剣舞士が三人娘と令嬢商人。そして新人達と合流したのは、西の街に大分近い道であった。
新人達の人数が剣舞士が知る人数より増えていたので、途中で別のグループが合流したのだろう。
「無事なようだな……犠牲は?」
「新人が三名程……ゴブリンの奇襲で……」
「そうか……」
どうやら、新人達の中から犠牲者が出たようだ。
しかし奇襲を受けた事を考えたら、三人で済んだのは奇跡的とも言えるだろう。
「それで、先ほどの大声は一体……」
「それは……」
剣舞士の問い掛けに、令嬢商人が説明をした。
撤退中、かなりの数のゴブリンの奇襲を受け、それでも西の街を目指していた。しかし、普通に迎撃していたら効率が悪い。
そこで少年魔法使いが考えたのは、火球を構成する3つの真言の内の1つ。強化を、自分の喉に重ね掛けして、大声を出したのである。
これにより、ゴブリン達は混乱を来して逃げていったという。
偶然だが、少年魔法使いがやったのは
この龍咆というのは、文字通り龍の咆哮を魔術により再現し、相手を一時的に恐慌状態にして混乱させるものになる。
剣舞士や新人達、四人娘は知らなかったが、実は地下道で蜥蜴人僧侶がゴブリン達に対して発動している。
それを少年魔法使いは、発想から自分の喉に強化の重ね掛けをして擬似的に再現したのである。
それによりゴブリン達は混乱し、逃げていった。
「なるほどな……」
剣舞士が納得していると、空中に光の弾が打ち上げられた。それは、ゴブリンの撃退を意味する魔法弾だった。
「……このまま、一度街に入るぞ」
「はい!」
「わかりました!」
剣舞士を殿にして、一行はそのまま西の街に入っていった。西の街に入ると、どうやら連絡を受けていたらしい受付嬢達が近寄ってきて
「皆さん、ご無事ですか!?」
「ゴブリンの奇襲を受けたって、避難してきた大工や商人から聞いたけど……」
と確認してきた。
どうやら、無事に逃げた大工や商人が居たようだ。それは喜ぶべき事だ。
「俺たちで見つけた新人達の内、三人程犠牲者が出たようだ……他に、まだ建設中の訓練所に残っていた新人達が避難している。そちらは、どうやらゴブリン達は撃退出来たようだ」
剣舞士が報告すると、それを聞いた受付嬢が手早く脇に持っていたバインダーの羊皮紙に書いていく。
すると、令嬢商人が
「そういえば、貴方……スコルはどうしたの?」
と剣舞士に問い掛けてきた。それを聞いた瞬間、監査嬢が驚いた表情で
「スコルって、
と剣舞士に詰め寄った。
すると剣舞士は、受付嬢が出した地図を見て
「この辺りで遭遇し、撃破した」
とある一ヶ所を指差した。
それを聞いた受付嬢は、その地点にササッと✕と何やら書き込み
「スコルの死骸は、その場所に放置したんですね?」
「ああ……かなり大きかったのと、新人達の方への合流を優先したからな……大きさは馬位で、漆黒の毛並みだ」
剣舞士の説明を聞き、受付嬢は顎に手を当てて唸り始めた。どうやら、思い出しているようだ。
そして、少しすると
「……以前に読んだ本と、特徴が一致しますね……間違いなく、本物のスコルでしょう……そうなると、大手柄ですよ、剣舞士さん。スコルは緊急討伐指定個体の中では、第10位の個体です。報酬もですが、査定も大きくプラスです」
と朗らかに告げた。
その時、森の方からゴブリンスレイヤー達がゆっくりと姿を現した。
こうして、長い長い夜は終わりを告げた。
翌日の早朝に、スコルの死骸の回収の為に数十人態勢の冒険者達が出発した。
これは、死骸の回収もだが、もしかしたら周囲に居るかもしれない他の魔物への対処の為である。
更に言えば、魔物の研究者達の護衛の為でもあった。
やはり特異個体の研究に、興味が尽きないようだった。
それから約二時間後、西の街から少年魔法使いと園人少女剣士が旅立った。
少年魔法使いは世界を知る為に、園人少女剣士は元々旅をする予定だったという。
出発する前に二人でイザコザがあったが、それを見ていたゴブリンスレイヤーは笑った。
そしてゴブリンスレイヤーは、二人に
『もし、忍びを名乗る園人が現れたら、俺の名前を出せ。もしかしたら、面倒を見てくれるかもしれん』
とアドバイスした。
ゴブリンスレイヤーが言ったのは、ゴブリンスレイヤーの師匠の事だろう。
これが将来、竜を狩る二人の始まりになる。
余談だが、実は勇者一行が次元の狭間で軽く迷子になっていて、帰ってくるのは訓練所完成後になり、たまたま教師役にと来ていた剣舞士が居たタイミングになる。