ED後の話で、ネタバレあります。
試験休みの木曜日。
今日は午前中から、花鶏亭に来ていた。勿論、バイトをしに来たわけではない。
「お邪魔しまーす」
「あっ、春樹さん。おはようございます」
扉を開けると、蘇芳が出迎えてくれた。相変わらずの真面目さに感心しながら、早速本題を切り出す。
「ああ、おはよう。若葉ってもう起きてるか?」
すると蘇芳は、表情を陰らせる。もしやまだ起きていないのか――という俺の予想はあっさりと外れた。
「ええ、起きてはいらっしゃるんですが……起きてからずっと、『今日は部屋を出ないわ』の一点張りでして。申し訳ありません」
「いや、謝らなくていいんだ。今日はそれで問題ないから」
「……? と、言いますと?」
今日はここで過ごすんだ、と馬鹿正直に言うのは躊躇われる。だが、言葉を濁したところで状況から察しはついてしまうだろう。
となれば、予め説明しておくのが無難か。
「まあその、なんだ。今日は、いわゆる家デートをしようって事になってるんだ」
俺の言葉に、蘇芳は納得した様子を見せた。
「なるほど、そういう事でしたか。でしたら何も問題ありませんね」
「ああ。ってわけで、上がらせてもらうぞ」
「分かりました。ご案内しますね」
蘇芳に導かれるまま、店の奥へ。
扉の前で止まると、控えめなノックの音が二回響いた。
「若葉様。春樹さんがいらっしゃいましたよ」
「入っていいわよ」
「だそうです」
「じゃ、失礼して」
扉を開けると、そこは魔境だった。
数多くのゲーム機が、床を埋め尽くすほどに並んでいる。無事なのは敷きっぱなしの布団の上だけ。
しかも、その全てが古い。その古さたるや、レトロゲーム専門店と呼んで差し支えないほどだ。
「いらっしゃい。適当に座って」
「……適当に?」
「どかしてくれて構わないわよ」
という事らしいので、若葉の隣に腰を下ろす――べく、ワンダー〇ワンだのゲーム〇ォッチだのを端に除けてスペースを作る。
モニターに繋がっているのはスーパー〇ァミコンだった。いや、だからどうして古いゲーム機ばかり?
「で、今日は何をやるんだ?」
「これよ」
そう言って若葉が取り出したのは、見覚えのないパッケージ。タイトルは英語で、ドラゴンと飛行機が映っている。
「グ〇ディウス、スリー……?」
なんで三番目からやるのかという疑問はさておくにしても、まずはタイトルだ。
俺は咄嗟に短剣を想像した。しかし、そっちの方は綴りが違ったような気がする。オリジナルなのかな?
「どういうゲームなんだ、これ」
「やってみれば分かるわ。さ、始めましょう」
そう言うと、若葉は二つ目のコントローラーを繋いで、俺に渡してきた。
「春樹は、説明書は読むタイプなのかしら」
「あー、うん、そうだな。正しく使わないと壊しまくるから」
実際には使う前の段階で壊れることが多かったが、今はもうどうでもいい。
「そう。じゃあ、ワタシが1Pでプレイするから、その間にアナタは説明書を読んでいて」
「わかった」
短く返事を返すと、若葉は画面の方を向いた。時代を感じさせるサウンドと共に、ゲームが始まる。
真剣な目で画面を見つめている若葉。話しかけて良さそうな雰囲気ではないので、視線を説明書に落とす。
なんだこりゃ。パワーアップ? カプセル? 装備?
