「チッ、硫黄クセーなぁ……」
開口一番、文句が漏れる。
口の悪さは相変わらずだが、その容貌は数年の歳月を経て一層麗しく育っており、すれ違う観光客がちらちらと彼女に目を向けていた。
少女の名は多由也。元々は音隠れの里に属していたものの、とある事情から里抜けした所謂『抜け忍』と呼ばれるくノ一だ。
口の悪さが玉に瑕であるが、容姿自体は美少女そのもの。
垢抜けぬ少女だった頃より一回り成長した彼女は、より女性らしい魅力的な肉体へと成長していた。出るところは出て、引き締まるところは引き締まっている。一線を退いたとは言え忍として鍛えられた体は然う然う衰えないものだ。若々しくも張りのある女体は、ここ湯隠れの里に漂う熱気に晒されて、玉のような汗を滲ませている。
すれば、温泉街らしい硫黄の臭いに紛れ、華やかな香りが鼻を撫でる。
男の本能を刺激する甘ったるい芳香だった。これはきっと彼女が迸らせるものだろう。体表に滲み出た汗が衣服を濡らして立ち上るそれは媚薬に等しい。
脳裏に過る艶やかな裸体───そこまで想起したところで、男は雑念を振り払う。
「ったく、ゆっくり体休められるって聞いたから来たのによー」
愚痴を零す多由也だが、ここに来たいと言ったのも彼女だ。
里を抜け、根無し草となった彼女に安住の地はない。唯一安心できる場所とも呼べる───本人の前では決して口にはしないが───男の傍には居るものの、たまにはゆっくりと腰を下ろして休みたい時もあろう。
そこで訪れた湯の国だ。正確には湯隠れの里であり、主に温泉を観光資源とした平和な地域である。
隠れ里と言えば、五大国をメインに他国の進入に神経を張り巡らせている印象もあるが、湯隠れはその限りではない。
里の垣根を超え裸の付き合いができる、ある意味では最も平穏に近い土地と言えよう。心休めるには持ってこいの場所だ。
「宿はどうすんだ? まさか、こんなウルセー通りの近くに泊まるとか言わねーだろうな」
ジロリ、と上から見下ろすように多由也が睨め付けてくる。
年齢を重ね端正な顔立ちに磨きがかかったはいいものの、そのおかげで随分と表情に迫力が出た。常日頃から罵詈雑言を浴びせられている彼でなければ、とっくに萎縮し切っているところだろう。
だがしかし、これは彼女なりのコミュニケーションだ。伊達に数年付き合っている訳ではない男は、平然と答えを返す。
「ふーん……じゃあ、お前が決めろよ」
ぶっきらぼうに受け応えた多由也は、そのまま男の半歩後ろに付く。
ここで立ち止まれば即座に蹴りが飛んでくる訳だが、それも承知の上で男は目ぼしい宿を見つけるべく、湯隠れの里の散策を開始した。
つい先日、ビンゴブックに載っていた賞金首を捕え、闇のルートで手に入れたことからまとまった金を持っている。
その気になれば景観のいい立地に建つ高級な宿屋にでも泊まれるだろうが、生憎と彼女の趣向に合うかと言われればその限りではない。
「さっさと決めろ、ウスノロヤロー」
と、予想通りに蹴りを入れられること数十分。
ちょくちょく露店に立ち寄りながらも辿り着いたのは、大通りから少し外れた裏道にあった宿屋だ。
「ここにすんのかよ。ヘッ、お前らしい陰気クセー場所だな」
暴言にいとまがない多由也は、ぶつくさ言いながらも男の選んだ宿屋へいの一番に踏み込んだ。
人目につかない場所にある以上、中身には期待を持てない……かと思いきや、案外雰囲気は良い方だ。いい意味で年季も入っており趣がある。
何よりも温泉があった。それだけで暫しの拠点としては及第点だ。
淡々と受付を済ませ、二人は早速宿部屋を目指す。
「せまっちい部屋だな。っつーか、なに勝手に相部屋にしてんだ?」
部屋に辿り着くや、蒸れた足袋を脱ぎ捨てる多由也が睨みつけてくる。
確かに同行者とは言え、男女が温泉宿で相部屋は無遠慮だったか。しかし、それならば受付の時点で言えば良かっただろうに。
それを指摘すれば、あからさまに眉間へ皺を寄せた多由也が声を荒げる。
「そのぐらい言うまでもねーだろうが!」
期待してるつもりなら大間違いだ、と多由也は脱いだ足袋を男の顔面へ投げつけた。
「ったく……ひとっ風呂浴びてくる」
