「行くぜぇ!!」
槍使いの掛け声と共に、その戦いは始まった。槍使いはモーニングスターを持つチャンピオン。重戦士と女騎士は鉄棒を持つチャンピオン。そして剣舞士は、戦斧を持つチャンピオンと戦い始めた。
剣舞士はチャンピオンが振り下ろした戦斧を、体を半歩分右にずらして回避すると、脇に挟むように持っていた逆手持ちの黒刀を横凪ぎに振るった。だがその一撃を、チャンピオンは一度戦斧から手を離しバックステップで避けると、直ぐ様蹴りを放った。
(戦い慣れしているか……流石は、戦闘特化型の個体だな)
剣舞士はその蹴りを、チャンピオンの足の上を側転気味に避け、袖の中から太い釘。投擲用のピックを取り出して、顔を狙って投げた。
チャンピオンはそれを、腕に装着していた防具で弾いた。その瞬間、チャンピオンは反対の手で戦斧を掴み直し、一気に振り上げた。
(速い……だが)
チャンピオンの一撃は確かに、剣舞士を捉えたかのように見えた。だが、剣舞士の姿がチャンピオンの周囲にいくつも現れては消えるを繰り返していた。
「歩法の奥……
周囲の光景に驚くチャンピオンだったが、すぐに攻撃を再開した。
持っていた戦斧をデタラメに振り回し、周囲に現れる剣舞士を次々と切り裂いていくが、すべて掻き消える。
「そうか……緩急着けて動くことで、残像を!?」
それに気付いたのは、少し離れた位置で見ていた格闘家娘だった。何回も剣舞士と修行してきたから、格闘家娘は剣舞士の身のこなしと脚の速さは熟知している。
「師匠……貴方は、どれだけの高みに……」
格闘家娘も、初めて会った時から比べたらかなり強くなったと自覚している。しかし、修行で対峙する度に思うことが、剣舞士の底が見えないということ。
確かに剣舞士は、刀を使った戦いが非常に得意で、戦いの基本とされている。しかし最近知ったが、武器はあらゆる武器を使いこなすのだ。
槍、短剣、弓、大剣、棍、戦鎚、斧、むしろ、使えない武器のほうが少ないと思われる。
そこに、格闘と魔法も合わさり、まさに変幻自在の戦い方が可能だ。
そんな時、チャンピオンが攻撃が中々当たらないからか、雄叫びを挙げて更に攻撃を激しくした。しかし剣舞士は、軽く回避し
「動きが単調だ……戯け」
と呟いて、戦斧の攻撃の隙間に体を滑り込ませる。少しでもタイミングが合わなければ、致命的一撃は必至だが、剣舞士は目を反らさずに踏み込み
「奥の参……
一瞬にして、数撃もの突きを放った。剣舞士が放った突きは、チャンピオンの両手両足を貫いた。チャンピオンは余りの痛みに叫びながら、持っていた戦斧を落とし、両膝を突いた。チャンピオンは憎悪の目で剣舞士を睨むが、剣舞士は気にした様子もなく
「一対一で俺を殺したければ……十三使徒クラスでも連れてこい……」
と呟きながら、チャンピオンの首を飛ばした。チャンピオンを倒した剣舞士は、刀に着いた血を振るって飛ばしてから、残った二組を見た。重戦士と女聖騎士は見事なコンビネーションで勝利し、槍使いは少し手こずったものの、勝利した。
その時、一体のゴブリンを斬ったあの少年剣士が
「そういえば……ゴブリンスレイヤーは何処に?」
と周囲を見回した。どうやら、今になって居ないことに気付いたらしい。すると、蜥蜴人僧侶の援護を終えた上妖精弓手が
「あら、分かりきってるじゃない……ゴブリンを、スレイしに行ったのよ」
と確信した様子で、森の向こうに視線を向けた。その数十分後、負傷したゴブリンスレイヤーが神官娘と一緒に朝焼けと共に帰還。ゴブリンロードを討伐したということを、全員に宣言した。
その翌日、ギルドの酒場
「私達の勝利と、牧場と、街と、散った冒険者達に……そして何より、あの、ゴブリンゴブリン言ってる変な奴に、乾杯!!」
『かんぱーい!!』
そこでは、対ゴブリンロード軍との勝利に湧いていた。
今回の戦い、犠牲者は多数出た。しかし、ゴブリンロード軍を止めなければ、比にならない犠牲者が出ていただろう。
「やれやれ……少しは休みたい所だが……無粋か」
「そうですよ、師匠……今は、楽しみましょう」
剣舞士の言葉に、格闘家娘は微笑みを浮かべながらジョッキを掲げた。それを受け取り、剣舞士は飲み物を飲んだ。その時
「あー!! ゴブリンスレイヤーが兜を取ってる!! ズルい! 私だってまだ見たことなかったのにぃ!!」
と上妖精弓手の驚きの声が聞こえて、そこから驚きの声が伝播した。二階に居た剣舞士は、最初にゴブリンスレイヤーが居た位置に視線を向けてみれば、確かに、ゴブリンスレイヤーが兜を外して座っていた。
「あれが、ゴブリンスレイヤーさんの顔……」
「なるほど……いい面構えだ……」
初めて見たゴブリンスレイヤーの顔に、二人はそれぞれ感想を漏らした。
そして、冒険者達の宴は続く。
新しい冒険のために。