わたしは朝が嫌いだ。
自分の醜さを突き付けられるような気分になるから。
日本にいたときでは考えられない、豪華なベッドで目を覚ます。手触りのよくて、高価そうなふわふわとした布団の天蓋つきのベッドだ。
下腹部に不快な感覚が広がっていることに気づく。しかし、わたしは「またか」としか思わなかった。
なんてことはない。こっちに来てからは三日に一回のペースであることだ。
布団をめくると、そこには薄いネグリジェを押し上げるように固くなった“男性器”があった。
わたしの予想した通り、夢精しているようだ。
「⋯⋯っ!」
泣きそうになる気持ちを唇を噛んで押さえつける。
どうしようもなく惨めだった。
“アイツ”と同じものが生えていることも、寝ている間に射精してしまったことも。
“アイツ”は最低な父親だった。
まだ10にもならないわたしの純潔を奪い、抵抗するわたしを見て喜ぶようなクズだった。
酒に溺れ、母さんを傷つけ、職にもつかない。
絵に描いたような下衆野郎だった。
母さんだってそうだ。口ではやめてと言いながら、本気でアイツを止めようとしない。強姦されるわたしを見ても、ただ泣くだけ。離婚する行動力も、抵抗する勇気もない。
本当にお似合いの夫婦だった。
わたしはアイツらみたいな人間には絶対ならない。
そう、決めたはずなのに⋯⋯。
「わたしは、また夢で⋯⋯」
こちらに召喚された時にこの身体になってから、即ち“半陰陽”になってから、毎日のように淫夢を見る。
内容は様々だ。
誰かに犯されたり、誰かを犯したり。
夢の中のわたしはいつも淫らな獣のようで、自分の本性は“アイツら”と同じだと言われている気分になる。
しかも最近は特に酷い。
ここ数日の夢に出てくるのは、魔女牢に囚われた銀髪の少女、アリアだ。
夢の中のアリアは、わたしの腰の動きに合わせるように嬌声を上げた。
強く突けば大きく鳴き、弱く突けば小さく悶える。
素早く突けば涙を溢し、遅く突けば可愛く蕩ける。
それはまるで極上の楽器のようで、抗いがたい蠱惑的な魅力を持っていた。
アリアの喘ぐ顔がみたい。
アリアを淫靡に乱れさせたい。
アリアを自分だけのものにしたい
アリアを、この手で汚したい。
そんな醜い欲望がわたしの中にもあるのだろうか。
「そんなことは、ない」
口に出して否定する。
アリアは私にとって妹みたいな存在で、こっちの世界で出会えた唯一の優しさだ。
こんなのは一時の気の迷いだと言い聞かせながら、わたしは濡れた衣服の処理をした。
◆◆◆
わたし達勇者は、朝食はまとまって食べることになっている。各勇者がどれだけ強くなったか報告しあったり、大臣から現在の魔物達の動向を聞いたりするためだ。
「ケンヤさんは昨日、オークを倒したとお聞きしましたわ? オークはゴブリンよりも遥かに強いのに⋯⋯。流石はケンヤ様ですわ!」
食堂に黄色い声が響き渡る。赤い髪をツーサイドアップにしたつり目の王女、ミラーカだ。
剣勇者であるケンヤの腕を抱き、胸を押し当てながらわざとらしく彼を褒め称える。
「いや、俺なんかそんな大したことはないよ。それよりもマホトの方が凄いじゃないか。ついに上級魔法を覚えたんだって?」
日本人らしい薄い顔をデレデレさせながらも、ケンヤは魔勇者マホトに問いかける。
「まあね。“リカバリー”っていうんだ。10分間自分と自分の触った相手を回復し続けるっていう⋯⋯。まぁ、僕が傷つくなんて想像できないけどね」
地味な顔つきのケンヤとは対照的に整った顔をしたマホトは、自慢げに答える。その目はミラーカを捕らえており、少しでも彼女の気を引こうとしていることは明らかだった。
「皆さん凄いですよ。僕なんか全然で⋯⋯」
弓勇者であるヨーイチ、前の二人の勇者とは違い成人した大人である彼は、剣勇者と魔勇者を眩しそうな目で見ていた。
「そんなことないですわ! ヨーイチさんだって弓の腕前では並ぶ者のいない才能をお持ちですもの!」
