魔法使い娘と剣舞士が交わってから、数日後。魔法使い娘は、驚いていた。
「使える回数が……増えた……」
その日の朝、魔法使い娘は、少し気になって魔法使い協会に行き、回数と使える魔法が増えたか確認した。魔法は増えなかったものの、回数が一回増えていることが確認出来た。
協会の観測員曰く、時々起こることらしく、大して気にする必要は無しとのことだった。
しかし、魔法使い娘にはその理由が分かっている。
(剣舞士と、交わったからだ……)
交わった際に予想外に乱れて、かなり恥ずかしかったが、交わった甲斐があったというもの。そして、論文が真実だと分かった。
ひとつは、他人の夢を見ること。そしてもうひとつは、使える魔法の回数が増えること。
「あれが……剣舞士が言ってた戦争かしらね……」
魔法使い娘が見たのは、巨大なゴーレムが侵攻してきている戦場だった。体長は、20mに達するだろうか? 以前戦ったオーガですら、小さく見えてしまうその巨大なゴーレムが、数十体。それが、巨大な武器を手に持って襲撃してきていた。
並の冒険者だったら、間違いなく逃げ出すだろうその敵に、剣舞士を含めた一団は臆することなく駆け出した。
見ていた魔法使い娘ですら、半ば絶望してしまった敵に、剣舞士は斬りかかった。普通だったら、傷すら着かないだろう。しかし剣舞士の一撃は、一体のゴーレムの足を両断。そして頭を突き刺すと、そのゴーレムは動きを止めた。そこに、別のゴーレムの巨大な斧が振り下ろされた。その一撃を剣舞士は跳んで回避したが、その一撃は倒れていたゴーレムを容易く両断し、更に巨大なクレーターを生んだ。直撃すれば、肉塊すら残らないだろう。
しかし剣舞士は、怯むことなく次のゴーレムに向かっていった。その腕から放たれた魔法は、ゴーレムの下半身を吹き飛ばし、振るった剣は残った上半身を縦に一刀両断した。
魔法使い娘が見たのはそこまでだったが、だからこそ分かったことがある。剣舞士が常に冷静なのは、あのような戦場を経験したから。
「そりゃ、オーガと真っ正面から対峙出来るわよね……」
思い出すのは、あの古代城塞でオーガと戦った時。あの時剣舞士は、他の誰よりもオーガの正面に立っていた。
あの時は正気を疑ったが、今ならば理解出来る。
あのゴーレムに比べたら、オーガなんて小さく思える。
「……さて、ギルドに行きますか」
魔法使い娘は、そう呟いてからギルドに向かった。
すると、ゴブリンスレイヤーが剣舞士と何やら話している。
「何かあった?」
「あ、来たのね」
「それが、水の都から名指しでゴブリンスレイヤーさんに依頼が来たんです」
魔法使い娘が問い掛けると、格闘家娘。最近、戦士にクラスチェンジしたから、戦士娘になった。と神官娘が振り向いて、神官娘が説明した。
「名指し?」
「ええ。誰かは知らないけど」
「だから、今必要そうな装備を話し合って、分担して集めようって決まりました」
蜥蜴人僧侶、上妖精弓手、鉱人術士が居ないのは、その必要な装備や道具を集めに行ったのだろう。
「それじゃあ、私達も行かないといけないわね」
「はい」
魔法使い娘の言葉に、神官娘が頷いたタイミングで、剣舞士とゴブリンスレイヤーが近付き
「ああ、来ていたか」
「……用意を始めるぞ」
と三人に告げた。
神官娘はゴブリンスレイヤーと一緒に行ったが、戦士娘と魔法使い娘は剣舞士と買い出しを始めた。
その中で戦士娘は新しく胸当てを購入したが、魔法使い娘は
「こうなると、魔法使いは防御に難アリね……金属系はミスリル以外だと魔法の効果に悪影響が出るから……」
と呟いた。すると剣舞士が
「いや、それは加工の仕方次第だ」
と否定した。
「え?」
「気にならないのか? 俺は、金属の鎧や刀を使っているのに、高い威力の魔法を使っていることが」
その言葉に、魔法使い娘は気付いた。今まで繰り返してきた幾多の冒険の中で、何回も魔法を使ってきた。その全てが、銀等級すら越える威力を誇っていた。
「……あった、これだ」
剣舞士は、腰の雑嚢の中からひとつの指輪を取り出して
「これをやる」
と無造作に、魔法使い娘に手渡した。
「指輪?」
「ああ……何か、気づかないか?」
剣舞士の言葉に、魔法使い娘はその指輪をよく見た。すると、表面と内側に小さく文字が彫られていること。更に、金属の内側に青い宝石が内包されていた。
「これは……」
「魔法使いが使うことを前提に作られた代物でな……内包された宝石が魔法の威力を高め、表面と内側に彫られた文字が、魔力の練り上げを底上げする工夫が成されている……防具は……まあ、此方で何とかするか」
剣舞士は軽く説明すると、頭を乱雑に掻いた。
「もしかして、貴方……加工も出来るの?」
「一応、一通りはな。でなければ、自分で防具の修理も出来ないだろう?」
思い返してみれば、剣舞士が装備を親方に預けた所を見たことがない。予想以上に多技能な剣舞士に、戦士娘と魔法使い娘は驚いた。
「今回の遠征には間に合わないが、最大でも一月も有れば作れるだろう。待っていろ」
「え、ええ……」
剣舞士の言葉に頷き、一行はまた道具の買い出しに戻った。そして買い出しを終えると、三人は他の一行と合流。水の都に向かうという馬車に乗せてもらい、水の都に向かった。