いや、ここまで人気になるとは予想してませんでした
その日は、神官娘がいわゆる月のモノで休みになり、一党もそれぞれ休みにすることにした日だった。
戦士娘と魔法使い娘は、二人である場所に向かった。
そこは、ギルド管轄の墓所。冒険で亡くなった冒険者達のお墓だ。その殆どが遺体すら無いが、彼。少年剣士は遺体が有るのだから、幸運だったのだろう。
「……行きましょうか」
「うん……」
戦士娘と少年剣士は、幼馴染みだった。同じ村で生まれ育ち、農家で隣だったために時々お互いの家の手伝いをしていた。
しかし、互いに兄弟が多かった為に、農家の収入では家計は火の車状態。そんな中で、冒険者という職を知った。
戦士娘は父親が元格闘家で手解きを受けていて、少年剣士は村の衛士役の青年から多少だが剣の扱いを教えられた。
そして、約半年程前に冒険者になる為に西の街に来て、少年剣士は最初の冒険で命を落とした。
はっきり言って、自分達は運が良かったとしか言えない。
もし、今の師匠たる剣舞士が来るのが遅かったり来なかったりしたら、魔法使い娘は死んでいて、戦士娘は激しく陵辱されていただろう。
少年剣士の死は、一応故郷には手紙で報せてある。
間違いなく、少年剣士の家族は悲しみに暮れたことだろう。もしかしたら、戦士娘に怒りを覚えている者すら居るかもしれない。
だが、生き残ったのは事実であり、今も冒険者を続けていて、得た収入の幾らかは家に送っている。
「……」
「貴女も私も、生きてる……だったら、生きてる内は前に進みましょう?」
「そうね……」
魔法使い娘の言葉に頷きながら、戦士娘は二人で歩いていた。その時、二人は少々珍しい組み合わせの二人を見つけた。
それは、神官娘と牛飼い娘だった。
神官娘は私服なため、恐らくは体調が良くなって買い物に出てきていて、牛飼い娘は偶々街に来ていて神官娘と遭遇したのだろう。その時、牛飼い娘が二人に気付いたようで
「おーい」
と手を振ってきた。流石に無視するという選択は無いので、二人は近寄り
「お久しぶりです」
「今日はどうしたのかしら?」
魔法使い娘が首を傾げると、牛飼い娘と神官娘が
「いや、偶々街に来たら、この子と偶然会ってね」
「これから、街を巡ろうってことになったんです」
と説明した。それを聞いた二人は少し考えてから
「それ、私たちも一緒にいいですか?」
「私たち、手持ちぶさたなのよ」
と提案した。
「ん? 私はいいけど……そっちは大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫ですよ」
「じゃあ、行きましょうか」
そうして、女の子四人の街巡りが始まった。四人が最初に寄ったのは、本屋だった。神官娘と魔法使い娘が頼んでいた本が、今日入っている筈なので、確認しに行った。本は届いており、二人は購入。
魔法使い娘の本を、横から見た牛飼い娘が
「うわぁ……難しいこと書いてある……私には、よく分からないなぁ……」
と呟いた。すると、魔法使い娘は
「まあ、この本は上級魔法のことが書かれた本だからね……私でも、理解するには少し難しいわね……貴女のは、聖書?」
「あ、はい。最初に買ったのが、大分ボロボロになってしまったので、新しいのを注文していたんです」
魔法使い娘の問い掛けに、神官娘は頷いた。
魔法使い娘はどうやら、将来覚える魔法のことを理解するために、そのことが書かれた本を購入したようだ。
幾つかの魔法は、扱いが難しいために本を読んで扱い方を覚える必要があるのだ。眠り雲など、その例の一つだろう。風が弱いか無い場所でなければ、味方も眠りかねない。
そして神官娘は、新しい聖書を購入したようだ。
ある意味、神官らしい買い物だろう。
「さて、この後は……」
「あ、あのさ……武器屋……行ってみてもいいかな?」
牛飼い娘から、予想外な提案がされた。
それから、数分後
「うわぁ……ここが、武器屋なんだ……確かに、武器がいっぱいだねぇ」
三人娘の案内で、牛飼い娘は武器屋に居た。そして牛飼い娘は、珍しげな様子で色んな武具を見ている。その時、一つの兜が目に入り
「あ、この兜……」
「あ、ゴブリンスレイヤーさんの兜にそっくりですね!」
