それで貰ったのが、焼きそばだけというのも、割りに合わぬような……
二階の会談部屋。
そこでは、ゴブリンスレイヤーと剣舞士が、件の三人と向かい合っていた。
「……貴方が、オルクボルグに、そっちがフェイヒリッター?」
「……ああ」
「まあ、そう呼ばれているな」
上妖精の問い掛けに、ゴブリンスレイヤーと剣舞士は頷いた。妖精独特の言い方は、自身を見ながらだったので自分だと解釈したようだ。
「……フェイヒリッターはまだ分かるけど、オルクボルグは本当に銀等級?」
「……ギルドはそう決めた」
「信じられないわね。だって、みすぼらしいわ」
ゴブリンスレイヤーの言葉に、上妖精は否定しながらジッとゴブリンスレイヤーの着ている鎧を見た。
薄汚れた鎧に、傷だらけの小さな楯。知らぬ者が見たら、古い鎧を引っ張り出した初心者に見えなくもない。
「バカ言っちゃなんねぇよ、耳長の……」
と上妖精を諌めたのは、上妖精の隣に座っていた鉱人だった。鉱人はゴブリンスレイヤーを見て
「あの鎧……まず革鎧は動きやすさを重視しておる。下に着込んでる鎖帷子は不意討ち防止……剣は狭っくるしい洞窟で振り回すことを重視しておる。楯も同じじゃな……鎧は臭い消しが施されておる。完全に小鬼共を意識した装備じゃな」
と語った。やはり鉱人なだけあり、そういった装備面には詳しいようだ。
そして次に、剣舞士の方を見て
「それに、風剣も分かりづらいが……鎧は動きやすいように、布、木、鉄を組み合わせてあるの……その下には鎖帷子……回避重視の装備じゃな……」
と呟いた。
「私にはさっぱりね……」
「要は、掘り出したばかりの原石と一緒じゃ。何事も磨かねば分からんということじゃ」
鉱人独特の言い回しに、上妖精は完全にお手上げらしく天を仰いだ。
すると、剣舞士が
「それで、用件はなんですか?」
と問い掛けた。一向に話されないから、痺れを切らしたようだ。
「おお、そうであった。拙僧達はお二人に用があったのだ」
「今、都のほうで魔神が出現して、それに伴って魔物や魔族が暴れてるのは知ってるわね?」
「知らん」
上妖精の説明を、ゴブリンスレイヤーは一蹴。それにより、上妖精は僅かに顔が歪むが
「それに伴って、各地で魔物達が活発化……強い魔物が出てきてるのよ」
「知らん」
またしても、上妖精の説明をゴブリンスレイヤーは一蹴した。そこで、我慢の限界に達したのか
「分かってるの!? 魔神との戦争が始まるのよ!?」
と声を荒げながら、机を叩いた。
しかし、ゴブリンスレイヤーは
「そんなことよりも、ゴブリンだ……奴等によって、今も苦しんでる人が居る」
と告げた。
その言葉に上妖精が苦い表情を浮かべていると、剣舞士が
「ゴブリンスレイヤーは、もう少し他の事に興味を持つべきかと」
と忠告した。
「……そうか?」
「ええ」
「……そうか」
そこで一度やり取りを終えると、剣舞士が
「一応俺は、その辺りの情報は得ている。構わずに続けてくれ」
と先を促した。
剣舞士だが、情報は大事だと心得ているので、手空きの時は情報収集をしている。
その中で、魔神の出現に伴う魔物達の活発化の情報を得ていた。
「分かった。それが理由と思われる、小鬼ばらの砦が見つかっての」
「ゴブリンか」
鉱人の話を聞いて、ゴブリンスレイヤーは興味を持ったらしく身を乗り出した。
その様子に、剣舞士は軽く溜め息を吐いた。
「これに」
蜥蜴人僧侶はそう言いながら、一枚の地図をゴブリンスレイヤーに差し出した。受け取ったゴブリンスレイヤーは、地図を開き
「……古い遺跡か」
と呟いた。剣舞士も横から見れば、それは確かに遺跡の簡易地図だった。
「……そこは、私の故郷近くのゴブリンの大規模な巣みたいで、人、エルフ、ドワーフ、リザードマンの各種族の街にもそれなりに近いわ……だけど」
「ゴブリン相手に、軍は動かせない……まあ、何時も通りだな……」
「故に、各種族から選抜された我らと、唄を聞いてそなたら二人が選ばれたのだ」
「……唄とはなんだ?」
「吟遊詩人が、各地で聞いた冒険譚を元に作って、人々に聞かせる……その中で、ゴブリンスレイヤーはそれなりに有名だ」
「……唄にする必要はあるのか?」
剣舞士の説明を聞いたゴブリンスレイヤーは、思わずといった風体で首を傾げた。すると、鉱人が
「バカじゃのぉ、かみきり丸は。唄を聞いてお主らの噂が広まれば、お主らへの依頼が増えるっちゅう寸法よ」
と語った。しかし、ゴブリンスレイヤーは
「興味はない」
と一蹴。そして
「大規模と言ったが、正確な数は分かるか?」
と問い掛けた。
それに対して、蜥蜴人僧侶が
「正確な数は……しかし、最低でも50は下らぬかと」
と説明した。それを聞いて、ゴブリンスレイヤーは
「チャンピオンかロードでも現れたか……」
と呟いた。
「チャンピオン? ロード?」
初めて聞いたらしく、上妖精は首を傾げた。
すると、ゴブリンスレイヤーが
「……奴等にとっての、金や白金等級と言ったところだ……」
と手短に説明した。
そして、立ち上がり
「この依頼、引き受けた……依頼料金はそちらで決めろ」
と言って、会議室から出た。
すると、上妖精が
「普通、依頼料金まで決めてからじゃないの……?」
と困惑していたが、剣舞士が
「まあ、あれが彼……としか言えないな……」
と言って、ゴブリンスレイヤーを追い掛けた。
そして、二人に遅れて会議室から三人が出ると
「そんな!」
「そんなに、私達は信じられませんか!?」
「もっと、相談してください!」
と三人娘の声が聞こえた。
三人が見てみれば、ゴブリンスレイヤーが三人娘に詰め寄られている。
「……しているだろう、相談……」
『え』
ゴブリンスレイヤーの言葉に、三人娘は僅かに固まり
「あのですね、ゴブリンスレイヤーさん……」
「選択肢が実質的に選べないのは、相談とは言いません」
「これは、事後承諾というのよ」
「……そうなのか?」
「彼女達が正しいな」
「……そうか」
上から、神官娘、格闘家娘、魔術娘に言われて、ゴブリンスレイヤーは剣舞士に問い掛けると、剣舞士は頷いた。
その光景を見て、三人は
「なに、あれ」
「なるほどの。結成したばかりと言っていたが、中々面白い
「相手に依頼しただけとあっては、拙僧は先祖に顔向け出来んな」
と短く会話して、ゴブリンスレイヤー達に合流。
目的地たる遺跡に向かったのだった。