「あ」
ゲーム開始から一分くらいした頃。不意に、若葉が声を上げる。見れば、「2P START」の文字列が。
「もう俺の番か?」
「そうよ。早くしないと死んでしまうわよ?」
「おいおい」
どうにか操作は覚えたが、システムが良く分からない。とりあえずやれるだけの事を――
そんな俺の考えは、あっさりと打ち砕かれた。俺の操作する機体から弾が飛び出し、敵を破壊していく。
そこまでは良かった。
「あっ」
爆発音と共に、俺の機体が宇宙の藻屑に。序盤こそ敵を倒してはいけたものの、敵の攻撃が速い。しかも量がそこそこ多いので、すぐ攻撃に当たってしまう。
システムに慣れる前な分、余計にやりにくいな。
「序盤から難しいんだな」
「当然だわ。だって、これは最高難易度の更に上……隠された真の最高難易度なのよ」
「なんで!? 普通簡単な方からやるもんだろ!?」
「何を言っているのかしら。選ぶのは常に最高難易度。だって、その方がいっぱい攻めて貰えるじゃない」
「何故ゲームで苦しもうとする!? そんな楽しみ方をするのはMだけだよ!」
「だーかーら、ワタシはMではなくドMよ」
そこは大した問題じゃないと思うのだが。そんなやり取りをしているうちに、若葉の操る機体が爆散していた。
「またやられてしまったわ。さ、春樹の番よ」
「交代早いな」
と言いつつも、コントローラーを握り直す。実際のプレイでパワーアップの意味も分かり、先程やられたところは抜けられた。しかし、背景が変わったあたりで攻撃が更に過密になってきた。こちらの攻撃の通りにくい位置から攻撃されると、途端に突破が難しくなる。
結局、砂のドラゴンが出てきた辺りで死んでしまった。若葉の番になり、そのプレイに注視する。
「……え?」
気付いた。若葉は、何故か一切パワーアップをしていない。そのせいで、高速で移動する敵を避けられずに撃墜されている。
というか、交代までの時間が早過ぎる。どうやら休む暇はないようだ。
「なあ、なんでパワーアップしないんだ?」
「それは勿論、縛りプレイだからよ」
その意味が分からないほど、俺も馬鹿ではない。つまり、こいつは自分で自分に制約を課している。最高難易度であるにもかかわらず、だ。
「そりゃまた、なんでそんな事を」
「決まっているでしょう。春樹がワタシを縛ってくれないから、自分で自分を縛るのよ」
「……ゲームの話だよな?」
「あら。そう思うのかしら?」
「…………」
本当は、別の事を思い浮かべたりもした。とはいえ、それを口に出すのは恥ずかしいし、何より覚悟が決まっていない。
それに、俺にそんな趣味はない。出来る事なら、最初から特殊なことはしたくない。
そう。若葉と――
「ん」
画面のスクロールが止まる。ボスのおでましのようだ。
「気持ち悪い見た目だな」
「そうね。流石にワタシも、こんな虫に痛め付けられたくはないわ」
誰でもそうだろ、なんて言葉を飲みこみながら攻撃を行う。砂の中から虫がこちら目掛けて飛び出してくるのを辛うじて避けながら、中心部へ弾を撃ち込む。
これはいける……そう思った瞬間だった。
「ところで春樹。1P2Pって響き、なんだか卑猥じゃない?」
「はあ!?」
突然耳元で若葉が囁いた。そのせいで気がそちらへ逸れ、見事に俺の機体は撃ち落とされる。
ゲームオーバー。俺も若葉も残機が尽きてしまった。努力も空しく、ランキング画面を経てタイトル画面に戻される。
「お前な……」
「あら。これはワタシのせいね、そうに違いないわ。それで春樹は、どんなお仕置きをしてくれるのかしら?」
「しません! 俺が集中してないのが悪い、って事でいい!」
ゲームよりもツッコミの方に体力を持っていかれてる気がする。このまま難易度の高いゲームをやっていては、間違いなく身体がもたない。
「なあ、もう少し簡単というか、気楽にできるゲームはないのか?」
そう思いながら周囲を見てみるのだが、ファ〇コン版のボン〇ーマンだの〇ラゴンクエストだの…………。
「……一人用のゲームばっかりだな」
「仕方ないじゃない」
不貞腐れた様子で、若葉は言う。
「……だって、誰かと一緒にゲームをする事なんてないもの」
「蘇芳は……そっか、あいつはお前を止める側だもんな」
「そういう事よ。だから、こうして二人でゲームをするのは、アナタが初めて」
