オーバーロード~至高のインキュバスが逝く、エロエロ珍道中~ 作:田 中太郎
室内を満たす濃厚な性の香り。
雌の甘ったるい発情臭と、雄の青臭い精臭。二つの臭気は交じり合い、むせ返ってしまうほど濃密さを醸し出している。
もし、第三者がこの現場に居たならば眉をひそめ顔を背けるであろう。
しかし、実際この場に存在するのは一組の男女のみ。一人は劣情に身を焦がし続け、もう一人は困惑しながらも明確な拒絶は示していない。
ならば、二人の行き着く先は決まったも同然である。
「ふふっ、こんなに射精しちゃって……それほど私のお口は気持ち良かったのかしらぁ?」
厭らしい湖上に尻餅を付きながら、挑発的な口上を述べるクレマンティーヌ。
しかし、その文面に反して声色には陶然とした響きが伴っていた。雪色の肌は艶やかな朱に染まり、猫科の動物を彷彿とさせる眼は爛れた欲望を垣間見せる。
そして彼女の視界に映る肉槍は未だ力強く反り起ち、女の劣情を刺激して止まない。早く、一刻も早く繋がりたい。色欲に犯された思考が、無意識の内に女体を突き動かす。
その可憐な口を開け、口腔から舌が顔を出した。
そして、青年へ見せ付けるかのようにして卑猥な踊りを披露して行く。何も無い空間を舐め上げ、舌先でこそぎ、浅ましく啜り取る。
口の端から唾液が溢れる事もいとわず、真っ赤な軟体はひたすら妖しい旋律を刻んだ。
チロチロと動き回る舌に、彼の視線が釘付けとなっていた。それと同時に彼女の聴覚は唾を飲み込む音を捉える。
彼の秀麗な容貌が、深紅の眼差しが、情欲の念によって彩られていく。
だが、青年はクレマンティーヌに手を出さない。明らかな欲情を抱いていると言うのに、未だ彼の瞳には理性の光が色濃く残っていた。
困惑と苦悩。
映し出される感情の色に、クレマンティーヌは待つ事が出来なかった。
手を出してくれないのならば、こちらから出向くのみ。そんな決意を胸に彼女はゆっくりと立ち上がる。
釣り鐘状の大きなふくらみが弛み、ツンッと尖った硬いしこりは幾何学模様を描く。
男の眼は、跳ね上がる蕾の軌道をなぞっていた。突き刺さる熱視線にむず痒さを覚えつつ、彼女は好機を読み取った。
すかさず己が手を伸ばして、彼の衣服を捲り上げる。
作りが分からず脱がす事も適わずとも、その肌を露出させる事は容易い。わっ、と驚きの声を上げた青年を尻目に漆黒の生地を胸元まで擦り上げて行く。
上質な衣に隠されていたのは、美しくもしなやかな肉体であった。
細身でありながらも鍛えられた筋肉は、如実にも彼女の眼前で存在感を露わにする。戦士としてのクレマンティーヌが告げる、美しい肉体であると。
一見すると厳しく鍛え上げられた筋肉という訳では無い。
しかし触れてみれば分かる、その密度と質量。あからさまな隆起こそ無いものの、硬さと反発力に溢れる筋肉はまさしく芸術。
引き締まった腹筋に触れ、形の整った胸筋へと指を滑らせていく。
ほぅっと感嘆の息を一つ吐いた。そんな青年の肉体美に夢中になる女戦士へ、もう一つの情報が脳内へと届けられた。
それは彼の体臭だ。
汗の匂いが入り混じったソレは、衣服と言う枷を外れて彼女へと殺到する。ズグンッと雌芯が疼いた。一瞬だけ浮かび上がった戦士としての己は、瞬く間に霧散し再び雌欲が姿を現す。
男の肉体に触れていた指先が震える。
今、自分が触れているのは立派な雄の身体なのだ。もし、この身体に自身の肉体を重ねたらどうなる事か。脳裏を過った想像に、女の胸が高鳴った。
「ほ、ほぉら……ぉ、おっぱい、引っ付けちゃうぞぉ」
期待の余りに舌が回らない。
