名前を聞けば、何かわかると思っていた。
けれども、やっぱり知らない人。
なのに、どこかで逢ったことがある気がする。
でなければ、こんなコトを言われるはずがない。
「スカート……なんですね。あ、すいません。何だか、レギンスとか穿いてそうなイメージがあって。変ですよね、今日、逢ったばかりなのに」
「あ、いえ、普段はパンツの方が多いんですけど、今日は……たまたま……」
ホント、スカートにしておいて良かった。
お尻がスースーして心許ないけど。
***
今朝も、別段体調が悪かったわけではない。
いつもと変わらず同じように、私は仕事に向かっていた。
中央線の満員電車に乗って。
扉の前に位置取った私は、何となく外を眺めていた。
すると、並走する電車の窓越しに。
ほんの一瞬――一目合っただけで、その感情が湧き上がってきた。
――好き。
好き……好き……
……好き……ッ!
な……何これ……いまの、あの人が……好き……!
「あ……ぁ……あぁ……❤」
誰? 誰なのあの人……知らない! 知らない人なのに……
絶対知っている誰かだと確信できる。
昔の知り合い? 有名な俳優? 自分の記憶の誰とも一致しない。
だから、私にわかるのは……あの人のことが、どうしようもないくらいに好きってことだけ。
どうしよう、好きすぎる。好きすぎて……胸が……苦しい……身体が重くて……立っているのもツラくなってきた。
倒れそうな身体を支えるためにさり気なく足を開き、手すりに何とかしがみつく。
どういうことなの、この感覚……腰から力が抜けていくみたい。ビクン、ビクン、カクン、カクン、って膝が崩れそう。これって……
けれど……!
ビクンッ
……え。
もしかして私……
オナニーどころか、触ってすらいないのに。
ただ、見つめ合っただけで。
信じられないけれど……でも、このお腹のヒクヒクは……
「あ、あ、あ……あ……」
ビクビクが止められない……
込み上げてくる……
膨れ上がってくる……
これ以上はもう……だめぇ……っ!
ビチャビチャビチャビチャ……
ペットボトルをひっくり返したようなその音は、けたたましいはずの走行音でもしっかりと聞こえた。混雑した車内で、私の周りからグニグニと人が離れていく。
「ご、ごめん……な……あぁ……」
私……どうしよう……電車で……お漏らしなんて……!
だけど……あぁ……止まらない……おしっこ……あぁ……
恥ずかしすぎて……死んでしまいたい……!
けれど……死ねない。
だって、だって……あの人に、逢いたいから……!
その想いだけで、私はすべてに開き直れる。
もう、もう……何も知らない!
すべては、あの人に逢ってから……!
痙攣は収まったけれど、電車は未だ揺れている。が、幸い水溜りを避けるように、私の足元だけ不自然にガラガラ。
だったら……もう……!
ズルリ。
ベチャ。
水分を吸った下着が、濡れた床に汚い音を立てて落ちる。ノーパンなんて不安しかないけど……こんなの穿いたままじゃ走れないから。
そして、駅に着いて扉が開く。
私はそこから――
追いかけるように。
逃げ出すように。
粗相の痕跡を置き去りにしたまま走り出した!
***
立花瀧君――何も知らないけれど、私の心が知っている。
こうして朝の木漏れ日の中を一緒に歩いているだけで、どんどん幸せが膨らんでくるから。
「また……逢えますよね……?」
「……はい、必ず……!」
そのために連絡先だって交換している。これからは毎日……ううん、すぐにだってメッセージを送りたい。
でも、これからお互い仕事がある。だから、今日のところはしばしのお別れ。一緒に千駄ヶ谷の駅まで戻り、ふたりホームで待っている。
話したいことはいっぱいあるのに、うまく口に出すことができない。矢継ぎ早に質問を投げかけるわけにはいかない、ということはあるけれど……あぁ……せめて、手を握りたい……! 黙って瀧君に寄り添いながら、私はそんなことばかりを考えている。
でも、いきなりそれはおかしいよね。でも、意識しているのは私だけじゃない。わざとらしく頭上の案内板を眺めているフリをしながら、瀧君も、私の手の甲に……コツン、コツン。到着のアナウンスも始まっている。だったら、そのわずかな間だけ……!
……キュ。
軽く、男のコの指先を摘んでみる。
そしたら……
ギュ。
ああああああああ!
そんな! そんなしっかり握られたら!
