西の街に帰ってきた剣舞士は、ゴブリンスレイヤー達と一緒に海辺に来ていた。依頼内容としては、海辺に現れた青ゴブリンを何とかしてほしい、というものだったのだが
「……亜種かなんかと思っていたが……」
実際には、魚人と呼ぶ存在だった。しかも魚人達は、海に来ていた人達を助けていたのだ。
魚人達から得た情報は、なんと
「ゴブリンではないな……」
そう呟いたゴブリンスレイヤーだったが、困ってる人達を助けるのが冒険者という仕事だ。
その後一党は、大きめのボートを借りて海に出て白雪の凍結能力を使って撃破した。
その後、魚人達と海辺に住む人達の間を取り持って、今回の依頼は終了した。
そして帰還した剣舞士は、家の裏手に回り込むと
「……これだな」
と金属管を見た。
今剣舞士がやろうとしているのは、料理や洗濯に用いる水を温水に変える為の工事だ。
その理由は、昨年の秋から冬の間。料理の洗い物や洗濯をしていた少女や戦士娘達が、冷たくて手や足が悴んでいたから、それを少しでも緩和させる為だ。
ここまで間が空いたのは、水を温水にする為の魔道具が中々入手出来なかったからだ。
しかし、あの魔道具技師が割安で提供してくれた。
その理由を聞いたら、何と少女が造った中で成功作の魔道具だという。
少女が魔道具技師に弟子入りして、早くも二カ月が経っている。その間少女は、魔道具技師から様々な魔道具を教えてもらいながら造ってきたが、中々思うように稼働しなかったとか。
そんな中、初めて稼働したのが今回の魔道具だったという事だ。
しかし、一般客に売るには少々性能が心許ない。
だが、身内ならば大丈夫だろうと魔道具技師は判断。更に剣舞士が同じ魔道具を探しているという情報も有ったので、剣舞士に売る事に決めたという事だった。
「さて、始めるか……」
そう呟くと剣舞士は、作業を始めた。
まず金属管の周りと下の土を掘り、魔道具を埋められるスペースを確保。次に金属管を切り、魔道具と接続。
そこで一旦、水温を確認して微調整を行う。
この微調整を何回か繰り返し行い、適温を見つけたら微調整を終了。なお、微調整の方法は魔道具技師から教わった方法でやっている。
そして、魔道具を埋めるのだが、埋める際に盗まれないようにと別の魔道具も一緒に埋めた。
これは、強引に外そうとすると電撃を対象に放つという魔道具だ。
そうして、夜
「あれ……お水が、冷たくない」
最初に気付いたのは、料理の準備を始めた少女だった。僅かに遅れて、同じく料理の準備をしていた魔法使い娘が
「あら、本当に冷たくないわね」
と同意した。
それを聞いてか、桶に手を入れた戦士娘が
「本当ね……」
と困惑していた。そこへ、お風呂を沸かし終わった剣舞士が戻ってきて
「新しく、水を温める魔道具を繋げたんだ」
と簡単に説明した。すると少女が
「え、でも高いって店長さんが言ってたよ?」
と疑問を口にした。
因みに、例の魔道具の正規の値段は家一軒とほぼ同等である。
「ああ。だが、割安で入手出来てな……初めて造った魔道具なんだろ?」
剣舞士のその言葉で、少女は分かったらしく
「え!? まさか、私の!?」
と顔を赤くした。
「え、どういう事ですか?」
「この娘が、初めて造るのに成功した魔道具なんだ」
戦士娘が首を傾げていると、剣舞士が顔を隠していた少女の頭を撫でながら告げた。
すると、監査嬢が
「え!? 弟子入りしてから、まだ半年も経ってないですよね!? もう造れたんですか!?」
と驚き、戦士娘と魔法使い娘は少女を褒めていた。
少女は、魔道具技師として一歩成長したのだった。