「さて……現状は、何とも言い難いな……」
そう切り出したのは、重剣士だ。これからゴブリンスレイヤーと剣舞士が担当していた新人冒険者達の救出に向かうのだが、今居る中央施設はまだ未完成な為にドアもまだ無く、窓も無い。
一応窓は板を使って封鎖したが、ドアはバリケードを作るしかないが、長持ちはしにくいだろう。
だから、早急に新人冒険者達を救出し、ゴブリン達を殲滅する必要がある。
「だがまあ、地方最優と呼ばれる四人が居るんだ……面白いことが出来そうじゃないか?」
重剣士は集まった人員を見ると、そんな事を言った。
それを聞いた剣舞士は、一度、ゴブリンスレイヤー、槍使い、重剣士を見てから
「……もしや、俺も入ってるのか?」
と重剣士に問い掛けた。すると、槍使いが
「当たり前だろうが。お前、西方面じゃあ知らない奴は居ないぜ? 最強の剣客ってな」
と剣舞士に教えた。
それは、剣舞士の知らない事だった。流石に兼聖には及ばないが、西部最強の剣客。と、剣舞士は呼ばれていたのだ。
「……初耳だ」
「まあ、お前さん。自分の事に無頓着みたいな感じだからな」
「ただ、もう少しばかり気にしとけ。ここ最近、お前に弟子入りしたいって剣士が増えてるんだぜ?」
「……弟子入りか……」
弟子という意味では、既に戦士娘が居る剣舞士だが、どうやらそれ以外にも弟子入り希望が多数居るようだ。
しかし、それを剣舞士は一度頭の片隅に追いやり
「それより、現状打破の為にどう動くかだ……」
と発言した。それが最優先事項になる。
「確かにな……この中央施設で籠城戦……というのも、選択肢の一つではあるが……」
「いや、流石に今のここじゃあ、長持ちしないぜ? ゴブリンだけでも数に押されたら、確実に突破される。それに、訓練場全域って考えたら、守りきれないぞ」
重剣士が挙げた提案を、槍使いが即座に否定した。
確かに、まだゴブリンの総数も不明な為に、籠城戦も難しいだろう。
「それにだ……新人達が、何人使えるかだ……」
「……見た感じ、10人居れば良い方だな……」
そう言って槍使いと重剣士は、座り込んでいる新人冒険者達を見た。中には完全に意気消沈し、頭を抱えて震えてる者すら居る。
「となれば、実質取れる手は一つしかあるまい……」
「……此方から、討って出る……」
剣舞士とゴブリンスレイヤーの提案を聞いて、槍使いと重剣士は頷いた。救出と討伐の同時進行となれば、問題は人員割り振りになる。
「流石に、洞窟じゃあそのダンビラは活かせないな」
「抜かせ」
槍使いの挑発に、重剣士は獰猛な笑みを浮かべた。
どうやら、二人の間で役割が決まったらしい。
すると、重剣士が
「俺はここに残る。ゴブリンスレイヤーの新人もだが、他に生き残ってる新人達が来るかもしれないからな」
と自ら、役割を述べた。
確かに、誰かしら残っていた方が良いだろう。動けない新人を含めて、防衛要員は必要だ。
「俺はゴブリン共が出てきた穴を担当する」
「……槍で、大丈夫か?」
ゴブリンスレイヤーが問い掛けると、槍使いはハッと笑って
「舐めんじゃねぇよ。んなもん、使い方次第だ」
と断言した。どうやら、平気のようだ。
確かに、そうでなければ、自ら洞窟の方に向かうとは言わないだろう。
「そんじゃ、ワシは外に居るかの」
そこに、鉱人術士が手を挙げた。
「穴の中じゃ、下手に術は使いにくい。訓練場を陥没させる訳にもいかないからの」
確かに、洞窟の中で発動したら、それがどう影響するかは予想しづらいだろう。工事の手間を増やしてしまう。
「……俺は討伐に回る」
「その方が良いだろう。俺が新人救出に向かう」
とりあえずだが、大まかに人員割り振りは決まった為に動き始めた。ゴブリンスレイヤーと槍使いがゴブリンが出てきた穴から、洞窟に入る。
重剣士は中央施設に残り、防衛。
剣舞士は新人達救出に出て、場合によっては新人達を安全圏まで避難させる。
「そんじゃま」
「緊急クエスト開始だ!」
ゴブリン討伐及び新人&民間人救出任務の始まりだった。剣舞士は、戦士娘や魔法使い娘、令嬢商人の方に歩み寄り
「俺は新人と民間人の救出に向かう……お前達は……」
「私は師匠と一緒に行きます!」
「私も行くわ。いくら貴方でも、一人より複数居た方が守り易いでしょ?」
剣舞士が問い掛けるより先に、戦士娘と魔法使い娘が立候補した。剣舞士に着いてくるようだ。
確かに、一人よりも複数人居た方が守りという点では動き易いのは事実だ。ここは彼女達の意思を尊重することにした剣舞士は、次に令嬢商人に顔を向けて
「そちらはどうする? 場合によっては、脱出に切り替わるから、安全圏に離脱出来るが?」
令嬢商人は元冒険者だが、今は商人な為に一般人の枠に入る。暗に脱出した方がいいのでは? と問い掛けていた。すると、令嬢商人は少し考えてから
「……馬車の確認もしたいから、行っていいかしら?」
と告げた。
どうやら逃げてくる時に、馬車を置いてきてしまったらしい。確かに、令嬢商人からしたら気になるだろう。
「近くを通ったら、構わない」
「ええ、それで構わないわ」
そして、剣舞士達は救出に動いた。