王妹救助から約一週間後、一党は水の都から西の街に向けて帰路に付いていた。
因みに、その事件の報奨は一人金貨6袋という大金と、王都の街門の門番に見せれば直ぐに通してくれる王のサイン入りの通行証だ。
「師匠、左腕は……」
「まだ痺れてるな……完治には、少し掛かりそうだ」
帰路の馬車の中で戦士娘から問われ、剣舞士は左手を握ったり、左腕を軽く動かしながら答えた。
確かによく見れば、少々動きがぎこちない。
「むしろネームド相手にして、四肢の欠損も無いのは僥倖と言えるかと……あれ程の相手、かつての大戦を思い出しました」
椅子に腰掛けている大妖精は、少し思い出しながら呟き、白髪剣姫は同意するように頷いていた。
つまりアステリオスは、魔将に匹敵するかそれ以上の相手だったという事になる。
「まあ、全員無事なのは僥倖でしょうや」
「そうね。アステリオスと対峙した時、頭の中で警鐘が鳴りまくってたわ」
蜥蜴人僧侶の言葉に、上妖精弓手が同意したように頷いた。そして上妖精弓手はどうやら、命の危機すら感じ取っていたようだ。
「まあ、暫く貴方は休みなさい。たった3人でアステリオスを足止めして、命からがら倒したんだから」
「そうだな……少し休もう……もう少しで冬だしな」
今は秋も半ばを過ぎ、木々からは枯れ葉が落ちていく。あと2、3カ月もすれば冒険者ギルドも休みに入る。
ある意味、休むには丁度良いのかもしれない。
「皆さん、見えてきたわ! 西の街よ!」
令嬢商人の言葉に反応し馬車の外を見れば、確かに見慣れた西の街の外壁が見えた。
そうして一行は、無事に西の街に帰還した。
その後、冒険者ギルドに報告に向かい
「お疲れ様でした、皆さん! 無事の帰還を祝福します!」
受付嬢や監査嬢に出迎えられ、ようやく一息ついた。
そうして、一党の代表としてゴブリンスレイヤーと神官娘が報告している間に、剣舞士はあの魔剣を持ったまま重剣士を見つけて歩み寄り
「確か、前に新しい剣を探していたな?」
と語りかけた。
「あ? ああ。こいつもいい剣なんだが、やはり魔剣の一本も欲しいってのは言ったが……」
「なら、こいつをやる」
剣舞士はそう言って、担いでいた魔剣の大剣を差し出した。
「これは……!」
「まさか、魔剣か!?」
重剣士だけでなく、女聖騎士も驚いていた。
魔剣は鍛冶師が命を賭けて製作し、熟練の鍛冶師が命と引き換えにようやく完成する、と言われている。
もしくは、魔術師が強力な魔術を駆使して鍛冶師と息を合わせて造る、とされている。
何せ、見つかるのは大抵旧い遺跡や迷宮なので資料も無いから、不明な点が多いのだ。
だが魔剣に共通しているのは、強力な力を有しているという点にある。
剣士ならば、大概が所持するのを夢見る武器だろう。
「おいおい、お前も大剣は使えるって話だったろ。お前が使わないのか?」
「確かに使えるがな……俺は機動性を重視しているから、こいつは合わない……」
アステリオスから回収され、報酬は一つとして渡された魔剣の大剣なのだが、かなり重く、剣舞士でも振り回すのは苦労する重量級の大剣だった。
それならば、膂力の優れた重剣士に渡した方が活かせると判断したのだ。
「だが、本当に良いのか? こいつを売ったら、かなりの金額になりそうだぞ?」
魔剣は見つかっている数が少ない為に、一本の値段は下手な家より高い事もザラだ。
それこそ、オークションになれば依頼より高い金額になり、豪邸が買える金額になるのは確実だ。
「構わない……活かせる奴が使う方が、武器も有難いだろう」
確かに、オークションに参加出来るのは大概が金持ちで、競り落としたとしても扱いきれるかは別問題であり、宝物庫に仕舞われるだけ、となるよりかは、使える人物が使う方が良いだろう。
重剣士は少し悩んだ後
「……分かった、有り難く貰う。ただし、タダって訳にはいかないな。今度飲みに行くぞ。俺が奢る」
「分かった。それで手をうとう」
剣舞士はそう言って、重剣士に魔剣の大剣を引き渡したのだった。