※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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戦う理由

ケルベロスとの戦闘が終わると、一党は奥の祭壇に近づいた。

 

「大きな鏡ですね……」

 

「なんなんでしょう、この鏡……」

 

その祭壇奥の壁面には、大きな鏡が埋め込まれていて、気になったのか神官娘がその鏡面に触れた。すると神官娘の指が水に沈むように鏡面に飲み込まれた。

 

「えっ!?」

 

神官娘が慌てて指を離すと、鏡面が水面のように揺れた。それを見て、ゴブリンスレイヤーが神官娘を自身の後ろに引き、前衛組が前に出た。

少しすると揺らめきが収まり、その鏡にある光景が写り始めた。それは、明らかに今居る祭壇の光景ではなく、それは外。それも荒野だった。

 

「これは……遠くの場所を写す鏡……なんでしょうか……」

 

「いや、恐らくは……転移の鏡だ」

 

戦士娘の言葉を否定し、剣舞士がそう言った。すると、今度は森が写ったのだが、その森は少し前に一党が行って、ゴブリンと戦った遺跡のある森だった。

 

「ここ、前に行った森じゃない!」

 

「……まさか、ここに居るゴブリン達は……この鏡を使って来たってこと?」

 

「此処だけではあるまい……森のもだろう……考えられるとしたら、荒野から来ている……のか?」

 

と剣舞士が首を傾げると、その荒野が再び写り、数多のゴブリン達が船を調達したり、毒を作ったりしているのが見えた。

 

「……なんてこと……これ、明らかに失われた技術で作られた鏡よ……」

 

「もし回収したら、どの位……?」

 

「少なくとも……千万単位は下らないわよ……」

 

「そんなにですか!?」

 

魔法使い娘の言葉に神官娘が驚いた、その直後。遠くからゴブリン達のわめき声が聞こえた。

 

「つっ!? 反響してて分かりにくいけど……相当な数が来てる! その内の一体は、チャンピオン!」

 

そう告げたのは、耳が良い上妖精弓手だ。

 

「ちっ……さっきのケルベロスの咆哮で、ここに来たことに気づかれたようだな……」

 

確かに、ケルベロスの咆哮はかなりのものだった。それを考えれば、地下水道に居たゴブリン達に聞かれても、不思議ではない。

しかし、場所が悪い。今居るのは、秘匿された祭壇。それ故、退路もない。広さ的にはそれなりだが、至るところに倒壊した柱や壊れたベンチ等が散乱していて、足場は悪い。幸いなのは、ゴブリン達が集めたらしい武器が有ることだ。

武器の損耗を、ある程度は補えるだろう。だが

 

「……すまんが、俺は今はまともに戦えん……」

 

「まさか……その鎧の反動ですか?」

 

「ああ……こいつの効果は、装着者の体感時間の引き延ばしとそれに伴う運動能力の向上……だが反動として、体力の大幅な消耗と体全体に大きな負荷が掛かる……まともな前衛戦闘は難しい……」

 

「剣舞士が戦えないってのは、結構痛いわね……」

 

剣舞士の、実質的な戦闘不能。その事実に、上妖精弓手は頭を抱えた。剣舞士の前衛戦闘能力の高さは折り紙つきで、今や一党の要の一人となっている。

しかも、ゴブリンチャンピオンが居るとなると、激戦が予想される。

ゴブリンスレイヤーや蜥蜴人僧侶も近接戦闘能力は高いが、ゴブリンスレイヤーはどちらかと言えば偵察(スカウト)寄り。蜥蜴人僧侶は術士に寄っている。

純粋な前衛となると戦士娘だが、多少不安が残る。

やはり、剣舞士が前衛戦力として頭一つ抜けるのだ。その剣舞士が、戦えない。そうなると、前衛戦力が一気に落ちることになる。

 

「出来れば、使いたくなかったのだがな……」

 

剣舞士はそう言って、懐から有るものを取り出した。それは、一つの真鍮製の鍵。

 

「鍵……?」

 

魔法使い娘が首を傾げるが、剣舞士は気にすることなく、それを空中に挿し込み(・・・・・・・・)、回した(・・・)。その直後、剣舞士の前に棺桶が出現し

 

「おいで……白雪」

 

と剣舞士が、優しくその名を呼んだ。すると、棺桶の蓋が鈍い音を立てながら開き、棺桶の中から一人の白い少女が姿を現した。

 

「女……の子……?」

 

「師匠……この少女は……?」

 

見た目から察するに、年齢は10歳前後だろう。華奢で小柄な体躯だが、その体からは凄まじい圧(プレッシャー)が放たれている。

 

「……俺の、妹だった……」

 

「……え」

 

「い、もうと……?」

 

剣舞士の言葉に、神官娘と上妖精弓手は固まった。

そう言われてみれば、確かに顔立ちは似ている。全体的に細く、目元もキリッとしている。

 

「そもそも、俺が宗教との戦争に身を投じた理由は、たった一人の家族を取り戻す為だった……自分が無力だったから連れ去られ……見つけた時には、生態呪装具にされていて……」

 

「な……あ……」

 

「俺に出来ることは、白雪を封印する鍵を持ち歩くこと位だ……出来るならば、使いたくなかったが……選り好みする余裕は無い……白雪、彼等と一緒にこれから来るゴブリン達と交戦……一体たりとも、抜かせるな」

 

剣舞士の指示を聞いて、白雪は無言で頷いた。そうして、その華奢な両手を氷で覆った。

 

「白雪の能力は、冷気を操作すること……副作用は、俺の魔力……白雪、バリケードを幾つか精製してくれ」

 

剣舞士の指示に従い、白雪は幾つか氷で分厚いバリケードを精製。その間にゴブリンスレイヤー達は散らかっていたベンチ等を紐で縛ったりして、簡易的なバリケードを形成し、影に隠す形で武器を配置した。

そして、地下での決戦が幕を開ける。

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