手の平が! 手の平の温かさが、柔らかさが!
こんなのっ! こんなの気持ちよすぎて!
また、腰が……腰がカクン、カクンって……!
マズイ! このまま手を握り続けてたら、また、絶対……
だけど、この手を放したくない! でも……!
瀧君が乗る電車は、もうホームへ入ってきている。
だからか、その手も別れを惜しんで力強くなってきた。
けど、そんなに男のコを感じさせないで!
本当に、もう……やだ……でも……!
そして……電車は静かに停まった。そして、降りる人が勢いよく押し出されてくる。その波に流されないよう、しっかり、瀧君と手を繋いで……
あ、あ……もう無理……終わっちゃう……こんなことで、私の恋が……
と、ギリギリのところで。
「じゃあ、また」
発車のベルも鳴り終わり、ふたりの指はするりと解ける。そのまま瀧君は、サッと車内に飛び乗った。
「うん! また逢おうね!」
そんな私の叫びを、ステンレスの境界が遮る。
た……助かったぁ……
その安堵感に負けて、私の緊張の糸も切れる。
ビチャビチャビチャビチャ……
き……気づかれて……ないよね……?
離れていく車内の瀧君にも、何も変わった様子はなかったし。
こうして手を振りながら……ビクンビクンビクンって……
私、また、
瀧君に、手を握られて……❤
もう……私……
力尽きて、濡れた床を隠すようにその場にへたり込む。そんな私のお尻の下からは、厭らしい湖がとめどなく広がり続けていた。
***
どうしてこんなことになってしまったのかわからない。
ただ、瀧君のことを考えていると……いまでは明確に感じている。お腹の下あたりがキュッキュッて疼くのを。
そのまま妄想を広げてしまうと……お腹の収縮はどこまでも激しくなってくる。そして、絶頂へと至ってしまえば――
ジャァァァァァ……っ
こうなることはわかっているから、もう……机では、瀧君からのメッセージを確認することさえできない。仕事中、さり気なくトイレに駆け込み……あはぁ、今度の週末のデート、プールでいいって。良かったぁ……水の中なら、その……事故っちゃってもバレないし。
そうやって当日のことを考えていると……ぅ、うぅ……触らなくても
できればもちろん、瀧君に触ってほしいんだけど。
そんなことを思い描いてたら……!
「ん、ん……ん……んん……っ」
会社のトイレで……こんなこと……でも……瀧君のことを思い出すと……無理……止められない……!
「んん……はぁ……ぁ、ん……❤」
瀧君とならどこでだって……もちろん、もし、こんなトイレの個室でだって、瀧君が求めるのなら……!
ビクン、ビクン、ビクン……っ
そして……
ジャァァッ
……ハァ、私の身体は本当におかしくなっちゃったみたい。これまでだって、オナって
というか、想っただけでこの有様じゃ、実際に逢ってデートなんてしたら、私、どうなっちゃうんだろ……?
***
本当は最寄り駅で合流して、一緒にお話しながら向かいたかった。でも……ごめん! 前みたいに手を握られでもしたら、プールまで持つ気がしないから!
そんなわけで、現地集合。開場時刻一〇分前に、私は到着した。そしたら……うわっ、ここって結構な人気スポットだったのね。入口前に、ずらーっと列ができちゃってる。けれど……あ、瀧君てばあんなところに。
「ごめんなさい、待たせちゃった?」
瀧君は先頭から三番目。順番待ちをさせていたみたいで、ちょっと申し訳なくなってくる。
けれども。
「いや、俺もさっき着いたところだよ」
なぁんて、決まり文句を聞いたところで、瀧君の隣に混ぜさせてもらった。よし、ここまで来たら不測の事態でも……って、あ。
「な……中はまだ、準備中なんだねー……」
そっか。早めに着いたところで建物自体が開いてないものね。
こっちはもう、うっとり蕩けて夢心地。そんな私に、瀧君は気さくに話しかけてくれる。
「せっかくだからここで時間いっぱい楽しんで……その後、行きたいところある?」
「そうねー……そのときの気分によるかな……❤」
多分絶対、ホテルに行きたい気分になってるだろうな。でも、女のコから誘うなんてハードル高すぎるし。どうやって誘ってもらったらいいんだろ……? そのためには、目一杯いい雰囲気になって……口に出す必要がないくらいに……なんて……あああああ……っ!
