※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

14 / 105
オーガ戦 中

少し時は戻り、剣舞士が妖精冒険者と戦っていた時。

剣舞士は、妖精冒険者をなるべく傷付けずに無力化させるために、隙を探していた。

恐らくは、前の使い手の技量をある程度はトレース出来るようで、妖精にしては剣技が形になっていた。しかし、やはり前衛向きではない妖精に剣は扱いきれないらしく、その動きは剣舞士から見たら粗雑だった。

殺すならば、一撃で心臓を一突きか首を飛ばすで事足りる。しかし、操られているならば何とか助けたかった。

 

(誰にも、あんな思いをさせたくないからな……)

 

剣舞士は最小限の動きで回避しながら、時折わざと大胆に避けて相手の攻撃を誘った。

その時、妖精冒険者が腕を大きく振り上げた。それこそ、剣舞士が待った好機。剣舞士は手の中で刀を持ち変えた。次の瞬間、一瞬で片がついた。強化された身体能力を活かして振り下ろされた刀は床にめり込み、それとほぼ同時に骨が砕ける音が響いた。

それは、手首を狙って振り下ろされた剣舞士の一撃で、妖精冒険者の手首の骨が折れた音だった。

刃ではなく、峰による一撃。つまりは、峰打ちだった。

いくら身体能力が強化されていようが、鋼による一撃は妖精冒険者の手首の骨を折った。

それにより、その手から呪装具が離れて、妖精冒険者の体が前のめりに倒れてきたが、それを剣舞士は支えてからゆっくりと寝かした。

その時

 

「ヤクタ!」

 

「ヤクタ!!」

 

とオーガと魔法使い娘の声が聞こえて、剣舞士は懐から一枚の札を取り出して地面に叩き付けた。

 

「地隆壁!!」

 

その直後、地面が隆起して剣舞士と妖精冒険者を覆った。それと同時に、凄まじい衝撃が襲ってきた。間に合わなかったら、焼かれていただろう。

ガタガタと揺れる間、剣舞士は術を維持し続けた。そうして衝撃が収まると、ゆっくりと土壁を下ろした。

見えたのは、焼け焦げた広間と無事なオーガと仲間達。

仲間達が無事なことに安堵していると、オーガが

 

「冒険者一人を始末するのに、何時まで時間を掛けている! 早く来い!」

 

と苛立った様子で、声を挙げた。しかし、剣舞士が

 

「それは、出来ぬ相談だな」

 

と告げた。

オーガと一行が視線を向けてきて

 

「貴様!」

 

「師匠!」

 

とそれぞれ声を挙げた。

剣舞士は瓦礫を跨ぐと、無造作に一歩ずつ近づいていく。

 

「剣舞士殿」

 

「お主……」

 

無造作に近づいていくからか、蜥蜴人僧侶と鉱人術士は驚いた表情を浮かべた。

恐らくは、剣舞士の意図が読めなかったからだろう。

しかし剣舞士は、気にした様子もなく

 

「さあ、オーガ……終わりの時だ……ここで、俺達と遭遇したことを後悔するがいい」

 

と告げながら、刀を突き付けた。

それを聞いたオーガは、怒り心頭と言った表情で

 

「貴様……矮小な人間風情の分際で……! 貴様は、生きたまま喰われる苦しみを与えてから殺してくれるわ!!」

 

と怒声を挙げた。それと同時に凄まじい殺気が叩き付けられるが、剣舞士は気にした様子はない。

 

「さあ、どうなるかな……ゴブリンスレイヤー……行けるか?」

 

「……無論だ」

 

剣舞士が呼び掛けると、ゴブリンスレイヤーは改めて剣を構えた。それを、視界の端で見つつ

 

「各員、一ヶ所に留まらずに動き続けろ……足を止めたら、一撃で殺られるぞ……!」

 

と告げると、一気に駆け出した。

オーガに向けて、一直線に。

 

「おおおぉ!!」

 

オーガは駆けてくる剣舞士を狙い、鉄棒を振るった。鉄棒は地面にめり込み、瓦礫を周囲に吹き飛ばした。

それはまた瓦礫に当たり、瓦礫同士が砕け散った。当たれば、無事では済まないのは明白だった。

 

「師匠!」

 

瓦礫を避けるためにしゃがんだ格闘家娘は、剣舞士を呼んだ。その直後、鉄棒の上を走っていく剣舞士の姿が、土煙の中から出てきた。

剣舞士はそのまま、オーガに向かっていくが

 