ミラーカはヨーイチをフォローするように言う。
そんな会話を横目に、わたしは一人影を薄くしてテーブルに並べられたソーセージを口に運ぶ。
アリアに渡す為に、いくつかをこっそりアイテムボックスに入れることも忘れない。
なんとか肉料理を手に入れることが出来た。アリアは他に何を食べたがるだろうか。いっそパエリアとかの米料理なんてどうだろう。元日本人なんだから米を持ってったら喜ぶかもしれない。
わたしはなるべく不自然に見えないように、パエリアをアイテムボックスに突っ込む。
「ヒナタは何か成果とかなかったの?」
突然声をかけられ、体がビクッとする。
マホトが話を振ってきたのだ。
「いい加減勇者らしいことしないと、追い出されちゃうよ? 邪淫の勇者さん」
見下すようなマホトの声。
マホトはわたしが昨日も何も成果をあげられなかったことを分かった上で言っているのだろう。
「言っておくが、俺はヒナタのことを勇者だと認めたつもりはない。あんな怪物みたいな体、少なくとも普通の人間じゃない」
わたしが黙っていると、ケンヤが真面目そうな声で呟いたのが聞こえた。気にしないフリをしながらもう一度ソーセージを食べる。不思議なことに、味がしない。
「まあ、ケンヤさん。いくら邪淫の勇者だからと言っても怪物扱いは酷いですわよ? あんなのでも一応勇者として召喚されたのですから」
なんでこの人達はもっと有意義な話をしないんだろう。わたしのことなんで放っといてくれれば良いのに。
何を言っても反応しない私に白けたのか、勇者達の会話が止む。しかし睨むような目線だけはわたしに集中したままだ。
もうちょっとアリアの食料を調達したかったけど、仕方ない。わたしは無言で席を立ち、逃げるように食堂から出た。
食堂を出てからしばらく歩き、わたしは中庭にたどり着いた。
この王城の中庭はとても広い。
おそらく、わたしが日本で通っていた高校のグラウンドくらいの広さはある。さらに王妃様の趣味でそこら中に常緑樹や果樹が植えられているため、見通しも悪い。
お陰でわたしが戦う訓練をするには打ってつけの場所である。わたしの戦う姿は誰にも見られるわけにはいかないから。
アイテムボックスから剣を取り出す。
無駄な装飾のない、敵を殺すための簡素な長剣。
片手持ちと両手持ちの両方に対応したバスタードのような設計になっており、軽快な立ち回りから鈍重な一撃まで様々な用途で使用できる。
まずは両手で柄を握り、正眼に構える。
ゆっくりと深呼吸し、意識を剣先に集中する。
剣が段々と手に馴染んでいき、無駄な力が抜けていくのが分かった。
「はぁ!」
上段に構え、上から下へと勢いよく振り下ろす。空気を切り裂く音が耳に入る。
もう一度剣を振り上げ、意識が途切れないように一息に下ろす。
わたしに稽古をつけてくれる人はいない。だから、独学で強くなるしかない。
だだっ広い中庭で、一人素振りをする。一刀一刀に最大の集中を込めて、見えない敵を両断する。これをひたすら繰り返す。
息が段々と上がってくるのが分かった。全身が火照り、鼓動が早くなる。それでも剣を振るう。わたしが剣を振れなくなるその時まで。
剣を振る度に夢のことが頭をよぎる。
わたしがアリアと交わる夢。小柄で華奢なアリアを抱いて、下衆で卑しい欲望をぶちまける夢。
吐く息がどんどん湿ってくる。
唾液が粘性を帯びてきて、肉棒が固く大きくなっていく。
「んぅ⋯⋯♥️ 」
声が漏れる。素振りをしているとは思えない、高く淫らな声。
それでもわたしは耐える。
耐えてひたすら剣を振る。
まだ負けない。まだ戦える。
素振りを始めてから一時間がたった。
頭が朦朧とし、思わずへたりこむ。息がどうしようもなく熱っぽい。
今のわたしは、誰がどう見ても発情しているだろう。仕方ない、そういう体質なのだ。
