目覚めた剣舞士は、見上げた天井を見て
「……剣の乙女の教会……か……」
と呟いた。
そして、剣舞士が起き上がったタイミングでドアが開き
「あら、起きましたか?」
と剣の乙女が入ってきた。
「貴方、3日間も意識を失っていましたよ?」
「3日で済んだか……」
剣の乙女の言葉を聞いて、剣舞士は小さく呟いた。
そして、剣舞士は
「あれから、どうなった……王妹は?」
「王妹殿下なら、ゴブリンスレイヤー一党により救助されました。今は恐らく、陛下が報奨を考えている最中かと」
剣舞士達がアステリオスを撃破した後、ゴブリンスレイヤー達は見事に王妹の救助に成功。
主犯は、邪神に魅入られた魔術師だったらしい。
王妹を生贄に捧げ、再度邪神を現世に呼び出すつもりだったらしい。
しかし、ゴブリンスレイヤー一党の迅速な突撃もあり、未遂に終わっている。
「今回、一番重傷だったのは、間違いなく貴方ですね……呪装具、でしたか? 強力な装備ですが、反動も凄まじい呪われた装備……私達教会からしたら、使わないでほしい装備ですね……」
どうやら、誰かが呪装具に関する情報を剣の乙女に教えたらしい。
まあ、治療の際に必要な情報ならば仕方ないだろう。
「それと、こちらを……」
剣の乙女は、一緒に入室してきた従者が押していたゴンドラを指し示すと、そこには貨幣が詰まった袋が3つもあった。
「
どうやら、アステリオスは共同撃破としてカウントされたらしい。よく見れば、部屋の隅なアステリオスが使っていた魔剣の大剣も置いてある。
「こちらは、貴方方に贈呈する事が決まりました。元より、冒険で得た品に関しては、一党の判断により分配されるもの……ゴブリンスレイヤー様の判断により、貴方にと」
「……わかった」
剣舞士としても、どうすればいいか分からない代物だが、ゴブリンスレイヤーから任されたのならば、仕方ないと思う事にした。
「一党の皆さんは、宿に居る筈です。合流なさっては如何でしょうか?」
「……そうしよう」
剣の乙女の言葉に頷き、剣舞士は軽く装備を纏ってから、大剣を担いで教会を出た。
「……まだ、左腕は痺れてるか……」
歩きながら、剣舞士は軽く左腕を動かしながら呟いた。黒刀を使った左腕だが、見た目は回復している。しかし、痺れが強く、本人からは力が入っている感覚が薄い状態だった。
到底、全力戦闘は不可能だろう。
王都の話題は、3日前の死の迷宮前の死闘で持ち切りだった。
因みにだが、王妹救助の事は表向きには明かされておらず、誘拐された貴族の子女の救助という事になっている。
更に言うと、王妹は神官娘の言葉に何か感じたらしく、地母神の神官になると言って、実際に地母神の教会に入った。
そうこうしている間に、一党と令嬢商人で宿泊している宿の前に到着し、剣舞士は中に入った。
すると、食堂も兼ねた広場に居た上妖精弓手が
「あ! フェイヒリッター! 起きたのね!」
と声を挙げた。よく見れば、顔が若干赤い。
どうやら、呑んでいるようだ。
「師匠!」
「意識が戻って良かったわ」
「あの場所に戻ったら、半死半生の貴方が倒れてて、驚きました……」
「然り然り。拙僧の背に固定して引き上げたのだ」
「そうか。世話を掛けた……アステリオスを倒すのに、死力を尽くしたからな……予想外に手強かった……」
話を纏めると、最低限の手当てをした後、装備を一部外して蜥蜴人僧侶の背に固定して梯子を登ったようだ。
確かに、蜥蜴人僧侶の膂力強化を使えば簡単だろう。
「大妖精様から聞いた話だと、鎧と剣の2つを同時に使ったみたいね?」
「ああ……呪装具の同時起動……出来る事ならば俺もしたくない禁じ手だったが……そうも言ってられない状況だったからな……まあ、蘇生魔法のおかげで3日で済んだ……前に使った時は、一ヶ月は意識が戻らなかったからな……」
「一ヶ月も……」
一ヶ月も意識不明だと、体の衰えも大きく、当時の剣舞士は復帰に期間を要したのを覚えている。
「すいません、私達は呪装具というのを知らないんですが……」
「ああ。そういえば、二人には説明していなかったか……」
大妖精が手を挙げながら言うと、白髪剣姫も頷いていた。
そこから剣舞士は、二人に簡単にだが呪装具の事を説明した。
「強力だけど、呪われた装備……故に呪装具……」
「ああ……例えばこの刀は、餓狼……使い手の身体強化と鋭い切れ味が能力だが、使い手に殺戮衝動を覚えさせる代物だ……」
「殺戮衝動って、大丈夫なんですか!?」
「ああ。こいつは野生の本能からくる殺戮衝動だから、俺には通じない……昔、この黒椿の第二解放を使った際の怨みから来る殺戮衝動に比べたら、大した事は無い」
この世界に来てから2回使った、第一解放。それの代償は使い手の血と肉。だが、第二解放となればその量が増え、更には使い手に鬼神の怨みの殺戮衝動が付与される。
昔剣舞士は、必要に駆られて第二解放を使い、何とか制御して短時間で終わらせたものの、暫くは回復に専念させられる事態になった。
「呪装具を扱う中で、使い手達の中で禁じ手となったのが、複数の同時起動だ……使い手に莫大な負荷が掛かる」
「確かに、貴方が意識不明になったのは初めて見たわね」
剣舞士の説明に、令嬢商人が頷いた。
戦士娘も、剣舞士が意識を失ったのは初めてだったから、当初は混乱した。
しかし、ゴブリンスレイヤーが冷静に手当てと運ぶ事を指示したので、蜥蜴人僧侶が運ぶ事になったのだ。
「とりあえず、剣舞士さんはゆっくり休んで下さい」
「ああ、分かった」
大妖精の言葉に頷き、剣舞士は部屋に向かったのだった。