※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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遺跡へ

街を出て、数日後。一行は件の遺跡に到着した。

そして、それなりに離れた場所から見ていたのだが

 

「……狼を飼っているか」

 

「それなりに、余裕がある群れのようだな」

 

その遺跡の入り口に、ゴブリンが狼と一緒に見張りに立っていた。狼を飼っているのは、そのゴブリンの群れが余裕を持っている証拠で、余裕が無ければ、餌になる。

 

「私に任せて」

 

上妖精はそう言うと、無造作に弓を射ったのだが

 

「どこを狙っておるんじゃ!」

 

彼女が放った矢は、てんで違う方向に飛んでいっている。しかし、上妖精は慌てずに第二射を放った。その矢は、真っ直ぐに飛んでいき、最初に放った矢とほぼ同時に狼の頭に命中。一射目の矢は、見張りに立っていた二体のゴブリンの頭を射抜いた。

それを確認した上妖精は、自信満々と言った風体で

 

「熟達した弓はね、魔法と見分けが出来ないのよ」

 

「それを、ワシの前で言うか……」

 

倒したの以外に見張りが居ないか確認しつつ、一行は遺跡の入り口に近づいた。そして居ないのを確認すると、突如ゴブリンスレイヤーがゴブリンの死体に刃を突き立てた。

 

「ちょっ!? 何してんのよ!?」

 

それを見た上妖精が慌てていると、ゴブリンスレイヤーはゴブリンの内臓を布で絞りながら

 

「奴等は、匂いに敏感だ……特に、エルフの匂いにはな」

 

と告げて、布を持ちながら、上妖精に迫った。

 

「嘘……ちょっ。辞めてよ!? 誰か、こいつ止めて!?」

 

ゴブリンスレイヤーが何をしようとしているのかを察し、上妖精は神官娘達に助けを求めた。しかし、三人娘達は

 

「慣れますよ」

 

「慣れるわ」

 

「慣れます」

 

死んだ目をしながら、それだけ告げた。なお、三人娘は既に一度経験しており、それ以来匂い消し用の匂い袋を身に着けている。

そして上妖精は、ゴブリンスレイヤーを止められないと悟り、頬をひくつかせた。

その数秒後、声なき悲鳴が上がった。

そして、中に突入。ゴブリンスレイヤーと剣舞士はそれぞれ剣と鞘で床や壁を軽く叩きながら進んでいた。

 

「ふむ……この遺跡……どうやら、古い城塞のようですな……」

 

と呟いたのは、蜥蜴人僧侶だった。

 

「そうなんですか?」

 

「以前に行った古城塞で、似たような壁画を見た……恐らくは、最低でも数百年前の城塞であろう……それが今や、ゴブリン達の巣……時は残酷なものだ……」

 

神官娘の問い掛けに、蜥蜴人僧侶は壁の絵を見ながら教え、最後に両手を合わせた。すると、鉱人術士が

 

「残酷といやぁ……」

 

と後ろを見た。その先には

 

「うぅ……気持ち悪いよぉ……」

 

ゴブリンの血に濡れた上妖精が、複雑な表情を浮かべていた。

 

「お湯で踏み洗いすれば、匂いは落ちますから……」

 

「まあ、根気よく洗うしかないけれど……」

 

既に一度経験した三人娘は、何処か遠い目をしている。そんな三人娘の横を通り過ぎて、上妖精は

 

「後で覚えてなさいよ!」

 

とゴブリンスレイヤーに告げて、前に出た。

彼女は弓師だが、野伏の役割もこなすのだ。

 

「……覚えておこう」

 

本当に覚えておくだけになりそうだが、ゴブリンスレイヤーは返答した。その直後

 

「全員、ストップ」

 

と告げると同時に、上妖精は少しも先の床をジッと見つめている。よく見れば、石畳が少し新しい。

 

「鳴子か……?」

 

「多分……罠は専門外だから、確約出来ないけど……」

 

ゴブリンスレイヤーの問い掛けに、上妖精は優しく石畳を触りながら答えた。そこに、剣舞士が歩み寄ってから、周囲の壁や天井を軽く見回して

 

「……いや、鳴子ではないな……恐らく、矢だろう」

 

と言って、壁の一ヶ所を指差した。よく見れば、そこには薄く小さい穴がある。

 

「多分、矢も毒が塗られた物だろう……踏まないように、目印を書いておく」

 

剣舞士はそう言って、床に落ちていた焼けた枝の先端で、その石畳に円を書いた。それを見ながら、ゴブリンスレイヤーが

 

「……気に入らないな……」

 

と呟いた。

 

「どうしたんですか、ゴブリンスレイヤーさん?」

 

「入り口や途中に、トーテムが無かった……」

 

ゴブリンスレイヤーのその言葉に、三人娘はあっと声を漏らした。その意味が分からず、上妖精が

 

「どういうことよ」

 

とゴブリンスレイヤーに問い掛けた。

 

「奴等に、ゴブリンシャーマンが居ない……」

 

「あら、術使いが居ないなら楽じゃない」

 

「いえ、むしろ居ないのがおかしいんです……」

 

「狼の調教もだけど、罠の設置まで……」

 

「知識層に当たるシャーマンが居ないのにね……」

 

上妖精の言葉に、三人娘はそう教えた。

上妖精を含めた三人は、確かにゴブリンスレイヤーと同じ銀等級だ。しかし、ゴブリンに関する知識はゴブリンスレイヤーが群を抜いて有している。

 

「ゴブリンは基本、略奪種族……確かに毒や石を使った武器等の製作はするが、基本は何処かから奪うのが習性……そのゴブリンが、シャーマンが居ないのに罠を設置したりするとなると……」

 

「より上位の個体が居る……ということですかな?」

 

蜥蜴人僧侶の言葉に、ゴブリンスレイヤーは無言で頷いた。

そして一行は更に奥に進み、ある程度すると、別れ道に出た。

 

「……」

 

「ワシに任せろ」

 

ゴブリンスレイヤーが無言で左右を見ていると、鉱人術士がそう言って床を少し触り

 

「ふむ……奴等は、左から来ているようじゃな」

 

と告げた。

 

「なんで分かるのよ」

 

「石畳のスリ減り具合じゃよ……連中はどうやら、この入り口と左をしょっちゅう行き来しているようじゃな……少数が、この右に行っているようじゃが……」

 

上妖精の問い掛けに鉱人術士が答えていると、ゴブリンスレイヤーが剣を抜いて

 

「右に行くぞ」

 

と告げた。

 

「なんでよ、ゴブリンは左に居るんでしょ?」

 

「恐らくな……だが、間に合わなくなる」

 

上妖精は抗議するが、ゴブリンスレイヤーは強い語気で告げて歩き始めた。

その後を、他のメンバーも着いていった。この先で見るのを、知らぬまま。

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