牛飼い娘の考えに気付き、神官娘もその兜を見た。
フルフェイス型の兜で、両側頭部には角があり、更に頭頂部から十数本の細い紐が垂れている。
ゴブリンスレイヤーのは、全体的に傷だらけで角は折れている。その兜を、繁々と見ていると
「なんなら、被ってみますか?」
と工房の方から、剣を研いでいたらしい丁稚少年が聞いてきた。
「え、いいの?」
「はい。その兜は試着も可能ですから」
戦士娘が思わず問い掛けると、丁稚少年はそう言いながら兜のある方の壁を指差した。丁稚少年の指先を追うと壁に看板があり、《試着可能装備一覧》と書いてあり、確かにその兜は試着可能な装備の一つになっていた。
それを見た牛飼い娘と神官娘は、順番に被ることにして、最初に牛飼い娘が被ってみたが
「わっとと……これ、結構重いね……」
「そりゃそうですよ。全金属製ですからね」
牛飼い娘の言葉を聞こえた丁稚少年は、剣を研ぎながらそう教えてくれた。そうして、神官娘が被ってみたのだが
「これ、結構視界悪いんですね……それに、なんか息苦しいような気がします……」
と呟いた。
「まあ、閉塞感が強いから息苦しいように感じるかもしれないわね……」
「フルフェイスは、顔全体を覆うからね……まあ、防御性能は高いんでしょうけど、慣れないと動きづらいかもしれないわね」
神官娘は外した兜を戻していたが、牛飼い娘はある防具を見て
「うわ……え、これ鎧なの?」
と驚いていた。牛飼い娘が見つけたのは、女性向けの防具。ビキニ鎧だった。それを見た神官娘と戦士娘は、顔を赤くして
「こ、これは……流石に……」
「下に、何か着るのよね……?」
と呟いた。すると、研ぎ終わったらしい剣を数打ち用の剣が入っている樽に入れに来た丁稚少年が
「いえ、それで完成してる防具ですよ。防御というより、動きやすさからの回避重視に作った防具なんです。後は、意中の相手用に奇襲するために買っていく方も居ますよ」
と説明してきた。それを聞いた四人は
(買っていく人、居るんだ……)
と内心で思ったのは、仕方ないだろう。
しかも、先ほどの試着可能装備一覧に、このビキニ鎧も書かれてある。
「ま、まあ、一着だけだから、誰が着る?」
「あ、予備含めて、幾つか有りますよ?」
牛飼い娘の発見の直後に、丁稚少年は棚の中から予備のビキニ鎧を三つ出した。
(なんで、幾つも有るの!?)
これもまた、四人の心の叫びだった。しかし、出されたからには試着出来てしまうので、四人はアイコンタクトで会話。試着してみることにした。
そして、数分後
「うわあ……」
「やっぱり、恥ずかしいですぅ……」
「これ、少し動いたら……外れそう……」
牛飼い娘、神官娘、戦士娘の三人は恥ずかしさから顔を真っ赤にしていた。が、魔法使い娘は自身の胸を見てから、三人を順番に見た。
牛飼い娘は服を着ててもわかる、そのたわわな胸。このビキニが鎧ではなく水着だったら、よく似合っていたのは間違いない。
神官娘はまだ幼いために仕方ないが、慎ましやか。しかし、まだ将来的には大きくなりそうである。
次に戦士娘。普段は分かりにくいが、
そして最後に、自分。
年齢としては、実は戦士娘より一歳上。しかし、胸はなだらか。学院でも小さい方だったために、今彼女は言い様の無い敗北感に苛まれていた。
(お母さんは大きい方だったのに……なんで……!!)
なんで、自分は大きくならなかったのか。それが非常に悔しい魔法使い娘であった。
その後、四人は私服に着替えてから、武器屋を後にし、そして四人が着たビキニ鎧を見て赤面し鼻血を垂らした丁稚少年は、その場面を酒場の給仕獣人少女に見られて、後日に料理を奢ることになるのは、余談である。
その後、四人は近くの喫茶店で飲み物を飲みながら
「また、この四人で街を回ってみたいな」
「あ、はい! 私達で良ければ」
「お声を掛けていただければ、何時でも構いませんよ」
「冒険者って、自由業だからね……合わせやすいわ」
と約束した。
なお魔法使い娘は帰り際に、牛飼い娘に胸を大きくする方法を訪ね、牛飼い娘は過去に自分が試したことを小声で教え、魔法使い娘はそれを試すことになるのは、また後の話である。