初めて。その言葉を聞いた瞬間に、胸の高鳴りを感じた。かつて交わした約束が脳裏を過ぎる。初めてを奪い、奪われる関係。それが俺達の在り方だ。
「……そうか。嬉しいな」
「そう。ワタシも同じよ」
不満そうな表情から一転して、若葉は穏やかな笑みを浮かべていた。
「知らなかったわ。誰かと一緒にプレイするゲームが、こんなに楽しいなんて」
その顔を見ていると、どうしてこいつがゲームに没頭していたのか、一端を垣間見たような気がした。
何でもいい。とにかく何かを言おうとして、俺は口を開いたのだが。
くぅ。
「……」
俺の腹の虫が、先に声を上げてしまった。
「そういえば、もうそろそろ昼時ね」
冷静に対処されてしまい、俺は思わず顔を逸らす。頬が赤くなっているのが、鏡を見ずとも分かった。
そんな中でも、くすりと笑う声はしっかりと聞き取れた。
「お昼にしましょうか」
「あれ? 若葉様、今日はずっと部屋にいらっしゃるはずでは?」
「食事は例外よ。それと、台所を借りるわ」
「畏まりました。どうぞ」
仕込みをしていた蘇芳がさっと退き、代わりに若葉が厨房へと入っていく。
それをぼんやりと眺めていると、すぐ近くで声がした。
「春樹さん、若葉様は一体どうされたんでしょうか」
「どうって……いつも通り俺の食事を作ってくれてるんだろ? 普通じゃないか」
「いえ、それが……」
蘇芳が言うには、こうだった。
若葉は昨日の遅くに、何処かへ出かけていた。しばらくして、大量の栄養補助食品が入った袋を両手に提げて帰ってきた……という事らしい。
「眠りから覚めてすぐの頃、若葉様がゲームに没頭している時にそういった物を食べているのは見ました。今日も、食事は摂らないとおっしゃっていたのですが……」
なるほど。
俺とひたすらゲームをする為にそういう食糧を買い込んだとするなら、それを使わずに料理をするというのは確かに変だ。いったい、どういう風の吹き回しなんだろう。
考えを巡らせる俺をよそに、自然な表情でどんぶりを二つ運んでくる若葉。
「お待ちどおさま」
「ああ、いただきます」
本当に何もないのだろうか、と疑いながらも箸で麺を掴み、啜る。
「…………ん?」
妙な味だった。普段若葉が作るラーメンとは全然違う。むしろ、一番最初に出された不味いラーメンの味に近い。
「なんか、今日のは味が変だな」
「そう?」
驚いたような様子を見せつつ、若葉も麺を口に運んだ。するとすぐに顔を顰めつつ、こう告げてくる。
「……確かに。これは失敗ね。ごめんなさい、残してくれても構わないわ」
「いや、いいよ。食えないわけじゃないし」
折角若葉が作ってくれたものを残すのは、良い事だと思えない。そう考えて俺は、再び麺を啜るのだった。
異変が起きたのは、昼食をとって一時間ほど経ってからだった。
「……はぁ…………」
身体が妙に熱い。喉も乾くし、呼吸も自然と荒くなる。
何より、下腹部に何かが集まっている。あまり誰かに見られたくない箇所が、激しく存在を主張しようとしている。
「春樹、大丈夫?」
そう言って身体を寄せてくる若葉だが、今の俺にそれは逆効果だ。距離が近くなったことで、心臓の鼓動がどんどん早くなるのが分かった。ふんわりと漂ういい香りが、下半身に集まる血流をさらに加速させる。
悟られないように俺が下腹部へ手をやったところで、その腕が掴まれた。
誰が。考えるまでもない、若葉だ。だがどうしてそんな事を。
俺が何かを言うより早く、口が塞がれた。気付けば、若葉の顔が間近にある。
「んっ、ちゅっ……んむっ」
意識が朦朧とし始めた。得も言われぬ快感が俺を襲い、理性を何処かへ流し去ろうとしている。
このままではヤバい。そう直感した俺は、どうにか唇を離す。
「ぷはっ……はぁ、ちょっと待ってくれ。今は」
「知っているわ。身体が熱くて仕方ない、そうでしょう?」
触れ合いそうな距離を維持したまま、俺の状態をピタリと言い当てた。見れば、若葉の頬も心なしか赤くなっているように見える。
「いったい、何が」
「大丈夫。アナタのそれは、ワタシのせいなのよ」
どういう事だろう。ワタシのせい、という言葉で思い当たることがあるとすれば、
「俺の身体にケガレが残ってた……?」
しかし、若葉は首を横に振る。じゃあ何で――
「さっき食べたラーメン、あれには大量の媚薬が入っていたのよ」
「……………………は?」
まるでわけが飲みこめない。媚薬? 何で?