浅い呼吸が何度も繰り返され、しとどに濡れた吐息が青年の肉体に吹き掛かる。薄紅色の野苺が、徐々に距離を詰めて行く。
興奮が興奮を呼び、クレマンティーヌは内腿で新たな湿り気を増やす。
ついに勃起した大粒の蕾が、その先端を肌色の肉体に到達させた。刹那、乳頭から湧き上がる鋭い快楽。汗でぬめる素肌の上で、疼き起つ苺が喜びに打ち震えていた。
「ふぅッ、あぅぅッ」
クレマンティーヌは歯を食い縛って沸き立つ雌欲を抑え込む。
ここで果ててしまっては勿体ない。この厭らしい乳首を、もっと押し潰して、もっとこねくり回して、もっと苛め抜いて、逝きたいのだ。
それに、と彼女は快楽に流されそうになる意識の片隅で呟く。
頭上から降り注ぐ熱視線。何も興奮しているのは自分だけで無い。その事実に女戦士は気が付いていた。熱いのだ、下腹部が。そこで対峙しているのは雄の象徴。
先程以上に雄々しく天を突く肉棒が、彼の興奮具合をクレマンティーヌに教えてくれる。
どう転んでもこのまま事が進めば、自分は彼とまぐわうであろう。むしろ今すぐ襲っても彼は受け入れてくれる、そんな確信が女戦士の中にはあった。
しかし、それでは面白くない。どうせならば両者合意の上で気持ち良くなりたいと、彼女は考える。つまり遠慮やためらいなど捨てて、本能の赴くままに繋がって欲しいのだ。
その為の布石、彼の理性を解きほぐし思う存分犯して貰うための前準備。
彼女は腕っぷしが強いだけの単なる狂戦士では無い。伊達や酔狂で漆黒聖典の一席を占めていた訳では無いのだ。
ただ、惜しむらくはこの青年の前において、全てが上手く行くと限らない点であろうか。
「ひぃうッ、くぅんんッ!」
鮮やかな乳頭が逞しい肉体を突く。
その度にジンジンと甘美な電流が胸を貫いた。溢れる声をどうにか噛み殺すものの、その切なさで彩られた響きは消せない。
敏感と言う次元はとうに過ぎている。耐え難い快楽で、眉間には幾重もの皺が寄り、苦しみに表情が強張る。見開いた目は、ただひたすら己と青年の接触点を凝視するばかり。
そのいじらしい必死さは、青年を誘惑しているとは到底思えないだろう。
むしろ、ひたすら自身の内側にすくう欲望を焦らし続けているようにしか見えなかった。そう、クレマンティーヌは、自身の肉体と感情に異常が発生している事実をまるで考慮していなかったのだ。
「んぁッ! んぐぅぅぅッッ」
今まで以上に鋭い快感が女体を穿つ。
乳頭が表皮の上を滑ったのだ。汗が潤滑油代わりとなったのか、勃起した先端が一筋の軌跡を描いて這い行く。
同時に派手な水音が彼女の陰部より奏でられ、腰がガタガタと空を切り出した。もう立っていられない、女体がそう言わんばかりに持ち主の意思に反して姿勢を崩す。上体が前に倒れ、そびえ立つしなやかな肉体へと。
――――待って。
クレマンティーヌの声無き主張は虚しも届かない。
腹筋と胸筋の間をくすぐっていた蕾が、その麗しい筋肉にめり込む。ビリッとした刺激、しかしそれも一瞬の事だった。
硬度があるにしろ崩れた上体を支えられる筈も無く、可愛らしい野苺は乳輪ごと豊満な果実によって押し潰された。声は上がらない、いや上げられなかった。確かに、ビリビリとした快感が女体の内側をのたうち回り、飽く事無く彼女を絶頂へ押しやっている。
だが、それ以上に青年の胸の中が恐ろしく心地良かったのだ。
安心、安堵、充足、言葉では言い表す事が出来ないほどの温かさにクレマンティーヌは包まれていた。
気持ちいい。
性的な快楽も勿論の事、人肌同士の接触が得も言われぬ気持ち良さを生み出しているのだ。彼女は両腕を青年の背中へと回す。
