デスナイトを倒した後、剣舞士、大妖精、前剣聖の三人は一党と合流。昇降機で一階まで降りていた。
その最中
「あのデスナイト……とんでもない奴だったわね……」
と上妖精弓手が呟いた。
剣舞士が振り向くと、上妖精弓手が気落ちした様子で角に居た。
「恐らく、何処かの騎士団長位の実力者だろうな……あの鎧に剣……生前はかなりの剣士だっただろう……それに、戦争で鍛え上げられた殺気……かなりの猛者だ……だから、そこまで気落ちする必要は……」
「気落ちするわよ! 銀等級四人が、全員よ!? 何も出来ずに一瞬意識を失って、戦えなかった!」
剣舞士の言葉に被せ気味に、妖精弓手は怒鳴った。
よく見れば、若干涙を流している。すると、蜥蜴人僧侶も
「確かに……あのように一瞬だけとはいえ、気を失ったのは初めてでしたな……」
と気を落としている。
「そこは、経験の差としか言えませんね……私たちは経験があるから、耐えられた。本当にその一点に尽きます」
「大妖精様……」
「戦争……ですか……」
神官娘が考え始めると
「……出来る事ならば、戦争は経験しない方が良い……どちらかが全滅するか、継戦が不可能になるまで戦い続ける……地獄だよ……」
と剣舞士が告げた。
「そうですね……至るところに死体が転がり、大地や水辺が血で真っ赤に染まる……あれを、もう一度見たいと経験したい、なんて思いません……それこそ、狂ってしまわない限りは……」
「狂ってしまう?」
大妖精の言葉に、戦士娘が首を傾げた。
「……人を殺す事に、魅入られてしまうんだ……人を殺す事に快楽を感じ……快楽を感じたいが為に人を殺す……そして、人から外れて鬼に堕ちる……」
「鬼に堕ちる……まさか……
殺人鬼も人から外れた者だが、人喰い鬼は
人を殺す事に快楽を感じ、何時からか血を飲むようになり、肉を食うようになり、最後には人喰い鬼に成る。
ある研究者はそれを、生成りと言ったとか……
それはさておき、昇降機は一階に到着し、一党は里への帰路に着いた。
里に到着したのは、陽が完全に登った時であった。
一党を出迎えたのは、完全武装状態の妖精戦士団と戦士長達だった。
「無事に戻ったか……ゴブリン共は?」
「殲滅した……それと、そちらの長老達が言っていた化け物とやら……倒したぞ」
戦士長の問い掛けに、ゴブリンスレイヤーが答えた。すると、戦士長が驚いた様子で
「倒したのか……それで、化け物の正体は……」
「戦ったのは、二体……リッチとデスナイトだった……恐らくは、そのどちらかだろう」
剣舞士の報告に、戦士長と戦士団は驚いていた。
リッチにデスナイト、両方共にアンデッドの最上位クラスだ。倒すには、聖属性の付与に最低でも銀等級以上の戦力が必要と言われている。
「なるほど……我々は先に長老達に報告してくる。貴殿らは一度休まれよ」
戦士長はそう言うと、部下に一党を案内するように指示し、長老達の所へと向かっていった。
その後に一党は用意されていた休憩室に向かい、軽く食事と入浴を済ませてから寝た。
起きたのは夕方になってからで、戦士の一人に長老達の居る場所に案内された。
そして、報告が終わると
「……なるほど……リッチにデスナイト……確かに、厄介な魔物ですな……奴は確かに剣を使っていたな……」
と納得していた。
だが剣舞士は、前剣聖が何やら言いたそうにしている事に気付いており、それは視線で制止している。
少しすると、長老の一人が前剣聖を見て
「して、その娘は? 確か、行く前には居なかったと記憶しているが……」
と問い掛けてきて、その問い掛けに前剣聖が僅かに体を震わせた。
「彼女はあの遺跡の地下で発見し、保護した……」
「……そうですか……なら、その娘はそちらに任せましょう……」
剣舞士の言葉に長老は少し考えた後、そう発言した。
そして、以後は定期的に遺跡の調査に向かうという事になり、その場は解散。
翌日、予定より遅れたが上妖精弓手の姉と戦士長の結婚式が執り行われた。
とても華やかで、牛飼い娘や受付嬢、三人娘や大妖精達は結婚した二人を祝福した。