わたしが邪淫の勇者と呼ばれるのは、ただ半陰陽だからという理由ではない。むしろ一番の原因は『戦うほどに性欲が制御出来なくなっていく』という体質のせいだ。
わたしは、剣を振ったり魔法を使おうとするほどに発情する。戦闘に関することをするほど、胸の中に抗いがたい欲求が生まれるのだ。
わたしが勇者として召喚されてから初めての訓練で、わたしは大勢の人達の前で醜態を晒した。
騎士団長の指示に従い勇者四人で剣の素振りを行っていたときのこと。素振りの中で段々と発情してしまったわたしは、自分の身体を押さえられずにその場で自慰をしてしまった。
周りに他の勇者や騎士団の人達、そしてミラーカ王女がいたにも関わらずだ。みんなとても気持ち悪がって、わたしのことを怖がるようになった。
当然だ。半陰陽というただでさえ気持ちの悪い身体で、その上自分の性欲をコントロールできていないのだから。
それ以来、わたしは一人で訓練している。
本当は戦いたくない。剣を握るのが怖いし、魔法を使うのも怖い。自分を抑えられなくなるから。
それでも戦うことを止めるわけにはいかない。わたしの中に潜む穢らわしい欲求から、逃げるわけにはいかないのだ。わたしは“アイツら”とは違うと証明し、自分の淫欲に打ち勝つため。
「はぁ♥️ はぁ、んうぅ♥️」
なのにこのザマはなんだろう。
確かに毎日の練習のおかげで、日に日に欲望に抗える時間は増えてきた。しかし、それでもたった一時間で立つことすらままならなくなる。
気がついたときには、わたしは着ていたズボンとパンツを脱ぎ捨てて無心で己の肉棒をシゴいていた。
頭の片隅にある冷静な部分が、自虐的に自分を見下ろす。“所詮わたしもアイツらと同じか”と。
「はぁ、んあぁ♥️ ああっ♥️」
肉棒からヌルヌルとした液体が滲み出る。下半身に癖になりそうな快楽が広がり、わたしは自慰の速度を速める。
「ふわあぁ♥️ ああぁ、んぅあ♥️」
気持ちいい。
何もかもどうでも良くなるくらい、気持ちいい。
自己嫌悪と悦楽が脳内を占める。自分が上り詰めていくのが分かった。
もうすぐ、イキそう⋯⋯!
「何をしてるんですの?」
突然、背後から声が聞こえた。
聞きなれた女性の声。ミラーカのものだ。
「なるほど。他の勇者様方は魔王を倒すために努力しているなか、自分は誰にも見えないところでオナニーですの。流石は邪淫の勇者ですわね」
「んぅぅ⋯⋯♥️ うる、さい!」
赤い髪を揺らし、人を小バカにする笑みでわたしを見下ろすミラーカ。
とてつもなく情けない気持ちになるも、わたしの手は自慰を止めてはくれない。
「この国の王女を前にしてもオナニーし続けるなんて、惨めにもほどがありますわね。まるで発情期の猿のよう」
「ぁああ。はあぁ、んあぁ♥️」
悔しくて涙が出てくる。
自分が世界で一番汚ならしい人間であるような気がした。
絶頂が近づいてくる。快感が弾け、精液を吐き出す瞬間が間近に迫る。腰がくねくねと動いて、よだれが口から溢れる。
「うあ♥️ あぅ、ふああ!♥️」
もうすぐイク。
王女の目の前で、浅ましく自分をシゴきながら。
声を我慢しようとすることすら出来ず、頭が真っ白になりながら。
絶頂感が肉棒を駆け上がり────
「だめですわよ?」
突然、肉棒をシゴく手を捕まれた。
王女とは思えない力でわたしの手首を握り、陰茎から離される。
イク直前だった男性器は、ビクビクと悶える。
なんで?
なんでイかせてくれないの?
「“なんでイかせてくれないの”って顔してますわね」
「ふぅーっ、ふぅーっ♥️あぅ⋯⋯♥️」
イキたい。
早くイキたい。
もう一時間以上我慢したんだよ?
もう良いじゃん! わたし頑張ったよ!
お願いだから、イかせてよ⋯⋯!
「どうせなら、わたくしの手の中で射精して見ませんこと?」
「──っ!?」
ミラーカは誘惑するようにわたしに言った。顔には真意の読めない不気味な笑みが浮かんでいる。
手の、中で?
