※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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禁じ手

 

 

 

アステリオスの魔剣による振り下ろしによる一撃を、剣舞士は刀で受け流す。しかし余りの膂力に、剣舞士も軽く押し飛ばされる。 

だが剣舞士は、慌てる事なく即座に横に跳んだ。何故なら、着地した位置にアステリオスが瓦礫を投擲していたからだ。

アステリオスが投げた瓦礫は、まるで砲弾のように通過して、壁にめり込んだ。

そうして剣舞士が着地した直後、今度はアステリオスが突進してきた。床を破砕する程の踏み込みの突進に、剣舞士はアステリオスの目を狙って突きを放つ。

だが、その突きをアステリオスは角で弾き、蹴りを放った。

そこに、白髪剣姫が割り込み、アステリオスの蹴りを上にかち上げた。

唸る風を伴った蹴りは白髪剣姫と剣舞士の上を通り過ぎ、二人は即座に前に出て一撃入れようとした。

しかしアステリオスは、弾かれた勢いを利用してまるでコマのように魔剣を振るって二人を弾き飛ばした。

ここまで、僅か一分足らず。

 

「ち……中々に強い……」

 

「普通のミノタウロスとは、段違いの強さです……!」

 

剣舞士と大妖精の言葉に、白髪剣姫は頷いて同意した。

一応補足すれば、通常のミノタウロスは鋼鉄等級の冒険者が最低二人居れば勝てるとされている魔物だ。

その特徴としては、高い防御力と膂力。

生半可な武器では斬れず、その拳や蹴りは容易く鎧をひしゃげさせる。

故に誰が言ったか、第一の死線(ファースト・デッドライン)。上級冒険者への登竜門とも言われる上級魔物だ。

体感だが、アステリオスの強さは下手したら金等級に届く可能性すらある。

もし死の迷宮から出たら、王都にどれ程の被害が出るか分からない。

 

「……命懸けだな、こいつは……」

 

剣舞士はそう呟くと、鍵を取り出して

 

「白雪」

 

と妹を呼び出した。

 

「大妖精と白髪剣姫の援護……出来るなら、あのデカブツの邪魔も」

 

剣舞士からの指示に、白雪は頷いて動いた。

アステリオスの周囲のみ、一気に気温が下がり始める。

 

「これは……!?」

 

大妖精は、白雪の狙いに気付いた。

魔物とはいえ、生物には変わらない。

寒くなると、生物は身体機能が大幅に低下する。それを防ぐ為に人間は、シバリングという身震いを起こして、体の熱を高める。

そしてこのシバリングというのは、体毛が無い生物にも類似する行為がある事が分かっている。

それは勿論、アステリオスとて例外ではない。

アステリオスの表皮に霜が付き始めたが、次の瞬間には湯気と共に解けた。

アステリオスがシバリングを駆使し、体温を維持しているからだ。

そしてアステリオスは、白雪が凍らせていると気付いて、白雪を狙い駆け出した。

アステリオスは床に蹄をめり込む程の力強さで、白雪に突進する。白雪の華奢な体では、突進の直撃を受けたら無事では済まない。

しかもただの突進ではなく、魔剣を構えての突進。

白髪剣姫が動こうとしたが、それは大妖精が静止する。そうこうしている間に、アステリオスの魔剣が白雪を貫く。

だが、アステリオスの表情が驚愕に変わった。

何故ならば、白雪の体がユラユラと掻き消えたからだ。その理由は、空中に散らばる結晶。

それが光を屈折させ、虚像を生み出していたのだ。

周囲に幾つも白雪が現れては消えて、どれが本物か分からない。

それにアステリオスが翻弄されていた時、剣舞士が背後に現れて刀を振った。

その一撃は、アステリオスを壁際まで弾き飛ばした。

 

「あの力は!?」

 

大妖精は、剣舞士から並々ならぬ威圧(プレッシャー)を感じた。

剣舞士の全身から魔力が揺らめき、そして左手は影に覆われている。

それは、二つの呪装具。鎧の黒翼と黒刀の黒椿の同時起動だった。

黒翼による身体能力の大幅強化に、黒椿による半鬼神化。

勿論、その代償は凄まじい事になる。

剣舞士の顔に、血管が浮き上がり、額からは汗が流れている。

 

「行クゾ……!」

 

剣舞士の命懸けの戦いが幕を開けた。

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