一歩遅れて彼の腕も、おずおずとクレマンティーヌの背に回り、その肢体を優しく抱き留めた。
ブルッと震えが走る。再び、女の肉体はオーガズムを迎えた。しかし、それは性的な快楽によってでは無い、心を満たす多幸感が女戦士を頂きへと導いたのだ。
静寂が室内を支配する。
それは好ましい空気を醸し出す静けさであった。これを機に彼女は腰を前方に押し出して、下半身すらも密着させてしまう。
二人の間に挟まれる逸物。
クレマンティーヌの下腹部に包まれる雄の証はとても熱く、強大な存在感を放っていた。しくしくと腹の底が疼く。
雄肉の位置する場所は、女芯の真上だった。
腹部越しに感じる雄々しき気配に子宮が、鳴き声を上げる。無意識の内に彼女は腰を振るった。ふるふると尻肉が左右に揺れる度に、己が腹筋を擦り立てる陰茎。
肉体越しに行われる疑似的な性交にクレマンティーヌは深いアクメを決めた。
女肉を貫く激しい快感、しかし子宮は果てしない寂寥感に身を震わせる。はらはらと涙が流れて止まない、壊れてしまう。
心は穏やかで際限ない多幸感で、肉体は怒涛の快楽と雌芯を穿つ虚無感の板挟みに会い、気が狂いそうであった。
「ねぇ……しよ」
「えっ……」
「もう、最後まで言わないと分からないのかしら?」
「でもさ……」
「いいじゃない。何を心配してるのか知らないけど、私はもう我慢出来ないの」
穏やかな会話が交わされる。
その内側では複雑絡み合う感情が激流の如く暴れ回っており、クレマンティーヌとしては言葉を発するだけで精一杯なのだ。それなのに青年の答えは思わしくない。
何を心配するというのか。女戦士には見当も付かなかった。
我慢の限界なのにどうして、クレマンティーヌは心中で泣き叫ぶ。明確な拒絶は見られない、恐らく押せば嫌々ながらも交わってくれるであろう。
青年も確かに自分の肉体で欲情してくれている。なのにどうして快諾してくれないのだ。
彼女には頑なに応じてくれない彼が理解出来なかった。しかしながら、青年がためらうのも仕方の無い事なのだ。
確かに会話だけを聞く限りは普段通りのクレマンティーヌである。
だが、その一方で普段の見た目とは大きく異なっていたのだ。静かに声すら上げずに泣き腫らすも、その瞳は劣情に染まり切り、醸し出す雰囲気は切羽詰まった余裕の無い代物。
出会って間もない青年であっても、現在の彼女が異常な状態にあると判断を下す程なのだから。
だからこそ、クレマンティーヌがあの手この手で誘えば誘うほど、青年は頑なに頷かず、その必死さに戸惑って心配してしまうのだ。まさしく悪循環と言えよう。
このままでは気が狂って死んでしまう。
そんな想いすら抱き始めた女戦士に、ようやく救いの手が差し伸べられる。
「本当に……本当に大丈夫?」
「ッ!!」
色っぽい唇が彼女への問い掛けを紡ぎ出す。
魅惑の音色に鼓膜を優しく震わせられた。ビクンッと肩が大きく跳ね上がる。脳内を染め上げる桜色の思考が一気に勢力を増した。小さく囁いた、ただそれだけなのにお預け状態の女体は激烈な反応を示してしまう。
クレマンティーヌは激しく頷きで応じた。
例え、青年の憂慮が自身の胸を激しく締め付けようとも、ここで退く訳にはいかない。彼自身、このまま拒否し続けても事態は好転しないとでも思ったのだろう。
未だに迷いが窺えるものの、彼は意を決したかのように一つ頷き返したのだ。
彼女を抱き締めている腕に、力がこもっていく。背中を掻き抱くその力強さに、女戦士は甘ったるい声を漏らす。
足が、地を離れる。