「ちょこざいな!!」

 

と一度、鉄棒から手を放して豪腕を振った。

 

「くっ!?」

 

流石に不味いと思ったのか、剣舞士は大きく跳んで回避。離れた位置に着地した。そこに、蜥蜴人僧侶とゴブリンスレイヤーが切り込んだ。

 

「イィィィヤァァァァ!!」

 

「はあ!!」

 

蜥蜴人僧侶は猿叫を挙げながら牙剣を振るい、ゴブリンスレイヤーは気合いの声を挙げながら剣を叩き込んだ。

二人の攻撃は確かにオーガに傷を着けたが、すぐに塞がってしまった。

 

「ちいっ!?」

 

「自己再生能力とは!?」

 

まさか自己再生能力まで有しているとは思わず、ゴブリンスレイヤーと蜥蜴人僧侶は舌打ちした。こうなったら、一撃で致命傷(クリティカル)を叩き込むしかないだろう。

 

「はあぁっ!!」

 

格闘家娘は意識を引くためにか、オーガの足に拳や蹴りを次々と繰り出していく。そこに

 

「鬱陶しいわ!」

 

とオーガが、格闘家娘に拳を振り下ろした。それに気付いた格闘家娘は後ろに跳んだが、腹部に瓦礫が当たった。

 

「がっ!?」

 

それにより、格闘家娘は大きく吹き飛ばされて地面をゴロゴロと転がった。

 

「大丈夫!?」

 

「無理しないで、隠れててください!」

 

上妖精弓手と神官娘がそう言うが、格闘家娘は歯噛みしながら

 

(この中で、私が一番役に立ってないんだ……これ以上、無様は晒せない!)

 

と気合いを入れて、立ち上がろうとした。その時、ある物が視界に入った。

 

「あ、あれは……」

 

それは、妖精冒険者が持っていた呪装具の刀だった。凄まじい切れ味だったのは見ていた。

 

「……使えるか……」

 

戦力が一人でも増えれば、いくらオーガと言えども倒せるようになるはず。そう考えた格闘家娘は、呪装具に手を伸ばした。

それを、オーガの一撃を跳んで回避してきた剣舞士が見て

 

「よせ! それを、掴むな!」

 

と忠告したが、遅かった。

 

「あ、が……ああぁぁぁぁぁ!?」

 

呪装具を掴んだ直後、格闘家娘は今まで経験したことの無い衝動に襲われた。

 

殺せ殺せ殺せ殺せ!

眼前に居る全ての敵を殺せ!

 

それは、殺戮衝動だった。殺戮衝動に侵されて、格闘家娘は我を失いそうになった。だが

 

(だ、ダメだ……私は……!)

 

「誰も……殺したく……ない……」

 

その殺戮衝動に、耐えていた。それを見た剣舞士は

 

「今なら、引き戻せるか……!?」

 

と判断し、一度オーガ戦から離脱。格闘家娘に近寄ると

 

「文句なら、後で聞く!」

 

そう言って、呪装具を強引に押さえてから格闘家娘と唇を重ねた。

 

「んぅっ!?」

 

突然の口付けに、格闘家娘は目を見開いた。次の瞬間、剣舞士は呪装具を格闘家娘の手から奪い取り

 

「俺が分かるな?」

 

と問い掛けた。格闘家娘は顔を真っ赤にしながらも、コクコクと頷いた。

そして格闘家娘は、剣舞士が呪装具を持っていることに気付いたが、剣舞士は平然とした表情で

 

「なるほど……よく、これだけの殺戮衝動に耐えたものだ……だが、まだ早いか……」

 

と呟いた。

 

「師匠……平気、なんですか?」

 

「昔、もっと強い呪装具を使っていたからな……」

 

格闘家娘の問い掛けに答えながら、剣舞士は立ち上がった。そして、傍らに置いていた刀を蹴り上げて

 

「お前は、これを使え……無銘だが、業物の名刀だ……」

 

と言って、格闘家娘に柄の方を出した。

それは、直前まで剣舞士が使っていた刀。

 

「わかりました……使わせて、いただきます」

 

格闘家娘はそう言いながら、刀を受け取った。

それを見た剣舞士は

 

「いいか、無理に戦うな。隙が見えたら、一撃入れて離脱する。それを徹底しろ」

 

「わかりました」

 

剣舞士の指示に、格闘家娘は頷いた。

そして二人は、オーガに向けて駆け出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。