「春樹はスープも飲み干していたのだから、当然そうもなるわ」
「ああ、そういう…………って、そういう事じゃなくて」
「ちなみにワタシのラーメンにも同じクスリが入っていたわ」
「いやなんでだよ! お前が飲む必要ないだろ!」
衝撃的すぎて理性が戻ってきた。どうにか入れたツッコミを受けて、若葉はしばし黙り込む。
やがて、おずおずと口が開かれた。
「なんでだなんて……ここまでしても、春樹には分からないのかしら?」
「うっ……」
分かっていないわけではないのだ。若葉がここまでする理由なんて、一つしかない……と思う。でもそれは――
「ねえ、春樹。アナタはワタシの初めてを奪ってくれるのよね」
「……ああ、そうだ」
「なのに春樹は、ちっともワタシに手を出してこないじゃない。……約束したのだから、ちゃんと守ってほしいものだわ」
返す言葉もない。全くもってその通りだった。積極的に身体を求めるのは、それ目当てかと思われそうで忌避していたけど、結局は逃げていただけだ。
どこかで一線を超えなければ、その先の未来だってないというのに。
「悪かった。ちゃんと約束は果たす。だから」
俺だって、若葉が欲しい。その気持ちが伝わるように。目を見据えて、きっぱりと告げる。
「お前の全てを、俺にくれ」
我ながら恥ずかしい事を口走ったなと思ったが、若葉は嗤うことなく受け止めてくれた。
「ええ。ワタシの全て、アナタが奪って」
布団周りのゲームを端に寄せてスペースを確保し、互いに服を脱ぐ所までは良かったものの。
そこから先へどうにも進めないまま、二人して座り込んでいた。
「……」
「……」
無言が辛い。何せ、知識はあっても実践するのは初めてだ。
とはいえ、いつまでもこのままという訳にはいかない。それに、立ち昇る欲望を抑え込むのも限界だ。
若葉の背後に回り込み、腋の下をくぐらせながら、胸に手をかける。
分かっていたことだが、途轍もないサイズだった。下から持ち上げると、その存在感がより確かに感じられる。
少し力を込めると、指がずぶずぶと沈んでいった。
「んっ」
控えめな声を上げながら、若葉は俺の方を向いて囁く。
「春樹の事だから、触っていいか聞いてくると思ったのに……意外と大胆なのね」
「聞いたら聞いたで無粋だって言うんだろ」
「正解よ……んぁっ」
そうだろうと思っていたので、構わず揉みしだくことにした。
弾力に溢れる柔らかな感触を楽しみつつ、その先端部を指で掠めてみる。
「あっ……そこ、はっ」
途端に、声色が変わった。興奮を煽る嬌声に、だんだん俺もヒートアップしてきた。
もっと、その声が聴きたい。その一心で、固くなった乳首をコリコリと摘まみ上げる。
「んっ、くぅっ……あぁっ」
その後も乳輪の縁をなぞってみたり、カリカリと引っ掻くように苛めてみたり。
あれこれと責め方を変える度に、若葉は艶めかしい声を小さく上げて、身を震わせる。
その変化を面白いと思えるほどに、俺は歯止めが利かなくなっていた。
「ねえ、春樹。こっちも……」
「ああ」
誘われるままに、俺の片手が下方――若葉の秘部へと伸びていく。そこはしとどに濡れていて、指をあてがうだけでも愛液が滴ってきた。
しかし、背中越しだとどうにも穴の位置が分かりにくい。狙いを定めようと指が外縁部を撫でる度、押し殺すような声が若葉の口から漏れてきた。
そのまましばらく周囲をなぞっていると、若葉は楽しそうな声で語りかけてきた。
「やっぱり……っ、春樹はSね」
「……何で?」
「だって、最初から焦らしプレイだなんて……きっと、ワタシが激しいプレイを懇願するように仕向けているんだわ。そして、そんなワタシを見て征服欲を満たしているのね」
「そんなつもりはないんだが……悪かったよ」
「でもね春樹、支配感を得るならもっといいプレイがあるわ。そう、ワタシの身体を荒縄で縛り付けて――」
「だーかーらー! 違うって言ってるよな!?」
こんな時でも、若葉は平常運転だった。おかげで緊張が解れたので、有難い話ではあるけど。
しかし、こんな艶姿を見た後だと、全身を拘束される若葉の姿も如実に想像できてしまう。……良いな。
「いやいやいや、良くない良くない」
「……? どうかしたのかしら」
心配されてしまった。まごついていると余計な勘違いを招くようなので、ゆっくりはしていられないな。
「あ」
ようやく、秘穴を正確に捉えた。場所が分かれば早いもので、すぐさま熱く滑った感触が指を飲みこんでいく。
「んんっ、ふぅっ……あんっ」
若葉の声に含まれる色気が、更に増した気がする。ちゃんと感じてくれているんだろうか。