踵を返す多由也は、どうやら汗を洗い流してくるようだ。
「ああ、先に言っとくぞ。───覗いたらブッ殺す」
いいな? と、実際に角を生やす彼女はそのまま温泉へと向かっていった。
余りにも理不尽な言いがかりに、顔に張り付いた足袋を剥がす男は溜め息を吐く。このような形で振り回されるのも慣れたものであり、今では愛嬌すら感じられるものの、出会った当初は可愛げのない女だと辟易した。
だが、それでもここまで付き合ってこられたのは、偏に彼女の方から体を許してくれたあの晩の出来事があったからだろうか。
あの蜜月の時を思い出す度、自身に備わった愚息が熱を帯び、怒張していくような感覚が蘇る。
───……。
過去の自分からは想像もできない程、俗世───否、彼女に染められてしまったものだ。
人並みの情欲と、人並みの愛情を抱えた今、
万が一に備え、身を清めておくのも悪くはないだろう。
その日の夜だ。
───ぴちゃり、ぴちゃり。
仄暗い月明かりの下、控えめな水音が響き渡っている。
大半の人間が眠りにつく子の刻。昼間の喧噪も鳴りを潜めた穏やかな静寂の中だからこそ、彼らの紡ぐ吐息は互いの鼓膜を揺らす。
綺麗に横並びとなった敷布団のまさに中央に位置する場所。そこに膝立ちとなっている多由也と男は、時折口の隙間から生温い吐息を漏らしながら、熱烈な接吻に興じていた。
「んっ……んぅ……」
普段は険の抜けない美貌も、この時ばかりは悩まし気に眉尻を下げ、キュッと瞼を閉じながら唇と舌を突き出している多由也。口の悪さが玉に瑕の彼女だからこそ、口を封じてしまえば単なる気の強そうな美少女に昇華するとは、四六時中一緒に居る男ならではの感性だろう。
「ん……んんっ!」
ビクリ、と多由也の艶めかしい女体が跳ねる。
温泉の効能のおかげか普段よりもスベスベと滑らかな肌は、じっとりと女の色香を汗と共に迸らせながら、月明かりの中で蠱惑的なツヤを輝かせていた。
そうした肌を見せつけるように多由也の露出は刻一刻と増えていく。彼女がわざと脱いでいる訳ではない。ただ、濃密な接吻で高ぶる情欲に身動ぎするにつれ、その女体を覆い隠すには心もとない浴衣が崩れているのだ。
瞬く間に肩が晒され、辛うじて乳房が隠れる高さで着崩れは落ち着く。
しかし、彼女自身の情欲が収まったとは言えない。恐らくは下着を着けていないのだろう、浴衣がずり落ちるのを防ぐ
───もう、辛抱堪らない。
そう言わんばかりに口を離す多由也。
舌先から糸を垂らし、淫蕩に染まり切った瞳を浮かべている彼女は、微かに残っていた理性で普段の強気な態度を取る。
「はぁ……はぁ……。まったく、夜這いしかけやがって。節操のねえヤローだ」
発情期の猿かよ……とは言うものの、合意自体は成り立っているようなものだ。
大抵、二人の情事は多由也の方から誘ってくる。基本は二通り。一つは包み隠さず『欲求不満だから抱け』と命令してくるパターン。もう一つはそれとなくスキンシップを図り、こちらの性欲を煽ってくるパターンである。
抜け忍として、それなりの期間を逃亡生活に費やしてきた彼女だが、限られた娯楽の中で最も手軽で快感を得られるものと言えば───そう、性交であった。
しかしながら、彼女は素直ではない。間違っても“おねだり”をするような女性でない事は男も承知済である。
何かと主導権を握りたがる彼女は、性交においてもその例に漏れない。好きなプレイがクンニで、好きな体位が騎乗位と言えば、それとなく趣向が分かってくるというものだろう。
だがしかし、それはあくまで前者のパターン。
後者───今回よろしく宿泊者が寝静まった時間に布団へ入り込み、背中や腕に胸を押し付けるだけに留まらず、股間を弄ってくるような場合は寧ろ逆だ。
「ったく、仕方ねーな。期待してたんだろ?」
期待を隠し切れぬ笑みを浮かべながら、多由也が浴衣の帯を解く。
暗がりの中、シュルシュルと聞こえる衣擦れの音。昼間よりも視界を制限されている中だからこそ、残りの五感は鋭敏に研ぎ澄まされる。
彼女の荒い息遣い。口腔に残る甘い唾液の味。そして浴衣が脱ぎ捨てられた時に立ち上る汗───そこに紛れる淫靡な雌の匂いに、自分達の前戯はとうに終わっていたのだと自覚する。
