妖精の里から西の街に戻ってきた一同。
冒険や牧場で牛の世話、受付や監査とそれぞれの仕事に戻っていく。
そんなある日、剣舞士は少女と歩いていた。
「魔道具師の才能が……」
「ああ、仲間の鉱人術士の言った通りならばな」
妖精の里に行く途中に鉱人術士から聞いた、少女に魔道具師の才能がある、という話。それを確認する為に、鉱人術士から魔道具師の家の位置を聞いて、向かっている途中だ。
一応先に意思確認はしており、少女は
『やってみる』
と言っていたので、連れていく事にしたのだ。
「だけど、離れた所に住んでるんだね」
「ああ……鉱人術士曰く、少々偏屈な職人らしい……まあ、職人というのは頑固か偏屈な者が多いか……」
実は今、西の街から出ており、牛飼い娘の居る牧場の間で、川辺の方に向かっていた。鉱人術士から聞いた魔道具師だが、川辺に建てた家で作業しているのだとか。
西の街から出て、約一時間。ようやく、それらしい建物が見えてきた。
すると少女が
「……なんか、透明な壁? みたいなのがある……」
と呟いた。
それを聞いた剣舞士は、ゆっくりと手を伸ばし
「……なるほど、害意を持つと発動するタイプか……中々の腕を持つ人物らしいな」
と呟いた。
どうやら魔道具師の家兼工房は結界が張ってあるようで、それは害意を持つ者が入れないようにしているようだ。
そして二人は、とりあえず柵の扉を開けて敷地内に入り、扉をノックした。
すると中から
『話は聞いている。中に入れ』
と聞こえて、扉を開けた。
すると、最初に見えたのは棚に所狭しと並んだ魔道具。そして、カウンターに座る一人の人物。
「そちらが、魔道具師か……?」
「ああ、そうだよ」
最初は目深に被っていた帽子と扉越しだったから分からなかったが、若い女性だった。
「お姉さんが、魔道具師さん……?」
「お姉さんって歳でもないんだけどね。私はこう見えて、300年は生きてる
少女が首を傾げると、闇人魔道具師はクックッと笑いながら告げた。
闇人は森人と違って特定の里というのは余り持たず、旅をしている事が多い種族で、更に肉体的にも力が秀でている事が多い。
そして中には、魔力を扱う事に長けた者が産まれる事もあるという。
どうやらこの闇人魔道具師は、魔力を扱う事に長けているから、魔道具師になったようだ。
「あんたは今噂の剣舞士さんか……確かに強そうだね。そして、鉱人術士が言ってたのが、そちらのお嬢ちゃんかな?」
闇人魔道具師はそう言って、少女を見た。
「ああ……西の街の壁や扉の魔力の流れに気付き、それにこの敷地の結界にも気付いた」
「それは本当か?」
「う、うん……この敷地全体を透明な壁みたいなので囲んでるよね?」
少女の言葉に、闇人魔道具師は笑い
「これはまた、稀有な才能を持ってるね。確かに魔道具師向きだ」
と告げた。
そして、カウンターから出てきた。これまで座っていたから気付かなかったが、身長は剣舞士に迫る程に高い。
「魔道具は魔力の流れがとても重要でね。お嬢ちゃんみたいな才能を持っていると、強力な魔道具が造れるようになる」
闇人魔道具師はそう言いながら、棚から一つの魔道具を録り、少女に差し出した。見た目は腕輪だ。
少女はそれをジッと見ると
「これ……体力回復?」
と問い掛けた。
「大当たり! 間違いなく、お嬢ちゃんは魔道具師向きだ」
闇人魔道具師は、そう言いながら少女の頭を撫でた。
そして、剣舞士を一度見てから少女の近くで片膝を突いて少女に何やら耳打ちしている。
剣舞士には聞こえないが、時々少女も何やら話している。
二人が会話している間、剣舞士は棚の魔道具を見始めた。様々な見た目の物があり、触れば剣舞士にも効果が分かるのも幾つかあったが、大半が分からなかった。
どうやら、闇人魔道具師の腕は一級品なのは間違いないようだ。
少しすると、二人の会話は終わったらしい。闇人魔道具師が剣舞士の肩を叩き
「話は終わったよ。この少女は、私が一流の魔道具師に育てる」
と告げた。
どうやら、少女は修行するつもりのようだ。
「ああ、一応1日に一回は必ず家に帰らせるから安心して」
「ちゃんと帰るよ!」
どうやら、少女もやる気らしい。
それならば、剣舞士には断る理由も無い。
「分かった。無理はするな」
剣舞士はそう言って、少女の頭を撫でた。
こうして、少女は魔道具師になるための修行をする事になった。