それってどういう⋯⋯?
「わたくしの手コキで、びゅーびゅー射精して見ませんかって言ってるんですのよ?」
ミラーカの手で射精⋯⋯!
したい。
射精したい。
あの柔らかそうな白い手で、射精したい!
「する! ミラーカの手で射精する!!」
「ぷっ、アハハハハハッ! 素直ですわね! そんなに必死になって、恥ずかしくないんですの?」
なんでも良い、早く射精したい。
イキたい、イカせて?
「ミラーカ、おねがい早くイカせて? もう我慢できないのぉ!」
「はいはい、イカせてあげますわよ? 邪淫の勇者様?」
ミラーカの手がわたしの亀頭に触れる。
想像を遥かに越える刺激に、思わず背中が反り上がる。
「ひゃあ!?♥️♥️」
「はぁい、今シコシコしてあげますからね~」
嘲るような声とともに、片手で亀頭、もう片方の手で竿の裏筋を刺激される。背骨にくすぐったいような甘さが生まれ、目の前が真っ白になる。
「ふわぁあ♥️ いあぁぁ!」
腰が抜けておしりをペタンと地面に着けたわたしに、ミラーカは追撃する。先端を擦り、カリを刺激される。
「ああぁ、んああああ!!♥️♥️」
「あれ、もうビクビクしてますわよ? まさかもうイキそうですの?」
「あぅう♥️ いやぁぁぁ!♥️」
ついさっきまでイキかけてたせいで、もう絶頂が近づいてくる。下腹部にもどかしさが充満して声が腰が跳ねる。
「ほら、イってしまいなさい! 浅ましく猿のように射精してごらんなさい!」
「うあああああああああッッ♥️♥️♥️ 」
────ビュルルルル!
圧倒的な快楽。
耐え難い射精感に背筋がゾクゾクと震え、陶酔感と悦楽に感で目の奥がチカチカする。
「あああぁ⋯⋯! ふあああぁ♥️」
全身の筋肉が硬直し、そしてゆっくりと脱力する。
わたしは力が抜けていくのに身を任せ、後ろに倒れこむ。
「はぁー、 はぁー♥️」
聞こえるのは、わたしの荒い呼吸音と草花を揺らすそよ風の音のみ。
瞼が重くなり、寝てしまいそうになる。
しかし──
「まだ終わりじゃありませんことよ?」
「うひゃああ!?」
陰茎が強く握られる。
イった直後なせいで、腰に響く性感がツラい。
「せっかくなんですもの、もっと楽しみましょう?」
「ちょっ、だめ!♥️ ムリなの! おわりぃぃいい!!♥️♥️」
イヤイヤと首を振っても、ミラーカは止まらない。加虐的な笑みを浮かべ、わたしの肉棒に顔を近づけた。
そして勿体ぶった動作でわたしの恐怖を煽った後、一息でわたしの肉棒を咥えた。
「んむ、あむ、じゅるるるるる!」
「ひやぁああ! ちょッ♥️ だめだ、からぁあ♥️♥️」
──いやああああああ!
心の中でも、現実でも叫びを上げる。
何か身体に恐ろしいものが上ってくるような感覚がして、肉棒を口に含むミラーカを必死に剥がそうとする。
「れろ、あむ⋯⋯。むふふ、気持ち良さそうでなによりですわ♥️」
「やぁぁ♥️ ひゃべっちゃだめぇぇ⋯⋯!」
敏感になった亀頭に息が直撃し、体がビクッと震える。
上目遣いで面白そうにこちらを見てくるミラーカに、わたしは急に恥ずかしさが沸いてきて顔を両手で隠す。
「むあ、じゅるるる! っぷは。恥ずかしいんですの? わたくし達の前で公開オナニーした貴方が、今さら?」
「ぅあああ、ひゃん♥️ 言わないでぇ⋯⋯!」
ヤバい、またイク、またイキそう。
さっきよりもさらに大きい、危険な快感。
せり上がってくる“ナニカ”が怖くて、わたしは自分の身体を抱き締める。
「おねがい、やめてぇ♥️ はぁああん! こわいのぉ♥️」
「怖くないですわ、あむ。むふ、じゅるるるるる」
「うああああああ!!♥️♥️ むりぃぃいっっ!♥️」
ああ、イっちゃう。
自分が自分じゃなくなりそうで怖い。
肉棒が痛いくらい膨張し、少しでも快感を逃がそうと身体が暴れ出す。
しかしミラーカはそれを押さえつけ、舌で、唇でわたしを嬲る。
もう、むり⋯⋯!