月を背にする多由也。
そんな彼女の股座から、ツーっと滴り落ちる一筋の銀の糸を目の当たりにした時、男の剛直は既に怒張し切っていた。
「お互い準備万端ってか? ……上等だよ」
ハンッ、と笑ってみせる多由也の声は興奮で震えていた。
こうして彼女が恣意的に誘惑し、己を襲うよう差し向けた時───彼女はとことん犯し尽くされるのを望んでいる。
夜が明けるまでドロドロのグチャグチャに性器を擦り合い、泣いて止めてと喚いてもイカせられ続ける頂きの連続。
失神と絶頂を繰り返す地獄のような天にも昇る快感を、今の多由也はご所望のようだ。
先程から愛液でしとどに濡れる股座からは、男をおびき寄せる淫臭を放つ。
そこから甘露な蜜を垂らし、自ずから開かれてみせる肉の花弁は、いつ見ても綺麗な桜色だ。
「……ほら、抱かせてやるってんだから抱けよ」
強気な笑みを浮かべながらも、瞳を情欲に揺らす多由也がそそのかす。
「それとも今更怖気づいたか? このインポヤロー」
ここまで言われて黙っているのなら、それは男ではない。
荒々しく、それでいて紳士的な力加減で多由也を押し倒せば、小悪魔のような笑みが曝け出される。
まるでこの展開を待ち侘びていたと言わんばかりだ。期待と興奮が綯い交ぜとなった彼女は、恥じらいをかなぐり捨てるように大股を開く。
豪快と言うべきか大胆と言うか。
とは言え、まったく羞恥心がない訳でもないらしく、後は受け入れるだけの体勢を整えた多由也は、頬を真っ赤に紅潮させて『早く挿入れろよ』と消え入りそうな声量で催促する。
と、ここまで煽情的な姿を見せられれば我慢できるはずもない。
促されるまま物欲しそうにパクパクと口を開く淫裂目掛け、男は真っ赤に怒張した剛直をあてがう。
最初は鈴口と膣口が接吻を交わす。ヌチッ、と粘着質な音が聞こえるや、多由也の腰が僅かに浮き上がった。
「はぁ……はぁ……」
ふと多由也の顔に目を向ければ、潤んだ瞳を湛えながら熱っぽい吐息を紡ぐ彼女の様子が窺えた。
あてがわれた逸物の挿入を今や今やと待ち侘びている表情だ。
一秒でも早く快楽に溺れたいという欲求からか、浅い接吻を何度も交わす下の口を押し付けてくる。
何といじらしい努力だろうか。
また一段と勃起する逸物は、最早か細い彼女の体では受け止めきれないのではないかと思われる程に膨張を遂げる。
挿入すれば多由也の臍辺りまで届くであろう長さ。そして、太さもまた凶悪と言わざるを得ないサイズだ。
普通の女性では抽送どころか挿入もままならず、例え挿入したところで膣が裂けかねない激痛に感じるどころではないだろう。
ただ、彼女に限っては話が違う。
彼女は音隠れの忍として活動している頃から、呪印と呼ばれる紋様を体に刻まれている。これは場合によっては肉体を異形化させる代物であるが、使いこなせばある程度自由に肉体を変化させられるのだ。
対する男も、呪印の源流となる能力を持った一族の生まれである。当然、肉体変化については多由也以上の自由が利く。
つまり、何を言いたいのか。
共に体を重ね、愛欲を貪り合い───結果二人の肉体は互いにとって最適な形へと変貌を遂げていた。
一般女性にとっては殺人的なサイズも、多由也にとっては世界中でただ一つ、己の性器を余すところなく感じさせてくれる極上の代物という訳だ。それは逆に男にも言える。
故に、離れられない。
生まれ出ずる恩義や愛情を確固たるものに昇華させるほど、二人の体の相性は
最早他の異性など考えられない。互いの秘所が絡み合う感触を思い出すだけで、次に体を重ね合う夜が待ち遠しくなるようだった。
そして、それがこの瞬間。
熱っぽい吐息で胸板を撫でられる男は、悍ましいくらいに勃起した逸物を手に取り、入念に膣口を解し始める。いくら愛液を垂れ流し準備万端という様相を呈しても、多由也の媚肉までもが万全であるとは限らない。
じっくりゆっくりと押し込みながら愛液に満ち満ちる淫裂を貫けば、挿入された立派な逸物に押し退けられた愛液がドロドロと多由也の媚肉を伝って落ちる。
「んっ! はぁ……。もっと奥にブチ込めよ……じゃねえと、善がれねえじゃねーか」
息も絶え絶えになりながら、男を欲する多由也。
