一党が結成された日、彼等は山間にある古要塞へと向かった。そこに、40に迫るゴブリンが住み着いたらしい。
既に、善意からある冒険者一党が向かったらしいが、帰ってきてはいない。
向かったのは、鋼鉄等級の女戦士をリーダーとした女三人の一党だという。それを聞いたゴブリンスレイヤーは、日数から既に手遅れと判断。
要塞諸とも、ゴブリン達を殲滅すると決めた。
そのついでに、通り道の村から一羽の鶏を奪っていったゴブリンの討伐も一緒に取った。
これは、群れから追い出されたか、たまたま討伐から生き残ったのかだという。
単独の方は、森の中の巨木の根本の祠に居たのを難なく討伐。
そして、山間の古要塞の方は、その古要塞諸とも焼き落とした。
その後、ギルドに帰還して少しした時だった。神官娘が
「なぜゴブリンは、村を襲うんでしょうね……」
と呟いた。
本当に、不意に出た言葉だったのだろうが、それを聞いたゴブリンスレイヤーは
「……奴等は、略奪種族だ……武器や毒はある程度作るが、基本的に食べ物も武器も何処かからか奪う……」
と呟いた。
それを聞いても、神官娘は納得出来ないでいた。するとゴブリンスレイヤーは、天井を見上げ
「……仮定として、自分達が住んでる村が襲われたとしよう……襲われた奴等は、何故自分達がと思う……そして次に、普通に過ごしている連中を見て、何故あいつらはと、妬ましくなる……奴等は我が物顔で伸し歩き、友達を家族を殺し、略奪する……許せる訳がない……武器を取り、自分を鍛え、考えて、成長し、兎に角報復してやろうと、行動に移す……」
その声音から剣舞士は、ゴブリンスレイヤーの根幹に気付いた。
(……憎しみからくる復讐か……)
ゴブリンスレイヤーの声に、怒りと憎しみを感じた。
「それが楽しくなる……つまり、俺は奴等にとってのゴブリンになる……」
その発言を聞いた剣舞士は、柄尻で軽くゴブリンスレイヤーの頭を小突いた。
「……む?」
「貴方は、この辺では最優の冒険者と呼ばれている……その理由が分かるか? ゴブリン退治は、料金が安いために殆どの冒険者がやりたがらない……その依頼を、貴方は優先して請け負う……村人にとっては災害に等しいゴブリンを殲滅する……村人にとっては有り難い存在だ……それを誇れ……でなければ、銀等級の中でも最優の冒険者……その評価を裏切ることになる」
ゴブリンスレイヤーが小突かれた理由が分からないために振り向くと、剣舞士はそう告げた。
剣舞士はゴブリンスレイヤーが最優の冒険者と呼ばれている理由を知っていた。
その理由は、先に挙げた通り。
ゴブリンは数は多いが、料金が安いからだ。
その原因は、依頼を出すのが大抵は駐留戦力もない村からだからだ。
依頼する一人一人が貧しいために、村の共同貯蓄を使っても安くなってしまうのだ。
実入りが安いとなれば、好んで請け負う冒険者は少ない。しかしゴブリンスレイヤーは、そのゴブリン退治を率先して行う。
その理由は復讐なのかもしれない。しかし、依頼を出した村人側からしたら、嬉しいことなのだ。
「しかし……」
剣舞士の話に納得出来ないのか、ゴブリンスレイヤーは反論しようとした。そこに、話を聞いたらしい受付嬢が
「ゴブリンスレイヤーさん」
と声を掛けた。
笑顔なのだが、凄まじい気迫を感じる。
「そういう考えでは困ります。良いですか、貴方は銀等級の冒険者なんですよ? その等級は、貴方の活躍を評価して与えた物です」
「む……」
「貴方がそういう考え方をしていると、こちらは貴方に依頼を斡旋出来なくなりますよ?」
「む、それは困る……」
