※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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名前の由来

「こっちです! 早く!」

 

そう言いながら走っていたのは、数人の冒険者を伴った監査嬢である。彼女は戦士娘と魔法使い娘達にギルドに送り届けられた。しかしそこでは、顔馴染みの受付嬢が襲われたことを知った。襲ってきたのは、以前に剣舞士にいちゃもんを付け、模擬戦で負けたあの圓人(レーア)だった。その圓人はあの後、冒険中に不正行為を行って西の街から追放されていた。

どうやら街の警備が緩くなる祭のタイミングで侵入し、受付嬢とゴブリンスレイヤーを殺そうとしたようだ。しかし、ゴブリンスレイヤーは仮にも銀等級。様々な対策を取っているのが普通。圓人が投げたダーツは、ゴブリンスレイヤーが鎧の下に着ていた鎖帷子により刺さることはなかったが、ゴブリンスレイヤーは敢えて死んだ振りを行い、無用心に近づいた圓人を刺し殺した。

そして、圓人が意気揚々と語ったことで露見したのが、この西の街に対する襲撃計画だった。

そこから矢継ぎ早に、街の壁の衛兵達からある報告が成された。

それは、東、西、南からゴブリンの群れが侵攻してきたこと。なお、東と南はゴブリンスレイヤーが仕掛けた罠と衛兵達から放たれた矢により撃滅。西は剣舞士を除いたゴブリンスレイヤーの一党が撃滅し、その後は更に西。あの牧場の方に向かっていったという。

そこまで聞いて、監査嬢は気付いた。

北は、どうしたのかと。北からは、報告が上がってこない。

そして、ハタと気付いた。今の時間、北は衛兵達の交代の時間では?と。

そして北には、剣舞士が一人で向かっただけ。ならば、報せる余裕が無い筈だと。だから監査嬢は、偶々近くに居た数人の冒険者を捕まえ、北の大門に向かった。

話に聞く剣舞士の腕ならば、ゴブリンの20位は大したこと無いと思う。しかし、どうにも嫌な胸騒ぎがしていた。それだけで、終わらないという感覚がしていた。

そして、走って数分。ようやく、監査嬢達は北の大門に到着した。

そこで最初に感じたのは、冷気。

確かに、収穫祭は秋に行う為に、夜や朝は少し肌寒い時もある。しかし、冷気を感じる程ではない。

そして最初に見たのは、北の大門を塞ぐ氷の塊。それなら確かに、冷気を感じると即座に納得した。しかし、直ぐに疑問を覚えた。大門を塞ぐ程の氷を生成するには、魔法しかない。だが、西の街に居る魔法使いの中で、これ程の氷魔法を使えるのは、記憶にない。あり得るとしたら、槍使いとよく組む妖艶な雰囲気を纏う魔女位だ。

だがその魔女は、槍使いと共に昨日から少し遠くまで冒険に行っていて、不在の筈だった。

次に見たのは、100体以上の骸を相手に孤軍奮闘しながらも善戦している剣舞士と謎の少女。

最後に見たのは、その骸の更に向こうに居る黒い錫杖を持つ闇人(ダークエルフ)。

その闇人を見て、監査嬢は即座にその闇人が何の使い手か悟った。

 

「ね、死霊術師(ネクロマンサー)……!!」

 

死霊術師。それは、魔法使いの中でも外法に属する者で、普通の感性を持つ者ならば、使い手になろうとは思わない。

しかし混沌に属し、更に異質な思考や感性を持つ者は、好き好んで死霊術師となるため、混沌の勢力には一定数死霊術師が居るらしい。

骸の見た目は様々だが、死霊術師が操ってる場合は、死体の生前の技量や動きを完全に再現させる。

そこが、死霊術師の強みだった。つまり、その気になれば一人の死霊術師で街が陥落することがあり得てしまうのだ。

だがその骸の軍勢を相手に、剣舞士は一人で次々と骸を破壊していく。だが中には、動きのいい骸が居る。その武装から判断するに、恐らくは曾てこの地でその名を馳せた冒険者だったのだろう。その攻撃は、全てが必殺の域。幾ら腕利きの冒険者だろうが、病気には勝てない。監査嬢が知る限り、金等級にまで上り詰めた冒険者が流行り病で死んだという例すらある。

今剣舞士と戦っている骸の軍勢は、そう言った死人を操ってるのだろう。

だが剣舞士は、一体ずつ確実に破壊して戦闘不能にしていく。死霊術師に操られてる骸を倒すには、普通の物理的攻撃では無理とされている。倒すには、魔法を付与した武器か祝福儀礼の施された武器。もしくは、魔剣を使うのが確実とされている。

最適なのは、神官が使う浄化の奇跡。そうすれば一度で、広範囲の骸が死体に還る。

今この場で神官なのは、監査嬢のみ。しかし監査嬢が使えるのは、看破の奇跡のみ。しかも、1日に二回だけ。

だが無理もない。監査嬢は、冒険者ではない。神殿で神官としての修行は積んだが、それだけなのだ。だから、この場で一発逆転の手は使えない。

 

(もう少し、神官としての修行を続ければ良かった!)

 

そう後悔する監査嬢だが、冒険者達が固まっていることに気付いて

 

「早く、彼の援護を」

 

と促した。だが、その冒険者達は口々に

 

「無理だ……レベルが違う……」

 

「下手に手出ししたら、あいつに当たる……」

 

「見ろよ、あれ……踊ってるみたいに……」

 

と漏らして、監査嬢は改めて剣舞士の戦いを見た。状況的には、確かに圧倒的数の差から来る不利。しかし剣舞士は、その敵の中で踊るように刀を振るい、確実に死者の群れを削っている。

刀を振るいながら、踊る。

それが

 

「剣舞士……ソードダンサー……!!」

 

剣舞士の名前の由来。

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