次いで、ふわりとした浮遊感の後にクレマンティーヌは寝台の上へと押し倒されていた。いや『押し倒された』と言うよりかは『優しく寝かされた』という表現の方が正しいであろう。
痛みも衝撃も無い、ただただ相手を思いやった繊細な手付きでの寝かし方。
純白のシーツを背に、彼女の胸は一際大きく高鳴った。興奮、期待、歓喜、様々な感情が心に浮かび上がっては入り混じる。
――――あぁ、とうとう抱かれるんだ。
クレマンティーヌ視界一杯に広がる雄の身体。
彼が自分に覆い被さっている、その光景に雌芯を震わせて、はしたなく濃厚な淫蜜を垂れ流した。そして雄肉を己が腹の上に感じ、自然と股が開いていく。
彼女は浅ましくも自身の意思で手を太腿に添え、彼の逸物を受け入れる態勢————正常位へと移行した。
その途端、辺り一面に撒き散らされる雌の濃厚な発情臭。女戦士の金色の性毛は多量の悦汁で濡れており、恥丘にべったりと張り付いていた。
そんな茂みの下で、女の秘裂が朱色の恥肉を外界に晒し出す。
ぷっくりと肉厚な二枚貝は完全に花開き、内側の肉門はその小さな身に白く濁った愛液をまとわり付かせていた。
奥でぽっかり空いた淫洞が、生々しく肉ヒダを震わせ雄の到来を今か今かと待ち望んでいる。
青年の紅瞳に色欲の光が鮮やかに表れていた。
男の欲情した視線を己が秘処に感じ、クレマンティーヌは初々しい生娘の如く頬を染める。厭らしく男を誘惑する自身の行動が今更ながらに恥ずかしい。
しかし、その羞恥の感情を心地良く感じている自分がいた。
そんな最中、雄々しい肉棒が動く。彼女はゆっくりと穂先で狙いを定める様を喰い入る様に見詰めた。真っ赤に充血し、膨れ上がった亀頭が恥丘の上を滑っていく。
雄の熱量に、ヒクヒクと肉壁が淫らかにうごめき、新たな淫水を湧き上がらせる。
会陰部を伝う恥汁の滝は、真っ白なシーツに劣情の染みを広げていった。そしてついに、穂先がしとどに濡れそぼった蜜壺を捉える。
触れた個所から無限に快楽が湧き出す。
女戦士は、うっと息を詰まらせた。先っぽが触れただけで、これほどまでに持ちいいとは思いもしなかったのだ。
性器と性器が軽く口付けを交わしているだけで、彼女は達しそうであった。
もし、本格的に繋がったらどれほどの快楽が生まれると言うのだろうか。本能的な恐怖と欲深い興奮にクレマンティーヌの心は染め上げられていく。
「いくよ」
「きて」
囁くように交わされた言の葉。
最早、二人の間に多くの言葉は必要では無かった。肉棒が、蜜壺に差し込まれる。焦らされ続け、トロトロに溶かされた筈の肉門が更に大きくこじ開けられて行く。
なんて大きいのだろうか。
彼女とて生娘では無く、性行為を何度も体験している。しかし、ここまで大きな雄槍は初めて出会った。凄まじい存在感にクレマンティーヌの顔が苦悶に歪む。
だが、その瞳は結合部から決して逸らされずに熱を帯びた視線を向けている。
だからだろう、彼女は己が頭上に影が差した事に全く気が付かなかった。急に視界へと入り込む美貌。彼女が何らかの反応を起こす前に、艶やかな唇が降り注いだ。
「んんッ!?」
クレマンティーヌの唇を塞ぐ謎の感触。
張りと柔軟性に富んだ温かな物体、その感触を彼女は一度経験していた。口付け、今回は青年の方から自発的に行われた。
ただただ重ね合わせるだけのバードキス。
驚きに見開かれた女の眼は、すぐに陶然とした光を灯す。同時に身体から余計な力が抜けて行くのが分かった。
あぁ、温かい。
胸奥がぽかぽかと、まるで春の陽気の如く優しい温かさに包まれる。刹那、強張っていた陰門が解れ、遅々として進まなかった結合が一気に深まっていく。
