※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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完遂

「上妖精弓手、どちらか狙えるか!?」

 

「任せなさい!」

 

剣舞士の言葉を聞いて上妖精弓手は、振り向き様に矢を放った。放たれた矢は、チャンピオンに向かっていく。だが当たる直前、少し手前に居たゴブリンがチャンピオンの前に飛び込み、その身に矢を受けた。

 

「くっ!? やっぱり、別のゴブリンが肉盾になる!!」

 

「だったら、雑魚共から片付けるだけだ!!」

 

上妖精弓手からの報告を受けて、剣舞士は雑嚢入れから何やら取り出して、投げた。剣舞士が投げた物は、大きく弧を描いてゴブリンの首を斬り飛ばし、剣舞士の手元に戻ってきた。形は十字だ。

 

「それも、呪装具!?」

 

「まあな! 飛燕刃だ!」

 

呪装具、飛燕刃。効果は、狙った相手に飛んでいき、刃で攻撃しまた使い手の手元に戻るという物だ。素材は、その名前の通りに燕が二羽。副作用は、飛んでいる間だけだが、痛覚が鋭敏になるのだ。つまり、使っている最中に負傷すると普段以上の痛みが襲ってくるのだ。

剣舞士は次々と投げ続け、ゴブリンを減らしていく。中には、接近してきたゴブリンも居たが、それらはゴブリンスレイヤーや鉱人術士が撃破していった。

その時、ゴブリンスレイヤーが突如として方向転換。ゴブリンパラディンに向かっていった。それを見て、剣舞士も方向転換。ゴブリンチャンピオンに突撃した。

それを見た神官娘が、令嬢冒険者に

 

「呪文の詠唱の準備をしておいてください! タイミングは、ゴブリンスレイヤーさんが指示します!」

 

と指示した。そして、蜥蜴人僧侶以外の一党は支援攻撃を開始した。投石紐を使ったり、弓矢を放ったりしてゴブリンスレイヤーと剣舞士を襲おうとしたゴブリン達を次々と撃破していく。

攻撃されていると知りながら、ゴブリン達は一党には向かわずにゴブリンスレイヤーか剣舞士に突撃する。実はゴブリンパラディンは、配下のゴブリン達にある魔法を掛けていた。その魔法の名前は、《狂気》。

これを掛けられた相手は、通常の思考が出来なくなり、魔法を掛けた使い手の命令を命懸けで遂行し、更には使い手を守る行動を取るのだ。

この時点で、ゴブリンパラディンが下した命令は以下になる。

1、自分が下した命令は絶対。

2、女が居たら、全員捕縛。

3、敵は全て殺せ。

4、上位は守れ。

になる。パラディンからしたら、通常のゴブリンなど捨て駒に過ぎず、そして自分が最上位に至る為の駒に過ぎなかった。

もう少しで最上位に到達出来るのに、それを邪魔されてしまった。その邪魔をする冒険者達を全員殺し、生け贄の令嬢冒険者を捕縛し、適当なゴブリンを神官役に据えて、また式を行う。

そうすれば、まだ間に合う。

そう考えたゴブリンパラディンは、残った全戦力全てを投入し、ゴブリンスレイヤー一党を追い掛けた。

それが、ゴブリンスレイヤーの策略と気づかないで。

ゴブリンパラディンは、目前のゴブリンスレイヤーに対して、令嬢冒険者から奪った軽銀の宝剣を振り下ろした。ゴブリンスレイヤーはその一撃を盾で受け流したのだが、盾に深々と斬り込みが入った。

 

(何度も受けることは出来ないな)

 

そう考えたゴブリンスレイヤーは、なるべく攻撃を受けないように戦うことにした。パラディンからの攻撃はギリギリで避けて、チマチマとダメージを与えていく。

ふと気付けば、剣舞士はチャンピオン相手に押している。チャンピオンは大きな戦斧(バトルアックス)を振り回しているのだが、大振りな攻撃では剣舞士を捉えられない。

 

