デスナイトが持っている長剣に障気が纏わり付き、禍々しい刺が現れる。
「斬られたら、呪われる……と考えた方が、良さそうだな……」
剣舞士がそう言った直後、二本の剣と一振の刀が同時に激突した。
デスナイトは大妖精を狙ったのだが、それを前剣聖と剣舞士が止めたのだ。
「これ程の剣士……前大戦でも中々見ませんでした……生前は相当強く、高潔な方だったでしょうに……」
大妖精はデスナイトの強さから、デスナイトの生前を想像した。如何に生前は高潔だったろうが、死に際には死にたくないと、もっと強くなりたいと願ってしまったから、デスナイトになった。
こうなってしまったら、討伐するしかなくなってしまう。
剣舞士と前剣聖はデスナイトを押し返し、ほぼ同時に仕掛けた。剣舞士はまるで矢のように刀を突き出し、前剣聖はデスナイトの左側から斬りかかった。
どちらかを防御すれば、どちらかが間違いなく入る。そういうレベルの攻撃。
しかし、デスナイトは普通ではなかった。
何を考えたのか、デスナイトは剣を上に放り投げて、両手を貫手の形にして、障気で剣の形を形成し、二人の攻撃を同時に弾いた。
「今の動き……こいつ、二刀流使いか!!」
直前までは考えていなかったが、剣舞士はデスナイトが二刀流使いだと気付いた。
二刀流は非常に難しく、下手な人物がやろうものならば自分を傷付けてしまう戦い方になる。
簡単に言うならば、両手で別々の紙に違う内容を書いてるような物だ。
ある二刀流では、利き手に長剣。逆の手に短めの剣を持ち、攻防の役割を決めておく、という対策で自傷する可能性を可能な限り低くした。
というように、二刀流というのは非常に困難な戦い方になる。
しかし、目の前のデスナイトは障気によるものだが、同じ長さの剣で剣舞士と前剣聖の二人を同時に迎撃した。
これからも、相当の二刀流剣士だと分かる。
デスナイトは障気の剣を無くすと、落ちてきた長剣を難なく掴んだ。
「さて……面倒な相手だな……」
剣舞士は呟きながら、右手に持っていた飢狼を左手に持ち変え、右手で黒刀を抜いた。
剣舞士はデスナイト相手には、手数が足りないと判断して、二刀流での戦いに切り替えたのだ。
その時剣舞士は、前剣聖が何らかのジェスチャーをしている事に気付いた。
デスナイトが動かないように牽制しつつ、剣舞士は前剣聖の動きから意図を察して
「……任せよう。フォローはする、好きに動け」
と伝えた。次の瞬間、前剣聖が動いた。
石畳に足がめり込む程に力強い踏み込みで、一気に前に出た。まるで地を這うように前傾姿勢で突撃すると、前剣聖は上下から挟むように斬撃を繰り出した。
一瞬二撃という離れ業。
実はこの技は、前剣聖が得意とした技であり、数多の敵を葬った技でもあった。
因みに、前剣聖の本命の一撃は下からの突き上げだ。
上からの振り下ろしと、下からの突き上げ。
しかしその技をデスナイトは、上からの振り下ろしは剣で防ぎ、下からの突き上げは剣身を掴んで強引に止めた、よく見れば、籠手の革部分が破けて、骨に剣身が食い込んでいる。
ある意味、アンデッドだから出来た防御方法だ。
しかし、聖属性が付与されている為に障気を祓い、更に剣自体の鋭さが相まって骨に剣身が食い込んだようだ。
剣を捕まれた前剣聖の動きが止まり、そんな前剣聖にデスナイトはトドメの一撃を入れようとしたのか、右手の剣を大上段から振り下ろそうとした。
だがそんな事を、剣舞士が座して見過ごす訳がなかった。
「俺を忘れるな」
一瞬でデスナイトの横に現れ、前剣聖に振り下ろそうとしていた剣を切断。立て続けに、前剣聖の剣を掴んでいた左手を切断した。
デスナイトは右手の剣を手放し、障気による剣を形成。
そして同時に、距離を取った。
恐らく狙いとしては、距離を取って態勢の建て直しを計ったのだろう。
だがそれが、デスナイトの失敗だった。
即座に攻撃すれば、剣舞士と前剣聖を倒せていたのだ。
何故ならば、先ほどの剣舞士の一撃は斬鉄によるもので、斬鉄含めた奥義は一度放つと僅かにだが技後硬直するのだ。
そして前剣聖は、まだ剣身にデスナイトの手が残されていたのだ。
つまり、隙だらけだったのだ。
だがデスナイトは、優れた剣士だったが故に、唯一二人同時に倒せる好機を逸したのだ。
先に前剣聖が踏み込み剣を振り上げて、デスナイトが形成した障気の剣を上に大きく弾き、そこに剣舞士が入り込んで
「今度は迷うな……あの世で、お前の知り合いが待っているだろうからな」
黒刀を一閃し、首を斬り飛ばした。
すると、体が膝を突き、ゆっくりとだが体から障気が薄れていく。そして見えたのは、豪奢な装飾が施された鎧だった。
恐らくは、相当名の知れた騎士だったのだろう。
こうして、デスナイトは倒れた。