強大な穂先が膣壁を押し開き、灼熱の棒が肉ひだを削る。
待ち望んでいた性交の快楽は、凄まじい暴風となって女体へ襲い掛かる。迸る淫靡な間欠泉、その旋律に合わせてクレマンティーヌの喉奥が鳴る。
魅力的に張り出た腿肉へ、添えられて指が沈み込む。
植え付けられた五指の後が、彼女の悦びの深さを物語っていた。ズンッズンッと奥深くへ突き進む肉棒に、女戦士の視界で星が瞬く。
そして、ついに最奥に到達した時、クレマンティーヌは今まで一番の絶頂へと押し上げられた。
突風にさらわれる木の葉のように、軽々と舞い上げられていく感覚。ガタガタと震える肉体が、無意識の内に逞しい雄の存在へ助けを求めた。
両腕が再度、青年の背中へと回され、あらん限りの力でその身を掻き抱く。
無様にガニ股で開いていた脚は彼の腰に絡み付き、その身体ごと結合を深めた。二つの影が一つに交わる。豊満な果実は鍛えられた胸板に押し潰され、全く感触の異なる腹部同士が擦れ合う。
素肌の擦れ合いは優しい心地良さを、力強く押し潰された乳房は鋭い悦楽を、次いで逞しい雄の存在を一身に受け止める子宮がキュンキュンと甘い旋律を刻み込む。
雪原の如き白肌を艶めかしい情欲の朱色に染め上げて、彼女はオーガズムの悦びに晒されていった。
声も上げる余裕も無い結合。
肉体だけで無く精神も彼に蕩かされている。ずっとこのまま、彼と繋がっていたい。朦朧とする意識の中で、彼女は声に出さず呟いた。
交わっていた唇が離れる。
彼の方から顔を引いたのだ。なんで、そう言わんばかりにクレマンティーヌは退く青年を求めて追随する。刹那、コツンッと額同士がぶつかった。彼が額を出して押し留めたのだろう。間近で爛々と輝く紅玉が彼女の瞳を見据える。
「ごめん……そろそろ限界で……」
何が、と問うほど彼女は愚かでは無い。
ゾクッと妖しい感覚が背芯を走り抜けていく。交わったままの射精、それが何を意味するのか。その瞬間を夢想し、クレマンティーヌは軽い絶頂に至る。
潮が彼の下腹部を叩くが関係ない。
腰に回された足に力が入る。背中に添えられた手は彼を抱き締めて離さない。
「だして」
「えっ」
「中で、だして」
「でも……」
「欲しいの、お願い……大丈夫だから」
クレマンティーヌは懇願した。
理性の意色が宿ろうとした紅瞳に哀願とも言える視線を送り込む。周期からして月のモノは来ていない。そもそも、自分が子供を宿せる身体かどうかも分からない。
愛の結晶を求む為ではなく、ただただ彼の全てを胎内で感じたかったのだ。彼女はそんな想いを胸に宿す。一方で逡巡した青年は、決意したのか軽く頷き、真剣な眼差しを向けながら言葉を告げた。
「頑張るよ、俺」
「えっ」
脈絡の無い言葉に今度はクレマンティーヌが疑問の声を上げた。しかし、そんな彼女の様子なんてお構いなしに青年は言の葉を紡いだ。
「取り敢えず、もし子供を授かったら男の子と女の子、一人ずつがいいな」
「えっ」
「責任、取るよ。俺だって男だ。こんな可愛い女の子にそこまで言われたらね」
陰り無き眼。嘘偽り無い心のこもった告白。
衝撃が、色香に溺れた彼女の理性を呼び覚ます。彼とって自分は、クレマンティーヌという名前の単なる女の子、そのような認識。言葉に言い表す事の出来ない感情が、心を掻き乱す。
ぐるぐると意味を成さない思考で頭が一杯になり、そして――――クレマンティーヌは自然と微笑みを浮かべた。
なんだか、どうでも良くなっちゃった――――
胸中に巣食っていた闇は決して晴れた訳では無い。
しかし彼という存在によって、その程度の事で気に病むのが阿保らしくなったのだ。クスクスと笑う彼女は実に愉快な気分であった。
