今日は遅くなった。
夕陽が窓から差し込む教室の中で俺一人が片づけを行っている。部活のミーティングや先生からの頼み事などを律儀にこなしていたらこんな時間になってしまった。
机の中の荷物をバックへと忙しく詰めていく。今日の夜にでも復習しようと考えていたので全部持ち帰る予定だ。
「ん?キミは……此処は一年生の教室だし一年生か」
俺しかいない教室に女性と言うより少女のような声が響く。
声の主を見ると教室の入り口に小さな影があった。夕陽が眩しく目を細めて見ていると件の少女は此方へと歩いてきた。
うっすらと見えていたシルエットが段々とハッキリしてくる。
身長は男としては小柄な俺よりも小さい。しかしそれよりも目に付くのは金色の髪だ。
うちの学校にはどういうわけか地毛でカラフルな人たちが沢山いる。金髪でもくすんだりしている様子はなくキレイな髪だ。
小さな頭の上にはこれまた小さい帽子が乗っけており、彼女の可愛さを強調する。
「えっと……失礼ですがあなたは?」
先程の良いようだと俺より年上なのは間違いない。背丈は小さくても先輩は先輩。敬語で尋ねる。
敬語で話しかけた俺に気を良くしたのか神妙にしていた顔が破顔し笑みを浮かべる。
「うんうん、先の言葉だけで年上だと見抜くとは……キミの事を気に入ったかもしれないな。この背丈のせいか私は結構舐められることが多くてね。礼儀正しい子は好きだよ」
「そ、そうですか」
女性に褒められるという慣れない事で赤面する。というかこの人は誰だ?
「ん?ああ、そうだ。キミの質問に答えていなかったね。私の名前はライネス。ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。自分で言うのはアレだが、聞いたことぐらいはあるんじゃないかな?結構噂になってるようだからね」
ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ
俺の通う高校に在籍しており、確か歳は一つ上だったか。彼女が入学すると同時にエルメロイの名を冠する男性教師が赴任したことで話題になったらしい。部活の先輩が言っていたような。
小柄な身体と、人形のように整った顔立ち。綺麗に輝く金色の髪と本の中の登場人物のような風貌だ。
だが性格はあまり好まれてはおらず、思ったことを口に出す事が多い。その性格のせいか遠くから見るのはいいが付き合うのは勘弁と言う男子生徒は多い。
「エルメロイ先輩でしたか。それで、俺に何か?」
「家名は好きでなくてねライネスで構わないよ。キミに声を掛けたのは偶然……いや、必然かな。キミは少し時間があるかい?」
「家に帰っても復習ぐらいしか予定はないので大丈夫ですが」
「なら良かった。私の話を聞いてはくれないだろうか」
俺の机の隣にある机に座る。椅子じゃなくて机に座るのか。敬遠される理由が垣間見えた気がした。
「私はね未知が好きなんだ。昔から調べるのが好きでね本をよく読む。キミはどうだい?読書好きかな」
「読書……人並みには読みますね。文庫本サイズを月に一つ程度」
「それは良いことだ。知識は幾つになっても役に立つ。学んでおいて損はないからね」
頷くたびに豊富な金色の髪の毛が宙を舞う。目を奪われてしまう程に綺麗な光景だ。
「そこでね、最近は艶本。所謂エロ小説という物を読み始めてしまったわけだ」
「ちょ!?な、何でそんな事を俺なんかに相談するんですか!?」
「おや?私はまだ何も言ってないのだがね。早とちりはいけないよ。物事の本質を見逃してしまう。ま、今回は当たりだろうけどね。キミの予想通りであれば良いのだが、私の相談はそう。男女の営みだ」
「いやいやいや、俺以外に適任者がいるでしょう!?この学校にはあなたの兄がいるじゃないですか!」
誰が呼んだかエルメロイ二世。
本人にその名で呼ぶとドスの利いた声で止めろと言われると噂だ。先輩の情報が正しければ目の前にいるライネス先輩の兄だった筈。義理の兄だったか?兎も角兄に違いはない。
「残念なことにその手の話題は我が義兄は苦手でね。話そうとすると何処かへ消えてしまうんだ。実のところ私はキミの事を知っているんだ。キミが知っているかは知らないが、意外と二年生の間でキミは気に入られててね。可愛げのある子が来たと噂だよ?」
「か、可愛げって俺男なのに……」
確かに自分でも時折気にするぐらい幼い顔立ちを俺はしている。
幼少期は女の子に間違われ大変だった覚えがある。案外自分と瓜二つの少女がこの世にいるんじゃなかろうか。
