※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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ギルドへ

「貴方は……?」

 

と神官娘が問い掛けると、現れた鎧の男は短く

 

「ゴブリンスレイヤー……」

 

とだけ名乗った。

意味を直訳すれば、小鬼を殺す者となる。

そして神官娘は、ゴブリンスレイヤーに既視感を覚えていた。

しかしゴブリンスレイヤーは、そんな神官娘をスルーして、今居る場所を軽く一瞥。

そして、剣舞士に視線を向けて

 

「お前が、倒したのか?」

 

と問い掛けた。

 

「そうだな……殆どは、俺がやった」

 

剣舞士がそう答えると、ゴブリンスレイヤーは剣舞士の全身を見た。

腰の両側面には、見たこと無い細い剣が二本あり、後ろには雑貨入れ。

鎧は、動き易さと防御力を兼ねている物で黒で統一されていた。

それらの特徴から、ゴブリンスレイヤーはもしやという感覚で

 

「……お前が、剣舞士(ソードダンサー)か?」

 

と問い掛けた。

それは、約四ヶ月程前から冒険者の間で噂されていた人物だ。

一人で旅をしながら、遭遇した戦闘に介入し危機を助ける凄腕の剣士。

その戦う姿が、まるで舞っているかのようだから、何時しか剣で舞う者。剣舞士(ソードダンサー)と呼ばれるようになっていた。

 

「……俺自身が名乗った訳ではないが、そう呼ばれているな……」

 

と剣舞士が肯定すると、格闘家娘が

 

「貴方が……あの……」

 

と剣舞士を見つめた。

格闘家娘の呟きを聞いた剣舞士は、内心で

 

(……俺も、有名になっていたんだな)

 

と思った。

するとゴブリンスレイヤーが

 

「……ゴブリンシャーマンは見たか?」

 

と問い掛けてきた。

 

「ゴブリン……シャーマン?」

 

「ゴブリンの魔術使いのことだ。入り口と途中に、トーテムが有っただろう? あれは、シャーマンが居るという証だ」

 

「ゴブリンにも、術士が……」

 

剣舞士の説明を聞いて、格闘家娘は驚いていた。

どうやら、魔術を使うとは思っていなかったようだ。

 

「俺は見ていない……だが、まだ奥に気配がある」

 

「……ならば、行くか……」

 

剣舞士の言葉を聞いたゴブリンスレイヤーは、松明を掲げながら奥に進もうとした。すると、神官娘が

 

「あ、私も行きます!」

 

と立ち上がった。どうやら、ゴブリンスレイヤーに同行するつもりらしい。

するとゴブリンスレイヤーは、神官娘を見て

 

「何が使えて、何回まで使える?」

 

と問い掛けた。

その問い掛けに、神官娘は

 

「えっと、使えるのは治療と聖壁の奇跡。使える回数は三回ですが、既に二回使ったので、後一回だけです」

 

と答えた。なお彼女の回数は、新人としたら破格の回数なのだ。

普通、新人の神官が使える回数は一回だけというのが殆どで、珠に二回が居る位だ。

そこからも分かるように、彼女の才能は高いのだ。

 

「……取っておけ。タイミングは、俺が指示する」

 

「わ、分かりました!」

 

神官娘が頷くと、ゴブリンスレイヤーは剣舞士に視線を向けて

 

「お前はどうする?」

 

と問い掛けてきた。

剣舞士は、一度座り込んでいる格闘家娘と未だに意識が戻っていない魔術娘を見てから

 

「俺はここに居る……一応、退路の確保と彼女達の護衛のためにな……」

 

と答え、それを聞いたゴブリンスレイヤーは神官娘と共に奥に向かっていった。

それを見送った剣舞士は、無造作に少年剣士の遺体に近付き、両手を合わせてから新人冒険者を示す白磁の認識標(ドッグタグ)を回収した。

そうして、座り込んでいた格闘家娘の前に差し出し

 

「お前が持っていろ……それと、その彼女を抱えることは出来るか?」

 

と問い掛けた。

 

「え、あ、はい……出来ますが……」

 

認識標を受け取った格闘家娘は、無事だったズボンのポケットに入れてから、そう返答した。

すると剣舞士は、ホブゴブリンの死体の近くを指差し

 

「そこら辺に居ろ」

 

とだけ言った。

それを聞いた格闘家娘は、魔術娘を背負って剣舞士が指示した付近に移動した。

その時、何やら削るような音が格闘家娘に聞こえた。

 

「この音は……?」

 

と格闘家娘は不思議そうに首を傾げたが、剣舞士は既に左手に刀を持って切っ先を壁の方向に向けて構えていた。

右手は、刀身に添えるだけの構えなのだが、その姿はまるで、話に聞く弩弓(バリスタ)につがえられた矢を彷彿させる。

そんな最中、徐々に音が大きくなっていく。

そして、剣舞士が刀を向けていた壁面にヒビが僅かに入った瞬間

 

「ツッ!!」

 