受付嬢の話を聞いたゴブリンスレイヤーは、少し慌てた様子でそう答えた。彼にも生活があるので、依頼を斡旋されなくなるのは困るのだ。
「でしたら、考え方を変えてくださいね」
「……やってみる」
ゴブリンスレイヤーの言葉に満足したのか、受付嬢は机に置いていたらしい本を脇に抱えて奥に消えた。
「最優の冒険者……」
「武に誇りを持つものは、その武を更に高みに至らせるために強い敵と戦う……別に、それが悪い訳ではない……だが逆に、その武を活かせる敵を求めるようになっていく……より強い敵を……だが反面、弱い敵と戦わなくなってしまう……」
「それが、ゴブリンといった下級の魔物……」
魔法使い娘の言葉に、剣舞士は頷いた。
ゴブリンは、強さとしては最下位に部類される。それこそ、少し力自慢の大人にでも倒せる程に。
だがゴブリンは、その数が強味である。
短い期間で、爆発的に増えるのだ。それが、ゴブリンの依頼が無くならい理由になる。
「俺も……村を襲っていたりしたゴブリンを斬って捨ててきているが……100から先は、数えていない……一回の最大数は……40だったか……」
「
「無くならないわけね……そして、そんなゴブリン討伐を率先して行う……なるほどね、最優の冒険者……」
剣舞士の話に納得したように、格闘家娘と魔法使い娘は腕組みしながら座っているゴブリンスレイヤーを見た。
その頃、ある大きな街。
おお、小鬼殺しと剣で舞う者の攻撃は、悪鬼の王に致命の一撃を与えた
と、旅の吟遊詩人が物語を紡いでいた。
「辺境の勇士達、小鬼殺しと剣舞士の物語より、山砦炎上の段。これにて」
と吟遊詩人が頭を下げると、聞いていた観客達は次々とお金を地面に置かれてあった箱に入れていく。
危険な辺境で損得抜きでゴブリン退治を引き受ける銀等級の冒険者と、六ヶ月程前から名が売れてきた旅の剣舞士。
ゴブリンの被害に苦しむ村々にとっては、まさに勇者に等しい。
耳にした話から脚色した英雄譚は、好評を泊した。
「……ねえ」
手帳に記していた情報から、次はどんな物語にしようか考えていると、涼やかな声が聞こえた。
振り向いてみれば、マントで頭から膝辺りまで姿を隠した人物が居た。
「今の歌の冒険者達だけど、ホントに居るの?」
「ああ。本当だ」
その人物の問い掛けに、吟遊詩人は堂々と答えた。
彼も旅をしているので、様々な話を聞く。その中でもゴブリンスレイヤーの物語は大分好評だった。
「その冒険者達、何処に居るの?」
その問い掛けに、吟遊詩人は思わず眉をひそめてしまった。
吟遊詩人は西の各街を渡り歩くのだが、時々好奇心に駆られて真実を確かめようと探しに行こうとする輩が出てくるのだ。
吟遊詩人としては、直接会ったことは無いものの、自分の収入原になってくれている冒険者達に迷惑を掛けたくないのだ。
「悪いが、簡単には言えないな……」
吟遊詩人はそう言いながら、お金と楽器を仕舞っていった。そこに
「拙僧らは、その冒険者達に要件があるのだ」
と新たな声。気付けば、一段高い道に背の高い蜥蜴人が居た。
(顔を隠してないだけ、信用出来るか)
そう判断した吟遊詩人は、荷物を背負い
「……この街から、更に西に2、3日行った街……そこのギルドに行きな。そうすりゃ、会える筈だ」
とだけ言って、その場所から去っていった。
それを聞いた最初の人物は、フードを外した。すると見えたのは、見目麗しい女性。それも、その笹の葉のように長い耳から察するに、森人の女性だった。
「オルク、ボルグ……」
森人の女性は、独特の言葉を呟きながら西の方角を見た。