(あちらは大丈夫だな)

 

そう判断したゴブリンスレイヤーは、いよいよパラディンから剣を奪還することにした。

 

(後で、神官娘に泣かれそうだが……)

 

そう考えながらも、ゴブリンスレイヤーはパラディンからのある攻撃を待っていた。そして、その一撃。突き攻撃が来た。それを見たゴブリンスレイヤーは、盾を構えた。その直後、剣が盾を貫通。ゴブリンスレイヤーは痛みを堪えながら、盾を僅かに動かした。

確かに、剣は盾を貫き、剣が当たった腕から血が流れた。それを見たゴブリンパラディンは、ニヤリと笑みを浮かべて、剣を抜こうとした。だが、抜けずに驚いた。

その理由は、ゴブリンスレイヤーが盾を動かしたことだった。

幾ら名剣だろうが、刺した時と角度が変われば簡単に抜けないのは道理。抜けないことに動揺し、パラディンが動きを止めた瞬間、ゴブリンスレイヤーは雑嚢入れから一つの陶器製の小さな瓶を取り出して、ゴブリンパラディンに投げつけた。当たった瞬間、ゴブリンパラディンは驚きから剣から手を離し、それを見たゴブリンスレイヤーは一気に後退し

 

「呪文だ!」

 

と令嬢冒険者に指示を飛ばした。それを受けて、呪文の詠唱を始める令嬢冒険者。剣舞士はゴブリンチャンピオンを倒したようで、ゴブリンスレイヤーの方に走っている。問題はここからだった。

令嬢冒険者が呪文を詠唱していくと、その両手に光が集まっていく。そして

 

「《稲妻(トニトルス)》!!」

 

轟音を伴いながら、閃光が放たれた。放たれた閃光は、数体のゴブリンを消し炭にしながらも、天へと向かっていった。それから数秒後、地鳴りが響き渡り、山頂から白い壁。雪崩が迫ってきていた。

 

「皆さん、私の後ろに!!」

 

神官娘はそう言うと、聖壁の詠唱に入った。意図を察して、次々と集まる一党の仲間達。しかし、ゴブリンスレイヤーと剣舞士は距離が離れていて、雪崩が到着するまでに間に合わない。

しかし、そんなことは二人も承知している。だから

 

「ゴブリンスレイヤー!」

 

剣舞士が懐から札を取り出しながらゴブリンスレイヤーの名前を呼び、その意図を察したゴブリンスレイヤーは剣舞士の近くになるべく寄った。そうして、剣舞士が手を地面に突いた直後、雪崩が二人に襲い掛かかり、聖壁を展開していた一党にも襲い掛かった。

激しい衝撃が一党を襲い、それを神官娘は終わるまで耐えた。長そうで短い雪崩は終わり、一党は周囲を見渡した。多数居たゴブリンの生き残りも、パラディンも雪に潰された。

そして、令嬢冒険者は両膝を突いて

 

「私の……せいで……」

 

どうやら、ゴブリンスレイヤーと剣舞士が雪に押し潰されたと思っているようだ。しかし、一党。特に、戦士娘と魔法使い娘は冷静に

 

「大丈夫ですよ」

 

「ええ……あの二人なら……ほら、あそこ」

 

と言って、ある場所を指差した。令嬢冒険者がその指の先を追うと、一ヶ所が不自然に盛り上がっていき

 

「ふう……やはり、雪崩を考えていたか……」

 

「……あれが、多数を一片に片付けるのに丁度良かったからな……」

 

その雪の下から、ゴブリンスレイヤーと剣舞士が姿を現した。そしてゴブリンスレイヤーは、足下から宝剣を拾い上げて

 

「……取り返したぞ……」

 

短く、令嬢冒険者に告げた。そして、剣舞士も少し離れた場所に腕を突っ込み

 

「……これか、鞘は」

 

と宝剣の鞘を、雪の中から見つけた。その2つを受け取った令嬢冒険者は、涙を流した。

こうして、雪山での依頼は幕を下ろす。

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