口でこそ強気な態度を保ったままであるが、肝心の表情は既に淫蕩に緩み切っていた。ただの挿入、されども殺人的なサイズを受け入れる為、必要最低限の力以外は抜いているのだからこうなるのもやむを得ないだろう。
「ん、あぁ! あっ……んっ、いいぞ。もっと奥に……ぃい!」
善がる多由也の両腕が男の首に回される。
そうして抱き寄せた先で熱烈な接吻を交わすが、顔が触れ合う距離ともなれば、当然体も相応に近づくものだ。
それまで多由也の体を慮って挿入されていた逸物が、他ならぬ多由也の手によって最奥まで吸い込まれていく。
「んんぅぅぅううう!!」
男と唇を重ねる多由也が、苦悶と快楽が織り交ざった悲鳴を漏らす。
同時に透明な液体が多由也の淫裂より噴き上がった。弛緩し切っていた肉体が、押し寄せる快楽の波に衝撃を吃驚したからであろう。愛液とも違うさらさらとした液体は、敷布団に大きな水溜まりを広げていった。
挿入だけで一度目の絶頂を遂げた多由也は、まんまと失禁してしまった事実に紅潮する。が、彼女は脳天を襲った電撃のような快楽の余韻を味わうべく、男との濃密な接吻を興じていた。
「ふぅ……ぷはっ、はぁ……もっと……ちゅっ……欲しがれよ」
淫猥な水音を奏でながら、多由也は男を甘い誘惑でけしかける。
すれば、彼女の望み通りにと男の舌の動きが激しくなった。舌を絡ませるなんて甘い表現では足りない。多由也が逃げられぬよう頭をしっかりと抱え込み、それから口腔全体をしゃぶり始めたのだ。
多由也の吐息ごと舌を吸い、滑らかな歯と歯茎の境目を舌先でなぞり、しっとりと濡れそぼった唇に優しく歯を立てる。
余りにも苛烈な攻めに、多由也の下半身もバタバタと暴れる。
だが、一分と経たずに大人しくなった下半身は、今度は男の腰を逃れられぬよう両脚でガッチリとホールドするではないか。
上の口も下の口も繋がり、燃えるほど熱く融け合っている。
ドクドクと脈打つ鼓動が重なれば、それだけ二人の高ぶりは天高くまで上り詰め、瞬く間に頂点へ達してしまいそうだった。
けれども、男は勿体ぶったようにゆっくり出し入れを始めた。
濡れそぼった膣肉から引き抜く度に、反り立つようなカリ首に肉襞を捲られ、濃厚な愛液がこれでもかと外へ掻き出される。
にわかに室内の湿気が増す。比例するように思考を淫蕩に溺れさせる匂いも充満する。
多由也という女が、愛欲のままに男を誘惑せんと漂わせる雌臭だ。
他でもない標的の男は、それを知ってか知らずか、匂いが濃くなるにつれて腰の動きが激しくなっていく。
優しく労わる営みが、激しく貪る交尾へ変化する。時間はさほど掛からなかった。
「んっ! あぁ! あ゛ッ! ぐぅ! ひぎっ!?」
力強く腰が打ち付ければ、まろやかな尻肉が波打つ音と同時に奏でられる多由也の声。煽情的な艶めかしい喘ぎが漏れたかと思えば、女で居る余裕を失った雌がアンアンと鳴く。
それの繰り返しに男の逸物はますます情欲を募らせ、打ち付ける腰に渾身の力を籠める。
奥を貫くように突き立てた直後、腹の裏側を抉る角度で逸物を引きずり出す。そうして掻き出された愛液が即座に押し戻される容赦のない動きに、二人の体液は白く濁った泡へと変貌し、一際濃ゆくなった性臭を互いの性器に擦り込んでいく。
ここまで本気の情事は久方ぶりだ。
男も思わず力を入れて腰を振り乱していたが、不意に多由也の様子がおかしいことに気が付いて動きを止める。
すれば、二人の腰と腰の間にかかっていた体液の糸がツーっと滴り落ちた。
何と淫猥な光景だろうか。ムワリと立ち上る湯気さえ幻視してしまいそうな中、男は多由也の落ち着かない様子の理由を問いかけた。
「……んだよ。別にお前が気にすることじゃねーよ」
とは言うものの、一度気になってしまった以上、早々に疑問を投げ捨てることなどできやしない。
このままでは情事にも集中できないと訴えれば、多由也は嫌々と……それはもう実に嫌々と顔を歪め、絞り出すように告げる。
「……日なんだよ」
聞こえない。
『もう一度』と促せば、今度は羞恥の紅潮を憤怒で覆い隠すように怒鳴り声を上げた。
「だから!! 今日は危ねー日だっつってんだよ!! 一度で聞き取れやがれ、このツンポヤローが!!」
