Fleets.0 中鳥島
「索敵機より入電!
北緯37度34分、東経174度25分に敵艦隊発見。
戦艦6、空母6、軽空母4、重巡9、雷巡5、軽巡11、駆逐艦20隻以上。
針路北北西、とのことです!」
司令官首席補佐艦の大淀が、なかば叫ぶよう作戦司令室に駆け込んできた。
「やはり来たか」
副司令の長門がうなるようにつぶやく。
「ですが、針路は北北西です。その先はカムチャッカ半島ですよ?」
室内中央、会議用の大きな机にひろげられた海図をのぞき込む後方主任参謀の鳳翔が問えば、
「欺瞞とみてよいでしょう。いずれ転進して、この中鳥島群島を目指すに違いありません」
そう応じる作戦主任参謀の鳥海。
航空主任参謀たる加賀も、無言で同意の首肯。
「まあ、そんなところでしょうね」
参謀副長の陸奥も、同じ意見のようだ。
参謀長の霧島が、メガネを直しつつ、指揮官席に向き直る。
「司令官。これまでの分析より多い敵戦力ですが、予測通り出現しました。いかがなさいますか?」
「確かに、多いようだな」
指揮官席の提督は、顔を上げる。
「だがそれも、奴らがこの鎮守府を無視できず本気で叩こうとしている証拠。つまりは、これをつぶせば北西太平洋海域はひとまず安定する、ということだ」
壁の大きな海図から視線をはなさず、立ち上がる。
「その機体をふくめ、敵艦隊に近い索敵機は呼び戻せ。こうなっては、1機でも貴重だからな。もちろん、他の機体はそのまま索敵を続行だ」
「では、司令官……!」
意気込む長門。
提督はうなずいた。
「戦友艦隊、全艦出撃! 敵艦隊を撃滅せよ!!」
ザッ。
敬礼し、駆け足で艤装装着へ。
意気盛んな彼女たちの背中を見届け、提督は窓の外を見やる。
(……あの日から、もうそんなに経ったか。……それともまだそれだけしか経ってないのか……)
その日、太平洋は波が高かった。
* * *
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戦友艦隊 全力出撃
敵本隊主力と決戦か 民間には警戒を呼びかけ
19日夕刻、御舩鎮守府は戦友艦隊の大規模出撃を発表した。
同時に、今後数日、敵機の空襲がある可能性も示唆した。
鎮守府報道官は「実艦戦力ならびに各軍各部隊の活動に感謝もうしあげる。艦娘で編成される戦友艦隊は補給・補充・修理・再編成のための時間を必要としていた。ここ10日ほどの時間を稼げたのは、既存戦力の奮闘あってこそである。おかげで戦友艦隊は、最高の状態で戦列に復帰できた。各軍各部隊に再度、感謝もうしあげる」なる主旨の談話を、戦友艦隊司令官・伊東実良特任准将の名で公表した。
会見では敵戦力の規模、出撃した艦の名前や数などに関する質問は「作戦行動に支障を来すので公表は差し控える」と封じられた。
一方で、ハワイやアラスカ、ミッドウェー諸島などアメリカ合衆国の各拠点、カナダ、正統ロシア帝国、オーストラリア、ニュージーランド各国およびイギリス、フランスやオランダの太平洋領土とはつねに連絡をとりあい、緊密に連携しているとも強調した。
ある港湾関係者は「中ノ鳥島群島の北東にいるすべての船舶に、南西方向へ全速力で退避するよう警報が出ています。敵があらわれたのは、間違いなくそのあたりでしょう。戦友艦隊の活躍で先月以降、北西太平洋はまだ平穏だったのですが」と不安げに語った。
また、ある貿易商社の課長は「この春は食料品も燃料品も、いつにまして多く陸揚げされています。とくに、アメリカからの輸入が増えてますね。おとといも大型貨物船が入港しているので、政府も鎮守府も、各国各拠点ときちんと連携している、というのは本当でしょう。民間の貿易でこの状況なんですから、軍の補給や兵站は、もっとしっかりしてるんじゃないですか」と、やや楽観的な見通しを示した。
帆柱島のある消防士は「突然の発表で、20日の休暇を取り消されました。でもまあ、自宅待機という実質的には非番と同じなんで、ちょっとゆっくりもできますけどね。とはいえ、いまは戦時です。こういうことがいつあってもおかしくない。自然災害とくらべたら、まだ予測がきく分だけ、マシなのかもしれませんがね。とにかく市民のみなさんはいつでも避難できるよう、準備をおこたりなく、油断なきようお願いします」と語り、職務にもどった。
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※【】内は鳥島新報 神和17年4月20日火曜朝刊より抜粋