※この作品はR-18です。

短編置き場   作:バハルストスFF

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『のーぶる☆わーくす』より、兼元灯里とイチャイチャする話です。
 微妙にネタバレあるのでご注意を。時系列的には、初めての行為より後だと思っていただければ。


古本屋探訪記(のーぶる☆わーくす/灯里)

「ねえ匠。私、古本屋に行ってみたいのだけれど」

 ……また始まった。

「なんだよ、藪から棒に」

「だから、古本屋に行ってみたいのよ」

 何故、今なのだろう。いくらお嬢様とは言っても、灯里にも普通の生活をしていた頃があったわけで。その時に古本屋には行かなかったのだろうか?

 まあ、いいか。クレープの立ち食いも知らなかったんだ、きっとそういうことなんだろう。余計な詮索をする必要もないし。

「ちょっと待ってくれ、源さんの許可を取らないと」

「その必要はないわ。もう貰ってあるもの」

 相変わらず根回しの良いことで。そうなれば、あとは俺がどうしたいかが全てだな。

「お願い、匠」

 上目遣いで見上げながら、懇願してくる。そんなことをされたら、断れるわけもない。

「わかった、行こう」

 どの道、断る気もない。デートできるのは俺だって嬉しいしな。

 というわけで、古本屋デートという、何だか庶民的すぎるデートが始まった。

 

 駅前にある、有名なチェーン店。今回はそこに行くことにした。寂れた小さい古本屋よりこっちの方が長くいられるだろう、なんて下心もあったのだが、それは表に出さない。

「看板自体は何度か見たことがあるけれど、実際に入るのは初めてね」

「そうなのか?」

「ええ。私、本には不自由したことがないもの」

「……なるほど」

 住んでいる世界の違いが分かる一言だが、もう慣れた。そういうものなんだと、影武者をやって嫌というほど思い知っている。

「入るか」

「ええ」

 いちいち確認をしながら、自動ドアを抜ける。初々しさを感じながら入る店は、慣れている筈なのにどこか新鮮だった。

「へぇ……凄いのね」

「ここは結構大規模な店だからな。…………どうする? どこから見て回ろう」

「もちろん、端から端までよ。ほら早く早く」

「おわっ」

 気分上々な灯里に手を引かれ、軽くつんのめる。……たまには、こういうのもいいかもな。

 最初に辿り着いたのは、少年漫画のコーナー。

「あっ、これ知ってるわ」

 灯里が指さすのは、10年ほど連載が続いている人気シリーズだ。書店でバイトしていた頃、山のように積まれた在庫を並べるのに苦労したことを覚えている。

「読んだことあるのか?」

「いえ、ないわね。でも以前、タイアップ企画の相手として挙がっていたことがあって」

 やはりスケールが段違いだ。こんな世界の住人が俺の彼女なのだと思うと、不思議なこともあるものだ、と考えてしまう。

「あれ? でも、兼元系列の店でそんなことしてた記憶はないような……」

「ええ。結局その企画は流れてしまったのよ。今となっては失敗だったかもしれないわね」

「そんなもんか」

「そういうものよ。さ、次よ、次」

 隣は……少女漫画コーナーだな。って、あれ?

「なあ、あれって安綱先生じゃないか?」

「……確かに、顔はそっくりね。でも別人じゃないかしら? 安綱先生がこういう趣味をしている、なんてイメージないもの」

「そうかな……?」

 あの人、結構俗っぽい印象だけど。

 そんなことを思っていると、先生似の女性がこちらへと移動してきた。もしあの人が本当に先生だとすると、面倒なことになるかもしれない。さっきとは反対に、灯里の手を引いて隣の隣へと移動する。

 ここは……CD・DVDコーナーか。

「ねえ匠、ここって古本屋よね」

「ああ、そうだな」

「なのに、CD?」

「最近は本に限らず、色々置いてるんだよ。CDだってそうだし、ゲームとかも。所によっては家具を買い取る店まであるらしいぞ?」

「………………それ、本当に古本屋と言えるのかしら」

「まあ、そこは俺も疑問だな」

 そう言って、CDを物色し始める。だが、灯里のお眼鏡にかなうものは無かったようだ。

「ねえ。オペラとかないの?」

「そういうのは、専門店に行くべきだと思うぞ……」

 若干戸惑いながら、隣の隙間へ。実用書コーナーだ。

「ああ、お世話になったなあ、この本」

 一冊の本を手に取る。バイト時代に、しわくちゃになるほど読んだ本だ。

「そうなの?」

「色々バイトやってたから。こういう専門的な本は欠かせないんだよ」

 即戦力として稼ぐためには、一日も早く技術を叩きこむ必要があったからな。

 …………なんか、源さんとの特訓を思い出すな。死ぬほどきつかったが、今振り返ると良い思い出な気がする。

 棚に本を戻す。感慨深いものを覚えながら、また隣へ。

 それが、今日最大の失敗だった。

 隣の隙間は、成人向けのコーナー。目につくもの全てが、あられもない格好で肌を晒している。目の毒だ。

「きゃっ。ちょ、ちょっと、これ」

 時すでに遅し。灯里は一冊の本を手に取り、顔を赤らめている。

「ま、待て待て待て。ここはまずいだろ」

「で、でも…………ゴクリ」

 何故喉を鳴らす? 何故次々と本を手に取る? 何故マニアックなプレイの本ばかり選ぶ?

「資料……そう、資料なのよ、これは。資料はいくらあったっていいのよ」

「おま、何言って」

 疑問を差し挟む余地もなく、灯里は本を持ったままレジへと向かう。……ってヤバいってそれは!

 慌てて本をひったくる。そのまま元に戻そうとしたが、抵抗されてしまった。

「ダメよ! 貴重な資料なんだから!」

「待て待て! 女性がこういうのを持っていったら変な勘違いされるって!」

「でも茅明は買ってたのよ! 何冊も何冊も!」

 えっ。衝撃なんだが、それ。

 兎にも角にも、これを灯里に会計させるわけにはいかない。かと言って、このまま元に戻しても勝手にレジへと走るだろう。

 突き刺さる周囲からの視線を無視して、こう提案した。

「わかったわかった、俺が買うから。それでいいだろ?」

 刹那、灯里の表情が華やぐ。

「やった!」

 我ながら最低なプレゼントだ。それにどうしてこんな辱めを受けねばならないのか……

「もうお嫁にいけない…………」

 そんな冗談で現実から目を背けながら、いかがわしい本をレジへ。ああ、源さんに殺される……。

 どうにか会計を済ませて、そそくさと店を出る俺達。もう終わった、そう油断していた俺に、更なる追い打ちがかけられる。

「匠……、その、ね。この本に書かれていること……実践してみたいのだけれど」

 衝撃的なお誘いだった。中身が中古のエロ本じゃなければどれほどよかっただろう。

「……ははは」

 長い夜になる。そう予感しながら、俺達は家へと戻っていった。

 




 本当はワンライだったんですけど、70分もかかってしまいました。技量不足ですね。次回はもっとパパっと書けるよう頑張ります。
 
 余談ですけど、のーぶるでは灯里ちゃんが一番好きですね。
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