく。今日の俺は、いつにも増して余裕がなかった。反撃で腰を振ることすらままならない。
少しでも快感から逃れようと、周りへ視線が移る。すると、顔を赤らめる渉さんと目が合った。なぜあの人はもじもじしてるんだろうか……?
他所へと向いた俺の意識。それを見透かされて、締め付けが一段と強まった。圧し潰されるとさえ思わせるほどに。だが、度の過ぎた刺激も、今の俺にとっては快感でしかない。
「あんっ、こら、どこ見てるのっ。集中しないと、すぐに射精しちゃうよっ!」
「あ、うあっ! 紫さん、それ強すぎ……!」
「気持ちいい? んっ、気持ちいいよね、キミの顔を見れば分かるよ……っ!」
言っている間も、動きが止まることは無い。肉壺はモノを咥えて放そうとしないし、指は胸をしつこく愛撫してくる。最早、我慢の限界などとうに超えていた。
「お、俺、もうっ」
「ほら、早くイきなさいっ。アタシの奥の奥に、くっさい精液吐き出しなさいっ!」
「あっ、ぐっ、うああっ!!」
まともに逆らうことも出来ず、肉棒が脈打つ。紫さんの秘所の最奥部に、白濁液を叩きつけた。
「ああっ、出てる……っ。イってるんだね、千歳……イイよ、その表情。みっともなく射精させられてるその姿……たまんない」
紫さんが体を起こして後ずさると、ずるりと俺のモノが引き抜かれる。おびただしい量の精液が溢れ出ていた。それを見た紫さんは、満足そうに更なる絶望を突き付けてくる。
「なーにやり切ったような顔してるのかな、千歳? まだまだこれからだよ……?」
獰猛な笑みと共にそんなことを言われて、背筋が凍りついたかのような錯覚に陥った。
思考を一瞬止めてしまった俺に追い打ちをかけるかのように、更に理解不能な事象が起きる。
「紫ちゃんばっかり、ズルいよー」
俺と紫さんの間に、割って入る人影。渉さんだった。
「は……え?」
全く理解の追い付かない俺のことなどお構いなしに、渉さんは未だそそり立つ肉棒から流れ出た精液を丁寧に拭き取っていく。準備万端、とばかりに鼻を鳴らすと、紫さんを押しのけてしまう。
「ちょっと、渉! アンタ何のつもり!?」
「見れば分かるでしょ? それじゃハル君……いただきます」
そう言って、露出した秘所で俺のモノを呑み込んでしまった。こちらも前戯無しでもしっかりと濡れている。何かの拍子に、スイッチが入ってしまったのだろうか?
「うあっ、渉さん、落ち着いてっ」
「あんなの見せつけられて、落ち着くなんて無理だよー。ハル君、起きて起きて」
押し倒されていた俺の上体を引っ張り上げる。向き合うような形になったところで、両手を背中へと回してきた。
これは、いわゆる対面座位では? などとまともじゃない思考に陥る俺を引き戻すかのように、渉さんが呼び掛ける。
「ほらハル君、動いてみて?」
「あっ、はい」
言われるがまま、下腹部を上下動させた。肉の襞がうねうねと波打つ。それでいてきつすぎない程度にモノを締め付けてくるので、もっと気持ちよくなりたいという欲望に駆られてしまう。
「くはっ、これ……っ」
「あっ、いいっ、いいよハル君っ」
貪るように、無我夢中で腰を動かした。快感を得るためだけの乱雑な動きにも拘わらず、渉さんは拒絶の意思を示さない。
「ふふっ、必死なハル君、可愛い……。んっ、その調子で、いっぱいお姉ちゃんと気持ちよくなろうね」
包容力の塊みたいな人だった。思わず身を委ねたくなるような年上の余裕に甘えて、更に抽送のペースを上げていく。
「はぁ……はっ……」
「あぁん、ハル君のその蕩け切った顔、もっと見せて……」
渉さんの顔が近付く。もともと触れ合いそうなほどに近かった唇が、ついに触れ合った。そしてそこにとどまらない。舌を捻じ込んで、俺の口内を蹂躙しにかかる。
「んんっ!? んぐっ、むうっ、んむーっ!!」
「ちゅっ、れるっ、くちゅれちゅ、ちゅくっ、んちゅ、れるれる」
息を呑む気配がしたが、それどころではなかった。そちらへ向ける意識すら押し流すほどのとめどない多幸感に、俺の理性は呆気なく刈り取られていた。
