剣舞士が家を買って、しばらく。剣舞士は、倉庫の一つを改築していた。裏手に通っていた水路を利用し、水車を設置。中には、鍛冶用の器具を配置していた。
水車は
勿論だが、武器の製造に関してはギルドや街役場には既に許可を得ている。
「さて……とりあえず、これで炉も完成か」
剣舞士はそう言いながら、汗を拭いた。
すると、ドアが開いて
「師匠、お昼の準備が出来ました!」
「ああ、分かった」
戦士娘の言葉を聞いて、剣舞士は鍛冶場から出た。あの後だが、戦士娘、魔法使い娘、少女の三人は剣舞士が家を買ったと教えると引っ越してきた。
まあ、剣舞士が買った家は部屋数はかなり有るので、それ自体はどうという事はない。そして、気付けばある程度役割が決まっていた。
家事は戦士娘と少女が請け負い、魔法使い娘が買い物全般。剣舞士がいわゆる大黒柱で、鍛冶。
更に言うと、少女は敷地内で薬草の栽培も行っている。
「さて……今日はどうするか……」
剣舞士はそう言いながら、食堂に向かった。今日は、一党全員で休みである。
「師匠は今日、どうするんですか?」
「まあ、適当に街中を散策するつもりだ……俺の事は気にしなくていい」
戦士娘からの問い掛けに、剣舞士はそう言いながら水を飲んだ。そして、食べ終わった皿をキッチンまで運び、桶に入れた。
すると、少し遅れて食べ終わったらしい戦士娘と少女がキッチンに入ってきて
「洗い物は、私達に任せてください」
「お任せだよ!」
と言って、洗い物を始めた。そこまで見て、剣舞士はキッチンから離れた。確かに広い家で、キッチンも広い方だ。しかし、人が三人も立つと少し手狭になる。
ならば、二人に任せた方がいいと判断したのだ。
そして剣舞士は、軽く準備をすると街に繰り出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふむ……ここは、まだ復興中か」
最初に来たのは、あの闇人と戦った北門だ。
北門の街道は最優先で修復されたようだが、まだ多少道幅が疎らだったりする。その他の地面は、まだでこぼこになっており、木々も疎らだ。
炎に関しては、水の都に死竜に関する本の写本が有ったので、それを読んで対処した。
そこに
「ああ、剣舞士さん。こんにちは」
と監査嬢が声を掛けてきた。あの事件で助けてから、結構話し掛けてくるようになった。
「ああ、監査嬢か……こんにちは」
「どうしたんですか、こんな所で」
「いやな……復興の具合はどうなってるか、気になってな」
監査嬢の問い掛けに答えると、監査嬢は納得した様子で
「やはり、少しばかり時間がかかるみたいです。合わせて、防衛に関して少し話し合うとか……近いうちに、そちらにもお声が掛かると思いますよ」
と語った。
「冒険者の一人に、有権者からか? 少々過大評価されてないか?」
「貴方が戦争経験者で、一人で百体以上の死霊軍を殲滅したのは、もう知られてますからね。過大評価ではないと思いますよ」
剣舞士の言葉を聞いて、監査嬢はそう言った。すると、剣舞士は
「そういえば、監査嬢はどうしてここに?」
と少し気になったことを聞いた。すると、監査嬢は
「ああ、お昼休みです。ついでに買い物も」
と言って、カバンを掲げた。僅かに見えた中には、本が見えた。
「そうか……」
「それと、改めてお礼を……この間は、ありがとうございました。助けてくれて」
監査嬢は感謝の言葉を言いながら、頭を下げた。すると、剣舞士は
「いや、知り合いの危機は見逃せないのと、ああいう気配は見過ごせないからな……」
「剣舞士さん、気配に鋭いんですね」
「戦場で生きるには、必須のスキルの一つに過ぎない……知り合いかも判別しないといけないからな」
剣舞士と監査嬢は取り留めのない会話をしながら、ギルドの方に歩いていく。街中は、この間の闇人の侵攻が嘘のように活気に溢れている。それを見ながら、剣舞士は
(ああ……今度は、守れた……人だけでなく、街も……)
と思った。剣舞士は幾多の戦場を駆け抜けてきた中で、街の防衛戦も経験しており、その中には奮闘虚しく街が壊れたり、自分達が引き付けられて、街が壊滅したこともあった。
だが今回は、街道に多少の被害はあったが、街も人も守れた。
今までで、最善の結果だろう。
「ん? あれは……」
ギルドに到着すると、酒場の机で受付嬢、上妖精弓手、神官娘、戦士娘、魔法使い娘達が何かやっていた。それを見て、監査嬢が
「ああ、卓上遊戯やってるみたいですね……うわ、竜が出てるよ……サイコロの出目が悪かったみたいで」
と言って、そちらに近寄った。その直後
「あぁぁぁ! また国が竜にヤられた!!」
「やっぱり、竜が出ると厳しいですね……」
上妖精弓手が頭を掻きながら喚き、神官娘は肩を落としていた。すると、魔法使い娘が
「本当に出目が悪すぎないかしら? 二回連続で竜を出す? 普通」
と言って、サイコロを振った。すると出たのは、6と5。
「あら、魔法使い娘さんが振ってたらまだマシでしたね……これは、魔狼の群れ位ですよ?」
「うぎぎぎぎ……!」
受付嬢の話を聞いて、上妖精弓手は机に突っ伏した。どうやら、上妖精弓手がサイコロを振って竜が出たようだ。まあ、実際の冒険で出た訳ではないが、やはり悔しいようだ。
「まあ、私も出目は悪かったですから……」
何やら、フォローしようと試みる戦士娘だが、フォローになってないような気がする。今の話から察するに、どうやら戦士娘も出目が悪かったようだが。
「あ、師匠」
先に剣舞士と監査嬢に気づいたのは、戦士娘だった。すると上妖精弓手が
「あ! フェイヒリッター! それに、オルクボルグ! 貴方達もやりなさい!」
と言ってきた。剣舞士が入り口の方を見ると、今ちょうどゴブリンスレイヤーが入ってきた処だった。その後ろには、鉱人術士と蜥蜴人僧侶も居る。どうやら、偶々近くで出会って、一緒に来たところのようだ。
「俺は、卓上遊戯というのはやったこと無いんだが……」
「……俺は、卓上遊戯は苦手だな」
「いいから、座る! 上手くいかない私達の仇をとって!」
「本音が漏れたわね」
上妖精弓手の本音を聞いて、監査嬢は苦笑いを浮かべた。その後、ゴブリンスレイヤーは蜥蜴人僧侶や神官娘に助言を求めながら、剣舞士は監査嬢が時々教えながら卓上遊戯を始めたのだった、
ほんの些細な、日常の一幕。