風呂に入る前に剣舞士は、一人刀を振っていた。
左手の感覚は、大分治ってきているが……
「……やはり、なまってるな……まあ、一ヶ月は経っているからな……」
左手の動きが鈍く、思った太刀筋にならないが、剣舞士は落ち着いていた。
そもそも、蘇生の奇跡がなければ二カ月や3ヶ月は意識が戻らない可能性が高く、そこから回復となると、今より悪かっただろう。
それを考えれば、まだ幸運な方だ。
剣舞士はそう考えて、刀を鞘に仕舞った。その直後
「そろそろ、体が冷えますよ」
と剣聖が声をかけた。
「流石は白金等級か……気付かなかったな……何時からだ?」
「約10分程前からです。風切り音に気付きましてね……こちらを」
剣聖はそう言って、剣舞士に長めのタオルを差し出した。
「すまないな……」
「いえ……軽くは話は聞いてましたが、呪装具を2つ同時起動したとか?」
「ああ、呪装具使いの間では禁じ手として知られた最終手段だな……蘇生の秘術がなければ、2、3ヶ月は意識を失っていただろう」
「そんなリスクが……」
家に帰りながら説明すると、剣聖は驚いていた。
「まあ、そこは運が良かっただな……蘇生の秘術があって助かった……」
「剣の乙女様々ですね……幾多の冒険者達や騎士達が、あの教会で目を覚ましたと聞きます」
王都は目の前に死の迷宮が目の前にある関係上、数多くの冒険者達や騎士達が居て、日夜魔物と交戦している。
やはりそうなると、中には
そんな冒険者達や騎士達を、教会は日々蘇生してきた。そしてそれは、これからも変わらないだろう。
「確か、明日には王都に向けて発つんだったか?」
「はい。今日は泊めていただき、感謝します。剣舞士殿……それに、白髪剣姫様の事も……重ねて感謝を」
「俺は俺に出来る事をしたまでだ……気にするな」
剣舞士はそう告げると、家に入った。
そして翌日、朝から雪が降っていた。これ自体は、そろそろ降るだろうと誰もが予想していた為に、パニック等は特に無かった。
だが、問題は別にあった。
「間違いないのか!?」
「はい! 鳴鏑矢が打ち上げられました!」
西の街の外壁の北側の上で見張りをしていた兵士が、鳴鏑矢の音と矢を見たという報告を上げてきたのだ。
その数は、三本。
鳴鏑矢は事態により打ち上げる数を別けており、一本なら不審な動きを探知した。というレベルで、警戒を促すだけのもの。
次に2本は、多数の魔物が接近中。という、警告になり、戦闘態勢を促すもの。
最後に、3本。
これは、大量の魔物が接近中。という緊急事態を報せるものになる。
「伝令と索敵魔法を使える者を緊急招集せよ! それと、全門を何時でも閉鎖出来るようにしておけ!!」
『はっ!!』
隊長各の指示を受けて、一斉に駆け出す兵士達。
それを見送った隊長は、森の方を見て
「……スタンピードだと言うなら、近くに未発見のダンジョンが有るというのか……!?」
と呟き、歯を食いしばった。
西の街の大攻防戦が始まる。