ふん! と顔を逸らす多由也だが、如何せん体は正直だ。
中途半端に引き抜かれた逸物を求めて、膣口が生き物のように吸い付いてくる。なんともいじらしく、なんとも淫らな光景だ。それだけで多由也が真に求めているものを察せるというものだ。
奇妙な出会いから始まった二人旅。年単位で過ごした彼らには、友愛や親愛とは別種の愛が少しずつではあるが育まれていた。
互いに信頼し、互いに身を傍に置く。
そうして同じ時を過ごして今日に至り、とうとう誰にも許した経験のない最後の一線を超えることを認めたのだ。
心なしか、普段よりも動悸が激しい。
はたしてこれは自分のものか、はたまた多由也のものなのか。
綺麗な緋色の髪に隠れた彼女の横顔ははっきりとは窺えない。しかしながら、その間も男を拒絶する真似はしない。
ゴクリと喉を鳴らす。
再び多由也の腰に手を添えた男は───躊躇いなく、子種を注ぎ込むべく女体を組み伏せた。
「あ゛ッ!? あぁ!! は、激し……あ゛っ!? あ゛ぁ~!!」
殺人的な大きさの逸物が数多の内臓や肉を押し退けて、か細い女体を蹂躙し始めた。
その苛烈な挿入には、思わず多由也も声を震わせる。女としても品など残っていない、ただただ快楽に善がる淫売同然の呻き声だ。しかしながら、それで男を興奮させてしまうのだから救いようがない。
「ひぁ!! ぁぁぁあああっ!!」
亀頭が子宮口を突き上げる度、電流のような衝撃が全身を貫く。
下腹部から背骨へ、背骨から脳天へ。そして快楽に痺れた脳は、全身へイキ狂えと信号を放ち、多由也の体を淫蕩へと沈めていく。
グネグネと身を捩らせる。
が、すかさず男が多由也を逃がさぬよう圧し掛かってくる。これには彼女も為す術がなく、肉欲を処理する性玩具同然の扱いで扱き下ろされるしかなくなった。
だがしかし、多由也にはそのような認識はない。男も同様だ。
でなければ、このように───喜びの混ざった悦楽の顔のまま、唇を重ねたりなどしないだろう。
ビクン! と膣内の逸物が跳ね上がる。
瞬間、絶頂の予感を感じ取った膣内は一斉に激しく蠢き出す。今から解き放たれる子種を一つ残らず子宮に吸い上げる動きだ。
互いに頂きを目の前にした二人は、舌を吸い、手足を絡ませ、最後に込み上がる感覚のままに全身を震わせた。
「っっっ───!!!」
口を塞がれた多由也は、声にならない声を喉から漏らす。
またイった。
こんな短時間の間に二度も。
それもさっき以上の快感だった。
(あぁ……
愛おしく口吸いを続ける間、多由也は下腹部に広がる脈動と熱を感じ取っていた。
間違いない、これは彼の精液だ。射精したてホヤホヤの精液は、すっかり解れ切った多由也の膣内に染み渡るかの如く、全体にじんわりと広がっていく。
押し寄せる快感と多幸感には思わず頬が緩む。
これでウチはこいつのもの───などではない。
接吻も程々に男を突き放した多由也はと言えば、何を思ったのか男に尻を見せつけるように四つん這いとなり、
「んんぅっ……、はぁ……!」
下腹部に力を籠め、ドロドロの白濁液を膣内からひり出したではないか。
卵白のように粘ついた液体が膣口から滴り落ちる光景は卑猥そのものであるが、折角中に出したというのに、これでは意味がないではないか。
首を傾げる男。
しかし、そんな彼に対して多由也は体液塗れの桃尻越しに挑発的な笑みを浮かべてみせたのだった。
「は! 残念だったな。こんなんでウチを孕ませられると思ったら大間違いだ……んっ!」
絶頂の余韻で甘イキする多由也は、いつもの小悪魔染みた笑顔のまま、突き上げた腰を震わせる。
「まさか弾が無くなったとか言わねーよな? 早漏の癖にスタミナがねーとは……ククッ、救えねーな」
悪い口は一向に塞がらない。もっとも下の口も一向に塞がる気配がなく、精液と愛液が混ざった白濁液を今尚垂れ流しているが。
「それとも種無しかァ? 女一人孕ませられねーなんざ、とんだ役立たずだぜ。オス失格だな」
ムラっ。
イラっとではなく、ムラっときた。
開いたら塞がらない女の口。
塞ぐにはどうすればいいのか? ───簡単な話だ。
「悔しかったら、精々一人惨めにマスでもこいてるんだな。そもそもお前とウチじゃ釣り合わな───い゛っ!!?」