「ふぅん、じゃあ本当に出来ちゃったらどうするの?」
「まずは赤ちゃんの名前を二人で考えよう」
「ふんふん、それで?」
「男の子と女の子、どちらの名前も考えるんだ。あとは赤ちゃんの服と、マイホームの確保かなぁ」
「まぁ、いいんじゃない」
深く繋がりながら、そして性的な快楽を得ながらも他愛も無い会話に興じる二人。
気持ち良く、心地良く、楽しかった。心の底から今、この時間が人生で最も充実している。そんな想いがクレマンティーヌの中で生まれる。
欲しい。彼女は胸中で想う。
彼と共に過ごす時間が、彼に与えられる快楽が、そして彼自身が欲しい。花園の最奥で、艶やかなフレンチキスに興じる子宮がブルリッと震えた。
そう、その為にもまずはやる事がある。
「じゃあ、その為にも……ねぇ」
クレマンティーヌは猫撫で声で挑発的な流し目を送った。
青年は無言でキスを施し応じる。チュッと鳴り響くリップノイズ。相手を想う慈しみに満ちた口付けの後、どちらともなく腰を動かし始める。
ゆっくりと引き抜かれて行く肉棒。
大きく張り出た傘が、膣壁をこそぎ削り、得も言われぬ快感を彼女に与えて行く。お返しと言わんばかりに蜜壺に力を入れ、雄槍を締め付けた。
ギリギリまでひり出された逸物。
掻き出された淫肉は硬い幹にへばり付いたまま、外界に顔を出す。鮮紅色のうねりが新たな恥汁を滴らせ、二人の結合部をびしょびしょに濡らしていく。
次いで、男の腰が突き出された。
再び膣道を穿ち、雌肉を巻き込んで熱いクレパスへと潜り込んで行く雄の証。脳天を直撃する悦楽に彼女は呻いた。先程以上の速度と力強さで最奥を突かれた時は、数瞬の間 気をやってしまったほどだ。
そうして続くピストンは時間が経つにつれその速度を増して行く。
鳴り響く卑猥な水音は、生々しい雌臭を伴い奏でられる。鋭い突きに息を詰まらせ、力強い引きに歓喜の悲鳴を上げる。
シーツは水気を吸い切れなくなり、彼女の臀部を中心として二つ目の水溜まりが形成された、
ギシギシとベッドのスプリングが軋みを上げる度に、女体は悦びに包まれる。
汗まみれの素肌が織り成す心地良いさに、女は夢中となった。
たわわに実った乳房はクッション材のようにして、逞しい胸板に潰される。横乳が二つの肉体の狭間よりはみ出す光景は、とてつもない厭らしさを醸し出す。
恥丘の上では金色と漆黒の茂みが絡み合い、その狭間より飛び出す雌の淫突起を刺激して止まない。
パンッパンッと甲高い破裂音は雄と雌の交尾がどれだけ激しいかを物語る。噴き出す愛液は白く濁り、二人の性器にこびり付く様はまさに淫靡と言えた。
「んぁッ、あぁッ、あぅぅッ」
息継ぎの為に上の結合は解かれ、雌の嬌声が室内にこだまする。
私ってこんなに厭らしい声が出せたんだ――――
彼女は自身の黄色い悲鳴に、どこか他人事のような感想を抱く。
そこに含まれる色香は熟れた果実の如き甘さと、生々しさを伴う。自分の口から飛び出す、性的な鳴き声にクレマンティーヌの興奮は否応にもなく昂って行く。
ボルテージを上げて行く女の喘ぎ声。
その声に中てられたのか、青年の腰遣いがより深いモノへと変化した。唐突に目の前で稲妻が走る。ひッ、と短い悲鳴と共に熱い飛沫が男根を濡らす。
幅広のカリ口が恥丘側の肉壁を削ったのだ。ゴリゴリと肉ヒダをこそいでいく感覚に彼女は深いアクメを味わう。
「こ、ここが快感のツボッ、らしいんだッ」
「ひッ、ひぃッ! し、知らないッ! こんなの知らないのぉッ!!」
「うぅッ、気持ちッ、良くないッ……かなッ」
