※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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目覚め

それは、過去の記憶だった。彼、ゴブリンスレイヤーがまだ幼かった頃のことだ。ゴブリンスレイヤーは姉と二人でその村に住んでいて、牛飼い娘が幼馴染みだった。

ゴブリンスレイヤーは冒険者に憧れ、牛飼い娘は街に憧れていた。そんなある日、ゴブリンスレイヤーと牛飼い娘は些細なことでケンカしてしまい、牛飼い娘はそのまま街に行ってしまった。その日の夜、悲劇が起きた。

その村にゴブリンの群れが襲撃し、ゴブリンスレイヤー一人を残して全滅した。ゴブリンスレイヤーは姉から教わったことを思い出しながら脱出を目指すが、ゴブリンに見つかり、危機に陥った。そこを助けたのが、ゴブリンスレイヤーの師匠となる年老いた圓人だった。

そこから、ゴブリンスレイヤーの修行が始まった。

その師匠から、様々なことを習った。失敗を恐れるな、失敗から学習しろ、気になったことは調べて覚えろ、そして、考えることを止めるな。

それらが、今のゴブリンスレイヤーの基礎となっている。

そこで、ゴブリンスレイヤーの目が覚めた。

そんなゴブリンスレイヤーの視界に入ったのは、白い天井。

 

「……ここは……」

 

現状を把握するためにゴブリンスレイヤーは、上半身を起こしたのだが、隣には一糸纏わぬ姿の神官娘が寝ていた。

とりあえずゴブリンスレイヤーは、彼女を起こさないようにゆっくりと離れてから、彼女にシーツを掛け、ベッドの淵に腰かけた。

そこに、ドアが開き

 

「あら、目覚めたようですね」

 

と剣の乙女が入室してきた。そこからゴブリンスレイヤーは、今居るのが教会だと察した。そうして、剣の乙女はゴブリンスレイヤーの隣に腰掛け

 

「如何でしたか、清らかな少女との同禽は」

 

「……処女同禽の奇跡……蘇生(リザレクション)か……」

 

「あら、ご存知だったんですね……」

 

ゴブリンスレイヤーが言い当てると、剣の乙女は少しつまらなさそうにした。

蘇生(リザレクション)。それは、女性神官が使える奇跡の中では最高峰の奇跡に当たる。

その効果は、死者ですら復活させることが出きる(遺体が激しく損傷していないことが条件)程だ。

そう、ゴブリンスレイヤーはゴブリンチャンピオンに叩き付けられたダメージが余りにも大きく、瀕死の重傷に陥っていたのだ。

それに気付いた神官娘は、回復の術を掛けながら急いで脱出を促し、蜥蜴人僧侶がゴブリンスレイヤーを背負って走り、上妖精弓手と剣舞士(片手で)が殿。戦士娘と鉱人術士が前に立って確認。魔法使い娘が真ん中で支援という布陣で脱出を開始。

不期遭遇することもなく地下から脱出。神殿に駆け込み、ゴブリンスレイヤーを今居る部屋で運び込み、蘇生を試みたのだ。

その結果、ゴブリンスレイヤーは見事に復活したのである。

 

「以前に、話だけは聞いていた……」

 

ゴブリンスレイヤーは調子を確かめるために体を動かしながら、剣の乙女にそう返答した。

 

「今回の費用は、与えられる予定の報酬からの天引きということになりますが……」

 

「協定通りで構わない……」

 

協定というのは、冒険者ギルドと各宗教の間で交わされたもので、その中には蘇生に関する取り決めもあった。

蘇生は処女と共に寝なければならないので、教会側は必ず一人は処女が教会に居る必要がある。

そして冒険者側は、教会側に費用を支払うとなっており、その費用は報酬から天引きすると決められている。

 

「私は処女ではないので、そちらの神官さんに一緒に寝てもらいましたが……」

 

そう語りながら、剣の乙女は目元を覆っていた布を外した。その下、つまりは両目は火傷の跡があり、光は失われていた。そして、カタカタと僅かに震えているのが、ゴブリンスレイヤーにも分かった。

そこからゴブリンスレイヤーは、思考を巡らせて

 

「……ゴブリンか……」

 

と呟いた。その言葉に、剣の乙女は頷き

 

「ええ……もう、何年も前のことになります……その時の私は、まだ新人の冒険者で……仲間と一緒にあるクエストに行ったんですが……」

 

そこで剣の乙女は止めたが、ゴブリンスレイヤーには予想がついた。ゴブリンの奇襲にあい、敢えなく彼女以外は全滅。彼女はゴブリンに凌辱され、更にはゴブリンからしたら戯れで、目を焼かれたのだろう。そしてそれが、剣の乙女にとってトラウマになってしまい、今回の依頼の要因の一つなのだと、ゴブリンスレイヤーは察した。ゴブリンスレイヤーが思考している間に、剣の乙女は布を再び目元に巻いている。そして、立ち上がると

 

「では、私は自室に戻ります……貴方の装備は、そちらに置いてあります」

 

と言って、部屋の一角を指差した。ゴブリンスレイヤーが見てみると、確かにそこにはゴブリンスレイヤーの装備一式が置いてある。その隣には、神官娘の装備もあった。

 

「一応、近くの部屋に他の神官も待機しています。もし、体の調子が悪かったら、言ってください。それでは」

 

剣の乙女はそう言うと、部屋から去った。すると、ドアが閉まって少ししてから神官娘とポヤーという表情で起き上がって、ゴブリンスレイヤーに気付くと

 

「あ、ああああ、あの……見ました?」

 

顔を真っ赤にしながらずり落ちていたシーツで、胸元を隠した。彼女が言いたいのは、彼女の裸体を。ということだろう。ゴブリンスレイヤーは、肌着を着て、神官娘の分の装備をベッドに置いてから

 

「いや……」

 

とだけ呟いた。そこから二人は、装備の装着を始めたのだが

 

「ゴブリンスレイヤーさん……無理、してませんか?」

 

と神官娘が問い掛けた。

 

「いや、していないが……」

 

「それならいいんですが……でも、もっと私達を頼ってください……今の貴方は、一人じゃないんですから」

 

「ああ、分かった……」

 

短い言葉だが、神官娘は安心したのか表情が和らいだ。そして装備の確認が終わると

 

「ゴブリンスレイヤーさん、お身体は大丈夫ですか?」

 

「ああ、問題ない……他のメンバーは……」

 

とゴブリンスレイヤーが問い掛けた時、何やら廊下から騒がしい声が聞こえ始めた。すると

 

「二人が居るのは、ここね!!」

 

と上妖精弓手が、ドアを一気に開け放った。

 

「ちょっ、いきなり過ぎですよっ」

 

「もう少し、静かに……」

 

そんな上妖精弓手を、戦士娘と魔法使い娘が嗜めたが、上妖精弓手は部屋に入り

 

「あ、居た居た! オルクボルグ、大丈夫?」

 

とゴブリンスレイヤーに歩み寄った。その後に、他のメンバーも入ってきたが、その中に右腕を三角巾で吊った剣舞士の姿もあった。

 

「お前は、大丈夫か?」

 

「問題ない。回復の術を掛けてもらい、今日一日休めば、戦闘に支障は出ない」

 

ゴブリンスレイヤーの問い掛けに、剣舞士は視線を右腕に向けながら答えた。よく見れば、右腕の装備は外して、腰に引っ掛けてある。

 

「おう、かみきり丸! 目覚めたんなら、飯食いに行くぞ!」

 

その一言で、一党の一日が始まった。

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