聞くのは憚られるので、口の代わりに手を動かすことにした。
「あっ!? んぁっ、春樹、いきなり激し……あぁっ」
左手で乳首を捏ねくり回しながら、右手で膣内を掻き乱す。時間が経つにつれて、嬌声はか細くも確かなものになっていき、同時に肩の跳ねも大きくなる。
そして、ついには。
「くぅっ、んぅぅぅぅぅぅっ!!」
押し殺すような声を上げながら、若葉は一際大きく身を震わせた。
「はぁっ……はぁっ……」
「……大丈夫か?」
指を引き抜きながら、若葉の返事を待つ。返ってきたのは、相変わらずの反応だった。
「…………春樹は手慣れているのね。もしかして春樹は、こういう事をするのは初めてではないのかしら」
「そんなわけないだろ。……俺だって初めてだ」
「そう。初めてでこれなのね。……ワタシ、これからどうなってしまうのかしら。楽しみだわ…………ふふふ」
「そこは怖がる所じゃないのか」
俺の問いに、若葉は当然とばかりに反論してきた。
「何を言っているのかしら。これから春樹に調教されてしまうのよ。考えただけでゾクゾクするわ」
「なんでだ、なんで俺が汚された気分になってるんだ……」
前途を想像すると、なんだか不安になってくる。しかし若葉はそんな俺をよそに、敷きっぱなしの布団に横たわった。……うつ伏せで。
「えー……」
「何かしら。不満?」
「不満というかさ」
我儘だと分かってはいるが、思ったことを素直に口にしてみた。
「この体勢だと、お前の顔が見えないだろ」
単に面と向き合ってシたいというだけなのだが、若葉は何を勘違いしたのか、
「そう。苦痛と快楽で歪むワタシの痴態を視姦して、徹底的に辱めたいのね。春樹は筋金入りの変態だわ」
「あーもうそれでいいから、とにかく顔を見せてくれ!」
このまま否定を続けていると完全に落ち着いてしまいそうだったので、とりあえず流すことにした。ツッコミ待ちだったらしい若葉は不満そうな表情を作りながらも、仰向けになって脚を広げ、秘部を見せつけるようにしてくる。
改めて見ても、一糸纏わぬ若葉の肢体は魅力的で、なおかつ扇情的だった。ツッコミの繰り返しで萎えかけていた俺のモノも、瞬時に硬さを取り戻す。
「春樹の、凄く大きくなってるわ。……今からそれが、ワタシの中に入ってくるのね」
「怖いか?」
「まさか。そんな筈ないでしょう」
「そうか。…………じゃあ、いくぞ」
「ええ」
意を決した俺は、覆いかぶさるように身体を倒しながら、モノを蜜壺の入り口にあてがった。少しずつ、肉棒が未開の秘所を掻き分けて進んでいく。
ある程度進んだところで、僅かな抵抗感。しかし、止まることは出来ない。一気に腰を突き入れる。何かを破ったような感覚がして、次いで今度は確かな抵抗感。俺のモノが、最奥部まで辿り着いたのだ。
「ひっ、くぅぅぅぅっ……あぁっ!」
若葉の顔が歪む。痛みを堪えているのだろう、そう思って苦しみを和らげるべく声をかけようとした。
それを制するように、先に若葉が口を開く。
「やっと、春樹と一つになれた……とても痛いのに、凄く幸せ。これで、もう……」
最後の言葉が、やけに引っ掛かる。これでもう、何だと言うのか。
だが若葉は、その言葉を続ける事はしなかった。代わりに、動きを止めた俺に優しく語りかけてくる。
「ねえ春樹、動いていいのよ」
「そういう訳には……痛いだろ。だったら――」
「でも、我慢できないんでしょう?」
それは確かだった。こうしている今も蜜壺はモノをきつく締め付けてきて、味わったことの無い快感を絶え間なく与えてくる。しかも今は、媚薬を大量摂取した状態だ。感覚はいつもよりはるかに鋭敏で、我慢できるものではない。
けど、俺一人が気持ち良くなるのは、良い事だとは思えない。そんな俺の内心を見透かしたかのように、若葉は微笑んだ。
「忘れたのかしら、ワタシはドMよ。むしろ痛い方が興奮するわ」
「……余計に動く気が無くなるようなことを言うな」
とはいえ、いつまでもジッとしている訳にはいかないのも事実だ。そう自分に言い聞かせて、腰をゆっくりと引く。
襞がねっとりと纏わりついて、俺のモノを離そうとしない。キツい拘束に必死に抗いながら、モノを外へ、外へと戻していく。
「うぅっ……ひんっ、あぁっ」
苦悶の声を聴きながらも、俺は再びモノを蜜壺へ侵入させる。
先程よりはすんなりと通るものの、それでも締め付けは激しいままだ。心地よい圧迫に、理性が押し流されそうになる。
それでも俺は正気を繋ぎ留めながら、一定のペースで腰を前後させる。
