一党は昇降機に乗ると、最上階を目指した。
先ほどまで居たのは数字では、8階だったらしい。そして最上階は、10階だ。
「フェイヒリッターが昇降機の鍵を見つけてくれてて、助かったわぁ」
「そうですね……少しですが、休めますし……階段の罠を警戒する必要が無いですから」
実はゴブリンスレイヤー達の方は、階段に様々な罠が仕掛けられていた為に、それらを解除したり回避したりで体力を消耗していたのだ。
前衛を担当していたメンバーは、全員がスタミナポーションを飲んだ。
そして最上階に到着するからか、昇降機の速度が落ちていく。すると剣舞士が
「……なんだ、この圧は……」
と呟きながら、昇降機の扉の向こうを睨んでいた。
「圧ですと?」
「ああ……」
蜥蜴人僧侶の言葉に剣舞士が頷いた直後、昇降機の扉が開いたのだが、ほぼ全員が自身は死んだと錯覚した。
「気を張れ! 足に力を入れろ!!」
剣舞士の声に、一瞬だが意識が落ちていた一党は倒れる寸前で踏ん張って耐えた。
「な、なんですか……今の……!」
戦士娘は斬り落とされたと錯覚した首を触りながら、必死に立っていた。
扉が開いた瞬間、ほぼ全員が自分たちの首を斬られた幻覚を見たのだ。
「殺界だ……極限まで鍛えられた殺気を相手に叩き付ける事で、脳が自分が殺された、という錯覚を見てしまう……最悪、本当に死ぬぞ」
剣舞士はそう言って、刺さっていた鍵を抜きながら昇降機から降りた。その直後、昇降機の扉が閉まったのだが、その時外に出れたのは剣舞士の他に大妖精と前剣聖の計三人だった。
先ほどの
「先ほどの殺気……大戦を思い出しますね……前衛を担っていた魔将から感じていました……」
大妖精の言葉に、前剣聖は頷いた。
そして剣舞士は、部屋の真反対側の壁際に居る黒い塊を見た。
「障気が凄まじいな……アンデッドのようだが……」
「もしかしたら、この塔がダンジョンになっていたかもしれませんね……」
ダンジョン
それは、魔物が無制限に現れる場所で、有名なのは
その死の迷宮の正面間近に冒険者が集まる城塞都市を造り、多数の神殿が建築され、そこの神官達が絶えず祝詞を読み上げて死の迷宮の一階の入り口を封印し続けた。と言えば、危険性は分かるだろうか。
その死の迷宮は今から約20年前に今の国王と剣の乙女が居た一党により障気を発していたコアを破壊した事で魔物の無制限増加は止まったが、未だに危険な為に入り口は許可証無くては入れず、複数人の聖騎士が常に張り付いている。
それほど危険な場所が、ダンジョンなのだ。
もし塔がダンジョン化したら、間違いなくエルフの里は壊滅する。
剣舞士と前剣聖が刀と剣を抜きながら、一歩前に出た。
すると黒い塊も、長い剣を抜いた。
「ち……デスナイトか……」
デスナイト
リッチと同じく、アンデッドの最上位種だ。
リッチと違うのは、リッチは魔法使いや神官が成るが、デスナイトはその名前の通りに騎士や剣士が死後になる。
グールやスケルトンと違うのは、剣を極めたいという想いが強い騎士・剣士が成る事が多いのだ。
デスナイトになると、生前に修めていた剣技だけでなく、死後に戦って剣を培っていく事が可能なのだ。
こうなると、大抵が並大抵の冒険者や騎士、軍人では勝てない事が多くなる。
次の瞬間、デスナイトが前剣聖の前に居て、二人の剣が激突。激しい金属音が鳴り響き、空気が震える。
「速いな……!」
しかし、デスナイトの背後に剣舞士の姿があった。剣舞士が刀を振るったが、デスナイトの姿は無く、元の位置に居た。
「速すぎて、私には視認出来ません……視力強化……それと、身体強化、斬撃強化、聖属性付与!」
大妖精は見えなかったらしく、自身の目を強化。そして全員に三重の強化を施した。
すると、デスナイトの剣に障気が纏わりついて禍々しい見た目に変わった。
「さて、ここからが本番のようだな……!」
次の瞬間、三本の剣と刀が激突した。