「だから、オルクボルグとフェイヒリッターよ!」
「え、ええと……」
ある日、西のギルドに現れた上妖精に捲し立てられて、受付嬢は困り果てていた。
「えっと……
「オルクボルグ! それと、フェイヒリッター!」
上妖精特有の言葉に、受付嬢は首を傾げるしかなかった。そこに、鉱人が来て
「これだからお主らの言葉は分かりづらいんじゃ……かみきり丸と風剣は居るか?」
と受付嬢に聞いてきた。
「かみきり丸……? 風剣……?」
どうやら鉱人独特の言葉らしく、受付嬢はまた首を傾げるしかなかった。
「あんたも、人の事言えないじゃない!」
「なんじゃと!?」
「あ、あの……ケンカは……」
二人が口喧嘩を始めると、受付嬢としては困るしかなかった。どうやら人探しをしに来たらしいが、まだ誰かわからなかったからだ。
そんな時、ケンカしている二人を越える身長を誇る人物が現れて
「お二方、ケンカなら拙僧の見えない所でしてほしいですな」
と注意した。蜥蜴人の僧侶である。そして蜥蜴人僧侶は、受付嬢に対して
「拙僧の連れがすまなかった」
と謝罪してきた。
「ああ、いえ。大丈夫ですよ」
と蜥蜴人僧侶に返答した受付嬢は、改めて三人を見た。
(極めて珍しい組合せですね……ハイエルフと反りの合わないドワーフ。それに、人前にあまり姿を見せないリザードマンの冒険者。それも、全員が銀等級とは……)
その三人は揃ってギルドに入ってきて、上妖精が最初に受付嬢に問い掛けてきたのだ。考えられるのは、何らかの遠方からの遣いだろう。
「では、拙僧が問おう。生憎と、拙僧もヒトの言葉に精通している訳ではないが、この二人が探してるのは同一人物でな……オルクボルグとかみきり丸、フェイヒリッターと風剣というのは、小鬼殺しと剣舞士という意味だ」
「ああっ!」
蜥蜴人僧侶が言った言葉で、受付嬢はようやく分かったと手を叩いた。
そしてその時、両開き式のドアが開いて、三人が探していた二人が居る一党が帰ってきた。
「ゴブリンスレイヤーさん! 剣舞士さん! お客さんですよ!」
と声を掛けると、呼ばれた二人が近寄り
「……なんだ」
「どうした?」
と受付嬢に問い掛けた。すると、受付嬢は三人を指し示して
「こちらの方々が、用があるようですよ」
と言った。
「えっと……」
「お前は休んでいろ……」
「師匠……」
「お前達も休んでいろ……あの三人が用があるのは、俺達のようだからな……」
ゴブリンスレイヤーと剣舞士はそう言うと、受付嬢が用立ててくれた会議室に三人と共に行った。
それを見送った三人娘は、疲れもあったために獣娘給士にお茶を注文し、一休憩することにした。
そこに
「あの、ちょっといいかな」
と声が掛けられた。見てみれば、少年剣士と新人聖女の二人組だった。
「何でしょうか?」
と神官娘が問い掛けると、少年剣士と新人聖女は顔を見合わせてから
「あのさ、大丈夫なのか?」
と問い掛けてきた。
「どういうことかしら?」
意味が分からず、魔法使い娘は首を傾げてしまった。すると、少年剣士は
「えっとさ、あの銀等級……ゴブリンスレイヤーと一党組んでるんだろ? 噂では、君達新人を囮にしてゴブリン退治をしてるって聞いたんだ……」
「違います! そんなことはしてません!」
少年剣士の言葉を聞いて、神官娘は思わず声を張り上げてしまった。ゴブリンスレイヤーは無愛想で言葉少ないが、それでもキチンと教育してくれている。
そのおかげで、最初は知らなかった冒険者の基本も少しずつだが覚えてきている。
「だから、噂を鵜呑みにするなって言ったじゃない……」
「だって、気になるじゃないか……」
新人聖女が苦言を呈すると、少年剣士は苦い表情を浮かべた。どうやら、事前に新人聖女から注意されていたらしい。
「それに、あの剣舞士だって、戦場帰りって聞いたし……人を斬ることも躊躇わないって……」
「確かに師匠は、戦場を知ってるみたいだけど、やむにやまれぬ事情だった筈よ……」
少年剣士の言葉を聞いて、格闘家娘は少年剣士を睨んだ。直前まで依頼で外に出ていたために、その気迫は新人とは思えない。
「えっと……」
「はい、そこ、まで……」
そこに現れたのは、妖艶な雰囲気を漂わせる魔女だった。
「ちょっと、視線を集め過ぎてる、から……ね」
魔女の指摘を受けて、五人はギルドに集まってる冒険者達が見ていることに気づいた。
「それ、に、ね……貴方達は、依頼、取ってきたほうが、いいんじゃ、ないの?」
「うわっ、そうだった!」
「急げ!」
魔女に指摘されて、新人聖女と少年剣士は依頼状が貼り出されている掲示板に向かった。彼等は白磁等級であり、日々の細々とした依頼をこなさないと、一日の生活すら成り立たなくなってしまうのだ。
「さて、と……要らない、お世話、だったかしら?」
「いえ、その……」
「ありがとう、ございました」
魔女の言葉に、神官娘と格闘家娘は頭を下げた。魔法使い娘も、無言で頭を下げた。
「インフラマエ……ふふ……力ある言葉の、無駄使いね……」
「まあ、私も時々焚き火を点けたりするのに使うわ」
パイプをくわえた魔女は、呪文を束って火を点け、それを見た魔法使い娘は肩をすくませた。
そして魔女は、紫煙を吐き出して
「ゴブリンスレイヤーは、色々と、特殊だからね……苦労するわ、ね……」
と神官娘を労った。
「私も、ね、彼から、少し特殊な依頼を受けたことが、ある、のよ……」
「特殊な依頼?」
魔女の話に、神官娘は思わず首を傾げた。
「そ……
魔法紙というのは、今は失われた技術で作られた魔法を封じ込められた紙である。
効果は様々で、包まれた状態から開くと即座に発動するのが特徴だ。
「さて、と……私は、
魔女はそう言うと、入り口付近で槍使いと合流して外に出ていった。
冒険に行ったようだ。
そして三人娘は、二階に続く階段を見た。今行われている会談が、気になった。