ゴブリンを倒した一党は、ある程度進むと野営をする為に高い大木の枝の上にテントを張った。女性陣がその中で寝て、男性陣は交代で警戒する事にした。
そして、朝方。この時、確かに剣舞士は木箱に背中を預ける形で寝ていた。
しかし突如、剣舞士が目覚めて即座に刀を抜刀。自分達目掛けて飛来していた矢を、全て叩き落とした。
「むっ!?」
「何事ですかな!?」
剣舞士が動いた気配で起きたのか、鉱人術士と蜥蜴人僧侶が少し慌てた様子で構え、ゴブリンスレイヤーは無言で構えていた。
そして剣舞士は、叩き落とした矢で相手に気付いていた。上妖精弓手と同じ、木製の矢。
つまり、相手はエルフである。
「貴様ら! ここを我々の里の近くと知っているのか!」
怒鳴り声が聞こえ、男性陣の声が一斉に同じ方向に集まった。一党が居る大木から、約60mは離れた大木の枝の上に、10人近くのエルフ達が弓を構えている。その中央に、他のエルフ達より装飾が施された装備を纏ったエルフの男が居た。
恐らく、隊長格なのだろう。
すると、蜥蜴人僧侶が
「我らは一党の仲間から、こちらにある里で行われるというご家族の結婚式に招待された!」
と説明した。それを聞いた隊長格が、何処からか一本の矢を取り出して
「ならば、これはやはり私の知る子の物だな! このような粗末な矢、あやつが作るとは思えない! 何を吹き込んだ!!」
と語った。よく見れば、鏃が少し緩い。それは間違いなく、先日にゴブリンに放った矢だった。それに気付いたゴブリンスレイヤーは、小さく舌打ちした。
ゴブリンの巣に疫病を流行らせようとしていたのが、ダメになったのだ。
すると、エルフ達は数本の枝の上を跳躍し、一党達の居る枝に着地して
「それで、あやつは何処に居る」
と迫ってきた。それに対して、ゴブリンスレイヤーは顔の向きだけで教えた。女性陣が寝ているテントを見た隊長格は、ズンズンと歩き始めた。
すると、先に出てきた戦士娘が慌てた様子で
「あ、待ってください! 今、中で着替えて!?」
と止めようとしたが、隊長格は無視してテントの入り口を開けて中に入り
「おい、居るか! 話が……」
と途中で固まった。中では、戦士娘以外の女性陣が寝間着から着替えてる途中で、上妖精弓手は寝ぼけた様子で着替えていたが
「あー……義兄様、久しぶり……とりあえず……外に出ろ」
と弓矢を構えて、隊長格に命じた。そして隊長格は、無言でテントの入り口を閉めて離れた。
それから数分後
「誠に申し訳なかった……」
頬に見事なモミジを作った隊長格が、女性陣に頭を下げた。
「本当、信じられない! ごめんね、皆。こんな無神経なバカ義兄様で!」
隊長格
上妖精弓手の姉の結婚相手で、里の戦士を束ねる戦士長は上妖精弓手に頬を思い切り叩かれて、説教された後に謝罪した。
「里に着いたら、姉様に言いつけてやる!」
「待て待て! あれには言うな!?」
「皆、聞いた? 姉様をあれだって! すっかり旦那気取りよ!」
気安く接している事から、昔馴染みというのが分かる。
そして少しすると、上妖精弓手が
「それより、里の戦士達は何をしてるのよ。こんな所にまで、ゴブリンを許すなんて。なんで巣の討伐に行かないのよ」
と戦士長に文句を言った。すると戦士長は、苦い表情を浮かべて
「……ゴブリン共の巣は、里より更に上流にある……長老達が許可しないのだ」
「上流……まさか、あの遺跡に?」
上妖精弓手が眉をひそめながら問い掛けると、戦士長は無言で頷いた。
すると、上妖精弓手は深々とため息を吐いて
「帰ったら、長老達に文句を言ってやるわ」
「だから、長老達は敬えと……」
上妖精弓手に、戦士長が苦言を言おうとした。だが、上妖精弓手は気にしないと言わんばかりに
「私からしたら、ハイエルフだからって他種族を見下したり、里の慣習だからって引き込もってるの違うと思うわ!」
と戦士長に食って掛かった。
そんなやり取りを見ながら、一党は二人の後に続く。周囲には戦士達が居て、何人かは最初に矢を放ったのを謝罪してきた。
そうこうしている内に、開けた場所に出た。
そこは、木々に生かした家が幾つもあった。間違いなく、エルフ達の里だろう。
すると、上妖精弓手が振り向いて
「私の里にようこそ!」
と告げた。