中央施設で三班に別れると、各々は行動を開始した。
ゴブリンスレイヤー、槍使い、上妖精弓手、魔女は近くの穴から地下へ潜り、まだ地下に居るだろうゴブリンの撃滅。
重剣士と鉱人術士は中央施設の防衛。
そして剣舞士は戦士娘と魔法使い娘。そして令嬢商人と神官娘を連れて、新人の救出に向かった。
神官娘は、もし救出に向かう新人達に怪我人が居たら、奇跡で治癒する為に同行している。
その時
「前方、来るぞ」
と剣舞士が忠告した直後、茂みから数体のゴブリンが飛び出してきた。それらを剣舞士と戦士娘が素早く撃破したのだが、違和感を覚え
「師匠……こいつら」
「ああ……襲ってきたというよりも、何かから逃げてきたようだ……」
と会話した。
今しがた飛び出してきたゴブリンが、襲い掛かってきたという雰囲気よりも、
その時、魔法使い娘が
「前に、何か妙な魔力を感じるわ……気をつけて」
と忠告してきて、剣舞士と戦士娘は森の方に視線を向けた。ゴブリン達が飛び出してきた茂みの向こうから、それはまるで闇から滲み出すように現れた。
漆黒の体毛の、馬並みの大きさの狼だった。
「な、なに、こいつ……ダイアーウルフなの?」
魔法使い娘が困惑しているが、それを聞いた令嬢商人が呆然とした様子で首を左右に振り
「違う……こいつは、
それは、過去に様々な理由で討伐依頼が出されて冒険者が向かったが、討伐に失敗し、生き残った個体を指す。
現在までに十数体が確保されており、そのどれもが通常個体を超えた能力を有している。
その内の一体が、スコルである。
遥かに巨大化したダイアーウルフが、討伐を生き残ってきた個体である。
勿論、討伐依頼が出された理由は、巨大化だけではない。
スコルは口に咥えていたゴブリンの上半身を、ペッと吐き捨てた。
恐らくゴブリンは、スコルが寝ていた洞窟にでも出てしまったのか、もしくはスコルを通常のダイアーウルフと同じように調教しようとしてスコルを怒らせて、食い殺されたのだろう。
そして剣舞士と戦士娘に斬られたのは、文字通り命からがら逃げ延びたのだろう。
(こいつ……
剣舞士がそう思った時、スコルが吼えた。その直後、剣舞士は神官娘と令嬢商人の前に滑り込み、刀を振り下ろした。すると、何かを弾く音が鳴り響いた。
「な、なんですか!?」
「確か、スコルの特殊能力は……風!」
今しがた剣舞士が弾いたのは、スコルが放った風の刃である。
スコルは、
もし剣舞士が弾いていなかったら、神官娘は風の刃で切り裂かれていただろう。
剣舞士は、スコルを睨みながら
「……こいつは俺が引き受ける……お前達は先に行け」
と告げた。
「しかし、師匠!」
「人数居た方が……」
「庇いきれるか分からん……不可視では、弾ききる自信がない。先ほどのは、たまたまだ……行け」
剣舞士がそう言うと、令嬢商人が戦士娘と魔法使い娘の肩を掴んで
「はっきり言って、銀等級以上じゃないと太刀打ち出来ないわ。私達じゃ、足手まといにしかならない。行くわよ」
と促した。それを聞いた二人は、少し迷ってから
「先に行きます!」
「無事を祈ってるわ!」
と言って、神官娘を守る為に挟むように布陣して走り出した。それを見たスコルは、攻撃しようとしたのか頭を四人の方に向けて口を開こうとしたが
「余所見してる余裕があるのか?」
気付けば剣舞士が肉薄していて、刀を振り上げていた。そして振り下ろした時、スコルの姿は無く、剣舞士の後ろに居た。
その巨体に似合わぬ俊敏さに、剣舞士は
(やはり、風牙に似ている能力か……やりようはあるか……)
と考えながら、交戦を開始した。