※この作品はR-18です。

短編置き場   作:バハルストスFF

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『天神乱漫』の卯花之佐久夜姫と夜更かしする話。
 咲夜√ED後で、ネタバレあります。


オトナのひと時?(天神乱漫/卯花之佐久夜姫)

 ふと、時計に目がいった。針が差すのは夜の十一時。試験勉強をしていたら、いつの間にか夜も更けていた。

「まっ、こんな所かな」

 ノートを畳んで、机のライトを消す。キリの良い所で切り上げようと思ってたのに、意外と長く続いた。良い傾向だ。

 月明かりだけが照らす部屋で、今日復習した箇所を反芻する。

「この分なら今回も大丈夫かな」

 ……なんて油断しないように気を付けなければ。俺がそう思うのと同時に、

「ほほう? 随分余裕じゃな、ハルキ」

 なんて声が聞こえてきた。

「っ!?」

 驚きのあまり勢いよく振り向くと、そこには見慣れた彼女の顔があった。

「お前か。驚かせるなよ」

「気付かんお主が悪い。言っておくが、お主が勉強を止める前から、妾はこの部屋におったぞ」

「……マジで?」

「大マジじゃ」

 そんなに集中していたんだろうか。自覚がない。というか、来たなら言って欲しかった。

「それで、何の用だ?」

「決まっておろ? 夜這いじゃよ。夜・這・い」

「は? 夜這いって、お前」

「静かにせんか」

 そう言って、咲夜の手が伸びてくる。その手が俺の口をふさぐより早く、俺は声を上げた。

「待て待て。そういうのは試験期間が終わってからだ」

「何故じゃ。試験前に発散しておいた方が集中できるじゃろ」

「それはそうかもしれないけど……その、何だ。今したら、覚えたこと全部忘れそうだから」

 どうにか言葉を紡ぎ出す。我ながら苦しい言い訳だが、咲夜は聞き入れてくれた。

「そうか、それでは仕方ないの。ではプランBに移行するとするか」

「……なんだそりゃ」

「いいからついて来い。妾とオトナなひと時を過ごそう」

 そう言って、咲夜は俺の手を引いて部屋の外へ向かう。繋いだ手を握り返しながら、二人して部屋を出た。

 

 

「何処へ向かってるんだ?」

「さあ。当ててみよ」

 言われて、考えてみる。少なくとも先程俺は行為を明確に拒否しているので、そっち関連の施設ではないと思う。だが日付が変わるくらいの夜中に連れ立って向かう場所など、俺には見当もつかない。

「……分からない」

「そうか、残念じゃな。まあ、もうすぐ着くんじゃが」

 その言葉通り、五分もしないうちにこいつの目的地は判明した。

「ただのコンビニかよ」

「そういう事じゃ。それ以外にあるか?」

 まさかコンビニなんかじゃないだろうと思っていたら、普通にコンビニだったので拍子抜けしてしまった。だが言われてみれば、それ以外の候補がこの街にある筈もない。

「ほれ、行くぞ。妾はアイスが食べたいんじゃ」

 楽しみを抑えきれないのか、少し早足でコンビニへ駆けこむ咲夜。

 はぐれないように、その後姿を追った。

 

 

「悪いな、奢ってもらって」

「構わん。いつもお主が妾に奢っておるんじゃから、たまには妾にも奢らせんか」

 突発的だったので財布を持って来ていない、という事実に気付いたのは会計の直前。

『俺の分はいい』

 と商品を戻そうとしたのだが、

『待て、妾が払おう』

 という咲夜の好意で、奢ってもらえることになった。そして今は近くの公園。

 本当なら俺が払うべきだというのに、余計な出費をさせてしまった。申し訳なさと共に、棒アイスを噛み砕く。途端、舌を刺すような冷気が口いっぱいに広がった。

 ゆっくり飲みこんでから、かねてよりの疑問を口にした。

「それで、これのどこがオトナなんだ?」

 咲夜は得意げな表情を浮かべていた。

「夜中に家を抜け出して、公園で屯する。これこそオトナじゃろ」

「そうか? むしろ悪ガキのすることのような気が」

「なんじゃと? おかしいの、妾が読んだ本にはそんなことは……」

「お前な、漫画に書いてあることを鵜呑みにするのは良くないぞ。ちゃんと現実を見ろ」

 何気なく放った一言だが、咲夜にとっては何か大事だったらしい。噛みしめる様に頷いてから、また口を動かす。

「そう、じゃな。最早予備知識など必要ないんじゃ。この目で見て、聞いて、触れたものから学んでいけば良いんじゃから」

「……そういう事だ」

 何を思ったか、正確な所は分からない。だが、何となく予想はついた。神の座を失ったことが絡んでいるに違いない、と。それなら、わざわざ掘り返すのは野暮だろう。

「……食うか? って言っても、これもお前が買ったんだけど」

 話題を変える。すると咲夜は、すぐさま食いついた。

「うむ、貰おうかの」

 豪快にかぶりついた割には量が控えめだった。意外と減っていない棒アイスを見ていると、咲夜がスプーンを差し出してきた。

「では、お返しじゃ」

 周囲を気にしつつ、恐る恐る頬張ってみる。抹茶味だった。

 頬の熱さとアイスの冷たさがうまい具合にバランスを取っている――なんて食レポまがいの事を口にしかけてやめた。こんなことを言っていたら、浮かれているのが丸わかりだ。

「うまいな」

「じゃろ。CMを打つだけあるの」

「確かにな」

 それから二人で、黙々とアイスを頬張る。分かっちゃいたが、やっぱりハズレだった。

 俺が先に完食して、しばらく後に咲夜も食べきった。残ったゴミをゴミ箱へ放り、帰路へ足を向ける。

「帰るか」

「ああ」

 どちらともなく言い出して、足を進めた。

「……どうじゃ、息抜きにはなったか?」

 道すがら、咲夜が尋ねてくる。今回のこれは、俺を気遣っての事だったようだ。

「ああ。ありがとな」

「いいんじゃよ。お主は根を詰め過ぎる節があるからの、無理させないのが妾の役目じゃ」

「役目、か」

 そういえば、咲夜は最初、神様として俺を助けようとしてたんだよな。その為に試練を受けてたというのに、今では人になって俺の隣にいる。不思議なこともあるもんだ。

 勿論、嬉しくもある。あの時来てくれたのが咲夜で良かったと、今は思っている。

 そんな事を考える自分が照れくさくて黙っていると、咲夜が呼び掛けてきた。

「どうかしたか?」

「いや、何でもない。それより、お前は試験勉強しなくて大丈夫なのか?」

 照れ隠しの為の話題転換だったのだが、咲夜の表情が凍り付いた。俺から視線を逸らして、合わせようとしない。

「……もしかして」

「あー……。実はなハルキよ、妾、英語が不得意なようじゃ」

「英語が? 最初の期末では大丈夫だったよな?」

「あの時は神の力があったから、勝手に言葉が浮かんできたんじゃ」

 という事は、人である今は、つまり。

「なあハルキよ、もし妾が追試を受ける事になったら――」

「そうならないように勉強するぞ。俺が教えるから」

「嬉しいの。ついでに保健体育も」

「やらないからな!!」

 どうやら、夜は長くなりそうだった。

 




 こんな彼女が欲しい。


 スランプだったのでだいぶ更新が遅れました。ごめんなさい。
 ワンライのお題に推しが来たからどうにか書けましたよ、ええ。


 今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました。
 誤字脱字・ミスの報告、感想等お待ちしております。
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