「ひああああああああぁぁ゛!!!♥️♥️♥️」
身体から何かが抜け出していく感覚がした。
今まで感じたことのない、不思議な感覚だった。
そして脳に染み渡る暴力的な多幸感。
目の前が見えない。それは快感のせいなのか、それとも溢れる涙のせいなのか。
動けない。自分が地面に背中をつけ、だらしない顔を晒している気がした。
「ふふっ♥️ ご馳走さまでしたわ!」
艶やかな顔でミラーカは言った。舌で顔についた精液を舐めとる仕草が色っぽい。
酸欠と疲労で頭が働かなくなり、思わず寝そうになる。
しかし寝るわけにはいかない。
今寝たら、お昼にアリアの所へ行けなくなる。
「──っ!?」
突然ミラーカが変な顔をする。
驚いたように目を見開き、わたしの顔をじろじろと見てくる。
「どうか、した?」
わたしは息も絶え絶えに聞いた。いつも余裕のある表情のミラーカがそんな顔をしたのは初めてだった。
「⋯⋯いえ、なんでもありませんわ」
ミラーカは少し間を開けて答えた。
絶対何かありそうな気がするけど、わたしなんかが聞いても多分答えてくれないだろう。
とにかく立ち上がろうとする。いつまでもここに寝転がっているわけにはいかない。
「っ! まだ動けますの?」
またミラーカが驚いた顔をする。
なんなんだ、この人は。
「動けちゃ悪い?」
わたしは勇者になってから毎日何時間も戦う訓練をしている。即ち、“毎日何回も射精している”のだ。
確かにミラーカの口淫は凄かったし、普段と比較にならないほど沢山出た。頭が真っ白になるほど感じさせられた。
しかし、まだギリギリ動ける。走ることはムリでも、歩くくらいなら出来る。
今日は疲れたので、訓練は終わりにしようと歩き始める。
「待ちますの!」
パンツを履こうとしたわたしに、ミラーカが後ろから抱きついてくる。体重がかけられたせいで、バランスを崩しそうになった。
「ちょっと!? さっきからどうしたの!」
「もうちょっとだけ、楽しんで頂きますわよ?」
ミラーカは倒れそうになったわたしを支えつつ、また肉棒を握ってきた。
「ふぁあ!? ちょ、やめてよ⋯⋯、んぅ♥️」
「さあ、イキ狂わせてあげますわ」
立っていられなくなって、後ろにいるミラーカに寄りかかる。そんなわたしを抱き止めて、彼女は肉棒をシゴく。
わたしの受難は終わらない。
────
────────
────────────────
「はぁ、はぁ。も、もう十分ですわよね」
「⋯⋯ぁ⋯⋯⋯ぅあ⋯⋯!」
指一本動かないというのはこのことを言うのだろう。
あの後、さらに8回もイかされた。
力が入らなくて抵抗できないわたしを、ミラーカはひたすら感じさせ続けた。
精神的にも肉体的にも限界で、気を抜いたら意識を失いそうになる。
ミラーカは何が目的なのか、それは未だにわからない。でも、わたしが今考えるべきことはミラーカの目的ではない。
“どうやってアリアに会いに行くか”
ミラーカに翻弄されながらも、わたしの頭の中にあるのはそれだけだった。もうすぐ正午、わたしがいつもアリアに会いに行く時間だ。そのときまでに何とかして魔女牢に行かなければ。
もしいつもの時間にわたしが行かなかったら、おそらくアリアは不安になる。そんなのは嫌だ。絶対嫌だ。
わたしが二回目にアリアを訪ねた日、アリアは一人で泣いていた。
孤独とか、絶望とか、悲しみとか、そういう悪いものを全て背負ったような声で泣いていた。
そのときわたしは思ったんだ。
この子の側にいてやろうって。
わたしはアリアを裏切らない。絶対に裏切らない。
“また明日、いつもの時間に来るから”
そうアリアに言ったなら、わたしは必ず正午にアリアに会いに行く。
「⋯⋯⋯⋯ぁ、あり、あ⋯⋯!」
まだ動けるはず。
