「という訳で、
受付嬢はそう言って、剣舞士に銅等級を示すタグを差し出した。
「……少し前に昇級したばかりなのだがな……」
「そうですね。私たちが覚えてる限りですが、貴方みたいな速度で昇級していく方は初めてですね。しかし、剣の乙女様からの推薦文にリッチとデスナイトの討伐……昇級するには十分過ぎますよ」
剣舞士が呆れながらも銅等級のタグを受け取り、首に掛けていると、受付嬢が自身の前に置いてある手紙を見た。それが、剣の乙女が西の町のギルドに送った推薦文のオリジナルのようだ。
「それに、まさか大妖精とは……驚きました」
妖精の里に行く際、受付嬢には大妖精の事を話した。大妖精の事は知っていたようで、道中驚きながら大妖精に語り掛けていた。
「そうですね。まさか、本に書かれた古の邪神との戦争を終戦に導いた英雄の一人を助けたなんて」
「中々無い話ですよ」
確かに、そうそう無いだろう。
しかし剣舞士は、少し考えてから
「……実は、もう一人居る……としたら?」
と呟き、受付嬢と監査嬢は揃って首を傾げた。
その後、剣舞士はリッチとの戦闘の際の出来事を語った。
「まさか、前剣聖さんだったなんて……!」
「なるほど……それなら確かに、大妖精さんが気にかける訳ですね……一緒に戦った戦友なんですから」
前剣聖の事も知っていたらしい。
因みに、剣舞士も戻ってきてから調べたが、前剣聖は白髪剣姫と呼ばれていたのを知った。
「白髪剣姫……今の剣聖さんと同じ流派の剣を収めるだけでなく、合わせて10の流派を修得……誰が言ったか、十流皆伝……」
「凄いですよね。普通は一つの流派だけでも最低で数年は掛かるのに、10の流派を10数年で修得した伝説の剣聖……白髪剣姫」
そう、前剣聖が収めていたのは、一つの流派だけではなかったのだ。10の流派の剣を学び、それらを統合した十流皆伝を編み出した傑物。
それが、白髪剣姫だった。
「しかし、そんな人物が白磁からスタートですか……」
「まあ、大妖精さんも白磁からですし……」
前剣聖は西の町に到着した際、冒険者ギルドで冒険者として登録した。
勿論だが、白磁からのスタートになる。
「しかし、約2000年も魂と骨だけで……」
「それなら確かに、喋れないわね……」
二人はどうやら、前剣聖が喋れないのを不思議に思っていたらしいが、剣舞士の説明を聞いて納得していた。
「……なるべく、彼女達の事は秘密にした方が良いでしょうね」
「そうね……邪神信奉者達からしたら、最重要討伐対象になりかねないし」
「なるほど……それは確かにな」
受付嬢と監査嬢の話を聞き、剣舞士は納得した。
邪神を信奉する者達からしたら、過去とはいっても邪神を討伐した彼女達は倒したい程に憎い相手だろう。
それこそ、自らの命と引き換えにしてもだ。それを考えたら、確かに秘密にした方が良い。
「……死兵の相手は面倒だからな……」
死兵
命を捨てて戦う者達で、その気迫と勢いで新人が手練れに致命傷を与える事すらありえる。
死兵とは違うが、剣舞士は狂信者と戦った事があり、その時の相手も面倒だったのを覚えている。
狂信者も信奉する神の為に、あらゆる手段をとって行動する。その為には、命すら惜しまない。
「私たちの方では、彼女達の情報は限られた者しか触れないようにします」
「こちらも、なるべく彼女達に顔を晒さないようには言っておく」
こうして、ギルド側と剣舞士の間である種の協力関係が結ばれた。
そうして剣舞士は、階段を降りながら
「……さて、神殺しか……もしくは……」
と暗い声で呟いた。