堕ちた少女のプロローグ
“好きな人との行為じゃないと感じない”
そんなデタラメを言ったのは一体どこの誰なんだろう。少なくとも、その言葉は私には適応されなかったみたいだ。
「オラァ! もっと腰降ってみろ!」
「はぅっ⋯⋯うあ、かはッ!!♥️♥️」
断続的に突き入れられる肉棒に、私はもう何度目かも分からない絶頂を覚える。
しかし私を犯している男は、こちらの都合など知ったこっちゃないと言わんばかりに腰を打ち付けてきた。
薄暗く、石の壁と鉄格子で囲まれた地下牢。
周囲は精液と愛液の混ざったような濃厚な性臭が立ち込めている。それは、私たちがもう何時間も交わり続けていることを示していた。
ろくに掃除もされていない檻の中で、私は今日も犯されていた。
「はあッ♥️⋯⋯んぅ♥️」
「俺より先にイッてんじゃねぇよ、この淫売がぁ!」
未だ絶頂が抜けない身体に男は容赦なく腰を打ち付けてくる。
疲労と心労で抵抗できない私は、ただそれを受け入れることしか出来ない。
こんなことになったのも、私が甘かったせいなのだ。
異世界に転生したことで舞い上がり、調子に乗ってしまった。自分が“チート”とか、“ご都合主義”なんて言葉に守られた主人公だと思ってしまった。
それが私の犯した罪だ。
◆◆◆
私が前世の記憶を取り戻したのは、3歳になってからすぐのときだった。
朝起きたら、何の前触れもなく突然思い出したのだ。
その記憶によると、私はこの世界に生まれる前は“地球”と呼ばれるところで暮らしていて、高校二年生のときに交通事故で死んだらしい。
横断歩道を渡る際に、信号が赤なのにも関わらずトラックが突っ込んできたことを鮮明に覚えている。痛みを感じた記憶はないので、多分即死だったのだと思う。これが私の日本での最後の思い出。
こっちの世界での私は、採掘が盛んな村で生まれた。貧しかったけど、優しい人達の多い良い村だった。
母親は猫人族──猫耳としっぽが生えた獣人の一種──であり、母親の血が濃く受け継がれたのか私も猫人族だ。
前世の記憶が戻ってからすぐのときは、頭の上の猫耳とお尻のあたりにあるしっぽに随分と驚いた。
ラノベやアニメで獣耳を目にすることはあっても、まさか自分が実際にそうなるとは思ってもいなかった。
また、さらに驚くべきことに今世の私の髪は銀色だ。なんとこっちの世界では、赤や青、金など、皆カラフルな色の髪をしている。
そして逆に黒髪の人間は少ない。というかこっちに生まれてから一度も見たことがない。
数百年前に人類を救ったとされる“勇者”は黒髪だったらしいので、まったくいないことはないんだろうけど。
まぁとにかく、私は創作で人気の“異世界転生”をしてしまったわけだ。
しかもよく調べてみると、この世界には“魔法”があったり、“魔物”がいたりするらしかった。
まさにライトノベルの世界だ。
私の一番の失敗は、ここで自分がアニメの主人公かなんかだと思い込んでしまったことだ。
“主人公補正”とかで無双できると思っちゃったわけ。
この世界はまだ蒸気機関すら発明されておらず、中世ヨーロッパ程度の技術力しかない。
そこで愚かな私は前世の記憶を使って知識チートをすることを選んでしまった。
21世紀の地球の科学力を安易に広めてしまったのだ。
これがいけなかった。
近代医学を取り入れた応急処置の方法。
効果的な肥料の作り方。
土魔法に頼らない農業の方法論。
ちょっとした解熱剤。
前世で雑学に強かった私は持ちうる知識を片っ端から広めてしまった。
初めのうちはただの“変わり者”とか“デタラメを言う子供”で済んでいたのだが、これらの知識が正しいことが判明するにつれて周りの目は変わってきた。
なにせ幼い子供が誰も知らないようなことを平然と語るのだから。
当然のように、危険人物扱いされた。
周囲からは“邪神の使徒”や“鉄の魔女”などと言われた。
私は異端者として王国に囚われることになったのだ。
そこからはお察しの通り。
王城の地下にある牢屋で、毎晩のように看守に犯されている。
こっちの世界には犯罪者を守る法律などない。
檻に入れられた囚人は、看守に逆らえないのだ。
私が“鉄の魔女”と呼ばれ地下牢に連れられてから今日で3週間。初めは痛いだけだったこの行為も、今ではただの快感だ。
看守が怖い。
泣き喚いても表情を変えない看守が。
牢屋が怖い。
日光の差さない暗く冷たい地下牢が。
自分が怖い。
頭では嫌がっても身体が悦ぶ自分が。
夜が怖い。
私が私でなくなる夜が。
怖い。明日が来るのが怖い。
毎日が怖い。
だから、もしも神様がいるのなら
いや、神様じゃなくてもいい。誰でもいい。
だれでもいいから
たすけて