わたしはまだ負けてないはず。
何のために毎日素振りをしていたんだ。
わたしは負けないために戦ってたんじゃなかったのか。
「ま、また!? 流石にもう顎が疲れましたわ!」
そう言いながら、ミラーカが呆れたように近づいて来た。
考えるんだ。どうすればいい。
ミラーカを振り切り、 アリアに会いに行くにはどうしたらいい。
「何十回でも付き合ってあげますわよ。さあ、また無様にイってしまいなさい!」
「⋯⋯ぁぅ♥️」
ミラーカが陰茎をシゴくと、もう何回も出した筈なのにまた勃ち始める。
何か方法があるはず。
なんでも良い、無い頭をひねって絞り出せ。
「ぅあ、ぁぁ♥️⋯⋯りかば、りぃ」
どこかで聞いた言葉が無意識に口から出た。
「⋯⋯今、何と?」
「りか、ばりい、あぅう♥️ りかば、んぅ♥️」
わたしは呟く。
わたしを救う言葉を。
快感に耐えながら、ミラーカに抗いながら。
「リカば⋯ぅ♥️ りい! ⋯⋯リカバ、りぃ!」
わたしは唱える。
わたしを救う呪文を。
状況を打開し、アリアに会いに行くために。
「まさか貴方⋯⋯」
「リカバリぃ! リカばリーっ!」
初めてわたしは、他の勇者に感謝した。
わたしにヒントを与えてくれた、魔勇者マホトに。
「“リカバリー”ッ!!」
呪文の言葉を思い切り叫ぶ。
全身全霊を込めて、上級魔法に魔力を吹き込む。
突如、身体全体を暖かな光が包み込む。
体内の魔素を糧にして、優しい癒しが生み出される。
「はいぃ!? ちょ、マジですの?」
体力が回復し、眠気が吹き飛ぶ。
お風呂に入った直後のようなポカポカとした気分だ。
「これが、魔法⋯⋯!」
わたしが魔法を使えたのは初めてだった。魔法の訓練だけで発情するわたしに、魔法を教えてくれる人はいなかったから。
「やれば出来るもんだね、意外と簡単じゃん」
もしかしたらわたしには魔法の適性があるのかもしれない。
まぁいいや。とにかく魔女牢に急ごう。
「ちょ、えぇ⋯⋯?」
唖然とするミラーカを置いて、パンツとズボンを履く。剣をアイテムボックスに回収することも忘れない。
「ミラーカ、じゃあね!」
地下牢のへと走る。急がないと正午に間に合わない。
後ろで何かミラーカが叫んでいたような気がするが、聞こえなかったフリをしてわたしは中庭をあとにした。
目に入ったのは、傷だらけになったアリア。
呼吸は浅くなり、顔に生気はなかった。
アリアは謝っていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
誰もいない虚空に向けて、何十回も何百回も。
都合の良いことに檻の鍵は開いていた。
わたしはアリアを抱き締めた。
初めて彼女の身体に触れた。
小さく華奢で、とても冷たかった。
覚えたばかりの回復魔法を唱え続けた。
死にかけている彼女の名を叫び続けた。
アリアが正気に戻ったとき、嬉しかった
もうずっとこのままかと思ったから。
アリアはわたしを安心させるように微笑んだ。
いつも通りの、優しい表情だった。
わたしはアリアにキスをした。
唇からは血の味がした。
口の中はカラカラだった。
わたしは父に似ている。
淫欲に身を焦がし、毎日何回も自慰をして。
夢の中でアリアを犯し、ミラーカの誘惑に抗えない。
心の底ではセックスについてしか考えていない下衆。
わたしは母に似ている。
アリアが何故裸なのか、気づかないフリをして。
ただ食料を渡すだけで、助けたつもりになっていた。
本気でアリアを救おうとしない臆病者。
だから決めた。
わたしは逃げない。
淫欲にも、恐怖にも、この国にも。
ミラーカにも、他の勇者にも、魔王にも。
それがアリアの敵ならば
全部ぶっ飛ばして、わたしはアリアを救う。