「三葉さん。やっと入り口開いたよ」
「あ、よ、良かったぁ……」
こうして歩き始めてくれれば、それなりに気も紛れてくれる。でも……瀧君と別れたら、先ずはトイレに直行かな。
会場外は混雑していたけれど、開いたばかりの更衣室は未だガラガラ。それで、ちょっと大胆に。タオルも巻かずにパパっと着替えてしまうことにした。
脱ぐものを全部脱いで水着を取り出すと……つい、これからのことを意識してしまう。これから瀧君と……水着でイチャイチャ……❤
さすがにビキニを持ってくる勇気はなかったけど、水の中で抱きしめられるのなら……腰を、瀧君の腕でギュっと……あああっ、もったいない!
でも、その後はホテルだと思えば……腰どころか、胸や……アソコまで……そう思うと……裸になってるだけで意識してくる……!
って、ここは更衣室だし!
着替えてるだけだし!
でも、この身体を瀧君に……
それを思い描くと、つい指先が伸びてしまう。
あ、あ……さっき、トイレでシてきたばっかりなのに……!
ガクンっ
ビチャァァァ……っ!
軽く触っただけで、私の
私もそれなりに急いだつもりだったんだけど。それでもやっぱりこういう準備は男のコの方がどうしても速い。着替え終わった私がプール側に出てみると……あぁ、やっぱり待っててくれている。
「お、お待たせぇ……」
トクン、トクン、トクン……ドクンっ!
水着一枚の瀧君……服の上からは細く見えてたけど、きっと運動とかしてたんだろうな。全体的に筋肉質で、シャッキリ引き締まってる。
けれど……うぅ、なんでなの……? おへその下――パンツの内側――毛がモサっとして、上を向いた凛々しい突起まですべてが明確にイメージできてしまう。
見たことないよ!? 見たことなんてないはずなのに……妄想とか、ネットで見た他人のモノじゃない。瀧君の瀧君が、もう、何というか、
それで、気づくのが遅れちゃったんだけど、瀧君も私の肢体をじ~……って。
恥ずかしい……恥ずかしいんだけど……お互い視姦しあってると、もう、一緒にお風呂とか入ってるみたい。出たら、えっちなことする前提で。
あ、あ……このままじゃ……やばっ!
「そっ、そろそろ行こうよ! いまならまだ空いてるしっ」
「あ、あぁ、そうだな」
なんて言い訳をしながら、私たちはプールへ向かっていく。ふぅ、危なかった。これ以上見つめ合ってたら……プールサイドで
この施設はいわゆる競泳プールではなく、大きな波を起こす装置やらウォータースライダーやらまで用意されたレジャーランド。私たちが真っ先に向かったのは、ゆったり寛げる流れるプールだった。これから混んでくるだろうけど、まだまだスイスイ泳げるスペースはある。だけど、私たちはピッタリくっついて……水着一枚でこんな密着して――!
ビクンっ!
組んでいた腕に思わず力が入ったことで、瀧君にも心配をかけてしまった。
「三葉さん、大丈夫?」
「うん、全然大丈夫だよ❤」
水の中なら、
「瀧君、どのくらいから並んでたの? 後ろに結構列できてたし」
私の到着に合わせてさっき来たところ……だったら、あんなに早くは入れなかった。
「実は……三〇分くらい。俺、ちょっと浮かれてたのかも」
うんうん、それはわかるよ。その……最近の妙なクセさえなければ、私だってもっと早く来てただろうし。
でも――
「ふふ、だけど一番浮かれてるのは、うちのお祖母ちゃんかも」
「そう……なんだ……?」
あんな嬉しそうにはしゃいでるとこ、久々にみたよ。
「だって、瀧君のこと話したら、いきなり早く曾孫が見たいーって」
まだ付き合ってるわけでもないのに、びっくりするほど気が早いよね。……まあ、歳が歳だから、急いでるのかもしれないけど。
「そ、そうなんだ……」
瀧君はちょっと照れながらも、ちゃんと乗ってきてくれる。
「俺も、うん……子供なら好きだし」
何となく、そんな雰囲気あるよね。だったら、瀧君の人生設計を聞いてみたいな。
「ねぇ、将来何人くらい欲しい?」
あくまで、参考程度に。
「そうだなぁ。三人いたら、賑やかで楽しそうかも」
とか何気なく答えてくれちゃってるけど……
「三人!」
瀧君と私、それに、三人の子供たちの家庭を思い描く――その前に……!