変化があったのは、二十、あるいは三十回……両手の指で数えきれないほど同じ動きを繰り返していたときだった。
「んぅっ、あっ、あんっ」
か細い悲鳴のようだった若葉の声が、少し性質を変えた。それは先程の愛撫の際に発していたものにも似ている。
これなら、少しペースを上げても大丈夫だろうか? そんな問いを込めた視線を送ると、頷きが返ってきた。
それがきっかけだった。モノを抽送するペースが、自然と早くなる。もう理性がどうとか、そんなことは吹き飛んでいた。
貪るように腰を突き入れる。若葉の嬌声に艶っぽさが増していくのを意識する事さえせず、何十回かを数える事さえ億劫なほど、ひたすら肉壺を抉っては掻き乱していく。
「はぁっ、あんっ! ひぅっ……んむっ、ちゅっ」
若葉が、しがみつくように腕を回してきた。同時に唇が触れ合い、多幸感が快楽を生み出していく。
もっと、もっと欲しい。気付けば俺は、若葉の口内へ舌を捻じ込んでいた。
「んんっ!? れるっ、ちゅぷ、んじゅっ、んむぅっ!」
互いの舌が激しく絡み合い、水音を立てていく。淫靡な光景に、俺の興奮は留まる事を知らないほど高まった。
狂ったように、何度も、何度も。抽送を繰り返すうちに、射精感が高まってきた。
「んっ、ぷはっ。若葉、俺もう」
「そうっ、出るのね……っ」
すると若葉は、脚を絡めて俺の腰をホールドしてきた。逃がさない、と言わんばかりに。
「おい、これじゃ」
「いいわ、中に出してっ」
その言葉に、快感に、多幸感に。逆らう事など出来なかった。腰の動きを止められないまま、俺はモノを最奥部に突き込む。
そして、快感が最高潮に達した瞬間。
俺のモノの真ん中を、何かが勢い良く駆け上がった。
「はぁっ、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
内と外から、俺の身体を若葉がきつく抱き締めてくる。腰を逃がすことも出来ずに、大量の精液が若葉の蜜壺へと注ぎ込まれた。
「はぁっ、はぁっ……」
脈動は、たっぷり十秒以上も続いた。ようやく動くなったところで拘束が解ける。
ずるりとモノを引き抜くと、赤い血に混じって、白く濁った液体が糸を引きながら滴ってくる。
「終わった……。悪い、途中から止められなくなってた」
「いいって言っているでしょう。春樹が幸せで、ワタシは嬉しいのだから。謝らないで」
「……そうか。じゃあ、若葉は……」
「ふふ、春樹は肝心な所で無粋なのね。……幸せだったに決まっているでしょう」
その言葉と共に浮かべられた笑みを見ていると、それが本心だと分かった、ような気がした。
表情を変えないまま、若葉が尋ねてくる。
「ねえ、春樹……今日は、ウチに泊まっていってくれるかしら」
「なんだよ、藪から棒に。……いいけど、今日はもうしないぞ」
「分かっているわ。ワタシもこれ以上は難しいもの」
「そうか。じゃあ、家に連絡するからちょっと待っててくれ」
祖父さんから散々なイジリを受けたものの、どうにか承諾を取り付けて、その日の晩は若葉と一夜を共にした。数多のゲームに囲まれて眠るという不思議な体験をしたものの、若葉が隣にいるという事実があれば気にもならない事だった。
問題は、次の日に起きた。
「ふああ……なんで、朝早くから神社に?」
「…………」
質問には答えず、静かに歩みを進める若葉。その表情は真剣を通り越して、悲壮にさえ感じられる。
この先に待ち受ける展開が想像できない。神社にいったい何があるというのか。
その答えを教えてくれるのは、意外な人物だった。
「……虎太郎?」
子供の頃からの友人が、そこには立っている。だが、様子がおかしい。こちらもまた若葉同様に、ただならぬ雰囲気を漂わせている。
「こうして話すのは初めてかな? 初めまして、
「…………!?」
おかしい。虎太郎が初めましてだなんてことはあり得ないし、俺をフルネームで呼んだりもしない。
続く言葉が、俺に更なる衝撃を与えた。
「春樹。あいつは今、アナタの知る虎太郎ではないわ。ワタシよりも上位の神が憑依しているのよ」
「その通り。ついでに言えば、僕は卯花之佐久夜姫の上役でもあるよ」
上役の、神。だが今の発言を顧みれば、それは真実と言えそうだ。卯ノ花が神であることを知らない筈の虎太郎が、本当の名前を知っている訳が無いのだから。
「それで、その上役が何の用だ」
「んー、それがね、君には何の用もないんだよ。用があるのは市杵宍姫命の方に、なんだ」
「は?」
ますます訳が分からない。ならなんで、若葉は俺をここに?