再び臨戦態勢が整った逸物を、ぽっかりと口を開く膣へと突っ込んだ。
ズリュン! と膣内の肉襞が掻き分けられる音が木霊すれば、間を置かずして快楽電流が多由也の身体を突き抜ける。彼女は焦点の定まらぬ双眸を白黒とさせながら、内側から圧迫された肺で浅い呼吸を繰り返す。
しかし、男の反撃は止まらない。多由也が膣圧だけでひり出した精液を、自らの凶悪な逸物で掻き出すように抉り込ませる。
深いところや浅いところまで多由也の身体で知らぬところはない。最早一滴も残っていないと思われていた精液は、肉襞ひとつひとつの隙間すらからも掻き出す繊細で豪快なストロークで掻き出される。
それだけに彼女の善がり狂う様も凄絶に一言に尽きた。
当初は宿泊客が寝静まった深夜ということもあって喘ぎ声も控えめであったが、とっくに余裕は持ち合わせていられない。
男の耳元で吼える多由也は、まさしく交尾中の獣。
野性味に溢れつつも雌としての色っぽさを感じさせる嬌声は、相手の性欲を煽る一種の媚薬に等しかった。
鳴かせれば鳴かせる程、普段は仮面の奥に隠れている女の素顔が前面に顕れる。
何とも堪らない。世界を探しても、斯様にも彼女の淫猥な姿を目にした人間は自分しか居ないだろうという優越感に高ぶりを覚える。
何よりも行為自体を多由也に許された。それだけで男は何度でも吐精できそうな衝動に駆り立てられていた。
「うっ、あっ、くっ、はあっ、イッ、ぐッ! ふッ、ああああっ、あ!」
高まる興奮に伴って激しさを増すピストンに、多由也は綺麗な緋色の長髪を振り乱す。
とは言っても、全身汗や愛液、果てには精液ともれなく体液塗れの体に触れれば、艶やかな女の命は唯一裸体を覆う衣として、極上の女体をより官能的に飾り立てる。
今だけは、それがいかなる高級な着物よりも美しく見えた。
───もっと、汚したい。
ただ一つ、男の中に生まれた欲望。
こんなにも綺麗な体を、欲望のままに滅茶苦茶にしたい。
口も、胸も、処女も、初めての夜も───数多もの思い出を多由也の身体に刻み込んできた。そして女という性の階段を駆け上がっていく上で、大きな転換点となるであろう大一番に、彼女自ら勝負を仕掛けてきたのだ。
とうとう、亀頭と子宮が接吻を交わす。
延々と熱烈なアプローチを受けたお陰か、子を成す部屋の扉は随分と緩んでしまっているようだ。コンコンとノックをし続ければ、お返しに熱いヴェーゼを向こうから送ってくれる。
上の口もこのくらい素直で居てくれればいいのにと思う反面、そのギャップこそが彼女の魅力だと感じる辺り、男は随分と多由也に毒されてしまったと自覚した。
だからといって改めるつもりは毛頭ない男が腰を振る。
肉と肉を打ち付け合う小気味いい音に、粘ついた体液が糸を引く淫靡な水音が混ざってから、暫しの時が過ぎていく。
「ぐっ! イッ、ぐ! イくッ、イってるッ! イく、ぎ、いッ! ふッ、うッ、~~~!」
ピンとつま先を布団に押し付け、脚を伸ばす多由也が吼える。
最初こそ絶え間なく噴き続けた潮も、断続的な絶頂を味わい過ぎた結果か、絞り出す水分はなけなしの量と化していた。
このままでは干乾びる。
けれども、感じる体を抑えられない。
男のいいようにされる多由也は、理性の利かなくなった体にもどかしさを覚えつつも、それを上回る快感に、涎をダラダラと垂らし続けるしかなくなっていた。
「もぅ、いい加減ッ……イけッ! このままじゃ、ウチッ、おかしくな……あ゛ッ!」
切実な懇願を男に向ける。
「~~~て、いいッ! ガキ孕ませていいからッ……さっさと、イっ、てくれぇ!」
布団に突っ伏しながらの哀願。
すれば、彼女の声に応えるようにドクンと膣内に脈動が響く。それは深々と挿入されている逸物より伝わった予兆だ。
その気になれば子種はいつでも注ぎ込めた。
しかし、多由也の方から求めてきたからこそ、心の底より享受できる解放感というものがある。精嚢でグツグツと煮え滾っていた精液は、凄まじい勢いで出口へと向かって泳ぎ始めた。
瞬く間に尿道を灼熱に犯される感覚に襲われた男は、押し寄せる快感に顔を歪めつつ、トドメと言わんばかりに多由也の奥深くへ雄槍を突き立てた。