「噂を聞いているうちにキミであれば私の良い相談相手になってくれると思ってね。どうだい?私とセックスしてみないか?」
「セッ!?女の人がそんな事言ってははしたないですよ!」
「キミまで義兄のようなことを言うのかい?私は結構美少女だと自負はしているんだけどね。まぁ、肉付きは薄いが……」
彼女の言う通り彼女の身体は小柄なだけに起伏が少ない。
それでもスカートから覗くスラっとした脚は魅力的だ。黒タイツで包まれており余計にスラっとしているのが目立つ。
胸の方も相応に少ないがそれでも制服の上から膨らんでいるのが分かる程度にはあるだろう。
性格を除けば最高と言われるだけの事はある。童貞である俺には魅力的な提案に生唾を飲み込む。
「ふふっ、口ではそういうが身体の方は正直者のようだ。でもここではダメだ、見回りが来てしまうからね。この広い学校の端に古い木造の建物があるのは知っているかな?都合が良いことに其処の鍵を私は持っているのだよ。義兄に頼んでね」
付いて来たまえという彼女の後をフラフラと付いて行ってしまう。
急いで手に取った鞄の中は中途半端に教科書が詰められている。そんな事すら気付かずに俺は必死に彼女の後を付いて行った。
☆☆☆
「結構綺麗だろ?頑張ったんだよ……義兄が」
「えぇー」
見た目は古臭いが入ってみると綺麗で声を挙げていた俺に悲しい言葉が耳に入る。
エルメロイ二世先生って案外苦労人なんだな。廊下ですれ違う時も目に隈があるのが見えるし可哀そうだ。同情してしまう。
「確かここに……あったあった。ほら、布団だ」
「何でそんなものが」
「キミも分かるだろうけどこの建物は見つけにくくてね。案外バレないんだよ。だから眠るのには持って来いの場所と思って去年の冬に安売りしていた布団を買っておいたのさ」
4畳半の部屋にある押し入れみたいな襖を開くと中には新品の布団が。まだ使っていないらしく包装に身を包んでいる。
二人で剥がすと布団を畳みに敷く。
「……入った事ないですけど宿直室みたいですね」
「ふむ……確かにそんな感じの部屋になった」
布団を敷いた部屋は漫画や本で目にする宿直室のような様相になる。この学校にもあるはずだが、色々と金のかかっている我が校は宿直室も豪華だろう。
「さて、準備は終えた。これからキミと私二人でしか出来ないセックスをするんだ。一人ではできない事だ。心の準備は良いかな?」
「……はい。でも、俺で良いんですか?先輩みたいな綺麗な人だったらもっと良い人が……」
「ふふっ……あーはっはっはっは!」
急に大声を出して笑う彼女。
腹を抱えて笑う程の言葉だったらしく、目尻には輝くものが見える。
「そういう所だよ。私がキミを選んだ理由は。普通の男なら私に誘われたらNoと言わずするだろう。でも、キミはそうやって何度も私に思い止まるように言う。嬉しいものだよ人に心配されるというのは」
何処か悲し気な声色で話す。ライネス先輩の事は詳しく知らない。兄と呼ぶエルメロイ二世先生も髪や顔立ちを見るに血は繋がってはいないだろう。複雑な家庭環境なのだろうか。
「じゃあまずは接吻だ。それともキスが良いかな?」
俺のネクタイを掴むと引っ張られる。いきなりな事で反射的に目を閉じてしまう。
引っ張られた拍子にそのまま唇が柔らかいもので塞がれる。目を開くと同じように目を閉じている彼女の顔が目に入る。
押し付けられる柔らかな唇。俺のとは違いぷるんとしており、触れる部分が熱く感じる。
「んっ……ふふっ、キミに私のファーストキスを上げてしまった。……ん?キミも初めてのようだね。ごちそうさまと言うべきかなこれは」
「あっ、いやえっと……」
心の準備をしていたとはいえ衝撃的な出来事に頭が働かない。
口から出るのは戸惑いを含んだ言葉ばかり。そんな俺を見かねたのか再び唇が塞がれた。
「んっ……れろぉ……ちゅっ、ちゅっ……れろれろ」
ぴちゃぴちゃと水音を耳が拾う。
押し当てられた唇からヌルリとした舌が開けるように唇を何度も突く。諦めの感じで開くと口内を蹂躙される。
ファーストキスと言ってた人とは思えないほどに俺の口内の彼方此方を舐め啜る。歯茎を舐められたと思えば舌を絡められ舌に付いていただろう唾液ごと啜られる。
幾分か頭が冷静になったのか、負けじとばかりに舌を積極的に俺からも絡める。驚いたように目を見開いたが彼女はそのまま再び舌を合わせる。