そんな俺を放置して、上役とやらは若葉の方を向いた。
「それで、覚悟は決まったかい」
「ええ」
「なら、早いとこ終わらせようか。市杵宍姫命、君を――」
直後。
俺は、人生で最大級の衝撃を受ける事になる。
「神として不適格だと判断し、現時刻を以て正式に任を解く」
意味が分からなかった。いや、分かっているのに、本能がそれを拒んでいる。
「まさか、異論はないよね」
「ないわ。これが、ワタシの選択だもの」
「お、おい! 待てよ! 任を解くってどういう事だ!」
俺を置いたまま進む話に待ったをかける。しかし上役の表情は一切変わらない。
「どうもこうも、彼女は神に相応しくないから、神を辞めてもらうんだよ」
「相応しくないって、どうして」
その問いに答えたのは、上役ではなく若葉だった。
「ワタシが、春樹を好きになったから」
「…………え」
最早、凍り付くしかなかった。
「神は、人を平等に扱わなければならないの。けれど、今のワタシは……他の誰よりも、春樹を愛している。春樹を世界で一番幸せにしたいと、そう想っているのよ」
「そういう訳で、今の彼女は神に相応しくないんだよ。故に罷免する。今日がそのタイムリミットだったのさ」
「…………」
「正直、こんな展開はパーフェクトな僕にも予想外だったんだけどね。こうなったからには仕事を果たさせてもらうよ」
「待てよ……」
どうにか絞り出した声は、ひどく擦れていた。
「神じゃなくなったら、若葉は、どうなるんだ」
「簡単な事だよ。神は役割を持って生まれてくる、という話は聞いた事があるかな?」
「……ああ」
若葉がかつて、そんな事を言っていた。人の役割とは何だろう、と考えていた時。若葉がそう語ったのを、俺は忘れていない。
「言い換えれば、その役割こそが神の存在を支えている力、という事になるのさ。さて、それを失った神はどうなるか……もう分かるよね」
力を失えば、存在できなくなる。それはつまり。
「消える……?」
「君は賢いね。だから今まで生きてこれたのかもしれない」
昨日の昼下がりに、脳裏に引っかかった言葉。「これでもう」とはそういう意味だったのかと今更理解できた。
呆然とする俺を差し置いて、上役は再び若葉の方へ向き直る。途端に、若葉の身体が淡い光を発した。
「おい――」
対する若葉は、僅かに微笑むだけだった。
別れを告げることすら出来ないまま、その光はどんどん強くなり。
やがて、視界を白く染め上げた。
「くっ…………」
数秒も経ってようやく、視界が戻る。しかしそこには若葉の姿はない――
「え?」
なんてことは無く。
先程と変わらぬ様子の若葉が、そこにいた。
「若葉…………?」
「春樹……ワタシは」
理解の追い付かない事象。自分一人では結論に達せないと判断した俺は、説明できそうな人物、即ち上役に視線を向けた。
「神としての任は解いた。これから彼女はただの宍戸若葉として……つまり、人間として生きるんだ」
「え? でもお前、役割を失った神は消えるって」
「なに言ってるのかな。僕は一度もそんなこと言ってないよ」
……確かに。あいつは俺の言葉に対して肯定も否定もしていなかった。
「神でなくなったからって、消えるとは限らない。神の力だけを抜き取る事も不可能じゃないよ。今回みたいなケースじゃない限りはやらないだけでね」
つまり、今回は何か理由があってそうしたという事なのだ。そうする程の何かが、若葉にはあった。
だが、その内容は分からない。それを知るべく、俺は質問を重ねる。
「じゃあ、何で」
「簡単だ。彼女の腹の中には、新しい生命が宿っているかもしれないからね。だから、僕は彼女を消すわけにはいかなかったという訳なのさ」
つまり、若葉は妊娠したかもしれないという事か? いつ?