「だったら、すぐに子作り始めなきゃ!」
「えっ!?」
無邪気に驚いてるけど、女のコにも都合があるんだよ!
「だって、三〇過ぎには産み終えておきたいし」
そのためには、これから二年に一人のペースで……私、頑張らなきゃ!
……ううん、頑張るのは瀧くんも、だよ!
「だから、すぐにでも子作りしようよ! ねっ!?」
私だけじゃ子供は産めないから。瀧君だって私と一緒に……!
と、ひとり盛り上がったところで、我に返る。
瀧君の、ひとことで。
「そ……その……三葉さんが、俺の子を、産んでくれるのか……?」
……あ。
私たち、まだ数日前に逢ったばっかりで、恋人同士ですらなかった。
なのに、いきなり自分基準の家族計画なんて!
だけど……
「私が……瀧君の赤ちゃん産みたいな。……いい?」
な、な……何なのよこれぇ!? こんなプロポーズ、あっていいの? うぅ……無茶苦茶すぎる!
でも、瀧君も伊達に盛り上がっていなかった。
「あ……ありがとう……急ぐのなら、入籍は、週明けにでも……」
瀧君も真っ赤になって、目は逸しながらも私の気持ちとは真っ直ぐ向き合ってくれている。
「……うんっ!」
い……いいのかな……? こんな簡単に話が進んじゃって。だけど……もう後戻りどころか足踏みだってしていられない! 物凄いスピード婚だけど……お祖母ちゃんは認めてくれるよね? 焚き付けた張本人だもの。
こんな関係になっちゃったら、もう腕を絡めあってるだけじゃ物足りない! 瀧君の前に回り込んで、ギューっと抱きついちゃった! 水の中だけに、フワフワと。私の気持ちもフワフワだよ!
足がぶつかって歩きにくいので……えいっ、って背中に踵を回しちゃったり。これって……うわぁ、駅弁って体位じゃない? 他所から見たら、そのー……繋がってるように見られてるかも。むしろ、繋がっててもおかしくないのよねぇ……というか、私なら、その、繋がってても……
「週明けに入籍なら……今日、妊娠しても大丈夫だね♪」
男のコはパンツの穴から、女のコは股布をちょっとズラして……そうすれば……繋がっちゃうね、男のコと女のコ。そしたら、産まれちゃうね。瀧君と私の赤ちゃんが❤
瀧君が迫ってくれるのを私は待っていたんだけれど……むぅ、意外とオクテ。
「今日って……え……」
デートなんだから、そういうこと期待してたんでしょ?
「プールの後は……一緒に赤ちゃん、
私なら、プールの
「もしかして男の子にもダメな日とかあった? 私の方は大丈夫なんだけど!」
むしろ、危険日というか……ううん、夫婦の場合は絶好の子作り日和よね!? でも、瀧君の方は……?
「お、俺も、その……大丈夫……かと……」
それを聞いて……あぁ……どうしてわかっちゃうんだろう。チンチンシコシコしてる瀧君の……気持ち良さまで。退屈な休日、パンツも穿かず……チンチンは痛いくらいに
あぁ……いままさにそんな状況なのに! 大丈夫、誰も気づかれないよ! こっそり……こっそり繋がり合うだけだから……❤
パンツの上からグリグリグリ♪ ねぇ、
「ぁ、あっ、三葉さん、アレ、やってみない!?」
そう言って視線を逸した先は……あぁ、流れに流れて、ちょうどウォータースライダーの上り階段前に来てたみたい。
「ぅ、うん……そうだね……」
あぁ……私の方はもう子作りオッケーだったのに……はぁ、どうすればいいの。この、ウズウズ……どうすればいいのーーーッ!?
それでもまあ、男女二人組が揉みくちゃになりながら下の出口から飛び出してくる様は……ちょっと憧れちゃったりする。それを思い描くと……あぁ、またお腹の下がヒクヒクしてきたぁ……❤ 短い間でもぎゅーって強く抱き合っていたら、今度こそ瀧君も……!
なぁんて期待してたんだけど……
「……あれ?」
上がって下りるのなんてすぐのこと――ってわけにはいかなかった。階段の根本には人影もなかったのに、もう少しってとこで……長蛇ではないけど、二〇人くらいが詰まっていた。みんながソロってこともないだろうから、すぐに私たちの番は回って来そう。とはいえ、これは居た堪れない……!