「あ、……ぁぁぁああああ゛あ゛あ゛ッ!」
灼熱が膣内に広がり、多由也の喉から絶叫が迸った。
ドロドロとマグマのように粘りのある子種が、瑞々しい乙女の肉壺を満たしていく。散々彼女を虐めて溜めていた子種はそれだけでは止まらない。本来、固く塞がれた子宮口すらもこじ開けん勢いで吐き出されれば、否応なしに女の体が迎え入れんとする準備を推し進めてしまう。
「はぁ……はぁ……」
激しく息を切る多由也は、膣内を満たす灼熱の流動に意識を注ぐ。
「んッ……あっ」
その時、彼女は下腹部に宿る得も言われぬ“熱”を感じ取った。
(これ……ウチ……)
何となく。
何となく、そう思っただけだ。
しかしながら、多由也は充足感に満ちた笑みを浮かべながら、愛おしそうに自身の下腹部を撫でる。
(
『孕んだ』と、そう確信をもって言える気がしたのだ。
抜け忍の分際で男と子作りとは、昔の自分では考えられなかった。そもそも家庭を築こうなどという世俗的な常識など通用しない世界で生きていくつもりだったのだから尚の事。
けれども、どうにも嫌いではない男との間に子を成せることに喜びを見出せる程度の価値観は残っていてくれたようだ。
だからこそ、あのような青臭い白濁液塗れの肉棒をしゃぶっても、これっぽっちも不快感を覚えないのだろう。
「んッ、んッ、んッ……」
多由也は慣れた手つきで射精を終えた逸物の掃除を始めていた。
男の精液と己の愛液。互いの体液が混ざった挙句、長時間膣内で掻き混ぜた匂いはそれはもう色々な意味で強烈そのものだった。
一瞬ばかり眩暈を覚えた。が、それからは理性が飛んだように夢中で咥えている。
笛の代わりにと下品な音を奏でるのも、男が喜んでくれるからに他ならない。最後は自身の唾液でコーティングし、一気に吸引することで汚れを汁ごと吸い取ってみせた。
「はぁ……これで満足か?」
綺麗に掃除した逸物に頬擦りしつつ、多由也は問いかける。
散々イカされた挙句、一般人ならば妊娠不可避の量の精液を注ぎ込まれた。それだけで彼女にとっては目的の大部分を完遂したと言えるが───。
「……なんでまだ勃ってんだよ! あんだけ
まだバキバキに屹立している逸物を目にし、思わずぶら下がる玉袋を鷲掴みにする。
ムンズ、と掌に乗せてみればその重量感を十分に感じられるようだ。とても大きく、女を孕ませられるだけの精子が生成されているのだろうとよく分かる。
「とんだ絶倫ヤローが……」
底の見えぬ絶倫ぶりに、散々体に教え込まれた多由也が呆れた顔を浮かべる。
この中身をすっからかんにするとなれば、相応に身を捧げる女性が長時間地獄のような絶頂の連続を味わう羽目に遭うが───残念なことに湯隠れの女を探したところで、男の相手が務まる人間は居ないだろう。即刻受精からの絶頂失神ルートだ。
唯一相手取れる者はと聞かれれば、当然それはこの場に居る美少女だけ。
ただし、多由也ほどの女であろうともこの男の本気を収めるには、夜が明けるまで汗みどろになりながらイキ狂う目に遭う。朝方には噴水のような潮を噴き上げながら、白目を剥いて気絶しているのが関の山だろうか。
あれは流石に疲れる、と多由也は内心で独白する。
何もヤり続けたまま朝を迎えた経験は一度や二度ではない。
ただ、常に絶頂が訪れ続けるような快楽地獄は、そう何度も体験するべきものではない。いよいよ彼以外の男では絶頂を迎えられない体へ変えられてしまう覚悟を持たねばならないだろう。
「……チッ、しゃあねーなァ」
潤んだ瞳を細める多由也は、疼く子宮が求めるまま情欲の炎で火照った体を突き動かし、男の下半身に跨った。
空を衝かんばかりに聳え立っていた逸物は、そのまま多由也の下半身に押しつぶされる。きっと少しでも腰をグラインドさせれば、散々解されてしまった膣口は逸物を吞み込んでしまうだろう。
そうなってしまえば、後はなし崩し的に朝まで狂悦に喘ぐ羽目になる。
(まあ、今更か)
世間体を気にするような身の上ではない。
ならば、とことん性に溺れてしまうのも一興だろうか。旅の恥は搔き捨てとも言うのだから、今日ぐらいは羽目を外すか───腰を浮かせ、握った逸物の亀頭を膣口にあてがう多由也はフッとほくそ笑む。