「い、いやぁッ、お、おかしくッ……おかしくなっちゃうぅぅッ!!」
拒絶の言葉がクレマンティーヌの口から飛び出す。
しかし、その声色には明確な悦びによって彩られていた。その事を察した青年は、そのツボを重点的に責め続けていく。
何度も何度も淫肉が削られる度に性感が頂へと舞い上げられ、間欠泉の如く湧き出す潮吹きが二人の間を汚す。
常軌を逸したオーガズムの嵐。余りの快感に心臓が活動を停止してもおかしくないほどだ。そんな悦楽に晒されているにも関わらず、クレマンティーヌは意識を失う事すら無い。
経験した事の無い法悦を前に、彼女はただただ鳴き喘ぐ事しか出来なかった。
雄の腰遣いがより一層激しさを増して行く。女の痴態に興奮したのか、はたまた快感に狂う様をもっと見たいのか。どちらにせよ、甘美な電流がクレマンティーヌの胎内を暴れ回る事に変わりない。
ザラザラとした恥丘側の壁を擦られれば、生理的な排出感に似た悦楽でその身を犯された。
腰を突き出し、恥丘ごと肉鞘を押し潰されれば、身を引千切らんばかりの快楽電流で焼かれる。
逞しい胸筋で苛められた続けた乳首は、ジンジンと痛痒い心地良さを持ち主に捧げる。
「お、お願いッ!! おねがいぃぃッ!!」
何をお願いしているのか、自分でも分からない。
止めて欲しいのか、はたまたもっと求めているのか。もしかしたら相反する願い二つとも、叶えて欲しいのかも知れない。
ツラい、でも気持ちいい。
止めて欲しい、でももっと感じていたい。
その口から上がる拒絶の悲鳴。
しかし、朱色に染まる肉体は甘い感覚に震え、喜ぶ。正面から彼を受け止める腰は、更なる快感を求めて厭らしく跳ね上がる。
弾力に富んだ巨尻は、その深い谷間に悦汁を湧き上がらせた。
そして、その陰にひそむ菊の花は、熱烈な性交にピクピクと可愛らしくうごめく。全身で狂宴の舞いを踊る女体は、室内照明の下で艶やかに照らされる。
嫌々と首を振る度に、金色の頭髪は宙を舞い、汗で額に張り付く。まさしくその一挙手一投足は浅ましく、厭らしく、いじらしい。
膨張を始めた亀頭に、彼女はよがり声を上げて恐悦した。
男の腰が震え始める。終わりが近いのだ。本能で悟ったクレマンティーヌは、最後の力を振り絞って青年を受け入れる。
「うぅッ、もうッ、射精しそうッ」
「きてぇッ!! 私もッ 私も一緒にッ!! イグがらぁッッ!!」
「うッん! い、一緒にッ、一緒にイこうッ!」
「あぁぁぅぅッ!! イぐうぅぅッ!!」
粘着質な水音と連続する破裂音。
二人に声が重なり、合わさった身体はまるで元々一つであったかのようにシンクロする。果てしない快感の中で、クレマンティーヌは達した。
それと同時に、青年が最奥で腰を痙攣させる。
ビクンッと脈動する逸物。先端から噴き出す白濁液が子宮口にぶち当たった。ゾクゾクッと妖艶な疼きが彼女の中で爆ぜ、意識が酩酊する。
クレマンティーヌは雄の精によって染め上げられて行く感覚を噛み締めた。
ビクビクと自分の胎内で男根が震える感触が得も言われぬ心地良さを生み出すのだ。甘美な電流に、彼女は更なる頂きを見る。
こんな気持ちいいセックス初めて――――
今まで経験して来た性行為がまるでオママゴトにしか思えない。
性的な快感も、心の充足感も、そして心身に溢れ出る多幸感も、全てが愛おしい。ぎゅっと青年の身体を強く抱き締める。
「……すごい、まだ出てる」
「その、ものすごく気持ち良くて……」
「私も……今までの人生で一番、きもちよかった……」
「ほんとう?」
「ほんと」
抱き締め合ったまま交わされる言の葉。