剣舞士は、突風を彷彿させる速度で駆け出し、壁面に迫ると同時に刀を突き出した。

その一撃で、壁面はいとも容易く崩壊。

その先に居た数体のゴブリンは、剣舞士の技で鏖殺された。

その光景に、格闘家娘が絶句していると

 

「ん……」

 

と魔術娘の意識が戻った。

 

「気が付いた……大丈夫?」

 

「なんとか……」

 

格闘家娘の問い掛けに、魔術娘は少し気だるそうに答えた。

そして、剣舞士が刀身に着いた血を振るって飛ばしながら現れると

 

「……彼は?」

 

と格闘家娘に問い掛けた。

 

「彼は、剣舞士……噂位は、聞いたと思うけど……」

 

「……まさか、あの剣舞士?」

 

魔術娘が問い掛けると、格闘家娘は頷いた。

その間に剣舞士は、ゴブリンが死んだフリをしてないか一体ずつ頭を蹴りながら確認している。

そして、戻ってくると

 

「ん……意識が戻ったか……命があるだけ、幸運と思っておけ……」

 

と言った。

その言葉の理由を、魔術娘が問い掛けようとしたが、そこに神官娘とゴブリンに連れ去られて凌辱された痕跡のある女性を背負ったゴブリンスレイヤーが現れて

 

「……横穴を掘っていた奴が居たか」

 

と横穴の中で死んでいるゴブリンを見て、呟いた。

そして神官娘は、魔術娘が意識を取り戻していることに気付いて

 

「良かったです……短剣に毒が塗られていると聞いた時は……」

 

と安堵した様子で、涙を滲ませた。

それを聞いた魔術娘は、それでようやく剣舞士の言葉の意図を察した。

もしかしたら、自分は毒で死んでいたのかもしれないと。そう理解した瞬間、魔術娘は体をブルリと震わせながら刺された腹部を見た。

そして、ゴブリンスレイヤーは

 

「……お前達は、まだ運がいい……もう少し遅かったら、50に迫るゴブリンの群れと戦うことになっていただろうからな……」

 

と告げた。

 

「奥の小部屋に、ゴブリンの赤ちゃんが数体居ました……」

 

「なっ……」

 

神官娘の説明を聞いて、魔術娘は息を飲んだ。

そんな情報、ギルドで見た依頼書には無かったからだ。

 

「ゴブリンはバカだが、間抜けではない……わざと小数で村にちょっかいを出して、村の娘を誘拐……数を増やしていたんだ……俺は、受付嬢から念のためにと派遣されてきた……」

 

ゴブリンスレイヤーはそう言ってから、剣舞士に視線を向けて

 

「……すまんが、着いてきてもらうぞ……ギルドは、お前を探していたからな」

 

と告げた。

それを聞いた剣舞士は、少し考えてから

 

「……分かった……どうせ、根無し草の一人旅……行き先も決まっていないからな……同行しよう」

 

と返答し、ゴブリンスレイヤー達と一緒にそのギルドに向かうことにした。

そして、数時間後

 

「……戻った」

 

「おかえりなさい、ゴブリンスレイヤーさん!」

 

ゴブリンスレイヤー達は、ギルドに入った。それを出迎えたのは、受付カウンターに座っていた長い茶髪と三つ編みにした見目麗しい受付嬢だった。

その受付嬢は、ゴブリンスレイヤーが帰ってきたのを見ると、嬉しそうに声を挙げた。

彼女は、ゴブリンスレイヤーを意識しているのだ。しかし、ゴブリンスレイヤーは気付いていない。

 

「……予想通り、40近いゴブリンが居た。他にホブとシャーマンも確認した……それと」

 

「……これを」

 

ゴブリンスレイヤーに促されて、マントを羽織っている格闘家娘は少年剣士の認識標を受付嬢に手渡した。

それが意味しているのは、冒険者の死亡だ。

 

「……分かりました……遺体は、その洞窟に?」

 

受付嬢の問い掛けに、格闘家娘は無言で頷いた。

それを見た受付嬢は、手元の羊皮紙にサラサラと何やら記載し

 

「その遺体は、後程回収班を派遣して回収します……三人の無事の帰還を祝福します……ゴブリンスレイヤーさんが、間に合ったんですか?」

 

とゴブリンスレイヤーに問い掛けた。

すると、ゴブリンスレイヤーは

 

「……それに関してだが……噂の剣舞士を連れてきた」

 

「ええ!? 近くに居るんですか!?」

 

ゴブリンスレイヤーの告げた内容に、受付嬢は驚きの声を挙げた。

声を漏らしたのは受付嬢のみだったが、ギルドの酒場に居た全冒険者達が、一斉にゴブリンスレイヤーを見た。

流石にその人数の視線に、少し気圧されながらも

 

「……外に居る」

 

とだけ告げた。

その頃、剣舞士は

 

「……動けん……」

 

夥しい数の動物に群がられて、動けなくなっていたりするのだった。

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