あの古城塞の戦闘から、約三日後。
「よし、今日はここまでにする」
「ありがとうございました!」
剣舞士と格闘家娘は、何時も通りに訓練をしていた。とは言え、格闘家娘の手足には手甲と脚甲が追加されており、更には肩に小さいが肩当ても追加されている。剣舞士が工房の親方に頼み、作ってもらった物だ。
「確か、今日は昇級の査定が有るのだったな?」
「はい。私だけでなく、魔法使い娘と神官娘もです」
「ふむ……まあ、上がれればいいな」
「はい!」
剣舞士の言葉に、格闘家娘はグッと拳を握りしめ、そして二人がギルドの正面に回った時だ。
「あ、お兄さん!」
と何やら、剣舞士としては懐かしい声が聞こえて、剣舞士は振り向いた。それと同時に、腰辺りに軽い衝撃。見てみれば、記憶よりかは幾分か成長したらしい懐かしい姿が
「君は……あの村の……」
「はい! お久しぶりです!」
それは、剣舞が助けたあの少女だった。
「師匠、その少女は……?」
「俺が助けた少女だ……俺の記憶通りなら、親戚が居るという村に送り届けた筈だが……」
格闘家娘の問い掛けに剣舞士がそう答えると、少女は少し俯いて
「あの後……」
訥々と、あの後のことを話し始めた。剣舞士に助けられた少女は、送り届けられた村で住み始めた。しかしその扱いは、腫れ物を扱うような感じだった。しかし、無理らしからぬ事かもしれない。ゴブリンに襲撃された村の、唯一の生き残り。もしかしたら、ゴブリンに陵辱されたかもしれない。そういった噂が広まると、相手をしてくれる人が減った。そうした中、その親戚も扱いに困ったのか、始まったのはたらい回しだった。
他の親戚の家をたらい回しにされ、もうどうすればいいのか分からなくなってしまった。
そんなある日、西の街に剣舞士が居るという話を聞いた少女は、家族が遺したお金を使って馬車に乗った。村から村へと乗り継ぎ、つい先日、ようやくこの街に到着したらしい。
「なるほどな……よく、頑張ったな」
話を聞き終えた剣舞士は、短く言いながら少女の頭を優しく撫でた。
「しかし、お金は大丈夫なのか?」
「あぅ……残り少ないです……」
剣舞士の問い掛けに、少女は少し恥ずかしそうに俯いた。仕方ないことだろう。幼い彼女では、まだお金を稼ぐ方法は分からず、家族が遺したお金を遣り繰りするしかなく、馬車代と宿代でもう殆ど残ってはいないだろう。
それに、自身を頼って旅をしてきた少女を、無下には出来なかった。
(さて、どうしたものか……)
と剣舞士が悩んでいると、格闘家娘が
「あの、師匠……私の部屋で寝かせる……というのは、どうでしょうか?」
と提案してきた。
「その、私は故郷の村では妹や弟と寝ることもあったので、慣れているつもりです」
「ふむ……君は、それでいいか?」
剣舞士が問い掛けると、少女は頷きながら
「はい、大丈夫です!」
と答えた。
それを聞いた剣舞士は、少女を肩車しながら中に入った。すると
「おや、剣舞士さん……その子供は、どうしたんですか?」
どうやら依頼状の貼り出しをしていたらしい受付嬢と出くわした。
そこで剣舞士は、一通りのことを説明。受付嬢は聞き終えると
「なるほど……そういうことですか……分かりました、今お茶を出しますね」
と朗らかに笑みを浮かべながら、戻っていった。
その間に剣舞士は、少女をカウンター席に座らせた後にその隣に座り、格闘家娘は少女を挟んだ反対側に座った。
それから少しすると、神官娘と魔法使い娘が現れて、三人揃って二階に上がっていった。これから、昇級の査定をするのだ。少女は受付嬢が出したお茶を飲むと
「お兄さん……今のお姉さん達と
と剣舞士に問い掛けてきた。
「ああ、そうだが……どうした?」
「……女ったらし?」
少女の言葉に、剣舞士は椅子ごと倒れそうになったが、何とか耐えた。
「……その言葉は、どこで覚えた?」
「お母さんとお父さんが喧嘩してた時に、お母さんがお父さんに、この女ったらし! って怒ってた」
少女の父親は、どんな男性だったのだろうか。それが非常に気になった剣舞士だった。
それから約一時間後、剣舞士とゴブリンスレイヤーが次の依頼に関して確認していると
「あ、ゴブリンスレイヤーさん! 剣舞士さん!」
「師匠! ゴブリンスレイヤー殿!」
「お二人さん」
と神官娘、格闘家娘、魔法使い娘の三人が降りてきた。そして揃って、胸元から黒いタグを取り出した。
「階位が上がったか」
「はい! 対オーガ戦が高く評価されたみたいです」
「なんでも、
冒険者としての階位が一段階上がったことで、新人としては一皮剥けたという辺りだろうか。
「その、ありがとうございました! お二人が居てくださったから、今私達はここに居ます」
「……しかし、俺達は何も……」
「あの時、貴方達が来てくれたから、私達はここに居る……」
「特に私なんて、毒で死んでいたかもしれないわ……」
「ですから、ありがとうございました」
三人は顔を見合わせると、ゴブリンスレイヤーと剣舞士に頭を下げた。面と感謝の言葉を言われた経験があまり無かったので、二人は思わず顔を見合わせた。そこに、あの三人も合流して、また新しい冒険に向かう一党とそれを見送る少女と受付嬢。
しかし数日後、彼等は激闘を繰り広げることになる。