些細な会話がこんなにも安心感を覚えるなんて思いもしなかった。クレマンティーヌは彼の顔を見詰める。未だ射精の快楽で染まる表情は、どこかあどけなさが前面に出ており、とても可愛らしく感じられた。
クスッと彼女は笑う。
そして抱き締め直した手で、青年の頭を優しく撫で回した。艶やかな髪の触り心地がとても良く、たったそれだけの行為で心が温まる。
はぁ、と彼女は熱い吐息を零した。
「なんだか……気恥ずかしいや」
「ふふっ、実は私もー」
「ほんとう? 俺たち気が合うね」
「そうかしらぁ? 本当に気が合うなら私の考えてる事、分かるぅ?」
子猫がじゃれるようなからかい。
彼は何も言わず自信満々な、子供っぽい笑顔で唇を近付けて来た。正解、彼女は心の中で呟いて応じる。
チュッと軽やかな水音が鳴り響く。
上下共に繋がったまま、穏やかな時間が過ぎて行く。いつの間にか青年の射精は収まっていた。しかし、その肉棒は未だ硬度を維持したままである。
ドクンッとクレマンティーヌの心臓が高鳴った。
期待感で胸が躍る。唇を離し、自身の細腰を彼へ押し付けながら女戦士は口を開く。
「まだ、元気じゃないのぉ。クレマンティーヌ様の胎内、そんなに気持ち良かったのかしらぁ」
「うん、とても素敵だった。それも今まで生きて来た中で一番だったよ」
「ふふっ。じゃあ、その一番を更新してあげようかなぁ」
「それだったら、俺も更新できるように頑張らなくちゃ」
「そうね、それじゃあー……これから私の事を名前で呼んだら、シテ上げてもいいかなぁー」
そんなやり取りで、彼がクスッと笑った。
大人びた美貌が、天真爛漫な子供の笑顔を見せるのだ。青年の新たな一面が見れて、彼女の高揚感は否応にも無く高まって行く。
彼は自身の鼻先をクレマンティーヌに擦り付けながら言う。
「クレマンティーヌ」
愛おしげに、慈しみをこめた言の葉。
ぶるりと、彼女の心身が喜びに打ち震えた。あぁ、なんて楽しいのだろうか。なんて嬉しいのだろうか。何気ないやり取りがこんなにも幸せなんて。
彼女は微笑んだ。
そして新たに湧き上がった欲求を彼に向けて言う。彼は必ず受け入れてくれる、そんな確信を持ってクレマンティーヌは他人に初めて甘えた。
「うーん、まぁまぁねー」
「うーん、まぁまぁかー」
「そうねぇ……お兄さんの名前も教えてくれたら考えちゃうかもぉ」
「俺の名前? 俺の名前は――――」
穏やかな空気漂う室内で、あどけない笑顔を見せるクレマンティーヌ。
彼女は今、人生で最高と言える時間を堪能するのであった。
『もうッ! 本当に心配したんですからね! あなたの事だから万が一すら起きない事は容易に想像できますが、生きてるか死んでるかくらい報告してください!』
『ごめんてモモちゃん! このとーり!』
『まったく……それで何かしらの成果は得てるんですよね。もったいぶらず教えて下さいよ』
『おうおう、任されよ。俺たちの墓近くにカルネっていう集落があるんだってよ。んで、今そこに向かってる所さ』
『集落、ですか。早くも見付ける辺り、流石というか何と言うか……それにしても墓って……』
『とりま、良かったらそこで合流しようぜ。外の空気は美味いし、景色はいいし。俺だけじゃなくモモちゃんも十二分に堪能してくれ!』
『……あ、ありがっ、とうございますッ……』
『あ、そうそう。俺、もしかしたら子供授かるかもだから、その時は出産祝いよろしくー。んじゃ、通信終了ってな!』
『あ、そうなんですね! おめでとうござ――――――――は? ちょ、おまっ、えぇ!?』
クレマンティーヌ出会い編~完~
次回、カ〇ネ村編。
※5/6、少し加筆しました。