※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー・剣で舞う者   作:京勇樹

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正体

三人が落ちた広い空間の先、通路から現れたのは一体の鎧だった。確かに雰囲気は生者ではなく、アンデッドなのは間違いないだろう。

しかし、その立ち姿と歩き方から相当手練れのアンデッドと分かる。

 

「これは……面倒そうだな……」

 

剣舞士はそう言って、刀を抜いた。一目で、相手のアンデッドが相当の手練れ基だと気付いたからだ。

そして、いつの間にか剣を抜いて歩いていたのだが

 

(あの体捌き……見覚えがある)

 

剣舞士はそのアンデッドの動きに、既視感を覚えた。

しかし剣舞士は、視界の確保を兼ねて火を周囲に放ち、周りにあった木材に着火させた。

その時になり、相手の全体がはっきりと見えた。

とはいえ、全身鎧にこの世界ではオーソドックスな形状の剣を右手に持っているだけ。しかし、その右手に持っている剣が豪華な装飾が施された名剣と分かる代物だった。

その剣を見て、大妖精が驚いた様子で

 

「その剣は……まさか……!?」

 

と呟いた。

 

「大妖精?」

 

「あの剣……間違いありません……剣聖のです!」

 

魔法使い娘が視線を向けると、大妖精は叫ぶように告げた。

 

「剣聖? 勇者と一緒に居た、あの剣聖か?」

 

「私の代の剣聖です……あの装飾」

 

大妖精はアンデッドが持つ剣を指差した。

鷲を彷彿させる装飾で、柄尻には赤い宝石が埋め込まれている。

 

「あの装飾の紋様は、ある流派の紋章……しかも、柄尻の赤い宝石はその剣技を完全に修得した人物のみが付けられるのを許されるもの……」

 

確かに、思い出してみたら、勇者と一緒に居た剣聖も鷲を彷彿させる装飾が施され、赤い宝石が柄尻に埋め込まれていた剣を持っていた。

 

「なるほど……同門ならば、動きも同じになるか……」

 

そう考えれば、体捌きに既視感を覚えたのも道理である。

 

「……だけど、なんで……」

 

「……どうやら、相性が悪い相手と出会ってしまったようだな」

 

大妖精は困惑していた。恐らく、大妖精としたら当時の剣聖が何故アンデッドになっているのか、というところだろう。しかし剣舞士の視線は、全身鎧の更に向こうを見ていた。

 

「え……」

 

「……待って、奥に何か居る……」

 

剣聖アンデッドの更に奥。そこに、異様な雰囲気の存在が居た。

ゆらゆらと揺れる黒いオーラに、ボロボロの衣服を纏う骸骨。

その手に持つは、鎖と杖。

 

「レイス……いや、リッチか」

 

アンデッドの中でも、最上位に位置するアンデッドに当たる。

ネクロマンシー以外で唯一、下位アンデッドを操る能力を有している場合もあり、倒すには聖職者が最適と言われている。

 

「幾ら剣聖とはいえ、聖剣でもなければアンデッドの対処は難しいだろう……そういう意味では、その剣聖は相手が悪かった……恐らく捕まり、呪いを掛けられたのだろうな……そして、僕(しもべ)にされた……」

 

通路の前から動かないのは、リッチを守るように命令されているのだろう。

 

「さて……」

 

剣舞士が一歩踏み出すと、剣聖アンデッドも剣を構えた。次の瞬間、互いの剣が激突した。

激しく金属音が鳴り響き、火花が散る。

二人は互いの必殺の間合いの中で剣を振り、魔法使い娘からしたら目に見えない速度で戦っていた。

 

「速すぎる……!」

 

魔法使い娘だけでなく、大妖精も手出し出来なかった。

最高峰の剣士同士の遥か高みの剣劇。

しかも驚きなのが、ずっと同じ場所で戦っているのだ。

少しずつ足は動かしているが、一定範囲でずっと戦っている。

剣聖アンデッドは一刀でだが、剣舞士は二刀流だ。

その時、魔法使い娘は気付いた。よく見れば、剣舞士の腰に鞘が3つある。

そして、黒刀は使っていない。

それに気付いた魔法使い娘は、何故と考えていた。その時、剣舞士が左手に持っていた刀が折れた。

剣舞士は素早く左手に持っていた柄を上に放り投げ、両手で刀を持った。

その直後につばぜり合いになり、剣聖アンデッドが剣舞士を押し込んだ。

だが

 

「狙い通りで助かったよ……どうやら、腹芸は苦手なようだな」

 

剣舞士がそう呟いた時、剣舞士が放り投げた柄が剣聖アンデッドの背後に落ちて、残った刃が地面に突き立った。

 

「口伝……影縫い」

 

その瞬間、剣聖アンデッドの動きが止まった。

よく見れば、先ほど地面に突き立った場所には、剣聖アンデッドの影がある。

 

「……戦って分かった……抗っているんだな、お前は……」

 

実は剣舞士は、剣聖アンデッドと戦っていた時、意図的に何回か隙を作っていたのだ。

しかし、剣聖アンデッドの攻撃は来なかったか、もしくは直前で攻撃軌道が変化していた。

そして戦っている間に気付いたのは、剣聖アンデッドの腰部分に禍々しい雰囲気の鎖が巻き付いていて、その鎖がリッチが持つ鎖と繋がっていた。

そこから剣舞士は、その剣聖アンデッドがリッチからの支配に抗っている事に気付いたのだ。

 

「その影縫いは、簡単には解けない……安心しろ……アレは、俺が片付ける」

 

剣舞士はそう言い、剣聖アンデッドの横を通りながら黒刀を抜いた。その先に居るリッチは、怒りから杖をブンブンと振り回している。

 

「リッチ……そろそろ、現世から別れの頃合いだ……その首、落とさせてもらうぞ」

 

そう言って剣舞士は、リッチの正面に立った。

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