「今夜は一滴残らず搾り取ってやる。地獄を見せてやるよ」
強気な言葉を吐き捨てながら、脈打つ逸物を膣内へと挿入させる。
それだけで達してしまいそうな程の快楽が脳へと流れ込むが、絶頂するにはまだ早い。ゆっくりと腰を折り、上半身を男へ預けるように倒れ込む。
必然的に互いの顔が近づく訳だが、見つめ合い一拍を置いてから、多由也は口づけを落とした。
それが三回戦目の合図。
再び室内に艶やかな肉が打ち付けられる快音が、女の嬌声と共に木霊し始めた。
ひと段落ついたのは朝を迎えてからだ。
温泉に浸かる男の胡坐の中に収まるように多由也は座り、振り返りながら男と舌を絡ませ合っていた。
「んッ……ふぅ……ったく、何回射精したら気が済むんだてめーは。ウチの腹を破裂させるつもりかよ」
あからさまに青筋を立てる多由也に、男は面目ないと目を伏せる。が、二人の舌は蛇の交尾のように延々と絡み合っていた。
しかし、多由也が文句を言うのも仕方ない。
端数は切り捨てるとして、合計で二十発以上膣内に射精された多由也は、こうして水の浮力を借りなければ立つことさえままならぬ程に腰を砕かれた。あまつさえ全てが膣内から引き抜かれることなく、挿入したままの連戦であったというのだから、男の絶倫ぶりが窺い知れるだろう。
ともあれ、流石に二十発も射精すれば男の逸物もやや萎み気味になっていた。
ホッと一息吐く多由也は、男との接吻にも満足したのか顔を離す。舌先に引いた糸は口周りに纏わりついた唾液ごと舐めとった。
コクンと喉を鳴らし、一区切りと言わんばかりに大きく伸びをする。
「ッ、く~~~! あ~、眠ィ。まったく、誰かさんの所為で寝られなかったしよ」
ホントくそだな! と当てつけのように毒を吐く多由也は、自身の首筋に湯をかける。髪が湯に浸からぬよう、綺麗な緋色の髪を結い上げられていた。
すれば、普段は隠れている彼女のうなじを覗き見られる訳だが、そこにはいくつもの赤い痕が刻まれていた。
とある
ただ、それならばそれでいいと多由也は背中を男の胸板に預ける。
しっぽりと、実に緩やかなひと時を二人で過ごす。
「……って、オイ。なんでまた勃ってんだよ」
しかし、暫しの休息を経たお陰か散々子種を吐き出した逸物は、濁り湯の中でも分かるくらいの存在感を放たんばかりの復活を果たしていた。
「まさか、まだヤるだなんて言わねーよな……?」
ギギギ、と頬を引き攣らせたまま振り返れば、欲情を隠せない男の表情が目に飛び込んできた。
すぐさま逃げ出そうとするも、朝まで犯され砕けた腰は水中から出た途端、重力に負けては逆戻りする。もう一度胡坐の中へ納まった多由也は、せめてもの抵抗と罵詈雑言を飛ばしながら水飛沫を上げるように暴れる。しかし虚しいかな、それは男にとってほんの些細な水遊びにしかなりえない。
そうこうしている間にも、屹立した肉棒は多由也の女陰の入口を撫で続ける。
ちょっとだけ矛先を上へと向ければ、たちまちに侵入を許してしまう状況に、多由也は必死になって
「いい加減にしやがれ、この絶倫ヤロー! ウチを殺す気か!? テメーが馬鹿みてえにデカいチンポぶち込んでくる所為で、マンコがヒリヒリして痛ーんだよ! それでもまだヤる気なら町の立ちんぼでも買うか、勝手にマスでも扱いてやがれ! ……あ? ウチが孕んだか不安? テメッ……あんだけ中に出したらデキてんに決まってんだろーが!」
ギャー! と喚く多由也であるが、こうなることを分かって焚き付けた以上、多由也は観念して体を捧げるしか道は残されていなかった。
「……頼むから今度は優しくしろよ。痛くしたらぶっ殺すからな」
ジュン、と溢れ出す蜜が竿にまとわりつく。
懲りていない自分に飽き飽きしながらも、振り返る多由也の顔は淫らに蕩け切っていた。そこには気丈なくノ一の姿はなく、ただ心を許した男の前で全てを曝け出そうとする女が、燃える情欲の炎のまま跨った腰を振り乱していた。
それから湯煙の中で延々と音が奏でられる。
水面が激しく波打つ水音と、煽情的な女の艶声。白い天幕に覆い隠された男女のまぐわいは、日が昇ってからも熱い様相を繰り広げられるのだった。