何度も互いの唾液ごと舌を絡めては飲みあう。味などしないはずなのに彼女の唾液が喉を通るたびに喉が歓喜を上げる。
同時に俺の唾液が彼女の身体の一部になると思うと興奮を覚える。
「ちゅぱっ……んふふ、キスは心地いいな。もっとしていたくなる。通りでキスの描写が様々なモノで多い筈だ。キミとは恋仲でもないのに心が繋がった感じがするよ。キミさえ良ければ彼氏にならないか?それとも私のような口が悪い先輩は嫌いかな?」
「いや……その俺も先輩の事は嫌いじゃないです。寧ろ一緒にいて楽しいです。でも、まだ心の方は」
「そうかそうか。なあにまだまだこれから時間がたっぷりとある身体を重ねた後でも返事をくれればいい。それぐらいは待ってあげよう」
童顔には似合わない妖艶な雰囲気を纏う。
不思議と彼女に会っており見惚れてしまう。見惚れている俺を他所にしゅるしゅると身に着けている制服を脱いでいく。
気が付くと下着姿になっておりたじろいてしまう。
「キミが初めて見るであろう女の姿だ。自信はないが綺麗……かな。その顔を見るに満足してくれているようだ」
「えっと、その綺麗です……はい」
白い肌に映える黒い下着。一見すると肉付きの薄い悪く言うと童女のような身体付きには到底合わない下着だ。
それでも彼女のような悪戯をしている子供のようなそれでいて妖艶な雰囲気を纏う少女が着ているととても似合う。
ブラから覗く浅い谷間。キュッと持ち上がっている臀部を隠すパンツ。
全てが未経験で胸の動悸が激しくなる。心なしか顔も熱い。
「ほら、触ってみたまえ。想像以上には柔らかいぞ」
俺の手を取り胸に触れさせる。ブラ越しに触れた胸は同じ人体かと思う程に柔らかい。
すっぽりと俺の手で覆い隠される大きさの乳房。程よい大きさで指をムニムニと動かす。
「んっ……気に入ったようだね。男はおっぱい星人と言うぐらいだ。キミもその例に漏れないようだ」
「はい……自分でも考えたことはなかったけど俺おっぱい星人なのかもしれません。だって、先輩のおっぱいずっと触ってたいです」
「そんなに気に入ってくれたのか。嬉しいものだ。こんな身体の女に欲情するなんて変態だけだと思っていたがキミも変態かな?」
「変態で良いです。先輩さえ認めてくれるなら……」
多分俺の心の奥に隠されていただろう本音が飛び出る。
俺の両親は俗にいう共働きだ。共に研究者で家を空けることが多い。職場結婚との事もあり仲は悪くないのだが、子供よりも研究が大事と考えていると思う。
それでも生活費を必要以上にくれることを考えると愛はあるのかもしれない。それでも俺はもう少し分かる愛がほしかった。
今日初めて話したばかりのライネス先輩。
女生徒と話すのが苦手な俺でも驚くほど馬が合う。俺の言葉を否定せずに受け入れてくれる。
しかも噂や本人が言う程毒舌な感じはしない。寧ろ優しいまである。
「キミも中々大変な人生を送っているようだね。そう考えると私たちは似たもの同士だ。傷の舐めあいとも言うかもしれないがキミとであれば私は構わない。うん、驚いたよ自分に。他人何てどうでもいいいと冷めてると思ってたがキミは特別のようだ」
ふふっと見惚れてしまう程の笑顔を浮かべる。心の底からの笑顔のようで可愛いや綺麗を通り越して抱きしめたくなる。
笑顔なのだが何処か泣いているようなのだ。
心に体が引っ張られたのか気が付いたら彼女を抱きしめていた。
「ん……キミは温かいのだな」
「先輩も温かいです」
何も言わず唇を合わせる。舌を絡めるような情欲を煽るようなキスではなく相手に愛を伝えるようなキス。
溶けあうような心地よさに互いの身体から力が抜けていく。多分緊張で固くしていたのだろう。
「先輩、その……好きです。好きになりました」
「そうか……うん、私もキミが好きだ。キミでなくては駄目なんだ」
初めて会ったばかりなのに告白までするとは一時間前の俺には想像もつかないだろう。
教室で見た時から一目惚れをしていたのかもしれない。それでも心はポカポカと暖かった。
気が付いたらまた日間ランキング2位。
それとお気に入り300人越え……ありがとうございます。
驚きのあまり執筆を急いでしまってます。皆様の期待が怖い。
こんな自己満足のような小説に評価までくれるとは……
本文でライネスの年齢が原作と違うけど気にしないでね。現パロだから許してください。
あと、誤字報告ありがとうございます。投稿前に確認はしているのですが多くて驚きです。
最後になりますが、ジャックの短編3200文字程度も上げているので良ければ見てください。