タガの外れた獣のように、ひたすらに出しては入れ、出しては入れを繰り返す。人としての尊厳すらかなぐり捨てて、ただ快楽に浸り続けた。もっと、もっと。内から湧き出る本能に従って、渉さんの体を味わいつくそうとする。
「ぷはっ…………ハル君、こうしてると、まるでお猿さんだね。そんなハル君も可愛い」
聖母か天使か。そんな存在と見紛う程に、渉さんは俺を受け容れてくれる。その事実にまた幸福感を覚えて、それが快感へと変換される。先程射精したばかりなのに、もう次の精液が込み上げてきた。
「渉さんっ、出るっ、もう出ますっ」
「うん、いいよっ。お姉ちゃんの中に、全部出しちゃおうね」
流石に中出しはマズい。そう思ったが、渉さんは俺を離してくれない。それどころか、肉壺を更に締め付けて、俺の精液を搾り取ろうとしてくる。
「ちょっ、それ、ダメですって」
「いいから、いいから♪」
「く、あああっ!!」
咄嗟に引き抜くことも叶わず、全身を震わせて中で果てた。どくどく、という音が聞こえてきそうなほどに、ありったけの精液を吐き出していく。
「ふふっ、いっぱい出てる……。ハル君、お姉ちゃんで気持ちよくなってくれたんだね。嬉しいなあ」
満面の笑みと共に、耳元で呟かれる。甘ったるい快感に、再び俺の体が震える。肉棒の中に残っていた精液が、渉さんの秘所を穢していく。
引き抜かれたモノには、先の射精に勝るとも劣らないほどの白濁液が纏わりついていた。
「ふふふ。たくさん、浮気射精しちゃったね、ハル君♪」
浮気。その言葉に、ハッと正気を取り戻した。慌てて周囲を見回すと、烈火の如きオーラを幻視させる紫さんが、こちらを睨みつけている。
「アタシの目の前で堂々と浮気とは…………しかも、随分気持ちよさそうだったじゃない、ええ?」
「え? あの、そういうわけでは」
「そうなの? お姉ちゃんの中、気持ちよくなかった?」
「いや、そういうわけでも」
「おい千歳ぇ……アタシと渉、どっちが気持ちよかった? 勿論、答えは一つだよね?」
「へ、それは」
「決まってるじゃない、お姉ちゃんだよね?」
「いや、ちょっと待ってください」
わざとらしい発言を繰り返す渉さん。絶対わざとやってるだろ! ニヤニヤしてるし!
「即答できないんだ……。これはまだまだ、調教が足りないかな? ちゃんとどっちが良かったか言えるまで、逃げられると思うなよ、千歳?」
「ふふふー。楽しくなってきたね♪」
二人がにじり寄ってくる。怖い怖い怖い。紫さんの笑みは、ドS悪魔のそれだ。いや、もう魔王かもしれない。
一方の渉さんの笑みも、この状況では恐ろしい。天使だとか言ったが、そんなものじゃない。この人は魔物だ。甘い言葉と身体で命を枯らす、強大過ぎる淫魔。
今更、俺は魔物の巣穴に放り込まれたことを知覚した。だが、もう遅い。
「安心しなさい。夜は長いんだ………………決して忘れられないほど、その身に刻み付けてあげる」
「あ、はは……」
引き攣った笑いを浮かべるしかない俺。こうして一つ、弱みを握られてしまったのだった。
そういえば、卯ノ花のお届け物とやらが何だったのか。精魂枯れ果てた頃に尋ねたところ、
「ハル君秘蔵のあんな本やこんな本だよ」
などという言葉が返ってきて、それに腹を立てた紫さんによって第七回戦が始まってしまったことは、一生後悔するかもしれない。
初めて濡れ場というものを書きました。(烏羽だけに)
くだらないジョークはともかく、本当に初めてです。なのに、なんで三人で何かするプレイにしたのか……もっと簡単にできるシチュエーションがあったなあ、と思っています。
でも、令和になって一番最初に浮かんだシチュエーションがこれだったので、勢いで書きました。未だに濡れ場の書き方がよくわかってないので、滅茶苦茶かもしれません。
そもそも童貞が濡れ場を書くのが無茶だったんだよ、という言い訳はともかくとして、いつかリトライしたい、と思っています。
そういえば、今回代名詞殆ど使ってないな……反省ですね。
批評・感想お待ちしております。
ところで、この二人に搾り取られちゃう薄いブックスはどこで手に入りますか?