「やぁん、マサくんてば……もぉ……♪」
う、うぅ……目の前のカップルにイチャつかれちゃったら、私だって、その……くっつきたくなっちゃう……! あの女……彼氏のアソコに……くぅぅ……こんなところでぇ……! そんなの魅せつけられたら、私も瀧君のが……気になっちゃうじゃない……っ!
チョンチョン、って偶然を装えたのは最初だけ。すぐにナデナデ、キュッキュ、と。そうしたら、瀧君の指も……私のキケンなところへ……❤ それは、前の女もシてもらっているように。
「ん、んふぅ……あぅ……」
もし水の中でこんなことされたら、もうとっくに
もう少し、だと思ってからが結構長い。おひとり様が続いてるのかな。それで、暇を持て余したバカップルが……ちゅ、チューまで!?
私の唇も欲しがってる。瀧君の温かな柔らかさを。でも……ここでそんなことされたら……
うわっ、瀧君の手が腰に回されて……ちょ、ちょっと待って! と制する間もなく――チュ――って――初めてのキスは、盛り上がった気分の中で奪われるように――あのふたりみたいにベロンベロンと舐め合う濃厚なものではなったけど……幸せすぎて……
……もう……らめぇ……❤
ビクッ、ビクッ、ビクンっ!
これまで溜め込んでいたものが、私の中から溢れ出す……!
びじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ……
「ぁ、ぁ、あ、あぁ……っ」
う……ぅぁ……どうしよう……どうしよう!
止まんない。止まんないの! 止めるどころか、腰もガクガクで、瀧君に支えてもらえないと倒れちゃいそうなくらい。
「え、え……三葉さん……?」
男のコの肩に両手を置いて、私は下を向き……ただただ、絶望していた。
どうして……どうしてこんなことに……
もう、おしまいだ……
私はこんなに瀧君のことが好きなのに……
だけど。
「三葉さん、俺も……っ」
うなだれる私の視線の先で、男のコの水着のゴムがグイっと伸ばされた。その中は暗くてよく見えないけれど……
ビュッ
「え」
飛び出してきた何かが私の鼻先にこびりつく。その匂いは……どこか……懐かしい……。
「ごめん、三葉さん、実は、俺……」
顔をあげると、瀧君はとても悲しそう。
でも……
お互い同じ気持ちなんだと思えば、私は少しだけ嬉しくなってくるのだった。
***
あの後、ちょっとだけパンツの内側を触らせてもらった。そしたら……そこは、明らかにプールの水とは違うものでヌルヌル。どうやら瀧君も私と同じで……密かにイケないモノを溢れさせていたみたい❤
初めて逢った日も平然としていたけれど……実は私の手を握ったところで、パンツの中に
ふたりの間で、何が起きているのかはわからない。けれど、私たちは相手のことが好きすぎて……もう、身体の方が耐えられなくなってしまった、ってことなんだろうね。
あれからプールは早々に切り上げて、ホテルで一晩中愛し合ったあと、翌日にはお祖母ちゃんからも許可をもらって……出逢って数日の電撃結婚❤ 一緒に住む家はこれから決めようって探してるけど……拭き掃除がしやすいように、フローリングがいいな。
セックスすることで、お漏らし癖も治ってくれたら良かったんだけど……そもそも、精液もお潮も愛情でできてるのなら、好きになればなるほど溢れてきちゃうよね❤
さて、あれから私たちは毎晩欠かさず逢っている。だって、逢わずになんていられないもの。瀧君はまだ社会人一年目だから、そんなに大きな仕事を任せられることもなく……今日は私の方が遅くなっちゃった。職場の近くで待ってるとの連絡はもらっている。早く、私に逢いたいからって❤
それに応えるよう、私の方も一生懸命頑張って……良し! 予定通り八時に終了! ビルのフロント前は人の流れが多くて慌ただしいから、少し離れた公園の前で待ち合わせ。早足で向かって横断歩道に差し掛かると……あ、いた。車道の向こう側で、公園入り口の車両止めに座って。
会社を出る前に一報入れてたから、私のことはすぐに気づいてくれた。行き交う車の間で見つめ合っていたら……あ、あぁ……
ビチャビチャビチャビチャ……ビチャビチャ……
暗いから、何が起きてるのか周りの人は気づいてないみたい。そして、反対岸でも……鞄で隠してるけど私には
私たち……触れ合う前から愛し合っちゃってる。だったらもう……今夜はホテルなんて行かなくていいかも。
ここでなら、お漏らししても平気だし……ね?