若葉も俺もあれが初めてだったから、あり得るのは昨日の昼以降。
「でも、それじゃまだ子供が出来たかなんて」
「そう、分からない。僕は完璧な神様だけどね、それでも出来ないことがあるんだよ。神は、自分の役割を超えた行いは出来ないからね」
そういえば、俺の魂がケガレに蝕まれていた時に、若葉が似たようなことを言っていた。
あれは若葉や卯ノ花に限った話ではなく、神全てがそうだったのか。
「僕の役割は未来を見る事じゃない。彼女が妊娠したか、その子供がちゃんと生まれてくるかは分からない。だから、消せない。彼女は神に相応しくないけど、腹の中の命に罪はないからね。罪無き人間の幸せとか未来とか命とか、そういうものを奪う事は神にも許されていないんだよ」
「そう、なのか?」
「そうだよ。じゃなきゃ、君の天罰だって消すはずないだろう?」
つまり、こいつも人間の為に動いた結果として若葉は残された、という事になるのか。
何となく腑に落ちない。そんな俺の考えは、見透かされていたようだ。
「天罰をかけられていた君にとっては信じ難いだろうけどね、僕だって神だ。人間の幸せをいたずらに奪うつもりは無い」
そこまで言うと、上役とやらは表情を弛緩させる。
「あー、疲れた。堅苦しい話は終わりでいいよね。朝早くから呼び出されて僕も迷惑してるし、もう帰るよ」
そして、虎太郎の身体を乗っ取ったまま奥へ戻ってしまった。取り残された俺と若葉は、自然と顔を向き合わせる。
第一声は、謝罪の言葉だった。
「ごめんなさい、春樹。こうなると予測して、ワタシはアナタを利用したわ。隠し事もしていて……とにかく、許されないことをした。ごめんなさい」
「…………」
その返答は、言葉ではなく行動で示した。
若葉の身体を、強く抱き締める。
「いいよ。お前なりに考えてやった事なんだろ。それで今は、こうしてちゃんと生きてる。だったら、いい」
「春樹……」
「けど、人の命を人質にするのはやめた方がいいな」
「……そうね、もう二度としないわ」
そう言うと、若葉も抱き返してきた。ほっそりとした腕が、背中に回される。
「反省するためにも、ワタシに罰を与えてくれるかしら」
「罰、か」
下手な罰を与えたら、むしろ喜びそうだ。…………よし。
「分かった。罰として、俺と約束しろ。これからも、俺と一緒にいるって」
「……それは、前にも約束したでしょう?」
「したよ。でも、それは神としてのお前とした約束だ。さっき人間になったんだろ。だから、もう一度約束し直そう。これが、俺とお前の、本当の第一歩だ」
俺の言葉に、若葉は小さく肩を震わせていた。やがて、くぐもった声が聞こえてくる。
「…………これでは、罰になっていないじゃない。本当に優しいのね、春樹は」
「これ以外思いつかなったんだよ。それで、約束してくれるのか?」
少し間を置いて、返答があった。それはしっかりとした声音で。
「ええ、改めて約束するわ。ワタシは、アナタと一緒にいる。だから春樹、アナタも」
「ああ。俺も、若葉とずっと一緒にいる」
言葉はもういらなかった。音もなく、二人の唇が触れ合う。
一筋の風が吹き抜け、木の葉がざわめいた。その音色は、二人の新たな旅立ちを祝しているかのようだった。
Hシーン付きで逆移植されねーかなー
今回は本文も過去最長なら、後書きも長いです。少々お付き合いください。
まず、今回はアフターストーリーを1話書いたるわ、くらいの気分で書いてました。なので、今回の話で触れたのは本編で未解決だった問題についてです。
つまり、若葉は神のままでいられるのか?という点について。
これの答えは咲夜ルートで示されている通りならば、否であろうと考えます。なので理由も同じにしました。ただし消滅しない理由については、自己解釈を交えながら書いていました。初めて上役を真面目に書いたかもしれないです。
Hシーンは存在しないのでこれもまた作ってしまおうという心構えでいましたが、やはり難しいですね。特に若葉の反応は難題でした。
実際に本編を読んだ感じだと、静かに喘ぐんじゃないかという印象もあったのですが、彼女がドMであることを考慮すると、あえて大きく喘いで春樹により激しく責められようとするんじゃないかとも考えられたので、自分の中で解釈が対立してしまいました。今回は前者を採用しましたが、どちらが正解とも言えないのがもどかしいです。
それとHシーンのグダグダ感は意図したものです。二人のHはグダグダしてるくらいが丁度いいと、若葉ルートをプレイして思いました。だからどうにも力の抜けるやり取りをいくつも入れています。
ちなみに話の中でプレイしていたゲームなんですが、実は筆者はレトロゲームに疎いので、家にあったSFCとグラディウスⅢなら書けなくもないと思い採用しました。
どうしてⅢから?という疑問は、グラディウスを巡って現実に起こったある出来事と絡めています。知る人ぞ知るという話ですので、ここは深く考えなくても大丈夫です。
ゲームやるシーンは別になくても話にはなるんですが、若葉と言えばゲームですし、外せませんでした。
今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました。
誤字脱字・ミスの報告、感想等お待ちしております。