二つの呪装具を同時に起動した剣舞士は、圧倒的速度でアステリオスに迫った。そしてアステリオスは、その剣舞士を最優先撃破対象と認識。
持っていた魔剣から凄まじい電撃を発生させて、剣舞士を狙って放った。
電撃は床を破砕しながら、剣舞士目掛けて直進する。直撃を受けたら、無事では済まないのは明らか。
当たる直前、剣舞士の姿が掻き消えた。
アステリオスは己の直感から、左腕を背後に振るった。その瞬間、左腕が肘から斬り飛ばされた。
激痛から、叫び声を上げるアステリオス。
しかし
「喧シイゾ、駄牛……コレカラ貴様ヲ、斬リ刻ンデヤル……」
剣舞士は、昏い目でアステリオスを睨みつけた。
その姿を見た大妖精は、恐ろしく思った。
確かに、そうしなければアステリオスに勝てないかもしれない。だがこのままでは、剣舞士が剣舞士で無くなるような気がしてならない。
だから大妖精は
「立てる?」
と白髪剣姫に問い掛けた。
その問い掛けに、白髪剣姫は即座に頷いた。
「また強化施すから、彼の援護を……あのまま戦わせたら、人じゃなくなりそうな予感がする……」
大妖精の言葉を聞いた白髪剣姫は、大妖精が支援魔法を発動した直後に駆け出した。
その時、剣舞士は魔剣をデタラメに振り回すアステリオスと交戦を続行していた。
アステリオスの攻擊は、一撃一撃が容易く床や壁を斬り裂き、踏み込みが床を破砕する。
しかし剣舞士は、そんな暴風が如き猛攻の中で最小限の動きで攻擊を躱し、隙を突いて一撃一撃、着実に入れていく。
しかし、黒椿の能力を発揮しても、深くは入れられない。
斬り飛ばした肘だが、筋肉を締めて出血は止まっている。
(並外れた膂力とは思っていたが、予想外にも程がある……)
冷静に思考しながら、剣舞士は焦りを覚えていた。
呪装具の二つ同時起動という禁じ手により、剣舞士の体は驚く速度でダメージが蓄積しつつある。
下手したら、攻擊より呪装具の副作用で致命傷に至る。
その時剣舞士は、視界の端で白髪剣姫が駆け付けている事に気付いた。
アステリオスは怒りから、剣舞士しか見ておらず、十中八九白髪剣姫を忘れている。
だから剣舞士は、強化された身体能力を駆使して、アステリオスに肉薄。そのまま一気に顎を蹴り上げて、次に横頬を刀で斬りつけて、目を白髪剣姫の方に向けた。
その直後、白髪剣姫が全身を駆使して、まるで弩砲から放たれた矢のように、アステリオスの目を狙って飛び込んだ。
斬撃強化と炎を付与された剣は、アステリオスの目を穿った。
刺し貫かれ、焼かれる痛みからアステリオスは絶叫を上げ、白髪剣姫を振り払おうと魔剣から手を離し、白髪剣姫を掴もうとした。
しかし次の瞬間、右手が肩から飛んだ。
魔力を刃に集中させた剣舞士が、大上段から黒椿を振り下ろして斬り飛ばしたのだ。
後一撃、剣舞士は歯を食い縛りながら、刀の切先に魔力を集中させ、刀を心臓を狙って突き出した。
その一撃は確かに、アステリオスの胸部を刺し貫いた。確かに、その一撃は
その証拠に、アステリオスは膝を突き、前のめりに倒れ始めた。
だが次の瞬間、アステリオスは頭を動かし、その立派な角で剣舞士を貫こうとした。
何時もならば、余裕で回避出来るその一撃だが、その時の剣舞士は、もう限界だった。
呪装具二つの同時起動は、剣舞士の体をボロボロにしていた。
呪装具が強制解除された剣舞士は、黒椿を落とし、両膝を突いていて、辛うじて餓狼を杖代わりにして倒れるのを防いでいた状態だった。
そんな剣舞士に、回避は不可能だった。
性も根も尽き果てたそんな剣舞士を、白髪剣姫が救った。
白髪剣姫はいつの間にかアステリオスの上に居て、大上段から剣を振り下ろした。
白髪剣姫が振り下ろした剣は、アステリオスの首を斬り飛ばした。斬り飛ばされたアステリオスの首は、剣舞士の頭上を通過して、壁にぶつかって床に落ちた。
そこで、剣舞士は意識を失って倒れた。